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神様の目印  作者: ヒロ
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その頃家令は


サンディ様の了解をいただき、今日は辞してから初めて公爵家に向かった。

若旦那様とリリアーノお嬢様には、下の妹様が生きていること。黒目黒髪は解除されていること。妹様がインベントリのスキルをお持ちで、離れの備品等すべて持ち帰ってしまったこと。その離れのドレスを加工して、今後売っていきたいことをお話しさせていただいた。


「そうか、やっぱりあの子は生きていたんだな。良かった・・・。」


「トマス、あの子とは会えるかしら。」


「今は新しい暮らしを楽しんでおられます。今回ご相談させていただきました、街中でドレスと装飾品の小物を売るブティックを公爵家の了解が得られましたら開店させようと思っているお話でございますが、開店すれば主人となるサンディ様、あ、サンディ様のお名前はご自分でつけられました。お嬢様はご自分のお名前をご存じありませんでしたから。

今はサンディ様ですが、そのサンディ様もお店に出られると思いますので、その時お会いできると思います。サンディ様さえ良ければ、もう少しお早く会えるようにお話もしてみますが。」


「そうね。あの子は一人で生きていく覚悟を持って、家出したのですものね。お兄様のこともわたくしのこともたぶん知らないだろうし。最初は遠くからで良いわ。驚かせてしまうのも可愛そうだし。あの子が元気で生きているだけで満足だわ。」


「ああ、公爵家の昔のドレスを加工して売るのはいいよ。どうせ誰も着ることもないようなものばかり離れに押し込んでいたんだろうし。中古のドレスぐらいで公爵家は揺るがないよ。今後も離れにあったものは好きに売るといいよ。

あの子がいた10年間ほとんど公爵家として構ってあげることができなかったからね。本当は今からでも一緒に暮らしたいんだけど、ここには良い思い出がなさそうだしね。わたしも公爵家を継いだばかりで余裕がないので、あの子にちゃんと向き合う時間を取れそうにもないから、お互い落ち着いたらまた会える機会を作って欲しい。何かあれば公爵家の名を出してもいいよ。トマスのことは信用しているからね。」


「若旦那様承知いたしました。ドレスと装飾品の小物を売るブティックが完成いたしましたら、また、お声掛けさせていただきます。公爵家のお名前は本当にどうしようもなく困った時に出させていただきます。」


「今日は良き知らせをありがとう。」


公爵家の奥様が黒目黒髪になって、公爵家を辞してサンディ様と暮らすようになってから濃密な時間を過ごさせていただいている。誰からも学んでいないはずなのに、サンディ様はお金の儲け方、自力で暮らして行く方法、生きていく術をご存じだった。

持っているスキルも鑑定とインベントリというだけなら、よくあるものだが、そのインベントリの中に収納したものが、故障や欠けていたものまでも、新品同様になって出てくることは、契約を結んだもの以外にはまだ口外できていない。


今回公爵家でもその事実をお話することは思案したが、サンディ様が健やかにお育ちされるためにも、後ろ盾は必要だと思い、インベントリの秘密も報告させていただいたところ、両名様とも少し驚かれたが、若旦那様が、何代か前に同じようなスキルを持ったものがいた。それで公爵家の財産を大いに増やしたという話をお聞かせ下さった。


黒目黒髪を解除する方法も奥様が実行されるかどうかわからないが、知っているのに黙っておくわけにはいかなかったので、お伝えしたところ、若旦那様は大いに笑われ、リリアーナお嬢様は困惑されておられた。


奥様は絶対実行されない。美の女神様の教会ですべての髪を剃り落とすなんてことは絶対しない。と断言された。


奥様はこの先ずっと領地の離れに隔離されるだろう。誰とも会うこともなく、おそばの侍女たちにも呪いが移るかもしれないと怯えられるだろう。誰もちゃんと奥様を見てくれる人がいなくなって、初めてあの人は自分が隔離し無視したサンディ様を思い出されるだろうか。いや、あの人は自分のことばかりできっと嘆くことしかしないだろう。


「黒目黒髪の解除方法は母上には伝えないつもりだ。伝えても実行はできないだろうし。髪を剃るなんて、死んだ方がましって叫ばれるだろう。もういいんだ。母上があの子にしたことを考えれば、母上は最低10年は閉じこもっていて欲しい。」


「あら、お兄様、お母様に教えて差し上げればよろしいのに。死んだ方がましって思うのもよろしいでしょう。あの子の苦しみと孤独を同じだけ味わって欲しいわ。」


「そうだね。母上に絶望を味わっていただくのも一興か。もう少し考えるよ。トマス、あの子のインベントリで今後いろいろ大事になってきたら、すべて公爵家の許可を得ていると出してくれていいから。今後あの子のすることはすべてわたしが守ろう。」


「わたくしも協力するわ。あの子が笑って過ごせるように。」


「若旦那様とリリアーナ様のお二人の気持ちはサンディ様にお伝えいたします。きっと喜ばれると思います。」


「こちらこそ、トマスがあの子と一緒にいてくれて安心している。ありがとう。」


「勿体ないお言葉でございます。わたくし自身サンディ様との生活は充実しています。」


「本当、良かったわ。トマス困ったことがあったら、すぐに教えてね。今度こそあの子を守りたいわ。」


「若旦那様とリリアーナ様、ご報告させていただくことが、もう1件ございました。これを見て下さい。」


うっかりしていたと家令らしくないミスに、何事かと二人が家令の手の上のものを見てみる。


「まぁ。綺麗。これは何の宝石なのかしら。とても素敵ね。」


「ああ、水色に透き通っていて、涼やかで良いね。それにこれは髪飾りかい。ご婦人より若い女性向きだね。」


「その通りでございます。これはサンディ様の発見でございます。」


「発見?この宝石をあの子が発掘でもしたの?」


「いえ、これはスライムの魔石でございます。それをサンディ様がアクセサリーに加工したらどうかとご提案され、サンディ様が雇われているトゥレーというものが、サンディ様の望むイメージでこれを作りました。」


「え?これ魔石なのか?魔石は堅くて加工ができないのではないか?」


「こんな綺麗な魔石があるの?」


「スライムの魔石は他の魔物の魔石より少し柔らかいのです。魔力を細くして集中力でえいっ!と通すと穴が開くのでございます。サンディ様は綺麗だから素敵に加工がしたいと思いついて実行されたわけでございます。」


「ははは。うちの妹は凄いね。これは革命だよ。」


「スライムの魔石は現在1ノンナの価格でもって、ギルドで買い取られています。売値は3ノンナです。この髪飾りは公爵家のドレスをリフォームした時に出たハギレとスライムの魔石5個、糸と髪止めの金具で材料費は30ノンナです。」


「え、嘘。材料費がたったの30ノンナだなんて、この髪飾りはその10倍300ノンナでも売れるわよ。」


「そうです。価値が無いものに価値を見出す。それがサンディ様の錬金術ですね。」


「スライムの魔石はうちで3,000個ほど買い取りました。穴あけはサンディ様が雇っているエット、トゥレー、フューラといった庶民でも十分できました。トゥレーは自分で穴を開けて、飾りも自分で作っています。これを今度開業するブティックで売る予定でございます。」


「まぁ!素敵ね。絶対売れるわ。」


「トマス、今、これをトマスがわたしに報告するということは、このスライムの魔石の事業を公爵家で受けないかということだな。わかった。これはあの子だけだと手が余るな。大きな事業になる。」


「お兄様!」


「さすがですね。若旦那様。サンディ様は綺麗だから売れると嬉しいなって思っていらっしゃいますが、魔石でアクセサリーが出来るという発想が今まで無いものでございました。後発がどれほど出てきて、サンディ様の邪魔をするかもしれません。それを懸念しております。」


「わかった。このスライムの魔石の事業は父上にやってもらおう。領地の特産とする。そのうえで、あの子の店は公爵家が認可した店だということにしよう。」


「お父様に、この事業をですか?」


「ああ、リリアーナは父上がどんな仕事をしてきたのかよく知らないと思うが、あの人は仕事はできるんだよ。それも新規の前例の無い仕事をするのが好きな人だよ。子どもが降ったばかりの雪に足跡をつけるのが好きなのと同じさ。

自分が一番、自分だけが知っている。というのがいいのだろう。領地に戻られてから日も経った、この間、領地でゆっくりもしただろう。

この事業でしっかり働いてもらって、あの子に利益を渡してあげよう。

穴あけや髪飾りへの加工は寡婦や孤児院など生活に困っているものへ内職として始めてもいい。内職をしてもらうものへの最初の見本は領地の館のお針子に作ってもらい、領地のギルドでスライムの魔石も全部買い取ってきてもらおう。」


「素敵な事業になりそうね。そういうことなら、お父様にもしっかり働いていただきましょう。あの子のために。」


「トマス、大丈夫だよ。あの子のお店でスライムの魔石を使った装飾品を売っても大丈夫だよ。いくつか見本は持っているのか?」


「この髪飾りと、ブローチですね。あと、穴を開けたビーズ状のもの、あ、木彫りの小鳥がスライム魔石で作ったブドウの上にとまっているものもありますね。」


「全部、貰えないか。父上にお見せして驚いていただこう。この魔石のブドウは良くできている。わたしも欲しいぐらいだ。この見本の費用は後で請求してくれ。それとも、お婆様や母上の古いドレスを持っていくか。ハギレがたくさんできるだろう。」


「ドレスが頂けましたら有難いです。離れにもたくさんございましたが、今後ブティックの営業始めましたら、いくらあっても助かりますから。」


「いいよ。お婆様は一度着たドレスを二度と着られない方だし、母上はもう外出できないしね。あの子の役に立つ方がいいだろう。この館にあるものは持って行くがいい。」


「わたくしの小さい頃のドレスもあります。一番のお気に入りはあの子に着てもらいたい気もしますが、それはわたくしの我儘なので、リフォームして売っていただいても構いません。」


2人がそう言うと、傍にいた執事や侍女に声掛けをし、祖母や母やリリアーノのドレスをマジックバッグに詰めてくるように指示をだした。


「あの子は面白いね。離れで一人放置されていたというのに、なんてキラキラしていて逞しいのだろう。自分の妹でとても嬉しいよ。あの子のことは何でも報告してくれ。」


「わたくしも、あの子のことはいろいろ知りたいわ。トマスお願いね。」


「承知いたしました。また何かあればご報告いたします。」



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