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そうこうしているうちに、わたしは15歳になった。あっという間の5年間。家令とお金儲け頑張った。
ドレスと装飾品のブティックも開店させて、他の貴族の方からも古いドレスを買い取り、それをフューラと他2名のお針子ミミとメグとたくさんリフォームし、護衛のユーリも雇って、当初よりも繁盛している。フューラは19歳、そろそろ結婚してもおかしくない年齢だけど、仕事が楽しいので、このままで良いと言っている。時々ユーリと仲の良いやり取りをしているので、わたしたちは遠くで見守っているがどうなんだろう。
やりたいことをするのが一番だから、そこはお店の経営も任せている。
トゥレーも装飾品作りに励み、それを凄く気に入った、可愛い物大好きなこの街で5指に入る商会の次女さんと結婚することになった。二人で可愛いを極めるんだそうだ。良かった。
トゥレーの装飾品を作る腕もセンスもいいから、お店で働くことは続けると聞いている。次女さんのお父様からのプレゼントで家をいただいたそうで、なんだかんだ上手くいっているようだ。
トゥヴォはみんなに見守られながらも、お隣の娘さんと無事に結婚し、想像していたとおり宿屋をリフォームした家に住んでいる。うちの畑をメインに時々お隣さんにも手伝いに行っている。結婚した娘さんも良い子で、一緒に畑仕事をしてくれている。
郊外の家の周りは広々とした畑が広がっていて、まさしくスローライフっていうイメージにはなったけど、畑仕事は雨の日だけお休みで世話は結構重労働。
スローライフではないんだけど、わたしは時々手伝うだけだからトゥヴォには感謝している。農家として元宿屋とそのまわりの土地はトゥヴォのものとして登録している。
最初は遠慮したトゥヴォだったけど、実際働いているのは彼だし、わたしは美味しい野菜食べさせてもらうだけで満足だよ。
いつもありがとう。
エットは、そうエットについては、しばらくは家令に憧れていたけど、家令は分別のある大人の男性だ。そうそう若い子に簡単に靡いたりしない。
しっかり諭してあげて、エットも自分が傷つくのが怖くて留まっていたことに気づいたのか、少しずつ外へ目を向けるようになり、今いい感じの人がいるらしい。
もう行き遅れだから結婚なんてしないって言っていたんだけど、フェムの冒険者の知り合いで、怪我をして冒険できなくなった人がいて、フェムと一緒に慰めてあげているうちに、この人の役にたちたいと思い始めているそうだ。
冒険者は晩婚だし、いいんじゃないだろうか。
トゥヴォとトゥレーが結婚して家を出て部屋が1個空いたから、とりあえずエットとその冒険者さんはそこで一緒に暮らす予定。
怪我をした冒険者でも、畑仕事はできるから、トゥヴォを手伝うらしい。
んー。新しい家をプレゼントしてもいいんだけどね。エットに遠慮される。同じ家に新婚さんがいるのもなんだかなと思うんだけどね。
フェムもセクスもシューも歓迎しているからいいか。
フェムも18歳になった。同じ冒険者仲間でいい感じの女の子がいるらしい。ただし、その子の方がレベルが上で強いらしいので、なかなか告白できないとのこと。
もしその子と上手くいったら家を出ると言っている。ちなみにフェムはポーションを初級だけはしっかり作り続けている。自分と一緒のチームメンバーに使っているらしい。重宝しているって言っていた。わたしも定期的にポーションを作っては、師匠のお店に納品している。
討伐を中心とした冒険が楽しいから、フェムには冒険者があっているんだろう。
セクスは13歳、セクスも初級ポーションが作れるようになった。フェムが作れるのに、自分が作れないのはおかしいと10歳になって冒険者登録できるようになったら、薬草採取から初めて師匠のところに通って作れるようになったんだよね。意外と頑張り屋さんだった。今は畑仕事とドライフルーツとポーションで稼いでいるところ。
今後中級ポーション、解毒ポーション等いろんなポーションを作りたいと息巻いている。
小さい頃はドラゴンを退治したいって言っていたけど、今はポーション作る方が楽しいみたいだ。
中級ポーションや、解毒ポーションが出来るようになったらフェムに売るんだって言っている。
師匠のところに一緒に顔を出すこともある。師匠は若いままだ。師匠も神様の加護持ちかもしれない。謎だ。セクスは師匠と相性がいいのか楽しみながら教えてもらっている。
楽しいことは良きかな。
シューはマナーをきっちり身につけて、メイドの仕事をするんだと張り切っている。
まだ11歳だから外に働きにいけないが、どんなところでも働けるように、エットに家事一般を教えてもらっているところ。
家令にもしっかりアピールしてシューが働けるような貴族の家を紹介してもらうのだと息巻いている。何を狙っているのかわからないけど、騎士様がいるところへ少しでも近くに行きたいということらしい。
美味しいお茶を入れられるようにと努力する姿は鬼気迫るものだけど、目指す目標があるのはいいことだと思う。
わたしといえば、マナーもしっかり教えていただいたし、立派な淑女になれたと思う。まぁ形だけかもしれないけど、擬態は出来るようになった。この5年の間に本当のお兄様とお姉様にも会うことができた。
実は何度も会ううちに、わたしはまだ公爵家に籍があり、一緒に住まないかと打診もされた。
お兄様は爵位を継ぎ、その後結婚され、今はお子さんもいる。甥っ子になるんだけど、とても可愛い。めちゃくちゃ可愛い。甥っ子会いたさに何度も足を運んだ気もする。
お姉様はお母様の件があったのに関わらず、お姉様を溺愛する婚約者さんと結婚された。同じ公爵家で幼馴染だと聞いている。いいねー。
お姉様には初めて会った時には何も言わずに抱きしめてくださった。温かい体温に今世初の肉親の温かさを初めて知った。
結婚されてからもお手紙を下さったり連絡を頻繁にしてくださる。愛情の深い人だと思う。もし、離れに軟禁されていなかったら、普通の姉妹として育つことができたら、溺愛されていたかもしれない。お揃いのペンダントだと頂いたものは今も胸にあり、いつもその部分が温かい気がする。
公爵家に戻る話は、お兄様に面倒をおかけするのはなぁと思いつつ、お兄様には悪い感情を持っていなかったこと、公爵家の離れのものをいただいたおかげで、5年間楽しく暮らせたこと、生きていることを知っていても、見守ってくれたこと、病弱設定でも籍が公爵家に残っていること、などを踏まえて、どこかのタイミングで公爵家に戻ることを考えた。
お父様は領地から出ずスライムの魔石の件で今もなお馬車馬のように働いているようで、利益の一部はこっちに流れてきている。会わなければいい。
お母様はあれからもずっと引きこもっているようだ。一度も外に出ていない。どれだけ黒目黒髪が嫌なのか。愚痴や文句はまだ言っていたみたいだけど、最近大人しいと聞いた。元気ではあるようだ。こっちも会わなければ何していても構わない。
2人を領地から出すことはないとお兄様が約束してくれた。
そして、15歳の今、公爵家に家令と一緒に戻って、学園に通うことになった。お貴族様は学園には絶対行かないといけないらしい。
公爵家に籍を置いている手前、わたしが行かないとお兄様にペナルティがあるのは、ちょっと嫌だったのもあって、淑女の擬態をすることにした。
家令は爵位を継いで大変だったお兄様を時々手伝っていたようで、家令が公爵家に戻ることはお兄様にとっても大賛成だったようだ。
「トマスが戻ってきてくれて本当に嬉しいよ。」
「お兄様、でも、おじいちゃんはわたしのものですからね!」
「わかっているよ。優先順位はね。こっちは無茶なことを頼まないから大丈夫だよ。ほんといてくれるだけで助かるんだよ。」
お兄様が、くすくすと笑う。家令はもう家令の役職じゃないんだけど、公爵家に戻ってわたしの専属執事という肩書になっている。15歳になったというのに、まだ手放せない。もうお兄様もお姉様も本物の家族は増えたというのに。
「大丈夫ですよ。わたくしはいつまでもお嬢様の御傍に控えさせていただきますので。」
その言葉を聞いて安心する。情緒の成長が遅いのは仕方がないよね。お兄様が頭をなでてくれる。少し和む。もう一人じゃないんだ。わかっているんだけどね。
10年間軟禁生活で本だけ読んできて、その後家出して5年間薬草採取してポーション作れるようになった。また、エットたちとも出会い、好きなことだけしてきて楽しかった。
だけど、この世界のことをまだまだ知らないことがある。
神様の加護は一通りいただけたけど、それがどう影響するのかとか、他の神様の呪いがあるかどうかも知らない。魔法の使い方もポーション作るのと、スライムの魔石に穴を開けるのに使うぐらいで他使っていない。
楽して生活してきたから、知識にも偏りがある。自分が何者になりたいのかも迷走している気がしているから、いったんリセットして学園に行くのは有りなんだよね。
古本屋巡りしてボロボロの本を修復しながら読んでいたけど、もっと体系的に学びたくなったとも言う。
あと、自分のことで言い忘れていたことは、髪が伸びた、美の女神様のところへ頻繁に顔出ししたせいもあるだろう。つやつやの背中まである赤味が強い金髪に落ち着いた。目は赤茶なのは変らない、顔は猫目の美少女だ。ふふふ。悪役令嬢になれそうなぐらいの美少女だ。まぁ小さい頃からの婚約者なんていないし、悪役令嬢するほど暇じゃないけどね。
エットたちと別れをしっかり惜しんできてから、公爵家に戻ってきた。シューに最後まで服を掴まれ離してもらえなかった。
郊外の家のわたしの部屋はそのままに置いておくから、また時々顔を出すからと約束してやっと納得してくれた。
5年間一緒に暮らしたものね。上のお兄さんが結婚したり、フェムやフューラが忙しかったりで少し寂しくなってきたのかもしれない。
シューにわたしが公爵家に戻ったら、騎士様の近くで働ける場所を紹介できるかもしれないよと言うと、一気に笑顔でいってらっしゃいとお見送りしてくれた。
現金なのは末っ子あるあるだね。
笑ってお別れ出来て良かった。みんなまたね。




