第二話
少し経ったある休日、僕はあの反面教師のお陰か剣の才能があり、今日は5級への昇級試験がある、5級は普通あと4、5年後に受けるぐらいの試験らしく、神童と呼ばれている。
まだ寝足りなく、怠い気持ちを我慢して、梯子を下ってみると父におはようとだけ声をかける。
母とベルは出かけている様だ。
今日は進級試験があるため、褒められるのを期待して浮かれていた。
「おはよう」とだけ背中を向けて返して、父は褒めてくれなかった。
まだ子供だからか、すごいねなどと言って欲しい気持ちがあった。父は自分より出来の悪い子に失望しているのかもしれない。
そうやって自分が心底残念に思っている事を他人事のようにした。
よくよく考えてみれば父は元神童などではなく、英雄なのだから。
みんな父と比較して、褒めてくれない。
天才で当たり前とか、できて当然とか、これは父の得意技とか、みんなの言葉が日に日にプレッシャーに感じてくる。
やっぱり褒めて欲しくなり、目を擦りながら興味なさそうに、
「この年で五級って凄いの?」と答えのわかりきった質問を父に問う。
「凄いことだ、けどな受からなきゃ意味がないんだ、だから全力でやってこい」
凄く真剣な表情の父を見た、こんなに真剣なのを見たのは、僕が昔死にかけた時ぐらいか。
パパッと身支度をして緊張を和らげるために父に会場まで送ってもらった。
送ってもらっている途中に
「父さん、試験見ててもいいか?」と突然口にした。
「嫌だ」キッパリと断った
父さんに失敗しているところを見せたくない、もっと失望させたくない。
「なんで?」父さんは豆鉄砲をくらったように困った顔で聞いてきた。
「恥ずかしいから」僕は咄嗟に嘘をついてしまった。
ちょうど会場の正門についた。
「分かった、頑張って来いよ」悲しそうな顔で父は見送った。
思っていたのとは裏腹にあっさりと引いたため、自分で断っておきながら、少し寂しくなった。
会場に入ると受験者は自分以外が自分の頭一個〜二個分の身長差があった。
試験は時間で区切られていて、6〜4級までの試験だった。
試験では基本稽、課題形、組み手で判定される。
武術は考えて攻撃するのではなく無意識下で出るまで刷り込ませるのが基本だと、父に言われたのを思い出した。
ゆっくりと時間が過ぎていき、時間が経つにつれて緊張が高まっていく。
名前が呼ばれ木刀を持ったあたりから覚えていない。
ただ組み手で惨敗したのは覚えている。
観客たちのため息を聞いてとても、とても、僕には言葉にはできないやるせない気持ちになった。
心底思った、た父さんがいなくてよかったと。
「大丈夫?何かあったの?」と泣きそうな僕を心配して同い年ぐらいの白い髪美しい紫の瞳の子が寄ってきた。
「名前は?」と手を差し出して聞いてきた。
「カイ」手を取って答えた。
「君の名前は?」しっかりと目を見て言った。
「***」ニコりと笑って答えてくれた。
何故か名前は覚えていない。
「じゃあね」と颯爽とどこかへ行ってしまった。
その日よりずっと前から神童というレッテルは僕を守ってもいたが、傷付けてもいた。
その日、神童のレッテルが剥がれた。
父と比較されずに済んだのを少し嬉しく思った。
父に帰り道に報告した、試験に受からなかった事と謝罪と共に。
父は答えた、
「カイ、お前はよくやった、五個も歳上の子と組み手なんて、逃げずによく戦った」
僕は自分に静かに憤慨した、父は最初から自分と比較せずに僕を見てくれていたのに気づかなかったと。
「次の試験こそ受かるぞ、家で乗馬と組み手の練習だ!」
いつものテンションで父が言った、気を使ってくれたのだろう。
「うん、次こそ受かってみせる」僕は固く決意した、父を失望させない為ではなく自分の未来を掴むため、父の様に国のためになることをしようと。
この後2年間毎日死ぬほどボコボコにされたのはまた別の話だった。
読んでくださりありがとうございます!
前話とはだいぶテイストを違う感じにしてみました。
なるべく毎日更新をしていく所存です…
来週からテスト週間になるため木曜日まで何日かは投稿
できないかもしれません…
またブックマーク、コメント、評価、リアクションをぜひお願いします。
レターが来たら1週間以内には返しますので良かったら送ってください。




