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これをきっかけにフェムはわたしと一緒にいることがぐんと減った。師匠のところへ一緒に行かなくて済むようになったしね。フェムは討伐を中心にレベル上げに頑張っている。
わたしはわたしで、薬草採取しなくても、畑で薬草が増えてきたから、そこからの薬草でポーション作って、師匠に納品して、その後でブティック作る市場調査を始めた。
この世界の服はオーダーメードか、庶民は古着が多い。その中間の出来合いの服っていうのが非常に少ない。お貴族様は人と同じ服を着るというのが無いのだろうし、庶民には布は高いので、古着が多い。
家令とわたしが狙っていた層は、裕福な庶民と下級貴族だ。高位貴族のドレスをそのままお古で着るのは難しいが、リフォームしてあり、一見中古だとわからなければ買おうっていうことになる。
公爵夫人のドレスが40万ノンナするって聞いた時には驚いたけど、だって、前世価格400万円だよ。
貴族の子ども服はだいたい前世価格で20万円から100万円。桁が違うよね。わたしたちがブティックで売ろうとしているのは、中古だけど、質のいいものをリフォームしたもの。
中古といっても、わたしのインベントリに一度収納されれば新品みたいになるんだけどね。ただ、古い子ども服だから、新品にしても、どことなく古く感じられるから、そこをフューラとトゥレーと相談して、今風に作り直している。
それを、前世価格10万円。こっちでいけば、1万ノンナで売ろうとしている。
家令の伝手で実際売っているのもそれぐらいの価格だ。
元値はタダだ。でも、これ以上安くすると相場が崩れる。
まぁリフォームも丁寧に仕上げていて手がかかっているしね。これぐらいは儲けさせていただこう。
ブティックを開店させるなら、リフォームしたドレスを10着ぐらい飾っておきたい。装飾品の小物もそれぐらいは置いておきたいし、スライムの魔石のアクセサリーも飾っておきたい。やることは結構あるね。
フューラだけでリフォーム間に合うだろうか。
相談だね。
「フューラ、どう思う?ブティックを開店させるための在庫がいるけど、フューラだけでできそう?他にお針子を雇う?」
「ドレス大好きだから自分だけでやりたい気持ちはあるけれど、お店を開いたら接遇もしないといけないなら、時間が足りなくなりそう。だからといって、手を抜きたくない。お針子さんいるかな。わたしと同じぐらいの年齢でやる気があって仕事が丁寧な人だといいな。」
「そうだね。実際フューラとトゥレーが店を切り盛りすることになれば、フューラは慣れるまで作る方に専念できなくなるかもしれないものね。それともお針子ではなく売り子を探す?」
「んーーーん。お客さんと話がしたいです。どんな風なイメージを持っておられるのか、どんなドレスが好きなのか、聞いてみたいです。それに自分の作ったドレスを他の人が売るのはちょっと違う気がして・・・。」
「そうか、フューラは芸術系かと思ったけど、職人さんなんだね。より良いものが作りたいっていうわけか。じゃフューラのイメージを形にすることができる、お針子さんを雇おうか。おじいちゃん、お針子さんってどうやって雇えばいいの?」
「サンディ様、ギルドで紹介してもらうか、伝手を辿るかですね。」
「おじいちゃん、どっちが良いと思う?」
「安心なのは伝手ですね。ただし、こちらが欲しいお針子さんがすぐに見つかるとは限りません。それでも良ければ探しておきますが。」
「うん、お針子さんに来てもらうのは、新しいブティック出来てからでいいんだけど、お店の上に住んでもらおうかと思って。1階がお店で2階を作業場で3階が従業員の住むところかな。元は宿屋だった場所だから、そこそこの広さがあるから大丈夫だと思うけど、人手のこともあるし、扱っている商品や買い手のことを考えると、あんまり大きなお店にしなくていいかなと。」
「承知いたしました。魔法の使える建築工房でしたら、作業も早くできるかと思います。建築費用は、マジックアイテム等の修理代からでよろしいですか?」
「それで賄えるのであればそれでよろしく。足りないなら、ポーションたくさん作って師匠のところに納品しよう!」
「サンディ様が離れの中身を全部持ち出せているのであれば、壺や絵画等古いものもあったかと思いますが、あれも売れると思いますよ。新品同様になっているでしょうし。」
「あー。そういえばあった。なんか古いものがいろいろ。壺も大きかったから、いつか売ろうって思っていたものがあるよ。」
「サンディ様のインベントリは容量が大きいので邪魔にはならないのかもしれませんが、必要なければお売りしますので、サンディ様が使わないと思ったものは、お出しください。」
「はーい。要らない物ね。ああ、これ。なんか金ぴかごてごてで、誰の趣味だ!変なのって思ったやつがあった。公爵家のものって、ほとんどのものは品がいいのに、どこかの世代で趣味が悪い人がいたらしいね。お金使いました。物凄く高い物ですって主張しているような置物とか。まぁ趣味が悪いから離れの物置場に入れられていたんだろうけど。」
ぷぷぷって本当笑っちゃいたくなるぐらい趣味悪いんだよ。
「それでございますか。かなり昔のご先祖様でございますね。わたくしも直接お会いしたことがございませんが、一時このお方のせいで、公爵家の財産が目減りしたと聞いております。と、申しましても、豊かな領地と鉱山をいくつか持ち、領地には港まであり公爵家の財産が無くなることはないので助かったとお聞きしています。」
「そうか、公爵家って、港持っているんだ。海鮮!いつか食べに行きたい。でも、領地に両親がいるんだよね。顔合わすのは嫌だなぁ。まぁいいや。とりあえず趣味の悪い置物や花瓶売れるなら売っちゃおう!」
「承知いたしました。そのサンディ様が、趣味が悪いと思われるものをお出し下さい。そういういかにもっていうのが欲しい方もやはりいらっしゃるので、公爵家から出たことがわからないようにお売りしてきます。」
家令に言われて、趣味の悪そうなものをインベントリから次々と出して見る。
家令は趣味の悪い置物を見て、笑っている。本当趣味終るものね。きんきらきんで、ごてごてで、いかにもお金持ってます!っていう感じのもの。
本当のお金持ちはもう少し品があるよ。どれだけ立派で凄い公爵家でも、やっぱり変な人が出てくる時はあるんだな。あ、わたしのお父様もそうか。仕事はできたらしいけど、事なかれ主義のぼんぼんだった。お母様にお願いされたといえでも、大事な娘を呪われているんじゃないかっていう理由だけで、放置するほどの情弱だ。何故呪われたのか。どうしたら呪いが解けるのか、本当に呪いなのか?って何故調べなかった。
よくあれば公爵家を継いでいたね。
もう関係ないけど、それにしても領地に港があるんだよね。今は無理でも、いつかお兄様に頼んでみよう。
趣味の悪い物は結構なお値段で売れたみたいなので、ブティックの開業の費用は工面できた。買う人いるんだねー。次は内装の相談。
フューラとトゥレーに聞いてみる。
「どんな内装を希望している?」
「品が良くて可愛くて綺麗なものかな。」
「夢が詰まっている感じですね。」
「お店のあちこちに、小さな小鳥とか装飾していいですか?」
「あー。そういうものなら、わたしは扉に花束の模様をつけて欲しいです。」
「淡いピンクのドレスが映えるように、テーブルは濃い目の赤茶がいいです。」
「そうです。子ども用は淡い色のドレスが多いので、それが綺麗に見える部屋がいいですね。」
「お高いけど、ガラスや鏡が使えると嬉しいです。」
「半分がドレス売り場で、残りが装飾品や小物など売るコーナーが欲しいです。」
フューラとトゥレーが夢いっぱいに語るのを、必死で書き留め、予算との兼ね合いで絶対必要なもの、あったらいいなものと優先順位をつけて話を進めていく。
なんかよさげなお店ができそうだ。
冬の夜長に3人でお店の話をする。その隣でエットたちが本を読み、トゥヴォが刃物の手入れをする。フェムはセクスにポーションの作り方を教え、シューはトゥレーが作った綺麗な装飾品を見ている。その様子を家令がニコニコ見ていた。
暖炉はないけど魔石があれば、この世界部屋が暖かくなる仕組みがある。豪農だったこの家はその当時の最新の設備が備わっていたみたいなので、今も暖かだ。
なんでもないような時が幸せだと思う。この小さな幸せが積み重なっていって、満ち足りた時間を過ごせている。本当日々感謝。




