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羽撃く者達の世界 ~演劇部異世界公演~  作者: かなみち のに
第一幕 「羽撃け、友よ。」
25/181

「羽撃け、友よ。」 25

少年は

「この世界の黒猫は喋るのかと思った。」

と笑った。

「こいつは馬や牛と喋るからな。不思議ではない。」

お姫様のメリアも笑った。

そうだった。この子はずっと動物と語り合っている。

他の異世界者達と語っている姿は見ていない。

「ピータンの鼻面引っ叩いた時はさすがに驚いたよ。」

「笑い事ではありませんっ。」

メリアがさらに笑うのでルメニーがイライラする。

なんなんだこの少年。

何者なんだ。

「異世界の者は皆動物と語れるの?」

キリは二人が何を言っているのか判らない。

馬やら牛やら何の事を言われている?

ドラゴン叩いたのはまあ事実。

この黒猫は、何だろう。うん判らない。

「皆かどうか知りませんが少なくとも僕は喋れません。」

本人は「喋れない」と言っている。

でも待て。この子は黒猫の言葉が判る。

「さあ王都へ向けて出発しよう。」

「その前に区長に話を。」

「ああそうだったな。」

メリアはまた笑う。

このお姫様はこんなに笑う子だったか?

私は誰かに魔法をかけられているのか?

ルメニーは今頃になってこの少年が恐ろしくなった。


駐屯地には戦に備え、各地から集まった騎士達が集う。

「この地が再び戦地になる事はない。愛する者の元へ帰ろう。」

メリアは騎士達に直ちに故郷へ帰還するよう命じ、

各地で広がる噂を正すように依頼した。

「見た者も多いだろう。ピータンは復活した。」

キリの手を取り

「彼が守護竜の守護者、キリ。」

「うぇあっそんな重い肩書きはダメです。」

騎士隊長は、剣を捧げ号令する。

「守護竜の守護者、キリ殿に捧げよ。」

騎士達は、揃い、踵を合わせ、

異世界からの少年に剣を捧げる。

本気で叫びそうになった。逃げ出したい。

いっその事黒猫と一緒に他所の国に逃げ出したい。

キリは至って真面目に脱出経路を思案する。


メリアはルメニーを引き連れ区長の元へ。

オルンは駐屯地の整理をすべく役人の元へ。

キリの頭上の黒猫を連れて行こうとするのだが

「いたたたっ。ノトさん爪は。」

嫌がる黒猫。

「ノトっ。いい加減に。」

「ああっ僕が面倒見ますから。」

離れようとしない黒猫。

少年の頭が切り裂かれても困る。

「あまり遠くに行かないように。」

「判っています。埠頭で釣りでもしていますので。」

オルンが指示すると騎士は釣り道具一式持って現れる。

例えのつもりで言ったのに本当に用意されてしまった。

その港では貨物船から積荷を降ろしていた作業員が何やら喚いている。

「受け取れない」とか「安すぎる」的な会話がキリにも聞き取れた。

「何の騒ぎですか?」

「船の制限をしていたからちょっと問題が増えてね。」

キリの不安を他所にオルンは事も無げに言ってのける。

「すぐに再開するから少し待ってくれ」が毎度の返答。

王子レミーはそう言って解決させていた。

魔女と、騎士達がその騒ぎを収拾させようと集まる

あまりの物々しさに積荷の上の作業員が逃げようとしたのか、

それともただ懇願に出向こうとしただけなのか

足を踏み外したその男は貨物船の縁から足を滑らせ、港へと落ちる。


大した高さではない。

そのまま足から飛び降りたなら、着地さえ誤らなければ無傷で済む。

が、バランスを崩し、整う前に背中を厚い板に叩きつけた。

呻き声さえあげず、そのまま動かない。

群がる人々。

「魔女殿は。」

「息をしていないぞ。」

キリは集まる人を押し退け抜け出し倒れた男の元へ。

後頭部に手を当て出血を確認。

「頭は打っていない。」

竜の留め具を外しローブを脱ぎ男の足の下へ。

同時に額を押して気道を広げる。

鼻と口に耳をあて胸の動きも確認するが確かに呼吸が止まっている。

自身、一度大きく深呼吸をする。

慌てないよう、リズムを取りながら心マッサージを開始。

落ちた男性はすぐにむせたような咳をする。

キリは彼を横向向きにし回復姿勢へ。

「オルンさん。気付薬的な物はありませんか?」

「蜂刺されの薬とか。」

オルンから薬の小瓶を受け取る。

蓋を少し開け男性の鼻元へ。

覚醒し、痛みに襲われるが自発呼吸を再開させる。

この世界には医者とか病院とかの概念はあるのかな。

「何処か特に痛む箇所はありますか?」

男性はまだ呼吸を苦しそうに行いながら

「体中痛い。」

「ですよね。」

キリは男性の腕や脚を確認する。

「左腕にヒビくらい入っているかもしれません。」

下が硬いコンクリートやアスファルトではない。

背骨が折れるほどの衝撃でも無い。

きっと大丈夫だろう。


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