第9話「イノシシは曲がらない」
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建国プロジェクト:状況報告
第9話開始時点
現在地:移動中
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人員 :コア10名/総勢21名
資金 :銀貨5枚
食糧 :安定確保
武器 :ロガの剣が限界
拠点 :移動中・拠点なし
安全度:警戒レベル高
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移動中のことだった。
ロガが使っていた剣が、折れた。
3本目だった。
シルト:「また折れましたね」
ロガ:「人間の作った武器では限界が来る」
シルト:「ロガさんのパワーが規格外なんですよ。
剣が可哀想だ」
ロガ:「次をどうする、シン」
信:「また奪うしかないか。
根本的な解決になってないな」
同じ頃、ダレトが信に近づいてきた。
ダレト:「信さん、一つお願いがあるんですが」
信:「どうした」
ダレト:「包丁が欲しいんです。
ちゃんとした包丁が」
信:「今のじゃ駄目か」
ダレト:「魔獣を捌くとすぐボロボロになって。
1週間で刃が欠ける。
食材を活かせていない気がして」
信:「それは困るな」
信が仲間たちを見渡した。
武器の品質。料理道具の品質。移動しながら調達するにも限界がある。
信:「鍛冶職人が必要だ」
ミネルヴェ:「鍛冶といえばドワーフだが」
ドミナス:「ドワーフは中立です。
獣人の国に協力するとは思えない」
シルト:「実は一つ、面白い情報があります。
ドワーフを凌ぐ技術を持った
猪人がいるという噂が」
ロガ:「ドワーフを、凌ぐ」
シルト:「ドワーフの工房で技術を叩き込まれたが
用済みになって捨てられた。
今は廃工房に一人で潜んでいるらしい」
信:「会いに行きます」
廃工房
街道から外れた山の裾野に、古い石造りの工房があった。
煙が出ていた。中から金属を叩く音が聞こえた。
信・ロガ・シルトの3人で近づいた。
扉は開いていた。
中に、猪人がいた。
がっしりした体躯。灰色の毛並み。大きな鼻。手が異様に器用そうだった。今は小さな金属の板に、細かい紋様を刻み込んでいた。
首輪に傷跡があった。自分で外そうとした跡だった。
猪人は信たちを見た。目が細くなった。
フォーヌ:「人間か」
信:「はい」
フォーヌ:「用はない。帰れ」
信:「少し話を聞いてほしい」
フォーヌはハンマーを信に向けた。
すると、ロガが折れた剣を取り出した。
身構えたフォームの前に、無言で置いた。
フォーヌはその剣を手に取った。断面を見た。刃の厚みを確かめた。鋼の質を爪で確かめた。
フォーヌ:「なんだこれは、ひどい作りだ。
よくこれで戦えたな」
ロガ:「折れた」
フォーヌ:「当然だ。
どこの工房が作った」
ロガ:「人間の兵士から奪った」
フォーヌ:「……なるほど」
(剣を置く)
「直す価値もない。
一から作ったほうがいい」
ロガ:「作れるか」
フォーヌ:「作れる。
だが、なぜ俺が作らなければならない」
フォーヌは作業に戻る。
信が前に出た。
信:「フォーヌさん、ドワーフの工房で
技術を学んだと聞きました」
フォーヌ:「誰から聞いた」
信:「情報屋から」
フォーヌ:「……新しく確立した技術を盗まれて捨てられた。
それだけだ」
信:「一つだけ、違う見方をしていいですか」
フォーヌ:「何が違う」
信:「盗まれたんじゃない。
あなたがドワーフに伝えたんだ」
フォーヌ:「……伝えた?
俺は伝えたくなかった」
信:「結果として伝わった。
あなたの技術が本物だったから
伝わってしまった。
それは誇っていいことだ」
フォーヌ:「……」
信:「そして今、あなたはここで
ドワーフが知らない次の技術を
一人で作り続けている。
誰も追いつけない場所に
もういる」
フォーヌ:「……俺が、次の技術を」
信:「ここで腐らせるには
もったいない技術だ」
フォーヌは黙った。
長い沈黙だった。
金属を叩く音が止んでいた。
信:「もう一つ聞いていいですか」
フォーヌ:「……何だ」
信:「魔獣の肉に耐える刃は作れますか」
フォーヌ:「魔獣の肉?」
信:「うちに11歳の料理人がいます。
魔獣を捌くたびに包丁がボロボロになる。
1週間で刃が欠けてしまう。
解決できますか」
フォーヌの目が変わった。
職人の目になった。
フォーヌ:「魔獣の肉に耐える刃か。
魔獣の素材を鋼に混ぜれば
あるいは」
(考え込む)
「……面白い課題だ」
適性鑑定
その瞬間、信の視界に文字が浮かんだ。
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適性鑑定:猪人・フォーヌ(推定40歳・男)
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鍛冶技術 ★★★★★
ルーン魔術 ★★★★★
金属への親和性 ★★★★★
設計・構造把握 ★★★★★
土木・建設 ★★★★☆
現在の状態: 孤立した職人気質
怒りから誇りへの転換点
新しい課題への燃焼
現在の能力発揮値:35%
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35%。この人はまだ、本来の力の3分の1しか出せていない。
条件と加入
フォーヌ:「条件がある」
信:「聞きます」
フォーヌ:「1つ。作った物の使い道は俺が決める。
人を傷つけるためだけの武器は作らない」
信:「了解です」
フォーヌ:「2つ。粗悪な物は作らない。
妥協はしない。
時間がかかっても文句を言うな」
信:「むしろそうしてほしい」
フォーヌ:「3つ。ドワーフとは取引しない」
信:「今のところ、その予定はないです」
フォーヌ:「……それ以上の条件はないか」
信:「ないです」
フォーヌ:「……人間にしては、まともだな」
ロガ:「俺も最初はそう思った」
シルト:「ロガさんが珍しく喋った」
ロガ:「うるさい」
出発前
フォーヌが工房の中を見渡した。
棚に並んだ金属の塊。道具。材料。
一つ一つ手に取って確かめた。持って行くものと残すものを選り分けた。
バーナデッド:(傍で待機しながら)
「分類しながら教えていただけますか。
管理台帳に入れます」
フォーヌ:「……台帳?」
バーナデッド:「物資の管理台帳です。
何がどこにあるか、常に把握します」
フォーヌ:「……それは、助かる」
バーナデッド:「では、こちらの金属から」
2人が黙々と作業を始めた。
言葉は少なかった。でも手が止まらなかった。
シルト:(信に小声で)
「あの2人、相性がいいですね」
信:(小声で)「職人同士だからな」
シルト:(小声で)「バーナデッドは
職人だったんですか」
信:(小声で)「物と向き合う人間は
みんな職人だよ」
夜、フォーヌが作業台に向かった。
移動中でも、手を止めなかった。
火打ち石で小さな炉に火を入れた。金属を熱した。叩いた。
夜明け前、ダレトのところに来た。
小さな包丁を差し出した。
フォーヌ:「使ってみろ」
ダレト:「え、もうできたんですか」
フォーヌ:「試作品だ。
魔獣の爪を鋼に混ぜて、
刃にルーン文字を刻んだ。
魔獣の素材に耐性を持つ紋様だ」
ダレト:(受け取る)
「……重さが、全然違う」
フォーヌ:「刃を見ろ。文字が見えるか」
ダレト:「……細かい紋様が入ってる」
フォーヌ:「そのルーン文字が
魔獣の毒素と硬度を
刃が受け流すようにしている。
切れ味はどうだ」
ダレト:(試し切りで魔獣の肉を両断)
「……すごい」
フォーヌ:「感想はそれだけか」
ダレト:「刃が吸い付く感じがします。
食材に、ちゃんと向き合える気がする」
フォーヌ:「……なるほど」
(メモを取る)
「ルーン文字の配列を変えれば
まだよくなる。次の試作に活かす」
ダレト:「もっとよくなるんですか」
フォーヌ:「当然だ」
ロガが遠くからそれを見ていた。
ロガ:(信に)「俺の武器は」
信:「順番を待ってよ」
ロガ:「……わかった」
シルト:「ロガさんが素直に待つと言った。
また記念すべき瞬間です」
ロガ:「うるさい」
シルト:「はいはい」
朝、全員で歩き出した。
フォーヌが大きな荷物を背負っていた。材料が全部入っていた。
信:「重くないですか」
フォーヌ:「材料を置いていくほうが重い」
信:「職人のこだわりですね」
フォーヌ:「当然だ」
11人になった。
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建国プロジェクト:状況報告
第9話終了時点
現在地:移動中
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人員 :コア11名/総勢22名
資金 :銀貨5枚
食糧 :安定確保
武器 :改善中(フォーヌが製作開始)
拠点 :移動中・拠点なし
安全度:警戒レベル高
カルシアの追跡が迫っている
仲間の能力発揮値
リュカ :12%(変化なし)
ミネルヴェ:30%(変化なし)
ロガ :55%(変化なし)
シルト :45%(変化なし)
ラギラブ :35%(変化なし)
ドミナス :40%(変化なし)
ジグニ :25%(変化なし)
バーナデッド:20%(変化なし)
クラグル :20%(変化なし)
フォーヌ :35%(新規加入)
組織の変化
フォーヌ×バーナデッド:
職人コンビの相性が抜群
リュカの能力:兆候継続
Stage 2発現の兆候を注視中
次のマイルストーン
→ 物流の確保
→ カルシアの追跡を振り切る
→ フォーヌによるロガの武器制作
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第9話 終了
次話:「ウマは止まれない」




