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羽撃く者達の世界 ~演劇部異世界公演~  作者: かなみち のに
第一幕 「羽撃け、友よ。」
24/181

「羽撃け、友よ。」 24

レミーは若宮アオバ。

メリアは仕立屋。

ルメニーはミサト。

騎士団長は道具屋笠懸ヒサシ。

サワにはナレーションを担当してもらおう。

アヅマ。すまんが今回は裏方に徹してくれ。

「それはそのつもりだけど部長は?」

「私はピータンの中に入る。」

「だめです。私が中に入ります。」

言い出したのは仕立屋吉岡ハルナ。メリア役。


「君はカワイイ顔をしているから。ヒロインに向いている。」

月夜野アカリは吉岡ハルナの頬を撫で、髪をあげる。

艶めかしい。

「だめです。部長がメリアお姫様をやるべきです。」

「私は今回裏に」

「だめです。部長がメリアお姫様をやるべきです。」

同じことを言った。

恥ずかしいから?勿論そうだ。

演技経験がないから?勿論そうだ。

自信も経験もない。

違う。

今回ばかりは違う。

私に度胸があって台詞が覚えられて演劇経験豊富だとしても

今回は違う。

「演らないとダメなんです。お姫様を。部長がっ。」


配役が決まる。

レミー 若宮アオバ 主役

メリア 月夜野アカリ

ルメニー 吉岡ハルナ

騎士団長 笠懸ヒサシ

ピータン 倉渕ミサト

ナレーション 赤堀サワ

各種効果 吾妻アヅマ


タイトル 

守護竜と二人の王子


あらすじ

守護竜が病に倒れる。

王子は薬草を捜しに旅に出る。

国が他国の竜に襲われる。

騎士団長とメリアが奮闘するが

危機に陥る

王子が帰国、竜を救い

国をも救う。


脚本を練る月夜野アカリと赤堀サワ。

全員で意見を言い合いながらなので

本筋さえ決まればサワの仕事は書記。

「違うぞ。」

「違うって?」

「君の仕事は取捨選択だ。」

「なんて?」

「最終的な台詞の決定権は君にある。」

責任重大だ。

高校の演劇部ごときだから皆でシナリオを作り上げるが

本場の演劇は違う。

脚本家は敬意を払われ

役者はその意図を汲み演技をする。

本の解釈が出来ないようでは役者ではない。

台詞の言い回し一つ一つに意味があり、魂が込められている。

「君にそこまでやれとは言わない。」

たかが高校演劇部。

「だけど、君が本気で演劇の世界で生きたいと願うなら忘れないでほしい。」


最も忙しかったのは仕立屋吉岡ハルナ。

脚本を作る赤堀サワと打ち合わせ

ピータンを軽量化するためにその殆どを布で作るため道具屋と打ち合わせ

レミー、騎士団長、ルメニーの各衣装の作成。

(メリアの衣装は制作済)

ルメニーの台詞を覚えながらの夜なべ。

時折自分のスマホを取り出し

何やら眺め

「はぁかわいい」

と呟くのが気になった部長の月夜野アカリ。

「だめです。これはその。ごにょごにょ。」


黒猫ノトは魔女の手から逃れ、歩み寄ったキリに飛びつく。

キリは黒猫を抱く。

「君が勇者キリか。私はオルン。」

魔女。

と言ってもとんがり帽子は被っていない。杖も持っていない。

とりわけ肌を露出した衣服を身に着けているでもない。

「普段着」ではなく、「平服」とか軽い「礼服」的な。

メリアとキリが纏っている錆浅葱色ではなく短い黒のローブが魔女らしい部分だろうか。

黒猫は、昨日王子を乗せて飛び去った守護竜を見た。

数日の内にもう一度現れる。と確信があったわけではない。

それでもこの停滞した状況では縋るしかない。

魔女の手から逃れ港でウロウロしていた。

そこへキリを乗せた守護竜が現れる。

朝食を求め少々離れていたのが致命的だった。

残念ながら今一歩届かず今に至る。

少年と黒猫の出会いのいきさつに、

「突然現れてピータンに乗せろって。」

キリの説明で魔女のオルンはほぼ正確に黒猫の行動を把握した。


「ノトが人に抱かれてる。」

ルメニーはキリの胸の中のノトに触れようと手を伸ばすが

黒猫は威嚇こそしないものの

その手を自らの手で払い、身体には触れさせようとしない。

ノトはキリの頭の上に登る。

ルメニーはそれを見て、キリの発言の違和感に気づく。

「ねえ、今何と言ったの?」

「はい?僕何かおかしな事言ってましたか?」

「ノトが現れて、ピータンに乗せろとか。」

「はい。」

「乗ろうとした。の間違いじゃないの?」

「ああ、はい。僕を踏み台にジャンプしたけど届かなくて。」

そうよね。当たり前よ。ルメニーは己の勘違いを恥ずかしいと

「そうしたらお前契約者なんだからもう一回呼び戻せって。」

と続けたキリに

「待て、待って。貴方はこの黒猫の言葉が判るの?」

「はい?」


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