第6話「ありがとう」
ミロが甲羅型バッグをもらって数日後。
二匹は山道を歩いていた。
ミロは相変わらずオカリナを吹いている。
ヒュゥ。
ピィ。
変な音ばかりだった。
「下手だな」
ジンが言う。
「うるさい」
ミロはむくれる。
その時。
遠くから泣き声が聞こえた。
「たすけてー!」
二匹が駆け寄る。
すると崖の下で、小さなリスが震えていた。
どうやら木の実を拾おうとして落ちたらしい。
怪我はない。
だが登れない。
「どうする?」
ミロが聞く。
ジンは崖を見下ろした。
そして答える。
「お前はどうしたい?」
ミロは黙る。
以前なら、
「誰か呼ぼう」
と言っていたかもしれない。
だが今は違う。
「助けたい」
ジンは頷く。
「なら考えろ」
ミロは辺りを見る。
縄がある。
木がある。
そして背中には甲羅型バッグ。
バッグから道具を取り出す。
ジンが入れてくれたものだ。
「こうかな……」
不器用ながら縄を結ぶ。
木に固定する。
何度もやり直す。
やがて一本の簡単なロープができた。
「つかまれ!」
リスは必死に登る。
ミロも引っ張る。
数分後。
リスは無事に崖の上へ戻った。
「ありがとう!」
リスは何度も頭を下げる。
ミロは照れる。
「別に」
そう言いながらも嬉しかった。
リスが去った後。
ジンが聞く。
「どうだった?」
ミロは少し考える。
「橋を直した時より嬉しい」
「なぜだ?」
「俺が助けたから」
ジンは笑った。
「そうか」
しばらく歩く。
夕日が山を赤く染める。
背中の甲羅型バッグが揺れる。
その重さは変わらない。
でも今日は少しだけ軽く感じた。
夜。
焚き火の前。
ミロはオカリナを吹く。
ヒュゥ……
相変わらず下手だった。
それでも。
今日の音は少しだけ楽しそうだった。




