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四十八話

 赤羽がみんなを見回して、宣言した。学食には、手前にぼくと赤羽、奥に嘉島と深雪ちゃんが仲良く並んで座っていた。ちなみに現在昼休み、学食にはごった返すような生徒たちで溢れていた。といっても高校のソレとは趣きが違っていた、なにしろ高校の時と同じように16から18までの人間に限定されていない。上は浪人した人間から大学院生に出戻りやら勉強し直しだとかまで含めればそれこそ上限知らずで、時折りおじいちゃんとか見かけるくらいだった、なぜかおばあちゃんを見かけたことは無かったのだが。そして下は18から、とこの前まで思っていたのだが飛び級という例外が目の前に座っていることを考えれば侮れるものでもなかった。

「なんデスか? ひとの顔じろじろ見て?」

「いや……」

「言っときますケド、深雪が喜一郎以外の人間に傾くなんてことはあり得ないのでそれだけは御留意を」

「ハイ、肝に銘じときマス」

 まるで作られたようなキャラだが、実際多分半分以上はそういう趣もあるのだろう。なにしろ妬みも嫉みも逆恨みも人の何倍も受けてきた身らしい、それこそ留意してあげないと人間関係を築くことは難しいだろうと思う。

「まぁみんなだいぶ仲良くなってきたとこやけん、」

 どこがだよ、とぼくは笑顔で心中ツッコミを入れておく。でもどこがダメかと訊かれたら、それはきっとぼくの個人的な問題だけなのだろうから、黙っておくことを選択する。なにしろ――

「じゃあ、明日のミッションについて話すばい。理事長が大学にいるのは、話によると午前10時半前後から未定けど大体3時から4時の間くらいらしか。基本的には学長と経営について難しか話ばするらしかとけど、一時限だけ講義も受け持つからしかとさね。学長室に行くのは難しそうやっけん、おいたちが狙うとはその講義のあととかになると思う。ここまでで、なんか質問ある?」

 深雪ちゃんが首を振り、ぼくはほぉーと口を開け、嘉島は笑顔で頷いていた。みんな見事にバラバラだった、しかしそれに満足したように赤羽はニカッと笑い、

「んじゃ次いくばい。だけんおいたちは、みんなでその講義受けようと思う。それも出来るだけ、前の席で。んで終わったらすかさず四人で詰め寄る、誰かひとりでも捕まえれば、あとは囲んで事情聞く。どう、完璧じゃなか?」

 それに深雪ちゃんは黙し、ぼくは腕を組み、嘉島は笑顔で手を叩いていた。

 無難、とは言いづらかった。が、でも妥当な作戦な気もした。込み入った話だから内容は別の場所で、とか。いずれにせよ接触できないとなにも始まらないし。

「うん、それでいいんじゃないかな?」

「申し訳ないですけど」

 ほぼぼくの発言と時を違えず、深雪ちゃんが口を挟んだ。ぼくは口をつぐみ、それを深雪ちゃんは数秒置いてから、

「深雪はどうしても外せない講義があるので、そのMISSIONには参加できません」

「おー、英語の発音抜群やねー、さっすが天才少女!」

「……馬鹿にしてますか?」

「別に?」

 どうも赤羽と深雪ちゃんの組み合わせは相性が悪いようだった。というか赤羽はなにげに深雪ちゃんを気に入ってるんじゃないかと思う、ちょっかい掛けたくなる男の子心理。所詮憶測だが。

「……嘉島は?」

 ぼくの問いかけに、嘉島は笑顔で頷いた。深雪ちゃんの顔色をうかがうと、表面上は変化がなかった。とりあえずは、良しとしていると見ていいか。

「ンじゃ上月、いくばい」

 ニカッ、と赤羽は笑った。

 ぼくはそれに無言で、頷いた。疑問はとりあえず、胸の奥に仕舞っておくことにした。みながぼくのことを考えての行動なのか、拒絶しての行動なのか、ぼくの目はどうやら曇りきっているようで、冷静に判断できなかった。

 だから周囲に、任せてみようと思った。


 ぼくは正直、揺らいでいた。

 当日の朝から、ぼくは何回時計を見たのか覚えていなかった。改めて思い返してみる。最初に起きたのは5時22分、二度寝して次が6時40分、次が7時5分、7時30分、起床、朝シャン、8時、朝食、8時半、外出、8時47分、9時、一時限目開始、9時19分、9時33分、9時52分、10時8分、10時30分終了、10時41分、10時45分、二時限開始、10時58分、11時9分、11時29分、11時40分、11時56分、12時15分、昼休み、学食で集まり最後のミーティング、12時38分、12時47分、12時56分、13時1分、

「じゃあ前の席取る為に、早めに教室いっとこうぜ」

 赤羽の言葉に嘉島は頷き、ぼくは無言で、あとに続いた。十五分前、普通のソレなら確かに早めだが、果たして――

「おわっ!? なんやこいバリひとおんな!」

 講堂のドアを開けて、赤羽は目を剥いていた。全体の3,4割も埋まれば盛況といえる大学の講義で、開始前にも関わらず6割は席が埋まっていた。前の方の席を見た。そこは普段はガラガラなのだが、今回既にパッと見た感じですら9割というかつまりはほとんど埋まっていた。大人気だ、さすがは理事長の講義だった。面目躍如といった趣だろうか、しかしこれでは作戦が――

「シャ――――――――ッ!!」


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