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神様の目印  作者: ヒロ
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 保留中にしていた宿屋の件については、家令がこのままだと崩れ落ちそうだから何とかしてくれと街の世話役から依頼がきたと教えてくれた。

 崩れ落ちるのは危ないね。


 家令にお願いして、夜中に街中まで二人でこっそり行く。


 夜の街は暗くて、例の黒目黒髪を解く時以来だなと思う。あの時は何も考えず前だけ見て走っていたから、怖いとかそんな気持ちも無かった。あの時は早春で少し寒くて震えていたなと思い出す。今は初夏だ。夜風が気持ちいい。


 今は遠くに聞こえる狼の遠吠えとか、酔っ払いが道端で寝ていたりとかしているけど、治安の方はそう悪くはないらしい。家令もそばにいるから怖くない。それでも街灯のない街は月明りがなければ真っ暗だろう。


 石畳に響くわたしの足音、何故か家令の足音は聞こえない。どんな歩き方しているんだか。宿屋の前に到着。


 本当にぼろぼろだ。

 両隣とは少し間隔が空いていて、壁を共有していなくて良かった。敷地全部が建物ではなく裏庭もあるので、建物自体はそこまで大きくはない。


 どちらの両隣も真夜中だから今は閉店していて、しんとしている。


 インベントリに物を収納する時は音はしない。宿屋の壁に触れて、宿屋全部を収納すると決めると、すっと収納されていった。


 跡地は何にもない。平地となった。中庭もその周りも雑草はみっちり生えていたけど。


 家令が魔法で片付けたと報告しときますって言っていた。間違いはない。この世界魔法があるので、お金を払えば土魔法や建築魔法を使えば、一瞬で解体できたりするので、不思議に思われることもないだろう。


 家令が、サンディ様のインベントリはさすがですねと、ほれぼれと褒めてくれたので、いい気持になって家に帰って、二度寝した。睡眠は大切だものねー。


 先日の大物マジックアイテム(転移が可能になるもの)を修理したことで、結構な金額が入ったと聞いたので、今の家の前の土地も購入してもらった。


 この辺の一ノ門の外の土地は安い。王都だから農業をする人が少ないのか、一ノ門の外だから安いのかわからないけど、前にかった500m×500mぐらいなら40万ノンナで買えたらしいので、今回も同じぐらいで買えるだろう。


 そこで、新しく購入した土地に、今の家の玄関から10mぐらい真向い離れたところに、同じく玄関を向き合うように宿屋をインベントリから出してみた。


 おお、ボロボロじゃない宿屋は結構いい感じだ。エットのお父さんのそのまたお父さんのお父さんが最初に始めたと聞いたから、おおよそ100年ぐらい経っていたのかな、あの両親じゃなければ、修理がちゃんとできていれば、老舗の宿屋として今も繁盛していたのかもしれない。


 でも、街中で再生した宿屋はさすがに出せないしね。

 魔法で解体はすぐに出来ても、建築も魔法を使えばそれなりに早くできるだろうけど、インベントリに入れて出したら一瞬で新築になっているのは規格外だ。


 だから、ここ郊外でこの家は再出発する。ここなら家が一軒増えたところで誰も気にしないだろう。


 もちろん、エットたちには即バレたし、説明した。ちゃんと全員と契約しているから大丈夫。


「サンディ様、俺らの宿屋あんなところに建て直してどうするんだ?」


「んー。別に何かしたいからじゃないんだけどね。あんなにボロボロだったけど、新築当時はどうだったのか、気になったからインベントリに収納して、出して見ただけなんだけど。フェムはどうにかしたい?」


「あー。俺にもわからない。自分たちが住んでいた場所であるけど、似ているけど、違うけど、違うけど、俺たちの家だったものだ。なんだかすげー。変な感じ。」


「サンディ様はあの宿屋を何かしようとは思われていないんですね。」


「うん、トゥヴォいい案でもある?」


「俺らは学がないから、何と言っていいのかわからないけど、せっかくだから何か使いたい。さすがにここで宿経営は出来ないと思うけど。普通に住めるように手入れしておけばと思う。」


「そうだね。このまま置いとくのも勿体ないね。せっかく家の前の土地も買ったことだし、いつかトゥヴォが結婚したら、住んでもいいよ。」


 知っているんだ。隣の農家にいる娘さんとちょこっとだけ仲良くなっているって、セクスから聞いているんだ。ふふふ。

 図星だったのか、トゥヴォが真っ赤になる。ごめん。トゥヴォ物凄く純粋だった。


「ごめん。ごめん。でも、トゥヴォがいずれ住んでもわたしは構わないよ。宿屋仕様になっているから、そこはリフォームしないといけないけどね。トイレもスライムトイレだったら、魔石が使えるようにしとくとか。」


「サンディ様が良いのであれば、俺が住むとか住まないは置いておいて、宿ではなく普通の所帯が住めるようにリフォームさせてください。」


「うん、時間の空いた時ならいいよ。トゥヴォが住まなくても、誰か斡旋して家賃とってもいいしね。」


「俺も参加したい!」


「僕も手伝いたい!」


「いいよ。みんな手の空いた時にすればいい。必要なものはおじいちゃんに頼めば手にはいると思うし、必要経費だからちゃんとお金は支払うよ。あ、排水の工事は専門のところに頼んでね。素人にはできないからね。」


「わかりました!ありがとうございます。」


「ううん、やりたいことをするっていうのが、わたしの目標だから、みんなもやりたいこと優先に動いていいよ。だって、その方が楽しいもんね。」


 エットは新しく建てた宿屋に入って、探索したようだ。


「サンディ様、両親の部屋が気になって、見てきましたら、部屋にあったベッドも服もへそくりも全部新品同様になっていました。凄いですね。


 それにしてもうちの両親、自分たちだけベッド使っていたんですね。わたしたちはぺらぺらのマットだけだったのに。それにへそくり10万ノンナあったんです。笑ってしまいますね。」


 エットは泣き笑いといった顔をしていた。

 エットのご両親には、衛兵にしょっ引かれてから会っていない。エットは衛兵の詰所に何回か家令と一緒に聞き取り調査に協力していたようだった。家令が大丈夫でございました。って報告してくれたから、大丈夫だったんだろう。


 人身売買は大罪だ。どんな裁きを受けることになったんだろう。どんな裁きであったとしても、きっと二度と会うことはないだろう。結構な期間を鉱山で労役だろうな。


「大丈夫です。サンディ様、両親のことは忘れます。可愛い弟妹を作ってくれたことだけ感謝します。あと、サンディ様トマス様のお二人に出会えたことにも感謝です。」


 エットは少しぽっと顔が赤くなった。前世アラサーのセンサーが唸る。家令に危ないところを助けられたエットは家令に惚れているな。


 でも、家令は53歳、エットは22歳。この年の差どうする?それに、今わたしの唯一の家族である家令をエットといえども渡したくないっていう気持ちがある。前世アラサーだったのに、時々体の年齢にぎゅーっと引っ張られる時がある。家令がいないと寂しいのだ。まだまだだね。わたしも。


 暑い夏、ドライフルーツを作って乾燥魔法の練習をしていた。作ったドライフルーツはみんなに食べてもらった。セクスがドライフルーツを作るのを手伝ってくれていたけど、セクスの方がはまってしまって、最後の方はセクスがメインで作っていた。


 まぁわたしの乾燥も結構うまくなったからいいんだけどね。

 セクスはドライフルーツを作って、兄弟に売ったりしてお小遣い稼ぎしていたようだ。ちゃっかりしている。

 フェムが討伐に行く時のおやつにいいと結構な量持っていくので、セクスは市場に果物を仕入れてせっせと作っていた。


 家の近くにドライフルーツにすると美味しいキウイやリンゴに似た果物を植えていいかと聞かれたから、好きにしていいよと答えた。土地はまだまだあるしね。


 市場には苗も売っているらしいので、わたしも自分のお小遣いからラズベリー系の苗を買ってきて、植えてみた。


 実の成るものは楽しみだ。セクスはパイナップルみたいなものをトゥヴォに頼んで育ててもらうそうだ。セクスのドライフルーツ屋さんは繁盛しそうだね。


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