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羽撃く者達の世界 ~演劇部異世界公演~  作者: かなみち のに
第一幕 「羽撃け、友よ。」
28/181

「羽撃け、友よ。」 28

馬車に揺られながらの反省会。

「長さは?」

「演出は?」

「脚本は?」

「演技は?」

新入部員の赤堀サワと吉岡ハルナは

「喧嘩がはじまった」

と勘違いするほど部長と会計がエキサイト。

お昼休憩に馬車が止まると

男子部員も含めての侃々諤々。

「道具屋動き出しが遅いぞ。」

「アヅマ、音でか過ぎる。」

「仕立屋はもっと声を張れ。」

「サワはもっと感情を込めろ。」

「一年も何か言え。言わないとダメだ。」

「ミサト先輩最初の登場はもう少し弱弱しくないと。」

「道具屋先輩剣の振り方が大工仕事。」

馬の世話をしながら騎士団長は

「何とも賑やかな連中だ。」

「でも楽しそうですね。」

過去に演劇の経験のある騎士。

演劇の面白さに目覚めたか?


一行は夕暮れ前に次の目的地に到着する。

小さな山小屋。日本で言うバンガロー。

ハット。ヒュッテ。

むしろロッジに近いか。

主に商人、次いで旅行者が利用する国営の施設。

管理人がいて施設の整備維持を行う。

近くに川が流れ、小さな果樹園があり、

その先には丘、山。

とっとと小屋へと入ろうとする部員達。

「そのまま外で待て。」

2人の騎士が馬の手入れを管理人に頼み

「日暮れまでに食料を調達に行くぞ。」

現地調達。

狩猟


朝食を終えたお姫様一行は早々に支度。

同行するのは三人の騎士隊長。

騎士団長直下の大隊長。

他の騎士達はメリアの計らいにより既に前日に出発済み。

外はまだ涼しい。

地軸の傾きが小さいと考えるなら

春の東北北部から北海道南部あたりか。

「次の街までに二箇所野営地がある。」

「野営地って事はテントでも張るのかな。」

「おそらく木造の小屋だろうな。」

「山小屋的な感じかな。」

「お前の想像している山小屋の規模が判らん。」

頭上の黒猫と会話をする少年は

他者からは薄気味悪く見えるだろう。

よく言って独り言。


道中、聞こえる鐘の音とともに昼食休憩。

再出発後、まだ日の高いうちに野営地に到着する。

「キャンプ地だ。」

ロッジより小さいバンガローがいくつか並ぶ。

キャビンが近い。

水が引かれている。調理道具も揃っている。

管理人までいる。が、利用者を遇する業務は含まない。

「荷物を降ろしたらここに集合だ。」

「食事の支度ですか?」

「そうだ。」


現地調達。

「この先の丘から森を抜けたあの山までが狩猟場になっている。」

「その先には行くな。小さな竜の縄張りだ。」

野にはウサギ。森を抜けた先の湖にはカモ。

山にはイノシシやシカがいる。

牧場があり牛やヤギ、鶏も飼育されている。

「畜産業」が確立している国での「狩猟」はレジャーでしかない。

「遊びではないぞ。」

メリアは弓の準備をしながら不機嫌なキリに説いた。

「明日戦争が始まり、街や村が焼かれたらどうする。」

「両親を殺され、頼る者を失くした幼子は今日をどう生きる。」

「ここはその準備の場でもある。」

この国の子供達は、教育の一貫として「狩り」をする。

命を奪う技を学び、命を繋ぐ術を知る。

「お前の救おうとした子牛は、数ヶ月後には結局殺され誰かに食われる。」

「判っています。僕も肉料理は好きです。」

命を奪い糧にする業は承知している。幼い頃から目の当たりにしていた現実。

だからこそ、救える命は救いたい。


キリは山育ちだが弓も矢も触った事はない。

本体はカーボン。弦はアラミド

「そんなわけないか。」

木製。麻。中世あたりが舞台のファンタジーに出てくるような原始的な弓と矢。

「お前も持て。」

「いや僕は。」

キリは拒否するがメリアは無理やり押し付ける。

「剣がダメならせめて弓の扱いは覚えろ。」

狩猟に剣も使う習慣があるのだろうか。

トドメを刺す時?

「こいつに弓の扱いを教えてやってくれ。」

メリアが騎士の1人に指示をするのだが

「申し訳ありません。私はこれから狩りに行かねばなりません。」

「ああそうか。夕食に困るな。」

「姫様が直接ご指導なさってはいかがでしょうか。」

「え?ボクが?」

「姫様の弓の腕前は我が弓兵隊の誰よりも正確です。」

メリアはニヤニヤしている。

「その腕前とその指導力。姫様ほどの適任者はおりますまい。」

「判った。」

「ボクはキリの世話をする。他の者は夕食の支度を頼むぞ。」

宿泊施設の敷地内。

木の立て板にはイノシシのような獣の絵。

メリアの手本は見事に獣の「頭部を射抜く。

「動く相手の進行方向を見極める。頭を狙えば身体には当たる。」

見よう見まねで弓を引く。矢は届かない。

二度三度繰り返すが的には当たらない。

「弓を持つ腕は曲げるな。そうだ手首を固めろ。」

「深呼吸しろ。深く息を吸って、全て吐く。」

構えながら、メリアの言われるまま息をする。

「引け。」

キリは息を止めたまま弦を引き、狙う。

「放て。」



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