支えも切り方も大切!
よければ評価をお願いいたします。
「次は爪を切るんだけど、まずは指の持ち方。お母様の小指をこんな感じで左手の親指・人差し指・中指の3本で持つと言うよりは包む感じかな。この爪のサイド、小指の外側に親指、内側に人差し指と中指を置くよ。この指たちはこうやって指がグラグラしないために支えるんだ」
私はそう言うと、爪のサイドではなく第一関節でホールドした時にどれだけ指が動くか、爪のサイドでホールドした時との比較を見せた。
「じゃあ、次はこの切る道具。これはネイルニッパーと言って爪を切る専用。このニッパーの持ち方は、刃がついている方を下に向けるんだけど、上からグリップを持つんじゃなくて、刃が付いている方のグリップを手のひらの上に置く。置いたら、親指側は、この親指側の母指球で安定させて、親指はこのニッパーが固定されている、この丸いネジの上に置いてね。反対側は人差し指から薬指までで支える。切る時はこの人差し指から中指の方を動かすイメージかな。薬指は添えるだけ。あとこの小指は、今日だとお母様の指に当てて、ズレないように支える役目があるよ」
持ち方をレクチャーしていると、イオは先ほど渡したネイルニッパーで持つ練習をしていた。
「イオ、持つ練習で使うのは良いけど、自分の爪を切っちゃダメだよ」
「え?どうしてですか?」
「そのネイルニッパーは、さっき私が使ったから、汚れているんだ。まぁそれ以外にも感染症予防のためにも、誰かが使ったネイルニッパーを他の人に使うのは絶対にしてはいけない。使う必要があるなら、必ず消毒しないと。あー、その消毒方法は後で教えるね」
その言葉に納得したのか、イオは大きく頷いた。
「それと切るときなんだけど、体はまっすぐにしてね。切るために体を横にしたりすると、軸がぶれて爪を切った時のバランスが悪くなるから」
お母様の小指を持って、ダメな姿勢を見せて、その後良い姿勢を見せた。
「じゃあ、切ります。昨日お母様に見ていただいた作図にも書きましたが、できれば5回で切ってください。」
私はそう言うと、お母様の右小指の爪にニッパーを当てた。
「切る時は、お母様の手はまっすぐじゃなくて、下に30度ぐらいの角度にします。できれば力を抜いてもらいたいんですが、苦手な人もいるので、その時々で角度の調整が必要です。そして、この刃全部で切ると、爪が折れたり、ひびが入る可能性もあるので、できれば全体の8割ぐらいで切るイメージです。1回目は長さを決めます。この指先と爪の長さを同じぐらいが良いと思います。職業的にもっと短い方が良い人もいると思うので、そこはあとで説明します。まずは貴族の女性という概念でお願いします。じゃあ、まず1回目を切ります」
そういって私は、指の長さと同じになるように先端をカットした。
「2回目と3回目は指の骨を確認して、指の付け根からまっすぐになるところが、一番長い場所なので、お母様だとここが一番長い場所になります。そこを確認したら、両方の爪の端を少しだけ斜めに切ります。……こんな感じですね」
私は左右をカットしたのを皆が見えるように見せた。
「最後に2回目と3回目を切った下のこの不自然な個所を4回目・5回目と切ります。4回目と5回目も角度をつけて切るんですが、全体に馴染むように切ります」
私はそういってカットをした。
「どうですか、お母様。ギザギザするとか、ありますか?」
お母様は私に質問されると、右小指を触って確かめていた。
「……いいえ、とてもなめらかです。こんなに、きれいに切ってもらったのは何年ぶりかしら!」
お母様は、すごく嬉しそうに頬を染めて喜んでくれた。その表情を見て、現役時代の懐かしい感情が込み上げてきた。
「本当は、爪を削って綺麗に整えるほうが良いんですが、作れるかどうかわからなかったので、今回はこれだけにしました」
「……爪を削る?どうやってするの?」
「えっと、こんな細長くて両方の先端が丸くなっていて、この平らな面がざらざらしているんです。……たとえば木を切った個所をきれいに処理するときに使うようなやつなんですけど……」
私は、リゲルに紙を貰って作図をした。エメリーボードやソフトファイル、シャイナーがあれば、もっときれいにできるのに!と思いながら、無理を言い続けることもできないので我慢した。
「これでしたら、作れると思いますよ」
「え?」
「先日、今建築している建物を見学した際に、そういったものを使っているのを見ました。もしかしたら、爪にも応用できるのではないでしょうか……」
シリウスが顎に手を添え、思い出しながら教えてくれた。
「あ、明日「いまは、この爪切りだけにしましょう」……え!?」
私が提案する前に、お母様に止められてしまった。
「確かに、爪をきれいにしてもらえることは、とてもうれしいです。ですが、この道具もまだ使えないのに、新しいものを次々と出してしまうのは、いただけません。一つ一つ確実に販売し収益を得た、その先に新たな道具を出しましょう。……大丈夫、こんなことを思いつく人はオシリス以外にいませんよ。だから慌ててはいけません」
お母様に諭され、私は確かにと納得し頷いた。
「じゃあ、イオが戻ってきてから作成に取り掛かってもいいですか?」
「えぇ、イオは再来週に学園に向かいます。学園までは往復1か月掛かりますし、授業も1週間ありますし、それまでには生産なども確保できるでしょう。それでしたら、大丈夫ですよ」
「やった!じゃあ、イオが帰ってくるまでに爪切りの2種類とあとは……」
「この手首を置くクッションと、ガラスの器を専用のものを作成するのはいかがでしょうか?」
「いいですね!……あ、可能だったらこの消毒をするときに一回一回ビンから垂らすんじゃなくて、こうやって押したら、消毒液がコットンに浸み込んでいく。っていうボトルも作れないかな?」
「あぁ、それは良いですね。この爪を切るだけではなく、怪我をした時の消毒する際にも使えますね」
「あの……、可能であれば、ネイルニッパーを収納するケースなどあれば嬉しいのですが……」
シリウスやリゲルが次々と提案してくれるのが嬉しくテンションが上がっていたら、イオも提案してくれた。
「確かに!ネイルニッパーは刃先がダメになると、研がなくてはなりません。それは毎回だと大変なのでケースがあれば、尚良しですね!」
「ケースなら、皮製品とかがいいかしら?」
「良いかもしれません。販売時にはセットでつけるのも良いですし、あとから好きな色や装飾を施すなども良いですね」
「これ全てをセットで販売するならば、収納用の鞄なども必要では?」
「あー、ほしい!それはいる!」
リゲルは次から次へと出て来るアイディアを紙にメモしている。
「では、このセットをイオが学園に行くまでに準備しましょう。リゲル、イオが学園に行く当日に商業ギルドに行き、この爪切りとネイルニッパー、その他の商品を登録してきて頂戴。決して外部に漏らさないように、情報の取り扱いには注意してね」
「承知いたしました。発明者であるオシリス様は法律上ギルドへは行けませんので、その日に、商業ギルドのギルド長と副ギルド長を連れて参ります」
「そうね。そうしましょう。……では、オシリス」
「は、はい」
「他の爪も切ってもらえるかしら?」
お母様は期待した表情で私を見たので、私は笑顔で頷き、残りの9本も全てカットした。
あ、親指の持ち方についても説明したら、イオが少し頭を抱えていたけど、私も頑張って練習してできるようになったんだから、イオもできるよ!という思いで励ました。
姿勢も大切だよ!




