表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/102

白花に揺られて④~ルシアーゼ編 完~

———……

ルシアーゼ城、城門の前。

先に行っていてほしいとエルに言われたセレネは、城を出たところでルチアたちを見つけた。


「待った……?」


「ううん。まだエルとミスラも来てないし」


ルチアがいつもの優しい笑顔で首を振る横で、フ

ェルドが顔を出す。


「珍しいね。エルと一緒じゃないなんて」


「先に行っててって、言われた」


「ふーん……?」


セレネはあたりを見回し、少し離れたところで壁にもたれるリンゼを見つけて駆け寄った。


「リンゼ!」


伏せていた目を開けるリンゼは、顔だけを動かしてセレネを見た。


「なんだ」


「………ミスラの、こと…だけど」


「ああ。どうした」


「これから、ミスラはどうなる……?」


「………何故そんなことを聞く?」


「そ、れは………」


まだ自分の頭の中で話をまとめきれていない様子のセレネは、リンゼから視線を離した。


「…え、と……」


「あんたはどうしたい?」


「え……」


「あんたはこれから、自分の妹とどうなりたいんだ」


「わ、たしは……」


セレネはぐっと何かを堪えるように、強く拳を握った。

答えは既に、自分の中に。

そうだ。

きっと、ずっとこれが自分の願いだった。


「私は、一緒にいたいっ。前みたいに、ミスラの隣で、ずっと一緒に!!」


つかえていたものを一気にはき出して、必死になって訴えるセレネに、リンゼは口の端を上げた。


「それでいい」


「……っ…」


「安心しろ。今のところあんたの妹をどうこうしようとは考えていない」


それを聞いてほっと息をつくセレネを横目に、リンゼは続けた。


「だがバディを組ませることにした」


「……!」


「俺がいちから育てた逸材だ。あんたの妹を死んでも護れと命じてある」


そう言うリンゼは挑発的な笑みで、セレネを見下ろした。


「もしかしたら、今のあんたよりも強いかもな」


「………ミスラを護るのは、私だけでいい」


キッときつい視線で見上げるセレネに、リンゼが余裕ありげに笑った時


「あ、来たよ」


ミスラとエルがふたり並んで歩いてきた。

楽しそうに話す彼女たちの様子に、セレネは強ばっていた肩の力を抜いた。


「すみません、遅くなって」


「ミスラお姉さん!」


「……!ハンプティくん!ダンプティちゃんも!」


ミスラを追いかけるように城からハンプティとダンプティが走ってきた。


「お見送り、しようと思って」


「そっか。ありがとう」


ハンプティとミスラの横を通り過ぎて、ダンプティはフェルドの前で立ち止まりじっと彼を見上げた。


「………?どうしたのかな?」


「………」


するとダンプティはフェルドの手を取って、自分の頭に乗せた。


「……?……??」


混乱するフェルドをよそに、ダンプティは頭から伝わるフェルドの体温にへら、と笑った。


「また、きてね……?」


その瞬間、フェルドの心は鋭い矢に射抜かれたような衝撃を受けた。


「……ぅ、ん…。もちろん……」


それを聞いて満足したのか、ダンプティはハンプティの元に戻っていった。

遠い目でその様子を見送って、フェルドはよろめきながら壁に手をつき地を見つめた。


「幼女の飾らない笑顔(ナチュラルスマイル)、威力は抜群だ……」


「フェルド……?」


「ああ、ルチア。僕は新しい扉を見つけてしまったかもしれない……」


「は?」


「先程から何をしてますの」


呆れた顔を向けるエルに、フェルドは満面の笑みで駆け寄った。


「エルー!!」


「な、なんですの……」


引き気味のエルに、だがフェルドは構うことなくバッと両手を広げて。


「笑って!」


「は?」


「僕に笑っておくれ。さあっ!キミのその天使の微笑みを……!」


「気持ちが悪い!ですわっ!!」


「い゛っ」


エルはフェルドに豪快な平手打ちをかまして、セレネの元に脱兎した。

城からはヴァイスがラルダを連れて来た。

ヴァイスは木陰のリンゼを手招きして、彼にある包を渡した。


「ホアの好んでいた茶だ。土産に持っていってほしい」


「……彼女を殺した相手に渡すのか」


「貴殿のせいではない。素直に感謝してるのだよ。殺したのではなく、救済してくれたのだと、私は解釈しているよ」


「………」


「ほれ、受け取れ」


「……ありがとう」


「こちらこそ」


腑に落ちないと書いた顔を引きずって、リンゼは城門を出た。


「行くぞ」


「お世話になりました」


リンゼを先頭にセレネたちも城を発っていく。


「じゃあね、ハンプティくん、ダンプティちゃん」


『絶対、絶対また会おうね!』


「うん!」


「ばいばい」


「またね!」


たくさんの愛情をくれたこの温かい手を、少しでも長く繋いでいたいと願う。


離れていくにつれて名残惜しそうに眉を下げるハンプティとダンプティに、ミスラは笑顔を崩さないように努めた。


「また、ね」



幼い彼らの心の傷が、少しでも早く癒えることを願って、帰るのは皆と同じ家。



———……

ガラガラと、馬車の車輪が小石を踏みながら目的地、セイセラ王国チアーノを目指して走る。


何か、忘れているような………


そんな思いに駆られるミスラの向かい側、フェルドが自分の手を凝視して呟いた。


「あの子の耳、すっごくフワフワしてて癖になりそう……」


「…………………………あっ!!!!」



獣耳触らせてもらう約束忘れてた!!



□ ■ □



慌ただしい日々は終わり、再び国に安寧と、そして静けさが戻ってきた。

寂しさを抱えて、ふと動かしたハンプティの白い瞳に飛び込んできたのは


「わあぁっ!!見て!白いお花いっぱい咲いてる!!」


戦闘で荒れてしまった中庭を埋め尽くすように、真っ白な花が咲き誇っていた。


『白いお花畑だ!!』


「ほう。これは見事だ。だが一体いつ誰がこんなこと……」


首を傾げるヴァイスに、ハンプティは摘み取った花を差し出した。


「そんなの決まってるよ」


「ん?」


押し殺した思いを見抜き、受け止めてくれたのはひとりだけ。


「すごいな。やっぱりミスラお姉さんは、太陽のお姉さんだったんだ!!」


せめて、彼らの未来に今まで以上の幸せな笑顔が溢れるように———



今回のお話でルシアーゼ編は終わりです。

同時に毎日の更新もお休みし、次話の更新からは2、3日ごとに更新しようと考えております。


TWINS自体はまだ終わりません。

ここまで続けられたこと、読んでくださった方、とても嬉しいです。ありがとうございます!


これからも作者共々TWINSをよろしくおねがいします!


ではまた次回に……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ