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二話-7 影響




「政府の思惑は横に置いておくとして、私たちの目的としてはこれを機にもっと知名度を増やして今回の”どこか誰かさん”みたいに無理を言ってきても跳ね除けるくらいにしておきたいのよね」


「それは終わってからじゃダメなの?」


「終わってからだと嘘や誤魔化し、改ざんがされているものだと一部は認識するの。実際の事実がどうであれ、世間というものはそういうものだと思いなさい。だからこそ実際に行動をしているという事実を分かり易い形で残しておくことは重要なのよ」


 話は理解出来る。昨今の映像技術の進歩は凄まじいという話が聞いたことがあった。過去に妖怪が復活した時は映像が出回っても加工されたものだと疑われたせいですぐには信じられなくて、そのせいで被害が増大したという記事を読んだことがある。

 今でこそ妖怪自体を疑うことはないだろうけど、人々の中で世に出た映像を疑う層が一定数いるというのは変わらない現実だろう。


「咲夜は今この時にそれをやることが大事だと思ってる?」


「えぇ。そう思っているわ。誰かの為ではなく、私たちの為にやるのよ」


 本当なら今すぐにでも修行したい。先ほど見た結界術師の真似をして少しでも練度を上げておきたい気持ちはある。

 それを理解している咲夜がそれでもと言うのなら僕はそれに従おう。


「分かった。じゃあ、すぐにやろうか。時間が勿体無い」


 ただ、周囲はこの即決にやや疑問符が浮かんでいたらしい。

 かなり心配そうな顔をしている景文さんは岩蔵さんと咲夜との間に割って入って行こうとするけど、僕がそれを引き止めた。


「あまり表に出過ぎると何かあった時の非難の的にされたりしないか? それも世間というものだろ?」


「非難も考慮しての決定だと思うよ。それに命に関わることだから多少のそういう意見は仕方ないと思うし、それについては受け止めるしかないと思う」


「でも、それは清花さんが背負うべきものじゃない」


 これは簡単に納得はしなさそうだ。

 しかしあまり長い時間は掛けられないし、ここは端的に話すとしよう。


「べき論の話はしないよ。それよりも、出来るなら分け合って一緒に背負ってくれると嬉しいかな」


「分け合う、か。清花さんがそう言うなら……分かった。それじゃあ、俺は何をすればいい?」


「うーん。一緒に生放送ってやつに出てもらう、とか?」


「さっき言ってたやつか。了解した。……で、生放送って何をすればいい?」


「それは僕も知らないから聞くしかないね」


 当事者である僕でさえさっき知ったことで、あまりそういった娯楽に触れてきていなかったので何をするのかさえ知らない。

 それは咲夜も同じはずだけども。

 視線が向けられた彼女はというとこちらに目もくれず端末を叩いていた。目線はそのままにこちらに語り掛けてくる。


「基本的には向けられた撮影機器に向かって台本の通りに話すだけよ。さっきの切り抜き動画みたいな録画と違うのは、都合の悪い部分を消してから世に出すことが出来ない点ね。簡単に言うと言い間違えたり言葉を噛んだりすればそのままの姿が視聴してる人に見られることになるわ」


「それは、結構恥ずかしいかも。生放送である利点は何かあるの?」


「編集が効かないということは自分の都合の良いようにも出来ないと言うこと。つまりそれだけ真実性が高くなるということでもあるわ。今の私たちには必要な要素ということね」


 先ほどの動画では「どうせ作られたものだろう」とか「都合の良い所だけ切り抜いている」という意見もあった。事実を知らないのにも関わらずそういう風に疑う人は出てくるのだろう。確かに生放送であればそういった疑いは少なくなるか。

 説明に納得出来た僕たちの様子に頷いた咲夜は早速とばかりに手を叩いた。


「ついでに冬香と芹井さんも出なさい」


「えっ、何でよ? 冬香は知名度向上しなきゃだから分かるけど、私は別にいいじゃん。それに私だけまだお風呂入ってないんだけど」


「理由は色々あるけれど、強いて言うならさっきの時間に何もしていなかったから」


「…………すーっ」


 千郷はあらぬ方向を見て下手な口笛をしていた。


「冬香や千洋さんはともかく、東司だって方々に連絡したりしていたと言うのに貴方は……」


「分かった! 分かったから! 何もしてなかったのは自分が一番分かってるから! 罪悪感っぽいのだってあるから!」


 お小言を言われたくない千郷は耳を塞いだ。こうなると分かっているのに突っかかるのはもう本能か何かなのだろう。

 対して知名度を少しでも上げたい冬香は緊張しながらもやる気を出しているようだ。

 そうなるとカメラに映るのは未成年ばかりとなるけれど。


「僕たちだけだと高校生のお遊びみたいに受け取られないかな?」


「そこはほら、退魔師協会の偉い人が直々に来て下さっているのだし?」


 そんな人はここには一人しかいないので自然と視線が集中する。

 大門先輩も倉橋さんも生放送に出る理由はないし、そうなると唯一の大人として僕たちの身に何かあれば真っ先に非難が集中することとなる役柄に抜擢された岩蔵さんは一筋の汗を手拭いで取りながら笑った。


「えぇ、皆様さえ良ければ勿論参加させて頂きますよ」


 内心では僅かに動揺していることは言わないでおこう。

 これまで頑張ってやってきて今の地位にまで就いて、それが無くなるかもしれないのに動揺するなという方が無理な話だ。


「撮影は確か……部下に得意な人がいたわね?」


「趣味の範囲だそうですが、腕は確かなので彼に任せるとしましょう」


「そうして頂戴。本来なら台本を用意するのがこういうものの常だけど、予言ではどうなっていて?」


「有りのままの清花様を世間は望んでおられるかと。演技させられていると感じられては生放送の意味がありませんから」


「……それもそうね。話題は絞りつつ自由にやらせる感じがいいかしら」


「提案ですが、先の動画の件から始まり広範囲支援の術と霊具の件、それから退魔師協会との関係辺りでどうでしょうか」


「それが無難かしらね。岩蔵さんは極力話題には入らず、必要な時にだけ口を出して下さい。あくまで私たちが主体で、貴方たちは協力を要請している立場という印象が大事ですから」


「承りました。その代わり舵取りは出来ませんがそれは構いませんか?」


「ある程度の失敗は子供という点で補えます。もし大きな失敗をしたとしても貴方たちでなんとかして下さい。私たちは私たちの為にやるけれど、貴方たちにとっては自分の為なのですから」


 譲らないという姿勢を視線を切って示した彼女に岩蔵さんは恭しく腰を折った。

 僕たちが映像に出ることによって一般市民の人たちは安心を得られると政府側は思っている。そこから得られる向こうの恩恵としては反発の抑制や沈静化による避難誘導のし易さなどだろうか。

 僕の考えの及ばない何かがあるのかもしれないけど、それは考えたところで意味はない。


「さて、それじゃあ時間もないしさっさと済ませるとしましょうか。撮影係は誰?」


 部屋を移動するということはなく早速ここでやるらしい。千郷の動画撮影をやってくれた職員さんが手を挙げる。次いで照明係と指示出し係、世間の反応を見る係とそれぞれ振り分けられていった。

 話題に出た時点から準備を始めていたらしく、テキパキと揃えられていく。


「告知は清花名義と政府名義で同時で、配信先は緊急ということで一つでいいわ。使用する名義はそちらのでいいかしら」


「はい。政府名義で配信します。機材の調整は終わっているみたいなのでいつでも初めて下さっていいですよ」


 本当は全て終わってから撮るつもりだったみたいだし、用意自体は出来ていたのだろう。職員さんたちがテキパキと準備をしながら僕たちの為の椅子を持って来た。


「それじゃあ、各員集合。位置調整してから準備完了次第十秒後に始めるわ」


 話の主役となる僕とその隣には霊具関係として咲夜が真ん中で椅子に座り、その後ろに千郷と冬香と景文さんが立ち並ぶ。最後列の端の方で小さく顔だけ映っているのが岩蔵さんとなる。

 撮影係の人が「三秒前」と声を発してから辺りは急に静まり返った。

 人は沢山いるはずなのに急に物音一つしなくなったのは初めての体験だ。

 モデルとしての撮影ではカメラマンの人が物凄くうるさ……はしゃいでいたからそれと対極と言ってもいい。


「これ、もう始まってるの?」


「そうよ。視聴者が見ている画面と同じものがあそこにあるから今の内にどんな風に映っているか見てみなさい」


 指された方を見てみると、こちらに向けられていた職員さんの端末には僕たちの姿が映っていた。これを色んな人が見ているということらしい。

 軽く手を振ってみると、画面の中の自分も同じように手を振っていた。

 すると端末の画面内に映る僕たちの、その下の辺りに何やら文字が流れ出した。

 下から上へと移動していく言葉には「かわいい」の他に「もっと手を振って」などがある。

 それで今の状況がそのままの形で見られているということを再認識した。

 確かにこれは何かしら失敗をすればそれがそのままそっくり見られてしまうか。


「急だったから視聴者はそれほどでもないけれど思ったよりはいるわね。それじゃあ始めていくわ」


 画面の中に書かれている視聴者数にはおよそ一万人とある。それがすぐに移り変わって今は二万人を超えた。

 これが多いのか少ないのか判別は出来ないけど、実際に目の前にその数の人がいると考えたら途方もない数のようにも思う。

 この数がそのまま、今の状況について早く情報が欲しい人たちということ。

 画面の中の言葉を打ち込んでいる人たちが書き込んでいる中では「誰?」というものが多い。。

 当たり前の話として、これは政府名義でやっているので僕たちを知らないという人がいるのは当然のことだ。

 それでも文字の中には「大蓮寺清花」や「土御門」というものが幾つか見受けられる。

 僕の名前には先の切り抜き動画の件もあるのか、やや納得するような言葉もある。

 ただ今は僕たちよりも前に出て話し始める咲夜に今は多くの視線が寄せられていた。


「視聴者の皆様、初めまして。私は宝蔵咲夜。隣にいる大蓮寺清花の雇い主です。今回こうしてここにいるのは他ならぬ退魔師協会の方から今回の事態に際し正式に私たちの支援を求められたからです。元々私たちが管理をしていた地域の方々には十分な説明もなく移動をしてしまったことを心よりお詫び致します」


 言いつつ向けられた視線の先には退魔師協会の制服を着ている岩蔵さんがいる。その身なりから決して末端の人間ではないことは分かるだろう。そして彼が主体となって話していないことも、咲夜が退魔師協会の操り人形なんかではないことも、彼女の顔を見れば分かること。

 視聴者たちはそのことに段々と気付き始めていた。


「この生放送をしているのは先だって上げられた政府の動画の件と、私たちがここで何をしているのかについての説明です。時間もないから早速だけど勝手に語らせて貰いましょう。まず政府が上げた動画だけれど、あれは実際に本当に起きたことで動画の説明欄にあった通り、私たちが霊具を用いて特級退魔師を支援をしていたのは紛れもなく事実です」


 そこで視聴者が言葉を飲み込む時間を待ってから続けた。


「その方法については簡単に説明をしますと、まずこの隣にいる大蓮寺清花の持つ力は浄化の力と呼ばれているものです。同じ浄化の力で言えば光や火、土なんかが世間では分かり易くて有名かしら。その中でも彼女は浄化の力を持つ水を操る大蓮寺家の血を引いています。清花、少し見せてご覧なさい」


「こんな感じでいいかな?」


 言われた通りに手のひらから水を生み出して球体を作り、それを色々と形を変えて自在に操っていると見せつける。

 浄化の力が宿っているかどうかは見ている人には分からないだろうけど、少なくとも水使いであることは分かったはずだ。


「十分よ。この水を操る力を私の力である千里眼を通して遠くまで力を行使させたという訳ですね」


 次は僕の番だというように目線を受けたので、今度は霊具を手に持った僕が話すことに。


「その時に使ったのがこの霊具です。中には天王寺家の術式が刻まれていて、それを使うことで咲夜の千里眼で見た景色を僕も見ることが出来るって訳ですね。本来は門外不出だけど色々と縁があって特別に貸し出して貰えたんだ」


「この霊具製作には前園家の全面協力があって完成に至りました。この場を借りて御両家に感謝を申し上げます」


「ありがとうございました。お陰で動画のように後方支援の役目を全う出来ました」


 画面に向かって頭を下げる。お互いに貸し借りのある中での、一方的な関係ではない霊具製作ではあったけれど、前園家の天王寺家も全力で協力してくれたからこそ出来た霊具だ。こうして宣伝のような形になることを感謝の形として伝えさせてもらった。

 視聴者としては二つの大きな家の名前が出たことで少しの盛り上がりを見せている。

 そんな家から支援を貰えているということに僕たちへの価値を見出しているような言葉も見られた。


「この霊具によって清花の力を遠方の地域まで飛ばせるようになったのはいいのだけれど、その矢先に今回の事件が起こりまして。それで私たちの情報を何処からか得た政府が協力を要請してきたという訳ですね」


「僕たちが今いる場所は東西南北の端の端まで援護出来るように政府所有の施設に来ています。広範囲に援護が出来る僕たちを妖怪側が戦略の一つとして狙ってくる可能性があるらしくて、元々住んでた場所は住宅街の真ん中だからみんなを巻き込まないようにここへ移動させて貰ったんです」


「本人が言わないから補足しておくと、この清花の実績としては一級の妖怪を単独で討伐した経験があります。それに少し前に退魔師協会の本部を襲撃した九尾の狐こと通称白面とも交戦して撃退した経験もありました」


 今でも記憶に新しい白面による襲撃事件。僕たちを見ている人の殆どが一度は見ただろうあの惨状を作り出した妖怪を思い浮かべたのだろう。少しの空白を経てから恐怖の混じったような言葉が流れる。

 白面については分け身であって本体ではないから教会本部を襲撃した時より弱くあるけれど、これはあえて誤認させているのか。下手に口を挟まないように口を固く結んでおく。

 

「この子の力については先の動画の主である特級退魔師の方からもお墨付きを貰っていますのでご安心下さい」


 これで大まかに理由や事情、方法なんかについては言ったつもりだ。これで終わりでいいのだろうかと思っていると。


「それじゃあ、少しだけ質問に答える前に軽く後ろの人たちについても触れましょうか」


 三人についてが軽い紹介をされる。大蓮寺の名前に反応するのが少し、千郷の名を聞いて彼女の友人らしき声も少し、あとの大半は景文さんに対してのものが多い。何せ彼は幼い頃から将来を渇望されていた天才児であるし、何よりも土御門の名前はとても大きい。

 中には彼とここにいる女性との関係を疑うような声すらあった。

 こんな時にまで気にするような事なのか少し正気を疑う内容だけど、この人にとってはもしかしたらその事の方が重要なのかもしれない。咲夜も文字の中に景文さんを気にするものが多く見られることに気づいたらしい。


「土御門君は以前にちょっとした縁があって志願する形でここの護衛を務めてくれているの。こっちの芹井さんも同じような理由で護衛として来てくれてるわ。もう一人の子については……そうね、賑やかしかしら」


「……っ⁉︎」


 まさかそんな紹介をされるとは思ってもいなかった冬香は目を見開いて口をあんぐりと開けていた。

 いきなりの弛緩した空気感に視聴者も置いてけぼりではあるものの、笑ったような声も少なくない。


「場を和ませる冗談よ。この子は大蓮寺の本家の娘として相応の覚悟と責任感を持ってここに来てくれているわ」


「それなら最初からそう言って下さいよ! 沢山の人に見られているんですよ、これ⁉︎」


 そんな抗議には目もくれずに咲夜は画面の方に視線を移す。

 文句有りと肩を揺すぶっているところを軽く払われては千郷に慰められているところまでバッチリと撮られていた。

 年相応の行動に微笑ましいと反応する人もいればこの場にそぐわないと揶揄する人もいる。

 しかし否定的な言葉を打ち込んだ人が二度と文字を打ち込んだ形跡は見られなかった。


「そのような訳で、私たちはあの動画のようにこれからも的確に後方支援を続けていくので応援の程をよろしくお願いいたします。……さて、貴方たちは何か目星い質問は見えたかしら? 特になければこれで締めたいのだけど」


 これで終わりだと咲夜が宣言すると文字列が急速に流れ出す。

 一つの質問が画面内に収まっている時間は一秒もなく、咲夜や冬香では意味のある文字として捉えることは難しそうだ。

 もっと見たいという意見は置いておくとして、質問としてならばどんなものがあるだろうか。

 景文さんと千郷はそもそもあまりこういったことに興味がないのか視線が動いていない。冬香は文字列そのものが早過ぎて追えていない。となると、自分で見つけるしかないか。


「うーん。高校生なのに戦いに参加するのはおかしいって政府を糾弾する意見があるね。それに似たものだと高校生なんだから戦わなくていいって意見もあったかな」


「そこについては私も同意見ではあるけれどね。出来ることなら未成年の身分を盾に今すぐにでも帰りたい気分だわ」


「それはここで言っちゃってもいいの?」


「私だって命は惜しいもの。それはここにいる誰だってそうだし、これを見ている人たちだって同じでしょう。人類皆平等。良い言葉ね」


 身も蓋もない言葉に文字列の中には反感を持つ者と同感だと意見を示す者がいる。

 中には生意気な態度だと言う者すらいる。これが多くの人に見られているのでなければふざけるなと言ってやりたい所だ。

 しかし言いたい放題してしまっては却って迷惑になるかもしれないので言葉を選びつつ反論しなければならない。

 

「咲夜は口ではこう言ってますけど、それでも誰かの為になるのならって気持ちでここにいます。彼女が戦いの前線に立っている理由が自分の為ではないことは僕が知ってますので彼女を悪くは言わないで下さい」


「清花。ちょっと……」


「お金の為とか、保身の為だとか、その程度の気持ちでここにいる人は一人としていません。ここがあの白面くらいの強い妖怪に襲われる可能性だってある中で、多くの人を救うことになるこの霊具を使う為にここにいるんです。褒める言葉はあっても責める言葉を投げかけるのは僕が絶対に許しません」


 これ以上悪感情をぶつけるような言葉を残すならどうにかして浄化の力を当ててやろうかと、何か良い方法はあるか考えていると画面の中には何か変な文字が流れ出す。


「……うん? 咲夜、このいっぱいある『尊い』とか『てぇてぇ』ってどういう意味?」


「ハァ。……お馬鹿たちのお馬鹿な言葉だから気にするだけ時間の無駄よ」


「またそんな言葉遣いをしたら……。でも何でだろう、褒めるような言葉が増えてる?」


「それはそうでしょうね」


「???」


 理由は分からないものの風向きは良い方に向かっていると見ていいか。

 それかおそらくは否定的な言葉をした人は政府の方で何か対応をしているのだろう。

 他に何か質問はないかと画面を見ていると、僕の後ろに映る三人が揃って頷いていた。


「清花さんって天然でこういうことしますもんね」


「これでこそ清花って感じだよね」


「清花さんはそのままでいいと思う」


 後ろの三人からも良く分からない肯定のされ方をしている気がする。

 こういう時はあまり深く突っ込んでも躱されるだけだと知っているので気にしない。


「えっと、他には……あっ、どれくらい遠くまで援護が出来るのか、だって」


「基本的には日本国内であればどこでもいけるわ」


「同時に何ヶ所の支援が出来るのか」


「それは秘密ね。敵に情報を渡すことになりかねないから」


 その通りなので僕からは答えない。


「霊力的に問題ないか。これは問題ないって僕が保証しておくよ」


 ここまでは特に問題はない。ただ、こうして疑問に答えていくと当然難しい疑問まで出てきた。


「退魔師は、ひいては日本人は勝てるのか、だって」


「それは私たち次第でもあるし、同時にこれを見ている貴方たち次第でもあるでしょう」


 咲夜の一般人にも責任があるような言い回しにやや動揺が見られる。

 先ほどの語気の強いような人たちは既に間引かれたのか、今はそんなに多くは見られないのは良かった。

 流れる言葉の数々を見ながら、咲夜は自分を映す目に向き直った。


「普段の退魔師以外の方々の行動を思い出して欲しいのだけど、ああいう風に野次馬を大量の人にされていては退魔師の仕事は増える一方なの。今回は特に大きな戦いになると予想されているけれど、その時に野次馬のせいで時間を取られたりする場所が増えたりして、そのせいで犠牲者が出た場合にその責任は誰が取るというのかしら。これまではそれでも退魔師のせいだと責任をなすり付けられてきたけれど、そんな危険な行為をした責任が本当は誰のものなのか今一度よく考えて欲しいわ」


 言葉の勢いが急速に萎んでいくのが見てとれた。

 人類同士の戦争があった時代の遺産として地雷というものがあるけれど、この地雷があると危険を知らせる看板があるのに自らの欲の為に自ら足を踏み入れて死んでしまった者の責任は誰にあるのか。答えは当人のものでしかない。

 そのはずなのに、こんな簡単な答えがあったとしても人は誰かに責任を求めたがる。

 自責よりも他責の方が楽だから。人は楽な方へと流れるから。それは人という生物として仕方のないことだけど。


「僕たちの今回の後方支援任務では妖怪に襲われている民間人の保護も仕事に含まれています。だけど、それは避難所やそれに類するものの範囲内に居る人に限ります。街中で逸れている人を探し出して一人一人を助けるなんてことは絶対に不可能だからです」


「例えばだけれど、動画や写真などを撮りたいが為に避難所の結界から飛び出た場合、その人は保護対象から外れることになるわ。これは清花の保護対象という意味ではなく退魔師全体としての保護対象よ。ちなみにこのことについては政府からの発表としても何日か前から出ているわ。確か特別戦闘区域内での民間人保護は最優先ではなくなるとあったわね」


「政府からも? あっ、本当みたいです。協会の職員さんが腕で丸ってしてます」


 僕は大体の時間を霊具作りに当てていたから知らなかっただけで、政府として色々と手は打っているらしい。

 ただそれでも民間人の避難は完了には至っていないらしい。僕たちからの言葉がどれだけ効果があるのかは分からないけれど、これで避難をしてくれる人が増えて、その人たちが大人しくしてくれるなら越したことはない。


「そういう訳なので避難指示には従って下さると我々含めて退魔師は大変助かるので、くれぐれも現場を覗き見るような行為は差し控えて下さいますようよろしくお願いします」


「僕からもよろしくお願いします。……それじゃあ、僕たちへの質問はもういいかな。協会の人としては何か伝えたいことはありますか?」


 なんだか説教臭くなってしまったし、言葉の流れも緩慢になってきたのでここらでお開きが無難だろう。なので今まで画面の端に映るだけでいた岩蔵さんに席を譲ることとする。


「では、少しだけ場をお借りするとしましょうか」


 僕たちがいた所に椅子を持ってきて腰を掛けた岩蔵さんは一礼してから話し出す。


「今回我々政府は自らの不甲斐なさを承知の上で今回の戦いに勝つ為に未成年である彼女たちに支援をお願いしました。未成年かつ女の子を矢面に立たせることに憤慨する方も居られるかと思いますが、現実はこの通り彼女の力が必要不可欠なことはご理解頂けたかと思います。強力な妖怪に対し有効打を持ちつつ多方面へ継続的に支援の出来る存在は非常に稀有であり、この度の戦いに我々が勝利をするのに決して欠かせない存在です。勿論、身の危険を承知で来て下さった方達を全力でお守りすることが我々の責務であることは重々承知しております。なので、また皆様にも彼女たちの負担にならないよう避難等の指示をよく聞き、実践して頂けると幸いです」


「ありがとうございました。この岩蔵さんを始め、前園家や天王寺家、その他色々な人たちが私たちにご協力して下さっています。その期待にお応えしてこれからの粉骨砕身のつもりで妖怪たちを討滅していく所存ですので、これをご覧の皆様にも何卒ご支援ご協力をよろしくお願い致します」


 そう二人が締めて生放送は終えた。

 この放送を見た人たちの反応については概ね好意的な反応が多い。何より僕たちが落ち着いて話をしている様子が印象的だったという。

 画面を通して伝えたいことを真摯に伝えようとしている様子が見ている人たちに通じたのだろう。

 批判的な意見としては主に退魔師協会に向けられたものが多い。やはりこの事態に際し未成年を駆り出したことが要因として大きい。

 ただこれは、咲夜によると成果で塗り潰せる程度の悪評であるらしい。結果良ければ全て良しという訳だ。

 これで果たして野次馬をする人がいなくなるのか不明なところではあるけど、少しでも減ればその分だけ被害は減るはず。そう願いたいところだ。

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こういう現代舞台ゆえの描写すき
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