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笑顔のために

「あ!あの、全部魔法でするってなると働ける人が限られてくるから、魔力が少ない人でも働ける職場にしたくて……」


「……この調整は魔法石使わないんっすよね?だったら、魔力がある程度あるやつじゃないと難しいっすよ」


「そうなんだ!だから、これを作れないかな?」


私はそういって、昨日描いた図を見せた。


「この風車が風を受けると、回るでしょ?その力を使って、海水の制御する板の開閉だったり、温かい風を送ったりとか……、できないかな?」


ナンムは私が描いた図を受け取ると、目を細めながら見つめていた。しばらくして、ナンムは大きく息を吐いた。


「いや、すげぇっすけど、まず聞いていいっすか?」


「え?う、うん!」


「坊ちゃんって何者なんすか?」


「え?」


ナンムの表情は私という存在を疑っているような表情だった。


「セレの作り方についてもっすけど、この風車を使った方法だって、そう簡単に思いつかないっすよ。聞いた話じゃ勉強もつい最近始めたばっかりなんすよね?普通の7歳がこんなことを思いつくわけないっすよ。いくらその瞳の色を持ってるからって知能まで他の人間より高いわけでもない。あぁ、あとあの建物もそうっすよね。あれも坊ちゃんが考えたんすよね?」


「えと、あの……」


私はどうしたらいいのか分からず、口ごもっているとカイヤが助けてくれた。


「ナンム、お前は我が領主の子を疑うというのか?」


「いや、だってよ、」


「だってよも、へってよもない! お坊ちゃまは先日、兄君との剣の稽古中に頭を強く打たれたそうじゃ。その時、意識を失っているとき、先代の領主であったお父上から『強くなりなさい』と言われたらしい、と母君が仰っておられた。その日からお坊ちゃまは自分で考えて行動するようにされておる。今回のセレもそうじゃが、その原動力のすべては領民を守るためじゃ。そのお気持ちが少しも理解できんと言うのか!?」


カイヤの気迫にびっくりしたのと、私の行動を理解してくれているという安心で、涙が出そうになるのを堪えて、私はナンムを見た。


「ナンムの言いたいことは、わかるよ」


「オシリスお坊ちゃま!」


「いいんだ、カイヤ。……私が年相応じゃないって思われるのも、理解してる。前の僕は、領民のことは今みたいに考えていなかったし、ただ毎日をなんとなく過ごしていた。……でも、今の私の原動力は皆が笑顔で暮らせることなんだ」


「坊ちゃん……」


「誰一人取りこぼさない。そのためには平等な教育が必要で……。でも、その教育をするにもお金が必要で……。我が領にはそれだけのお金は無くて……。お金を貯めるためにも、皆が笑顔で暮らせるためにも、僕は、……私は、考えたことを伝え続けたい。そして、作り上げたい!たとえ、私が変な人だというレッテルを張られたっていい!そんなレッテルは、みんなの笑顔を見ることができたら、なんとも思わないんだから!」


私が、微笑んでそう告げると、ナンムはバツが悪そうな顔をしながら、後頭部をかくと、最終的には大きなため息を吐いた。


「……あー、分かりました!……自分もこの領が豊かになるために色々作ってたんすけど、全然うまくいかなくて……」


「なんじゃ、お前さんオシリスお坊ちゃまに嫉妬しとるんか?」


「仕方なくないっすか?!自分もセレを作るとか、建物とか、いろいろ考えたんっすよ?!…… でも最終的にはあと一歩、勇気が出せなくて、結局何もできなかったんっすから……」


ナンムは悔しそうに俯きだんだん小さな声になっていった。


「じゃあ、一緒に作りましょう!」


「え?」


ナンムは驚いた顔をして私を見た。


「ナンムが今まで考えたものを教えてほしい!それを見て、私も何か思いつくかもしれない!それが実現できるって判断したら、すぐに母に報告しましょう!そのためにも、セレを作り上げるという実績を一緒に作ろう!そうしたら、考えたことが通りやすくなるかもしれない!」


私の提案に呆然としたナンムは、震えた声で聞いてきた。


「……いいんすか?……だって、自分、お坊ちゃんのこと、疑って……」


「自分の目の前に、得体のしれない知識を持った人がいれば、誰だってナンムと同じように疑うよ。それは、百も承知。でも2人、3人と同じことを目指して頑張れば、変な人には見られないでしょ?」


私はいたずらっ子の表情を浮かべてナンムを見ると、ナンムは吹き出し大きな声で笑いだした。


「なるほど!つまり坊ちゃんの知識をグループ作って、そのグループで隠れ蓑にするってことっすね!……いいじゃないっすか!その変なグループに俺を入れてください。俺だってこの領が大切なんです。この領を豊かにするためだったら、変な人扱いだって、全然気にならないっす!」


「お前さんはもともと変人じゃろうが」


「それとこれとは、話が違うっすよ!」


カイヤとナンムが言い合っているのを見つめながら、こんな私を受け入れてくれる2人に感謝しかなかった。


「じゃあ、セレ作りのために頑張ろう!」


「「ええ!/うっす!」」




ーー 後に、ナンムは平等で偉大な発明家として名が知れ渡り、後世まで語り継がれることになる。これは、その始まりである。


過去の自分との決別は、難しいよね

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