2_7.
夕食の時間、メイド長に頼んでラナを呼んでもらった。
食事を始めてすぐに、ラナはやってきた。
なぜ呼ばれたのか分かっていないようで、妙に慌てている様子が相変わらず可愛らしい。
この家の使用人たちとも仲良くなっているようで安心した。
向かいの席をさして言う。
「先に食べ始めてしまい、申し訳ない。食べながらでいいから話を聞いてくれ」
「そういうわけにはいきません。妻がいるのですから、私などと同席などおかしいです。いや、いなかったとしてもおかしいです」
「分かった、食べるのは後でいいから一旦座れ」
ラナは、なぜという気持ちがありありと浮かんだ表情で、ためらいながら椅子に座った。
「さて、話がある。勘違いしているようだが、私はお前の、ラナの旦那だ。わかるか?」
「...はい?あなたが旦那様じゃないはずないじゃないですか。急にどうしたんです?」
「いや、わかったのならいいのだが。とりあえ料理を食べたらどうだ。冷めると味気なくなるだろう」
「温かい料理の美味しさには共感いたしますが、ここでというわけにはいきません。部屋で食べてもよろしいでしょうか」
「...分かった」
俺は気づいていなかった。
ラナが言っている旦那様が"主"を意味しているなどとは。
使用人たちに旦那様と呼ばれた場合はそれが主を意味しているとすぐにわかるが、ラナが言うだけでその言葉は夫を意味するものとして認識されてしまう。
しかもその時はちょうど人払いをしていたからその間違いを訂正してくれるものもおらず、俺の間違った認識のまま情報が伝達されてしまった。
だって仕方がないだろう。
ラナに断られたことのショックで、俺はラナに嫌われたのだと思ったし、そうじゃなかったとしてもラナが部屋に戻ろうとしたのは自分の勘違いに気づいたことに対しての恥ずかしさからのものだと思ってしまったのだ。
結果、気を使ったつもりで余計な行いをしてしまっただけだが。
それに、予定通り結婚式を行える、と安心感から気が緩んだというのもある。
例え今嫌われていたとしても、これから好きになってもらうことはできるだろう。
そう考えていたから違和感に気付けなかったのだ。
ラナの勘違いも相当だが、俺の勘違いも大概だ。
俺たちは未だに少しも双方の勘違いに気づけなかった。
明日が結婚式だというのに、問題ばかりのまま今日が終わった。




