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FATED FAIRY TALE ~運命なんてクソくらえ~  作者: デスティニー誠
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3/14

猟師

 ――赤ずきんの母親は、狼に喰い殺される。


 運命の書に浮かんだ一文を、赤ずきんは何度も読み返した。


「お母さんが……私の代わりに?」


 自分が森へ行かなかったせいで、運命が母親へ移ったのだ。


 まだ間に合うかもしれない。


 赤ずきんは涙を拭うと、運命の書を鞄に押し込んだ。物置から薪割り用の斧を持ち出し、家を飛び出す。


「待ってて、お母さん!」


 母親が出発してから、それほど時間は経っていない。


 走れば追いつける。


 赤ずきんは重い斧を抱え、森の道を駆けた。


 枝が腕を引っ掻き、木の根に何度も足を取られる。それでも立ち止まらなかった。


 やがて、前方から一人の男が歩いてきた。


 肩に猟銃を担ぎ、腰には獲物を捌くためのナイフを下げている。


「猟師さん!」


「おや、赤ずきんじゃないか」


 村の猟師だった。


 赤ずきんは安堵しかけ、すぐに違和感を覚えた。


「どうしてここにいるの?」


「どうしてって、狩りの帰りだよ」


「お母さんは?」


「お前のお母さん?」


 猟師は不思議そうに首を傾げた。


「今日は会っていないが」


「そんな……」


 母親は一人で、おばあちゃんの家へ向かったのだ。


 赤ずきんが何を言っても信じず、猟師に同行を頼んだふりをして。


「猟師さん、お願い! 一緒に来て!」


「何かあったのか?」


「お母さんが狼に襲われるの!」


 赤ずきんは運命の書を取り出した。


 猟師には白紙にしか見えない。それでも赤ずきんは、巨大な狼が現れること、母親が喰い殺されると書かれていることを必死に説明した。


 猟師は黙って話を聞いていた。


「本のことは信じられない」


「でも!」


「ただ、お前を一人で森の奥へ行かせるわけにもいかない」


 猟師は肩に担いだ猟銃を握り直した。


「おばあさんの家まで一緒に行こう」


「ありがとう!」


 二人は森の奥へ急いだ。


 いつもなら鳥の声が聞こえる森が、今日は不気味なほど静かだった。


「何か変だ」


 猟師が呟く。


「獣の気配がまるでない」


 赤ずきんは斧を強く握った。


 しばらく進むと、木々の隙間から小さな家が見えてきた。


 おばあちゃんの家だ。


 煙突からは煙が上がり、窓には明かりが灯っている。外から見る限り、変わった様子はない。


「お母さん!」


 赤ずきんは扉へ駆け寄った。


「待て。俺が先に中を確認する」


 背後から猟師に止められたが、赤ずきんは構わず扉を開けた。


 蝶番が、ギイィと音を立てる。


 部屋の奥には寝台があった。


 その上には、おばあちゃんが横になっている。


 寝台の傍らには、母親が立っていた。


「お母さん!」


 間に合った。


 そう思った直後、赤ずきんの足が止まる。


 母親の隣に、もう一人いた。


 肩に猟銃を担ぎ、腰にナイフを下げた男。


 村の猟師だった。


 赤ずきんは振り返ることができなかった。


 背後から、ゆっくりと誰かの足音が近づいてくる。


 お母さんの隣に村の猟師がいる。では――。


 私の後ろにいる人は、誰?

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