3₋5.
「…読み終わったか」
「読み終わりました。でも、どういうことか、よくわからなくて」
「書いてあるとおりだ。お前は、ラナは私の妻であり、俺はラナの夫だ。もともと伯爵家には正式な婚姻を申し込むつもりだった。しかし、その矢先に水害が起きてしまった。俺は…、断られるのが怖くて復興支援にかこつけて結婚を申し込んだ。どこで入れ違いがあったかはわからない。だが、俺のラナに対する気持ちは本当だ。ラナのことは異性として好きだし、大切にしたいと思っている。だから、これからは使用人ではなく俺の妻としてこの屋敷にいてくれないか」
「どうして?だって公爵様には奥様がいらっしゃるのでしょう?」
「奥様というのはラナのことだ」
「でも、貴族なら結婚のお披露目をするんじゃ」
「結婚はしただろう?伯爵夫妻も来てくれた」
「私、てっきり歓迎会か何かかと」
「あぁ、だからもう一回やり直そうな。今度は隣国風の式をしよう。ラナの友人もたくさん呼ぼう。あの時は早く結婚したいという私のわがままで内輪のみの式にしてしまったんだ。お披露目は追々やるつもりだった」
「私、お揃いの指輪が欲しいです」
「あぁ、もちろんだ。デザインも一緒に決めよう。…まだ戸惑っているのだろう。ゆっくりでいい、ラナのペースでいいから、少しずつ私のことを知っていってほしい。俺にもラナのことをたくさん教えてくれ」
「はい。これからよろしくお願いしますね、旦那様」
私は、私はずっと勘違いしていたようだ。
旦那様はこんなにも真っ直ぐな気持ちを向けてくれていたのに、私はずっと気づかないふりをしていたようだ。
旦那様は私が気づくまでちゃんと待ってくれた。
何回も繰り返して気持ちを伝えてくれた。
だからこれからは私からもちゃんと伝えたい。
自分の気持ちから目をそらしたくない。
これからは、これからは…。




