銀色の男①
セイセラ王国チアーノ。
国際警察チアーノ支部の館にルシアーゼから帰った馬車が止まる。
ドアを開けたミスラは、約半日座りっぱなしで凝り固まった体を思い切り伸ばした。
「あーっ、やっと着いたぁ」
時刻は昼をすぎていた。
「ルシアーゼとチアーノはお隣さんとはいえ、流石に半日馬車に乗り続けるのはもう遠慮したいですわね……」
「右に、同じ……」
次いで出てきたエルとセレネも揃って体をほぐす。
御者台から降りたリンゼは、ヴァイスからの土産の包をルチアに渡して、館の門をくぐった。
「……ん?」
ミスラが深く息を吸いこんで空を仰ぐと、ひらひらと何かが舞い落ちてきた。
陽の光を反射して七色に輝くそれは
「……鳥の、羽根……?」
ミスラがその羽根の主を探そうと顔を上げた時、どこからか音が聞こえた。
ピィルルルルル———
あまり聞きなれない不思議な音色。
するとそれに誘われるようにして、ミスラの頭上を大きな影が通り過ぎた。
「……!」
その影は太陽を背に、大きな翼を広げて飛翔している。
「ピィィロロロロロロ」
鳥の鳴き声は先程聞こえた音に類似していて、それと会話をしているようだった。
ピィルルルルル———
またあの音が聞こえる。
それに気づいたセレネやエルたちも、音のする方、館の屋上に顔を向けた。
鳥の向かう先、そこにいたのは
「ピィッ」
片翼の笛を持つ、白銀の少年だった———
「……っ…」
ミスラはその光景に、一瞬で目を奪われた。
羽根先が色とりどりに輝く鷹、あるいは鷲のような猛禽類を思わせる大きな鳥を腕に止まらせ、ひとつにまとめた髪は風にたなびいて銀色に煌めく。
そうまるで……
まるでどこかの名画に描かれた人が、そのまま出てきたみたいだ……
その少年のいる空間が、ミスラにそんな錯覚を起こさせた。
誰なのだろう。そう思ったのは、ミスラだけではなかった。
「フウマ!」
その少年の名を口にしたのは、リンゼ。少年、フウマは屋上からリンゼを見つけるとくわえていた笛を口から離した。
「……!先生!」
『先生!?』
聞いたこともないリンゼの呼び名に、ルチアたちがフウマの言葉を繰り返す。だがリンゼはそれに反応を示さず、そしてフウマは鉄柵から身を乗り出した。
「先生今帰りですか?」
「ああ。丁度いい。皆にお前を紹介する。降りてこい」
「わかりましたー!」
フウマは片手を上げてそう言い鉄柵から離れた。
フウマの姿が見えなくなり、視線を彼が来るであろう館のドアに移した次の瞬間。
「ピィィロロロロロロ」
あの鳥の鳴き声と共に、消えたはずのフウマの影が屋上から飛び出した。
え………
『!?』
その場にいる全員の視線を一心に浴びて落ちていくフウマ。
すると
「……っ…!」
青々と茂っていた木の葉さえも枝から連れ去っていく突風が、ミスラの背を抜けてフウマへと向かった。
その風は空中のフウマの体を立て直しながら着地点に気圧のクッションを作り、彼をそこに誘っていく。
フウマの足が地に着くと、彼の体を守っていたその空気が気圧の差で弾け柔らかな風を吹かせた。
「ピィィ」
「……!」
不意に、あの白い鳥がミスラの横を過ぎていく。そこが自分の居場所だと言うように、鳥はフウマの肩に止まった。
「おかえりなさい、先生!」
状況の読み込めないミスラたちには見向きもしないフウマの両耳には、リンゼやルチアたちと同じチェーンピアスが揺れていた。
「ああ。調子はどうだ」
「問題ありません!」
「そうか。ならいい」
リンゼは振り返り、呆然とするミスラたちに言った。
「紹介する。今日からチアーノ支部に配属となったフウマだ。ミスラ」
「……!」
「あんたはこれから、こいつとバディを組め」
「え……」
バディ………?
こんばんは、蒼依です。
この話から新章に入ります。
新キャラフウマの登場で、やっとミスラの周りの主要人物が出揃いました!
これから彼がどう絡むのか、彼の特異能力とは一体……?
展開をお楽しみに!!
よろしくおねがいします!




