二話-4 会議は進む
「ふぃぃぃ。つ、疲れました……」
体力と気力を使い果たしたらしい冬香が机に顎を乗せた。が、倉橋さんに注意をされてすぐに姿勢を正す。
まだ体が左右に揺れているけどそれくらい多めに見てもらうとしよう。
そんな彼女を見ながら、夕食前に皆んなが集まる食卓にて端末を叩きながら咲夜が告げる。
「清花の手伝いお疲れ様。武器の配給で得られる収入については配分するから明日も励みなさい」
「えっ? 配分? ということは、し、収入……ですと?」
お金の話に釣られてか覚醒したようだ。
「慈善事業じゃないのだからタダで力を貸す訳ないでしょう。いずれは貴方も同じように収入を得たらいいわ。将来の仕事の練習にもなってお得ね」
「な、なるほど? ちなみに参考までに今回でいくらくらい……」
「武器としての性能は浄化の力によるところが大きくてほぼ均一だからこの値かける本数ってところかしら。今回は特別に刀の代金を引かずに貴方が作った本数分の給料にしてあげる」
「ホェ」
端末を差し出されてから自分の作った本数を頭に思い浮かべたらしい冬香は虚空を見つめて口を開けたまま動かなくなった。
きっと頭の中では必死に計算が行われているに違いない。涎が出かけているので指摘していると。
「それって私は貰えないの? 頑張って妖怪と戦ったのになー」
「芹井さんには広告宣伝費として別にあげるから楽しみにしてなさい。そんなに多くはないから芸能人みたいな莫大な額は期待はしないように」
「それでもやったー。新しい服に使おーっと……それくらいはあるよね? ね?」
「あるから大人しくしてなさい」
「はーい」
千郷を追いかけて行った職員さんが撮った動画の内容では、まずはただの普通の刀で切り掛かるところから始まり、次に効果を付与する液を掛けてから妖怪を倒すところまでが鮮明にかつ力強い映像が収められていた。
きっと撮り始める前からあれこれ指示があったのだろう。宣伝効果としてはバッチリな仕上がりだったので、これの全ての功績を千郷のものにしていいか迷うところではある。
それでも妖怪と戦うという一番危険な行為をしたのは千郷なのであまりうるさくは言わないようにしよう。
画角的にかなり近づいて撮っているような気もするけどきっと気のせいだ。
「二人に作って貰った付与具で一般退魔師の戦力の増強、清花の結界の霊具の量産で一般人の保護も進んでいるわ。この二つの功績を以て色々と交渉を進めているところよ」
「何の交渉をしてるの?」
「一つは戦力の補強で空いた人員でここの護衛を厚くする為よ。欲を言えば特級がもう一人欲しいところだけどどうかしらね」
「特級か……それは流石に厳しいんじゃないかな?」
「分かってるわ。その上でこういうのは立場が強い方が初めに吹っ掛けておくものなの。無茶な要求の次は妥協出来る範囲の要求が来ることは覚えておいて損はないわよ」
「そういう話術ってことか。じゃあその代わりに一級退魔師を呼んでもらうの?」
「いいえ。人は限られているから物資かお金になると思うわ。退魔師についてはあわよくばってところかしらね」
ただでさえ白面の襲撃で一級退魔師の大勢が戦闘不能状態にあるという。そんな中から引き抜けるかどうかは不明瞭なところではある。
僕としても咲夜たちの護衛が増えるのなら喜ばしいことではあるので来てくれるのならそれに越した事はない。しかし、それは他の所が手薄になるという意味でもある。悩ましい問題だ。
「僕も同席した方がいい?」
「いいえ。いない方がかえってやり易いから貴方は霊具の方をやっていて頂戴」
「そうなの? じゃあ、そうするけど」
どうしてかは聞かないけど、咲夜がそう言うのならそうなのだろう。
頷いて返すと咲夜は端末を片付けつつ、視線を壁に吊るされた暦表に視線を向ける。
続けてこの場にいる全員が意識的にそちらへ向かう。そこにはここで過ごした日にバツ印があり、今日より三日後に赤い丸が二重に印付けられていた。
わざわざ何の日なのかは言うまでもないだろう。ただその暦表を見るだけで自然と気が引き締まる。
最初は長いと思っていた期間もいざあと少しまで来ると足りないと感じるのは決して気のせいではないはず。
そしてそれは皆んなも同じようで。
咲夜は視線を戻してから静かに続ける。
「戦争は三日後。それまでに出来る事は全てしておきたいから何かあれば忌憚なく言ってくれていいわよ」
「はーい」
手を挙げた千郷にどうぞと促される。
「今ところ、ここの護衛に入る特級退魔師って誰か分かってるの?」
「一応はまだ未定ということにはなっているわ。妖怪との相性の問題があるから直前で入れ替わる可能性がある、というのが向こうの言い分よ」
「ふーん。それって信用出来るの? 来るって言っといて結局来ないって可能性もあるんじゃない?」
「その場合は自衛のみに全ての力を使うか即時退却するだけよ。清花が全国の退魔師を援護する代わりに特級退魔師がここを護衛をするという話なのだからそもそも来ないという選択はないでしょう。もしもそんなことをしてしまったら全国の退魔師を敵に回すことになるのだしね」
「それならいっか。私はそれだけだけど、あー……冬香は何かある?」
話には入らないだろうと思ってか飲み物を飲んで落ち着いている所に急に話しかけられて肩を跳ねさせていた。
急いで口の中にあるものを飲み干した彼女は咲夜ではなく僕の方を見た。
「三日後のことなんですが、私は何をすればいいんでしょうか。清花さんはやることがあると言ってましたけど。ちょっと頭からすっ飛んでしまって。もう一度お聞きしてもいいですか?」
あの時の僕の発言で少し記憶が乱れているらしい。それは申し訳ないことをした。
「冬香には僕が持ち場を離れた場合、結界を維持を代わって欲しいんだ。出来る?」
「えっと、順番に聞いていいですか? その持ち場を離れるというのはどういう意味です?」
「例えば護衛役の退魔師が危ない時とかかな。援護に行かないと負けそうってなった時に戦力になるのは僕しかいないからね。千郷には悪いけど、流石に特級が負けそうになるような妖怪を相手にはさせられないから僕が行くしかないんだ」
こういう言い方をすれば千郷は反発するだろうと思ったけど意外にも大人しかった。
「結界の維持って制御を手放すと耐久性はかなり下がっちゃうのは知ってる?」
「はい。確か補強や修復が出来ない、でしたっけ。霊力の供給が途絶えるからって聞いた記憶があります」
「その通りだね。もし僕が前線に行けば結界に霊力を供給し続けるのは不可能と思っていい。その隙を狙って非戦闘員を狙ってくる可能性があると思ってる。その時の為に千郷と大門先輩が護衛をしてくれる予定だけど、万が一を考えると結界の維持はしておきたい。それを冬香にして貰いたいんだ」
「でも……私、霊力はそんなにありませんよ? 色々持ってきてますけど、結界の維持に使えるものは……」
「それについては使い捨ての霊具を何個か置いておくからそこから霊力を引っ張ってくればいいよ。同じ結界の種類で、元々が同じ持ち主の霊力だから反発の心配もないし。この方法は龍健さんにも相談して大丈夫だって判断して貰ってるよ。だから冬香の負担は維持をする集中力と気力だけになると思う」
「清花さんは出来ると思いますか?」
「出来る出来ないじゃなくてやるんだよ」
今のこの状況、この場所で必要なのは効率だ。より短時間でより良い結果を出したいのにやる前から泣き言は聞く気はない。
普段と違う対応に冬香が傷ついたような顔をするけれど、誰も慰めようという雰囲気はなかった。
「この食事が終わったら早速練習するからね」
「お、お手柔らかにお願いします……」
目を見開いて背筋を正した冬香はここではお客様扱いはされないことを強く理解したようだ。
それが遅いとは言わない。だからみんなも黙っていた。
こちらの話がひと段落したと見て、咲夜が再度話し始める。
「次に現在の日本の状況が把握出来たから共有するから食べながらでいいから聞いていて」
「日本の状況っていうと、退魔師の配置とか?」
「えぇ。数日かけて日本中を隈なく視ていったからおおよその配置は把握してるし、大妖怪が出て来る妖穴の出現位置も確認出来たと思うわ」
「そんなに? 結構な負担じゃなかった?」
咲夜本人が言っていたことではそこまで遠くの景色は見れないと言っていた。限界までやって県を二つ跨げるかどうかといったところだと。
理由としてまず咲夜自身の霊力がそこまで多くはないことと、遺伝ではない咲夜の能力では鍛え伸ばしていく道筋が不明瞭だったことがある。
だからこそ日本中という言葉には驚かされた。僕の言葉を聞いて心配するような視線が注がれる中、咲夜は尊大そうな態度で鼻を鳴らした。
「私に出来ることはこのくらいだもの。少しくらい限界を超えるわよ」
それでも無理はしていないか心配になり身を乗り出そうとしたところ、突き出された手に動きが止まる。
「確かに限界は超えたけれど決して無理はしていないから安心しなさい。この強力な結界の中だからか、多少無理をしてもすぐに回復していたから実質無理してないようなものよ」
「……それならいいんだ」
言葉から嘘の気配はしないし、肉体的にも精神的にも傷ついてそうな部分はない。
言う通りこの結界の中を満たしている浄化の力によるものだろう。霊力についてもある程度の肩代わりをするか、咲夜自身の霊力を回復させてもいるのかもしれない。結界についてもっと自分であれこれ弄れたら更に手助けになるだろうか。
「それでだけど、視た感じだと大妖怪相当の存在が現れそうな箇所は大体十五個。それが日本各地に割り振られるように配置されていたわ」
視たという都道府県が挙げられていく。確かに日本の端から端まで意図的に散らしたような配置だ。
よほど一つ一つの戦力に対して自信を持っているのだろうことがそこから伺える。他の妖怪の手助けなんていらないと言わんばかりだ。
問題があるとすれば、その数だった。
「情報共有として岩蔵さんに確認したら十三箇所しか認識していなかったのは笑ったけれどね」
僕以外からも「えぇ……」と引いたような反応が聞こえてきた。
岩蔵さんが知らなかった可能性もあるけれど、それにしたって咲夜より情報量が劣るのはどうなんだろう。
「ちなみにその岩蔵さんの言によると特級退魔師の数はたったの十二人だって聞いてるのよね」
引き気味の空気が今度はどんよりとした残念な空気に変わった。
咲夜の発見した場所と退魔師側が認識している場所の差が三つ。たった三つではある。そこに配置出来る人員がいないことに目を瞑れば少ないと言っていい。
問題は特級退魔師が一対一をしたとして、僕が一体を引き受けたとしても残り二体の大妖怪をどうするのか。
咲夜は現れる可能性のある場所と言っていたけど本当に現れるのかどうか。
岩蔵さんたち退魔師協会が把握していた数が出現する大妖怪の数という認識でもいいのかも。
本当のところはどうなのか気になるけれど、ここで僕たちが気にしても仕方がない。
「報告したのなら後はもう協会の仕事だね。……うん? そうなると増す増すここへの増援は無理なんじゃ?」
「かもしれないわね」
先ほどは一級退魔師の増援をお願いしてると言っていたはずなのに、無理だと分かっていて要請していたということだろうか。
「それでも交渉していたという事実が後々に響いてくるのよ」
「すっごい悪い顔してるけどあれは浄化の対象にならないの?」
咲夜を見た千郷が囁いてくる。答えとしてはならない、だ。
悪巧みはしていても悪どいことをしている訳ではないから。
首を振った僕を見た千郷は呆れたように軽く息を吐いた。
「アンタっていつもそういうこと考えてるの?」
「あら、正当な対価にケチをつけるつもり? じゃあさっき言った出演報酬の件も考え直すこととするわ。具体的には出演料と妖怪の討伐報酬から清花の霊具使用料や機材費、撮影費用などを差っ引いた額になるわね。言っておくけど、一般大衆向けの宣伝映像じゃないのだから出演料なんてあってないようなものよ?」
「げっ! そ、そんなことは言ってないでしょ! 被害妄想はんたーい!」
ねぇ、と同意を向けられるものの僕と冬香が同意することはなかった。
こういう地道だけど必要な行為が金銭の獲得に繋がっていて、そこから個々への報酬に至るのだから。お金は大事。
そのお金の必要さを身に染みて実感しているはずの千郷は味方がいないことに悔しそうな表情を浮かべて白旗を上げた。
「はいはい。ごめんって。お金は有り余るほどあってもいいよね」
「全く現金な子だこと。……そんな訳で援軍に関しては望みは薄いけど、見返りはその分だけ跳ね上がることになるわ。こっちには清花っていう最強の手札があるのだしね」
「いざとなったらテレビの前で清花に泣いてる演技させれば?」
「最後の手段としてはそれも考えてるわ。向こうとの関係性もあるから慎重に検討する程度だけれど」
泣く演技を練習しろということだろうか。僕は嘘は下手だと散々言われてきているのであまり自信はないのだけども。
そういえば最後に泣いたのはいつだろうか。足の喪失は流石に泣いたけど、あれは痛みだから意味合いが違う気がする。
どうやったら泣けるだろうかと思案していると、横から頭を叩かれた。
「またバカなこと考えてないでしょうね。話を続けるから聞きなさい」
話の最中に出来上がったらしい食事を冬香が率先して手伝っている中で話が続けられた。
「何度か言ってるけれど、戦争の始まりが三日後であるとは限らないことは覚悟しておくこと。取り越し苦労になる可能性があったとしても不意打ちで大きな被害を受けるよりはマシだと思いなさい。だから三日後の予定ではなく、有事があった際の行動としてこれから言うことを覚えておくのよ」
これは主に冬香と千郷に向けた言葉だ。
特に千郷は文奈さんと僕たちよりも関わってきた分だけ占いの結果を深く信じている傾向にある。だからか不測の事態への心構えについては少し怪しいところがある。
顔が「どうせそんなことにはならない」と言っている千郷へ咲夜の視線が向かう。
「妖怪による大規模侵攻が始まったらまずは着の身着のままで訓練場に向かうこと。特に私含めた非戦闘員は出来るだけ最速で向かいなさい。そこには予備も含めた結界の霊具があるからそれを中心に集まるのよ。全員が予備の霊具を持っているとしても、一つの霊具で複数人を囲めばそれだけ霊具を温存出来るからね。物資については訓練場から繋がる倉庫にあるから出来れば倉庫の入り口付近に集合しなさい」
「はーい。どうしてもなきゃ困る荷物についてはどうするの?」
「最重要な物に関しては肌身離さず持っておくか予め倉庫に置いておきなさい。私物は分かるように分けて置くからその時はそこの東司に言うといいわ。それ以外に荷物に関しては全て切り捨てて訓練場に向かうこと。分かった?」
「了解。とりあえず訓練場ね。覚えたから大丈夫」
千郷の足であれば多少の遅れは遅れにならないとは思う。本当に心配なのは冬香の方だ。
知らず集まった視線を受けて彼女は肩を縮こまらせた。
「最速でって、どれくらいですか? 私、あまり足は速い方ではなくて……」
「その人にとっての最速でいいわ。余計な寄り道だったり考え事をして立ち止まったりしなければいいの。有事の時は最速で行かなければ死ぬと思い込んで必死に走りなさい」
「わ、分かりました。頭に叩き込んでおきます」
この様子なら大丈夫だろうと思ったらしい咲夜は視線を冬香から外し、軽く飲み物を口に入れる。
「全員が訓練場に集まったら一番最初に着いた人が結界の霊具を起動すること。それをまずは清花が維持をしてから冬香と交代。東司と芹井さんはすぐに戦闘準備を済ませていつでも戦えるように待機。千洋さんは物資の管理と外部からの情報の精査、それに身の回りのお世話をして貰うわ。最後に私と清花は霊具を使って全国の退魔師を後方支援する。役割分担としては以上よ」
冬香が自分に出来るか不安になりつつも拳を握っていて、千郷も頭でその時のことを想像しているのか目を瞑って難しそうにしている。
「清花が後方支援で雨を降らせている間は建物を覆う結界の強度が下がるから破壊されたり何かしらの手段で侵入される可能性があるわ。そうなってもいいように冬香は常に訓練場の結界の強度を維持し続けること。東司と芹井さんは冬香に負担が掛からない程度に入ってきた敵を攻撃して欲しいの。何もない時間が長くなることもあるでしょうけど、貴方たちの役割はもしもの時の備えだから気を抜かないようにね」
「話が長いから短くまとめて」
「短く話してもいいけれど、話が分からないからって貴方が勝手なことをしたりしたら怒るわよ。清花が」
太々しい態度だった千郷が最後の言葉に揺れた。弱点が僕だと知っているからこその言葉だ。
「じゃあもっと分かりやすくするか紙に書いて渡してよ」
「そんな時間はないから自力で覚えなさい。それか首輪でもしたら? 繋いだ縄の範囲なら好きにしていいから」
言ったきり千郷の反応を無視して食事を進める。完全に取り合わない姿勢を見せていた。
救いを求めてこちらを見る視線には首を横に振って答える。
「冬香だって難しいことに挑戦するんだから、千郷もそれくらいは頑張ってね」
「こういうの苦手なのにぃ……」
「普通の妖怪退治って作戦会議とかするんでしょ? そういうので慣れたんじゃないの?」
「私は突撃役で頭脳担当は別にいたから」
「未成年や学生の間はそれで良かったかもしれないけど、もう流石に学生気分は卒業した方がいいかもね」
大人になってからも誰かの指示がなければ戦えないとか、年長者の立場になっても作戦立案を他人任せにするのはどうかと思うしそんな千郷を見たくない。こういうのは早くに矯正しないと癖になってしまう。
こうなったら奥の手を使うしかないか。
「それが無理なら咲夜に付きっきりで一日いればいいよ。そうしたら全ての判断をして貰えるし、有事の時は咲夜を抱えて移動出来るし一石二鳥だね」
「……………………頑張って覚える」
随分な扱いだけど仕方ない、という顔を咲夜はしていた。同時に私に押し付けようとするなと目で脅されたけども。
彼女は軽く息を吐いた後に口を開いた。
「清花と冬香が訓練している間、芹井さんは私のところに来なさい。今言ったことについて分からないところがあれば教えてあげるから」
「えー、私も清花たちのところに行こうと……」
「今この場でさっき言ったことを要約してでもいいから暗唱出来るなら行ってもいいわよ」
「……えっとー?」
つい先ほどのことだからまだ記憶に新しいはずだけど、そもそも覚える気のなかった千郷の脳内にその情報はない。
目を泳がせて必死に言い訳を探そうとしている中、咲夜の鋭い眼光が突き刺さる。
「これから冬香も清花の無理難題という難しい試練に挑戦するのだから、せめてこれくらいのことは頑張りなさい。私から逃げたら明日にでも芹井家に叩き返すわよ」
拒否は許さないという圧力に、遂に千郷は屈した。
「うぐぅ……。分かったわよ。でもあんまり複雑にしないでよね」
「はいはい。小学生でも分かり易いようにしてあげるから頑張りなさい。それでも分からなかったら赤ちゃん言葉にしてあげるわ」
「それはバカにし過ぎだから!」
行儀悪く箸で指差したところを倉橋さんに見つかって前後からの圧力に少し涙目になった千郷は置いておき、食事が済んだ僕と冬香は結界の修行に赴くことにした。




