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昼休みの作戦会議

六月の京都は、梅雨の湿気をたっぷり含んでいる。

校門までの坂道、紫陽花の色が日に日に濃くなっていくのを感じながら、私は鳳凰学院の校舎を目指していた。


昼休み。教室の窓際の席には、いつものメンバーが集まっている。


「ねえねえ、今日のショート動画のネタ、何がいいかな?」


明るい声でそう言ったのは、クラスのムードメーカー・藤原花音。彼女は将来SNSクリエイターを目指していて、放課後や休日によくスマホを片手に何かを撮影している。


「季節感なら、やっぱり紫陽花とか、錦市場の和菓子がいいんじゃない?」


落ち着いた常識人の橘美月が、参考書を閉じながらアドバイスする。それを隣で聞きながら、優等生の小野寺千歳がニコニコと相槌を打つ。


「あ、それなら僕が面白い場所知ってるよ。去年のデータだと、この時期は……」


森本健太がすかさず雑学を披露し始め、教室には他愛のない会話が花を咲かせる。

私はそんなみんなの輪の中で、お弁当の卵焼きを口に運んだ。

部活でどれだけ厳しく追い込まれても、この場所に戻ってくれば、私はただの「高校一年生」でいられる。このささやかな時間は、私にとって何よりもかけがえのないエネルギーだ。


「そういえば宗子、部活の方はどう? 監督の指導、相当ハードなんじゃない?」


千歳に聞かれ、私は少し考えてから笑った。


「うん、すごくハード。でもね、不思議と嫌じゃないんだ。理論的で面白いし、一つ一つがパズルみたいで」


私がそう言うと、健太が少しだけニヤリとした。


「パズルか。いい表現だね。バレーボールってのは、結局のところコートという空間に置かれた力のベクトルの集合体だからな」


「また健太の理屈が始まった!」


花音のツッコミに、教室中が笑いに包まれる。

私は窓の外、校庭の向こうに見える山々を眺めた。梅雨の晴れ間に見せる、鮮やかな緑。

バレーの試合でも、コートの広さやネットの高さ、ボールの軌道――すべてが計算されている。みんなと過ごすこの時間も、バレー部でボールを追う時間も、私にとっては等しく愛おしい「日常」の一部なんだ。


「……あ、そういえば」


私はふと、昨日監督から聞いた「リードブロック」の戦術を思い出した。相手の動きを見てから反応する、あの冷静な判断力。

それは、今の私にはまだ足りないものだ。


「みんな、今度練習試合観に来てくれない? 鳳凰学院の、全国を狙う戦い方を――一番近くで見てほしいんだ」


「もちろん! 絶対行く!」


花音の明るい声と、みんなの応援の言葉。

私の青春は、部活だけじゃない。こうして応援してくれる友人がいて、時折思い出す家族の記憶があって、そして明日への目標がある。


京都の街が梅雨の雨に煙る中、私は心の中で、今日やるべき練習メニューを反芻した。

全国大会。それはまだ、雲の上の目標かもしれない。

けれど、この心地よい友情と、積み重ねてきた努力があれば、きっとその雲まで届くと信じている。

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