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秋風が吹く頃、宿屋のリフォームが結構順調に進み、いい感じになってきた。
「どうだ、サンディ、いいだろう。」
「フェムが自慢しているけど、これ内装のほとんどは、トゥヴォでしょ。」
「いや、俺もちゃんと板運んだりしたぜ。」
「サンディ様、好きにさせていただいてありがとうございます。畑仕事の合間ですが、順調に進んでいます。宿屋の食堂はダイニングリビングに改造もしました。」
トゥヴォは、寡黙だけど、好きなことを話す時は口数が多くなるのを知った。畑仕事も好きだけど、リフォームも楽しんでいそうだ。
「僕もお手伝いしたよ!」
セクスも手伝った場所をあっちこっちと指さして教えてくれる。自分が役に立ったのがとても嬉しそうだ。
宿屋は1階が食堂と受付、2階と3階が宿泊用になっていて、3畳の部屋が各階に4部屋。全部で8部屋あったけど、それを2階も3階も二部屋ずつに変更し、1階はダイニングリビングにお風呂も増設していた。いいね。トイレも魔石で使えるようにしたようだ。
屋根裏部屋の両親の荷物を全部処分した。知らない使用人のベッドは再利用できるけど、知っているご両親のベッドはね。なんか新品同様になっても使いたくないから、道具屋に売りに行った。処分といっても捨ててはいない。残っていた服も古着屋に売りに行った。エットが嫌そうだったけど、貧乏暮らしをしていたせいで、使えるものを捨てることは出来なかったから、妥協案の処分方法だ。
「お父さんも、お母さんもあまり趣味がよくなかったから、服は新品同様だったけど、それほど高く買い取ってもらえなかったわ。なんでお母さん、あんなひらひらした部分がたくさんある服買っていたんだろう。普通の服より高いのに。お父さんもお金ないない言っておきながら、屋根裏部屋にお酒も結構残っていた。お酒は全部料理に使うわ。」
ぷりぷりエットが怒っていたけど、これで終わりだ。エットの中のご両親との関係を終わらせることができただろう。
小さいシューとか両親の思い出が必要かなと思ったけど、シューにとって、育ての親はエットだから、本物の両親についてはどうでもいいらしい。
そこまで言われると両親も可哀そうだけど、エットの頑張りが認められたっていうことだよね。そこはエットが凄いっていうことにしておこう。
「ねえ、おじいちゃん、宿屋の民家へのリフォームが上手くいったんだけど、これって商売できるかな?古くてボロボロで取り壊しが必要な建物を貰ってきて、空いている土地に建て直すってどうかな?」
「んん、サンディ様、悪くはないですが、サンディ様のスキルの特殊性がばれる可能性が多くなります。少し危険かもしれません。王都の家ではなく、遠くの街から持ってくるのであれば、取り壊す予定の家を誰も知らなければ何とかなるかもしれませんが、今は壊れたマジックアイテムやマジックバッグに骨董品を直していただくだけで食べていけるので、もう少し様子見ですね。」
「そうか、インベントリの特殊性はばれたら危険なんだね。」
「魔石もMAXになりますし、利用できるとわかったら誘拐されて死ぬまで働かせられそうですよ。」
「そうか、気をつけないとね。やりたいことが出来るのは幸せだけど、強制的に働かされるのは嫌―。働くなら楽しく!」
「サンディ様は楽しくて本当良いですね。とりあえず、宿屋のリフォームはあの子たちの実家ですし、好きにして良かったと思いますよ。トゥヴォが結婚するかもしれませんしね。」
「やっぱり、おじいちゃんも知っていたんだ。庶民も18歳ぐらいで結婚するんだよね。」
「庶民といっても、農家の子や商人の子は結婚が早いかもしれませんが、冒険者はある程度稼いで引退するぐらいに結婚する方が多いので晩婚ですね。やはり危険な仕事なのでそうなりますね。」
「そうなんだ。じゃフェムは冒険者になったら結婚が遅くなったりするんだ。まぁフェムは何になるのか、さっぱりわからないけどね。この間、ポーションも後少しっていうところまでいけたんだよ。畑仕事も手伝うし、リフォームも楽しそうだったしね。」
「サンディ様が楽しんでお仕事をすべしっておっしゃっているので、フェムが一番サンディ様に感化されているんでしょう。将来が楽しみですね。」
そうだよね。フェムが何者になるのかわからないけど、わたしも何になるのかわからない。未来がたくさんあるっていうことだよね。それは楽しみ。
「おじいちゃん、宿屋の跡地に、ドレスや小物を売るブティック作る案はどう思う?」
「そうですね。それは良いと思いますよ。売り子をどうするのかとか、在庫をある程度作っておかないとなど問題はありそうですが。建物自体は建築魔法の使える工房に頼めば早く作っていただけますよ。」
「そうか、売り子さんいるか、フューラは作り手で売り子にはならないかな?」
「そうですね。子ども用のドレスの対象者は裕福な庶民か下級貴族とさせていただいていますが、庶民相手ならともかく、フューラに貴族の関係者を接遇するのは難しいのではないでしょうか。」
「あー。そうだね。庶民だものね。貴族のマナーはわからないか。んー。マナー学ぶか。これから生きていく武器を増やすのはいいよね。」
「マナーを学ぶ。でしょうか。そうですね。男爵家から商人の家に嫁がれたマルガレータ様とおっしゃる方であれば、伝手がございます。商人の家に嫁がれておりますので、庶民にマナーを教えるのも問題ないと思います。サンディ様もご一緒にいかがですか。生きていくための武器を増やすという意味では、今後のサンディ様の武器となるかと思います。」
「そうだね。おじいちゃん、わたし実家では本だけ読んで何も学んでこなかった。話し方も庶民みたいだし、動作もがさつだし、フェムからは未だに男の子だと思われているし、そうだね。淑女のマナー覚えてもいいかも。」
「それはようございました。早速声掛けしてまいります。」
「おじいちゃん、いつもありがとう。」
素直なサンディを見ていると微笑ましく嬉しくなる家令だが、この先を考えると淑女のマナーはぜひとも身につけていただきたいところ。ドレスショップを開店する前には、公爵家の若旦那様とお嬢様に連絡を取りに行かせていただこう。




