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迷子の青空 35

ツグミは月夜野アカリを連れ林の中へ。

「あの子一人で大丈夫ですかね。」

「ノトがいるから問題ないだろう。」

黒猫ノト。問題ないのか?

いつも余裕を見せる魔女。

黒猫にその心を閉じ込められた罪深い魔女。

彼女の犯した罪とは何だろうか。

魔女オルンは「とても重い罪」だと言った。

月夜野アカリは自らの好奇心に負け口を開きかける。

「静かに。」

ツグミが歩と手を止める。

月夜野アカリもそれを真似息を殺す。

男二人、もしくはそれ以上の会話らしき音。

内容は聞き取れないが確かに声だ。

後方から、自分達が入った辺りからだ。

「その木の陰に入れ。静かにな。」

月夜野アカリは言われた通り木の後ろに回り込もうとする。

「あ、いや。ちょっと待て。」


乾いた枝を探す月夜野アカリ。

同じように少々距離を開けながら二人の男が薪となる枝を探し歩き

月夜野アカリの姿を発見する。

二人はこの後の展開は容易に想像できるであろう行為に及ぶ。

声をかけ、卑猥で下品な会話で笑い合う。

と予想していたのだが

一人が周囲を見回し

「お嬢さんお一人かな。」

「ええそうです。東に向かう途中です。」

「女性が一人で峠越えとは余程の事情があるに違いない。」

おや?紳士か?

「だがこの先恐ろしい怪物が待ち受けている。残念ながら峠は越えられまい。」

「怪物?」

「この辺りの人々は守護竜と呼び称えているが実は恐ろしい人食いだ。」

「貴方達はどうしてこの峠に?」

「我々は貴女のように知らずに通り抜けようとする者に引き返すよう勧告するためにいる。」

「そうですか。では一刻も早く山を降ります。」

「まあ待ちなさい。直に日が落ちる。夜の下山は危険だ。我々とあの小屋で共に一晩過ごそう。」

親切か?ただ親切な人なのか?

「まだ日はあります。今なら間に合うかと。」

月夜野アカリが脇を抜けようと並びかけるとその男の腕が伸びる。

「こんな峠のしかも林の中で迷ったら生きては戻れないな。」

肩を掴み脅す。

「峠で化物に襲われる可能性もあるな。」

やっと本性を表した。


「もしかして。ここを通る人を脅して引き帰らせているのは貴方達ですか?}

男は顔を見合わせ笑う。

「残念だがお嬢さん。貴女を通す事も帰らせる事も出来なくなった。」

「さあ山小屋へ行こう。殺すのは楽しんだ後だ。」

全身に鳥肌がっ。

「怖い」からではない。「気持ち悪い」からだ。

「私も楽しませてくれないか。」

笑いを堪えるのに必死なツグミに月夜野アカリは少々イラついた。

頼もしくもあるのだが不安もある。

私はこの人の強さを知らない。

声に驚く二人の男性。振り向きその女性の美しさにもう一度驚く。

魔女ツグミは二人の男の向こうにいる月夜野アカリに

「少し離れろ。」

と目配せをする。

殆ど音もせずに近寄ると男の顔が跳ね上がった。

「顎は硬いから掌がいいぞ。」

掌底。

「なっ」

「ほれ楽しませてみろ。」

隣の男が剣に手をかけるがそれを止めるのは殴られた男。

「怪我をしないうちに」

言い終わらぬ内に股間を蹴るツグミ。

「お前も靴の中に木の板を入れておくといい。」

ひぃっ

蹲る男。その隣の男は一瞬の事に呆気にとられるが

再び剣に手をかけ

「怪我をしないうちに」

と同じセリフを吐くのだが思い出したように二歩ほど下がる。

「脅すだけだとしても剣は抜くべきだな。その体制では説得力が無い。」

ツグミの助言に素直に剣を抜く男。

周囲の木々がとても邪魔くさそうだ。

こんな狭い林の中で長い剣を抜くとか馬鹿なのか?

離れた分ツグミが歩み寄る。

とても邪魔くさそうに剣を振り上げる男。

ツグミは立ち止まらない。

振り下ろされる前にすぐ目の前に立ち

「私に剣を振り上げた事を後悔させてやろう。」


月夜野アカリが山小屋からロープを持って戻るが

二人の男は意識を失ったままだ。

「死んでませんよね。」

「魔女は人を殺さないよ。」

「魔女なのに?」

「この世界で便宜上魔女と訳されているが医師のようなものだ。」

「この世界?医師?」

織機キリが言っていた。この世界にどうやら病院や医者はなく

その役割をどうやら魔女が担っている。

ツグミに確認しようと声をかけるが

「このまま吊るすか?」

ロープで縛り上げた二人の男の惨めな姿に

「いやいやいや。真面目にどうします?」

「真面目に言ったつもりだが。まあいい。メッセンジャーになってもらうか。」

「メッセンジャー?」

薪を担いで林を抜けると馬が二頭。

男たちが乗ってきた馬。食料と水が積まれている。

東の街で調達したその帰りだったのだろう。

「心配させたくないからキリには黙っていような。」

「そうですね。二人は帰ってくれって言いそう。」

馬に薪を乗せ引いて帰ると

ボロボロに汚れた織機キリが待っていた。


二人の男は西地区へ向かい徒歩で下山する。

ただ黙々と並んで歩く。

二人が裸足なのは魔女の嫌がらせだ。

日が暮れ、明朝早く東の国王都に到着し

「守護竜を騙り道を塞いでいたのは我々だ。」

と大声で喚きながら街中をウロウロと歩き回るる

何の騒ぎかと現れた騎士に捕らわれても

自らの意思とは無関係にそう言い続けるだけ。

国王から事情を聞いたメリアが

「あの魔女の仕業だ。」

と笑う。

「では貴女の責任で静かにさせてもらえないだろうか。」

困ったメリアを想像してニヤニヤする魔女ツグミ。


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