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第2話 はじめての旅

翌朝。

ミロは目を覚ました。

見慣れない天井だった。

いや、天井ですらない。

木の枝が頭上に広がっている。

鳥の鳴き声が聞こえる。

草の匂いがする。

地面は硬い。

背中が痛かった。

「……どこだここ。」

昨日のことを思い出す。

雨。

段ボール。

旅人の亀。

干した魚。

そして。

「そうか。」

旅に出たんだった。

少し離れた場所で、亀のジンが火を起こしていた。

小さな鍋が乗っている。

何か煮ているようだ。

「起きたか。」

「うん。」

「朝飯だ。」

鍋の中には野菜のスープが入っていた。

質素だった。

肉も魚も入っていない。

ミロは顔をしかめる。

「魚は?」

「ない。」

「肉は?」

「ない。」

「じゃあ食べたくない。」

ジンは頷いた。

「そうか。」

そう言って自分だけ食べ始めた。

ミロは慌てる。

「ちょっと待って!」

「なんだ。」

「止めないの?」

「腹が減れば食べるだろう。」

そう言われると反論できない。

結局ミロはスープを飲んだ。

意外と美味しかった。

少し悔しかった。

食事を終えるとジンが立ち上がる。

「行くぞ。」

「どこへ?」

「次の村だ。」

「何しに?」

「分からん。」

ミロは耳を伏せた。

「そんな適当なの!?」

ジンは首を傾げる。

「旅とはそういうものだ。」

「もっと計画とかないの?」

「ない。」

「お金は?」

「少し。」

「宿は?」

「決めてない。」

ミロは不安になった。

この亀、大丈夫なのか。

しかしジンは平然としている。

杖をつきながら道を歩く。

ゆっくり。

でも止まらない。

やがて森へ入った。

昼頃になるとミロは疲れ始めた。

「まだ着かないの?」

「まだだな。」

「あとどれくらい?」

「歩けば着く。」

「それ答えになってない!」

ジンは笑った。

ミロはむくれる。

すると。

前方から声が聞こえた。

「誰かー!」

「助けてくれー!」

ジンが立ち止まる。

ミロも耳を立てた。

道の先で一匹のウサギが慌てていた。

荷車の車輪が外れている。

大量の野菜が地面に散らばっていた。

「困っているようだな。」

ジンが言う。

「うん。」

「行くぞ。」

「え?」

「助けるんだ。」

ミロは首を傾げる。

「なんで?」

ジンは当然のように答えた。

「困っているからだ。」

それだけだった。

ジンは荷車へ向かう。

ミロは後ろからついていく。

ウサギは泣きそうな顔をしていた。

「市場に間に合わないんです!」

「ふむ。」

ジンは車輪を見た。

「直せそうだ。」

そう言って工具を取り出す。

ミロは驚いた。

旅人なのに工具を持っている。

杖だけで歩いていると思っていた。

ジンは慣れた手つきで車輪を修理する。

その間、ミロは散らばった野菜を拾わされた。

しばらくして。

荷車は元通りになった。

ウサギは何度も頭を下げる。

「ありがとうございます!」

「助かりました!」

ジンは笑う。

「気を付けてな。」

それだけだった。

お金も受け取らない。

荷車が見えなくなってから。

ミロは聞いた。

「なんでお金もらわなかったの?」

ジンは少し考える。

「持っていたらもらったかもしれん。」

「持ってなかったの?」

「持ってなかった。」

「じゃあタダ働きじゃん。」

ジンは笑った。

「そうだな。」

そして空を見上げた。

「だが、あの顔は少し良かった。」

ミロは振り返る。

ウサギは遠くで何度も手を振っていた。

ありがとう。

ありがとう。

そんな声が風に乗って聞こえる。

ミロは何も言わなかった。

ただ少しだけ。

ほんの少しだけ。

悪くないかもしれないと思った。

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