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28話 VSゴリアテ(決着)

何とかゴリアテの一撃を防いだ出雲だが、肝心の槍が壊れてしまった。

そんな出雲にゴリアテの追撃が迫る!

はたして出雲の運命は!?


 気が付くと僕はゴリアテから数mの位置に座り込んでいた。どうやら折れた槍の柄だけでゴリアテの矛を防いだようだ。

 長年の修行で見に染み付いた皐月流の動きは反射的に防御の形をとったのだろう。祖父に感謝しなきゃいけないね。


「武器がなければ試合にならんだろう。棄権したらどうだ?」


 ゴリアテの言葉を聞いた僕は自然と穂先が折れてしまった槍を見る。穂先は無惨にも折られ、先ほどの防御した時についたのか柄にはヒビが走っている。槍としても棍としても使えそうにない。


「ロッタに謝らないといけないな……」


 僕はそう呟きつつ壊れてしまった槍をアイテムストレージにしまう。幸いにも体には大したダメージがなく、戦いを続ける事は出来そうだ。


「まだやるのか?」


 起き上がり何回か屈伸運動をしている僕にゴリアテが声をかけてくる。彼としてはもう勝ったと思っていたのだろう。


「そうだね、ここで負けたら皆に会わす顔が無いからね」


 僕はゴリアテにそう返しながら腰に差している刀へ手を伸ばした。


「ふっ面白い」


 ゴリアテが薄く笑うのを見ながら右手から刀を抜く。


「神風の伊勢の主に願い申す。一度吹けば全てを薙ぎ払うその御力を我が刃に宿したまえ……」


 鞘から抜きつつ力ある言葉を紡ぐ。抜き放たれた刀身は薄い緑色の光を放ち始める。


「千早振るわが大君に願い申す。天より下すその霹靂を我が刃に宿したまえ……」


 次に同じように言葉を紡ぎながら左手でもう一振りの刀を抜く。こちらは薄い黄色の光を放っている。


「我が一振りは神の息吹きなり、我が一太刀は神の怒りなり! 目覚めよ【風神】【雷神】!!」


 僕の言葉が言い終わると同時に刀から爆発的な力が流れ出る。


「面白い。実に面白いぞ! イズモ!!」


 ゴリアテは今まで以上に嬉しそうに、楽しそうに声を張り上げた。


 さぁて、反撃開始だ!

 僕はゴリアテに向かって刀を振り上げた。


★☆★☆★☆★☆


 僕は魔法武器を作っている時迄本当の意味でここが別の世界だと理解できていなかったのだろう。

 今までと同じように、ゲームの中と同じように武器を作っていた。しかし、オーク討伐の際に使用した【ソールイーター】の能力が変化した事でもう少し慎重にならなければいけなかったのだ。


 『この世界の武器は名付けられた力を宿す』


 ゲームの時は『格好いい』や『強そう』と言った理由で名前を付けていた。しかしこの世界ではその付けられた名前通りの力を持ってしまうのだ。


 ロッタに作ってもらった刀に名前を付ける時、風属性だから【風神】と【雷神】にしようと安直に付けてしまった。すると初心者のロッタが作れる筈がない程の力を宿してしまった。

 さすがに神の力がそのまま宿る事はなく、名前も【風神(レプリカ)】となっていたが、適切な素材で僕が作ったならと思うとちょっとゾッとする。

 ちなみに、発動前の祝詞のような呪文も自動に設定された。決して僕の趣味じゃない。


 今ゴリアテとの距離は目測で10m。当然刀の間合いではない。その間合いでいきなり右手の風神を腰だめに構えた僕をゴリアテは怪訝そうに見ている。


「吹き荒れろ、禍津風」


 振り抜いた刀から突風が発生する。突風は扇状に広がるとゴリアテに襲いかかる。しかし、彼は右手を顔の正面に持ってくるとそのまま耐えてしまった。後ろで観戦していた人達はまとめて吹き飛ばされたと言うのに、まったくなんて男だ。

 だが右手で顔を被っているのなら次の攻撃は避けられないだろう。僕は左手の雷神を高々と掲げると一思いにに振り下ろす。


「穿て、霆撃ていげき


 振り下ろされた刀と連動するように何もない上空から一筋の光がゴリアテ目掛けて落ちてきた。まさに青天の霹靂とはこの事だろう。

 ゴリアテに着弾すると同時に轟音が鳴り響くと、観客も一同に耳を押さえている。雷系の技は激しいねぇ。


 轟音が鳴り止み、落雷の地点を見るとゴリアテが先ほどと同じ格好のまま固まっている。これは勝ったかな?


「は、反則だ! おい審判、今使ったのはスキル攻撃ではないのか!?」


 ゴリアテの状況を見たアンドリューが審判に猛抗議をし始める。襟元を掴み唾がかかる距離で怒鳴りあげるアンドリューに審判も困惑している。


「言い掛かりは止めて頂けます?」


 僕は刀を持ったまま審判とアンドリューに近づいていく。アンドリューはこちらを向くと先ほどの勢いのまま今度は僕に怒鳴ってきた。


「貴様! 白々しいにも程があるぞ!! あれだけスキルを使っておいて何が言い掛かりだ!!」


 僕はわざとらしくため息をつくと審判に向かって刀を差し出した。


「どうぞ、ギルドの鑑定士に調べてもらって下さい。不備があったのならその場で僕の負けでいいですよ」


 審判さんは恐る恐る刀を受けとると試合前に鑑定をしてくれたギルド職員の方へ走っていった。僕は審判さんの背中を見送りつつ、折れた焔の穂先を回収する。折れてしまったとは言えロッタが作ってくれた大切な物だからね。



 しばらく待っていると審判さんが鑑定士と共にグラウンドへと戻ってきた。どうやら鑑定が終わったようだ。


「お待たせしました。これより鑑定結果をお伝えいたします」


 アンドリューは審判さんの言葉にゴクンと唾を飲み込んだ。そんなに緊張したって結果はわかりきっているのにね。


「イズモ氏が提出して下さったこの二振りの剣ですが、鑑定をした結果……」


 審判さんは某クイズ番組の司会者よろしく間を溜めに溜め僕達の顔色を伺っている。いや、そんな事しなくていいから早く言ってよ。


「スキルが……確認されました」


「ほら見たことか!! さぁ謝罪をして負けを認めてもらおうか!!」


 アンドリューは勝ち誇った顔でこちらを指差してきた。まったく、人を指差すなと教わらなかったのかな? それに審判さんの話しはまだ続きそうだよ。


「待って下さい、アンドリュー氏。話しはまだ終わっていません」


「へ?」


 ほらね、話しは最後まで聞かなきゃいけないよね?


「刀にスキルは確認されましたが、今回の試合には使用されておりません。よってイズモ氏はルールを破ってはおりません」


「な、なんだってーーーー!!」


 グラウンド中にアンドリューの驚きの声が響き渡る。と言うか結構ノリいいね。


「う、嘘だ……それではこの試合は……」


 アンドリューは未だに起き上がれないゴリアテを見る。グラウンドに横たわった彼はギルド職員に介抱されており、起き上がる気配は未だない。


「貴方の負けですよ。アンドリューさん」


 僕はこれでもかと笑顔を作りアンドリューに話し掛けた。アンドリューは目を見開き何かを言おうと口を動かすが、言葉が出てこないようでただただパクパクと動いているだけだ。


「この私が負ける?……ではあの剣は……嫌だ……嫌だいやだイヤだ!!」


 急に話し出したと思ったらアンドリューは頭を激しく振り、そのまま走り出してしまった。

 走り出したアンドリューは静止を呼びかけるギルド職員や道中の観客達を薙ぎ払い一目散に景品が置いてある檀上へと駆け上がっていく。そして置いてあった剣を抱きしめるとそのまま叫び出した。


「これは私の物だ!! 誰にも渡さないぞ! 渡してなるものか!」


 大人の駄々程見ていて見苦しいものは無い。それにしたってまずは自分の代わりに戦ったゴリアテに労いの言葉を掛けるものではないのか? あ、何かだんだん腹が立ってきたぞ。


「すみません。その刀、返してもらえます?」


 僕はアンドリューの奇行に呆けているギルド職員から二振りの刀を返してもらう。軽く握りを確認すると僕は右手に持った雷神を高々と振り上げた。


「先程からこの刀の力を見たかったようですので、見せてあげますよ……鳴り響け《百雷》!!」


 文字通り百の雷が会場中に鳴り響いた。その音は凄まじく、誰一人例外なく耳を塞ぎその場にしゃがみ込んでしまうほどだった。その結果、僕とアンドリューを隔てるものが全て取り払われた。僕は雷神を鞘へと戻すと左手に持った風神を腰だめに構える。


「切り裂け《鎌鼬》!」


 僕はそのまま風神を力一杯に横薙ぎに振るう。数瞬の静寂ののちキンッと金属音が会場に響いた。普段なら絶対に聞き漏らすような小さい音だったのだが、静寂に満ちた会場ではこれ以上無いほど大きな音に聞こえた。


「何を……」


 何かを言い掛けたアンドリューは自分が抱え込んでいる剣を見て言葉を無くした。何故ならたった今まで大事に抱え込んでいた剣が根元から綺麗に切断されていたからだ。

 先ほど会場に鳴り響いた金属音はこの剣が斬られ、柄の部分が床に落ちた音だったのだ。


「な……なんで……」


 おお、ぶっつけ本番だったけど意外とうまく斬れたよ。アンドリューも一緒に斬れたらどうしようかと思ったけど……まぁ斬れたら斬れたでしょうがないよね。それにティターニアにも剣を破壊しろって言われてたし、問題ないよね。


「さてと、スキルを使っちゃいましたけど……これで負けになります?」


 僕は隣にでしゃがみ込んでいる審判さんに向って声を掛けた。審判さんはハッとした表情で顔を上げると辺りを見回すと勢いよく立ちあがると僕の腕を掴み高々と宣言した。


「ゴリアテ氏の試合続行が不可能と判断し、この試合……イズモ氏の勝利とします!」


 審判さんの言葉を聞いた瞬間スッと体から力が抜けていくのを感じた。そして僕の意識はそのまま闇の中へと落ちて行った。


☆★☆★☆★☆★


「ぱんぱかぱーん!!」


 どうしました? 今日は髄分と機嫌がいいですねティターニアさん。

 相変わらず真っ暗な空間から今まで以上に元気なティターニアの声が聞こえてきた。


「貴方たちの世界だとこういうのが流行っているんでしょ?」


 いや、知りませんよ。僕はブラウザゲームはやりませんから。


「あら? そうなの? でもブラウザゲームって……まぁどっちでもいいわ」


 ああ、もう初めて会ったときのイメージは微塵もないですね。


「あら? 出雲はああいうのが好みなのかしら?」


 いや、どっちでもいいんですけどね。いつの間にか名前も呼び捨てだし……。


「“精霊の女王”とか何とか言われているけど、普段の私はこんなものよ」


 なるほど、イメージが独り歩きしてる感じなんですね。

 そのためにキャラを作るのは大変だろう。


「そうなのよ~わかってくれる? もう疲れちゃったのよ」


 僕の前でも気を使ってくれてもいいんですよ?


「私も最初はそうしようかと思ったのよ? でもほら、お願いをするのに本性を隠すのはフェアじゃないじゃない?」


 そういうものですか? 僕は別に気にしませんけど。


「ふふっそういうものよ。ああ、そうそう、忘れるところだったわ。

 コングラチュレーション! 無事私のお願いを叶えてくれてありがとう!!」


 それって一番重要な事だったんじゃ?


「もう! 小さい事を気にしていたら大きな男の人に慣れないゾ?」


 はっ! そうなのか、だから僕は何時まで経ってもこんなに小さい……ってやかましいわ!


「出雲のノリツッコみって初めて見たわ。でもそんなに上手じゃないわね」


 ほっといてください……それで? お祝いの言葉をくれる為にここに呼んだんですか?


「それもあるけど、もう一人。出雲にお礼を言いたい子がいるのよ」


 はて。そんな人がいるのだろうか?


「ほら、照れてないで出ておいで」


 姿は見えないのだが、確かにティターニアは後ろに向って手招きをしたように見えた。それに、最初に比べれば微かだが輪郭らしきものが見えなくもない?


「ぱ……ぱんぱかぱーん!!」


 何て考えていたらいきなり小さな女の子の声が暗闇に響きわたった。

 声のした方を見るとそこには巫女服を着た女の子が精一杯両手を真上に伸ばした姿で立っていた。

 髪の色は綺麗な黒色をしており、こういうのを濡れ羽色とでも言うのだろうか。おかっぱよりも少し長い位の髪型が巫女服にマッチしている。身長は僕と同じ位かそれよりも少し小さい感じだから小学生くらいだろうか? それにしても小学女児と同じ位の身長の成人男性って……あ、ヤバイ何か泣きそう……。



「あう……どうしましょうティターニアさん、出雲さんが固まっちゃいましたよ!」


「…………」


「ティターニアさんまで黙らないで下さい!」


 巫女服の女の子は誰も居ない虚空に向って両手をグーにして一生懸命に振っている。多分あそこにティターニアが居ると思うんだけど、今の僕には女の子がモンキーダンスを踊っているようにしか見えない。


「もう……この登場方法なら出雲さんのハートもバッチシって言ったじゃないですか!」


「ごめんなさいね、どうやら出雲には通じなかったようよ。それより自己紹介しなくていいの?」


 ティターニアの言葉で気が付いたのか女の子はこちらを振り向くと勢いよく頭を下げた。


「名乗りもしないですみません! あたしはあの剣に封じられていた磐筒イワツツと申します。これからよろしくお願いします!!」


 磐筒と名乗った女の子はこれ以上ないってほど嬉しそうな笑顔でこちらを見てきた。どうやらこの子とは長い付き合いになりそうな予感がする。

出雲:レベル17 職業:剣士 サブ:工匠

装備:布の服・革の胸当て・革のブーツ・脇差【風神(複製)】【雷神(複製)】


評価ボタンを押して下さった方々ありがとうございます!

これからもこれを励みに頑張りたいと思います!!

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