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第3話 壊れた橋

ミロがジンと旅を始めてから三日が過ぎた。

相変わらず不思議な旅だった。

目的地は曖昧。

宿も決まっていない。

それなのにジンは全く困っていない。

「じいさん。」

「なんだ。」

「本当に大丈夫なの?」

「何がだ。」

「全部。」

ジンは笑った。

「全部は大丈夫じゃないな。」

「ほら!」

「だから旅は面白い。」

ミロはため息をついた。

昼過ぎ。

二匹は川沿いの道を歩いていた。

すると前方に動物たちが集まっているのが見えた。

「なんだろ。」

近づいてみると、

小さな木橋が崩れていた。

向こう岸には村がある。

しかし橋がない。

渡れない。

鹿が困った顔をしている。

「市場へ行けない。」

リスも言う。

「薬を取りに行きたいのに。」

ウサギは泣きそうだ。

「向こうにおばあちゃんがいるの。」

皆、橋を見つめていた。

ミロはジンを見る。

「これは大変だ。」

「そうだな。」

「村長とか呼ばないの?」

「待っていれば来るだろう。」

「じゃあ行こう。」

ミロは歩き出そうとする。

しかしジンは動かなかった。

橋をじっと見ている。

「どうしたの?」

「直せそうだ。」

ミロは耳を立てた。

「え?」

「今日中には無理だがな。」

そう言うとジンは荷物を下ろした。

工具が出てくる。

縄が出てくる。

木を測る道具も出てくる。

ミロは驚いた。

「じいさん旅人だよね?」

「そうだ。」

「なんでそんなの持ってるの?」

ジンは不思議そうな顔をした。

「必要になるからだ。」

まるで当然だった。

その日。

二匹は橋の修理を始めた。

ミロは丸太を運ぶ。

小さいので一本ずつしか持てない。

「重いー!」

「頑張れ。」

「じいさんも運んで!」

「運んでいる。」

亀はゆっくり運んでいる。

確かに運んでいる。

だが遅い。

とても遅い。

「もっと急いで!」

「急ぐと疲れる。」

「疲れろ!」

ジンは笑った。

夕方になる頃には、

新しい橋の骨組みが出来上がっていた。

村の動物たちも手伝い始める。

鹿が木材を運ぶ。

リスが釘を集める。

ウサギが水を持ってくる。

いつの間にか皆で橋を作っていた。

翌日の昼。

橋は完成した。

最初に渡ったのは小さなウサギだった。

おそるおそる歩く。

無事に向こう岸へ着く。

「渡れたー!」

歓声が上がる。

皆が喜んでいる。

ミロもなんだか嬉しくなった。

村長らしい大きな鹿が近付いてきた。

「本当にありがとう。」

深々と頭を下げる。

そして袋を差し出した。

中には銀貨が入っていた。

ミロの目が輝く。

「じいさん!」

「うむ。」

「受け取ろう!」

ジンは袋を見つめる。

少し考えたあと、

半分だけ受け取った。

「半分でいい。」

「なんで!?」

ミロが叫ぶ。

鹿も驚いている。

ジンは穏やかに答えた。

「皆も働いたからな。」

橋を見渡す。

鹿も。

リスも。

ウサギも。

皆が少しずつ手伝った。

「これは皆で作った橋だ。」

そう言って笑った。

帰り道。

ミロは黙って歩いていた。

橋を渡った人たちの顔が頭に浮かぶ。

嬉しそうだった。

安心していた。

必要とされていた。

ふとミロが聞く。

「じいさん。」

「なんだ。」

「橋を作るのって楽しい?」

ジンは少し考えた。

「橋を作るのは大変だ。」

「じゃあ何が楽しいの?」

ジンは前を向いたまま答えた。

「橋を渡る顔を見ることだな。」

風が吹いた。

ミロは何も言わなかった。

でもその言葉は、

なぜか心の奥に残った。

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