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ワクワク獣人ランド 〜異世界PM:適材適所で虐げられている獣人たちと最強の国を作ります〜  作者: 星麒麟


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8/40

第8話「ヒツジは弱くない」

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建国プロジェクト:状況報告

第8話開始時点

現在地:移動中・獣人収容施設方面

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人員 :コア9名/総勢20名

資金 :銀貨3枚

食糧 :安定確保

拠点 :移動中・拠点なし

安全度:警戒レベル高

    カルシアの動きが活発化

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移動を再開して2日が経っていた。


聖王教国カルシアの動きが活発化している。

シルトの情報網が「特別部隊の編成が近い」と告げていた。急ぐ必要があった。


その朝、ラギラブが這うようにして食事の準備を始めようとしていた。

顔が赤かった。足元がふらついていた。それでも鍋を持ち上げようとしていた。

信:「大丈夫か!」

ラギラブ:「食事を作らないと。みんなが困る」

信:「そんなことはいい! 今すぐ横になるんだ」

ラギラブ:「でも俺の役目が」

信:「お前の役目は元気な状態で力を発揮することだ。

   今は休むことが仕事だ」

ラギラブ:「でも誰が料理を」

信:「なんとかする。横になれ」


ラギラブを寝かせてから、信は仲間たちを見渡した。

誰も料理ができなかった。

バーナデッドは物資管理の天才だが火を使ったことがない。ジグニは食材を見ると食べてしまう。シルトは「情報収集なら」と言った。ロガは無言だった。

一人に依存しすぎていた。ラギラブが倒れただけで食事が止まる。これはプロジェクトの構造的な欠陥だ。


そんな中、小さな声がした。

ダレト:「あの、俺、少しなら作れます」


茶色の毛並みの兎人の少年だった。解放した兎人12人のうちの1人。11歳。きょろきょろとよく周囲を見ている目が、今は真剣だった。

信:「できるか」

ダレト:「ラギ兄の手伝いをしながら

     見ていました。全部は無理ですが

     簡単なものなら」

信:「頼む」

ダレト:「はい」


ダレトが作った食事は素朴だったが、温かかった。

誰も文句を言わなかった。

ロガが黙って食べた。それで十分だった。


バーナデッドがラギラブの額に手を当てた。

バーナデッド:「熱があります。かなり高い」

信:「いつから」

バーナデッド:「昨夜から様子がおかしかった。

        言わなかったのはラギラブが

        心配をかけたくなかったから」


信はドミナスを見た。

信:「治癒師の情報を詳しく聞かせてもらえるか」

ドミナス:「近くに獣人の収容施設があります。

      そこに施設医がいる。

      腕がいいという話です」

ミネルヴェ:「収容施設の医者か」

ドミナス:「獣人の医者です。

      施設側が労働力を維持するために置いている」

シルト:「複雑な立場ですね」

信:「行きます。スルト、ミネルヴェさん、一緒に来てもらえるか」

スルト:「お任せを」

ミネルヴェ:「わかった」

ドミナス:「ラギラブは私たちが見ていますね」



収容施設

街道沿いの石造りの建物だった。高い塀。鉄格子の門。中から獣人たちが働く音が聞こえた。

スルトとミネルヴェの力を得て騒ぎを起こさず潜入ができた。


施設の裏手に、小さな医務室があった。

扉をノックした。

白い羊毛の獣人が出てきた。丸い目。穏やかな顔立ち。しかし疲れが滲んでいた。首輪をしていた。

クラグル:「どなたですか」

信:「仲間が高熱で動けない。治療をお願いしたい」

クラグル:「ここは施設の医務室です。外部の方は」

信:「お願いします。14歳の兎人です」


クラグルが少し迷った。それから扉を開けた。


なんとかラブラギを拠点まで連れ出した。

そして診察を進める。


ラギラブを診たクラグルの手が、額の上で止まった。

淡い光が一瞬漏れた。

クラグル:「魔獣の毒素が混じっています。薬草では間に合わない」

信:「治せますか」

クラグル:「治せます」


白い光がラギラブを包んだ。

5分後、ラギラブが目を開けた。

ラギラブ:「お腹、すいた」

リュカ:「よかった」

ジグニ:「泣かないで」

バーナデッド:「泣いてません」

ジグニ:「目が赤いよ」

バーナデッド:「もともとです!」

目を擦りながらバーナデッドが強がった。


クラグルが疲れた様子で椅子に座った。

信の視界に文字が浮かんだ。

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適性鑑定:羊人・クラグル(推定20歳・女)

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白魔術 ★★★★★

薬草知識 ★★★★★

診断眼 ★★★★★

精神安定 ★★★★☆

共感力 ★★★★★

現在の状態: 使命感と疑念の狭間

力を使うことへの疲労

何かに気づきかけている

現在の能力発揮値:20%

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スカウトと拒絶

信:「我々と暮らしませんか」

クラグル:「ここで?」

信:「まずは。ただ将来的に獣人が安心して暮らせる国を作ろうと思っています。

   強い国作りには医療の力が必要です」

クラグル:「お断りします」

信:「理由を聞かせてもらえますか」

クラグル:「治療所に来る獣人を私が助けなければならない。

      毎日患者が来ます。

      私がいなければ、誰が治すんですか」


信は少し考えた。

信:「一つ聞いていいですか。重症の患者はどうなりますか」

クラグル:「私が治します」

信:「治せないほど重症になったら」

クラグル:「そうならないように治します」

信:「なったら、どうなりますか。治療室のベッドには患者は誰もいなかったですよね」


クラグルが黙った。

クラグル:「施設の判断になります」

信:「施設の判断とは」

クラグル:「……」

信:「知っていますか」


長い沈黙があった。

クラグル:「処分、と聞いています。

      手間がかかると判断されたら」

信:「そうです。

   重症になった獣人は殺される。

   あなたの治療は命を救っているんじゃない。

   道具を修理しているんです。

   動ける状態に戻すまでが仕事で

   動けなくなったら終わり」

クラグル:「それは」

信:「あなたがここで治療を続けても

   重症になった患者は助からない。たとえそれが助かる命でも。

   あなたの力が、施設のために使われている」


クラグルの手が、膝の上で握られた。

クラグル:「知っていました。うっすらと、知っていた。

      でも目の前の患者を治すことで

      考えないようにしていた」

ミネルヴェ:「仕方がない。そうやって、生き延びてきたんだろう」

クラグル:「私は、何をしていたんだ」


信が静かに言った。

信:「この世界は病気だ。

   獣人を虐げ、精霊を狩り、

   弱い者を踏みにじることを

   当然だと思っている。

   命の価値が同じじゃない世界は

   病と同じだ」

  (間)

  「あなたが患者を諦めないように

   俺も諦めない。

   一緒に治してほしい」

クラグル:「世界を、治す」

信:「あなたの力は道具を修理するためじゃない。

   命を救うためにある」


クラグルは長い間、俯いていた。

それから顔を上げた。

泣いていなかった。ただ、何かが決まった顔をしていた。


加入


クラグル:「条件があります」

信:「聞きます」

クラグル:「1つ。治療を断る患者には強く言わせてもらいます。

      治ることは義務です」

信:「了解です」

クラグル:「2つ。薬草の採取時間を必ず確保してほしい」

信:「最優先にします」

クラグル:「3つ。力を隠さなくていいですか」

信:「むしろ遠慮なく使ってほしい」


魔法と魔術の話

歩きながら、クラグルが話した。

クラグル:「魔術と魔法は

      似ているようで違うんです」

信:「どう違うんですか」

クラグル:「魔法は別名、精霊魔法。これは精霊と対話して

      その力を借りる。

      無から生み出せる。

      エルフや獣人が本来持つ力です」

信:「魔術は」

クラグル:「物を介在させて力を引き出す。

      薬に魔術を施せばリカバリー、回復力を高めます。

      火矢に施せばファイア・アロー、炎の力を強化します。

      仕組みを理解することで使える。

      人間やドワーフが得意な力です」

ミネルヴェ:「だから人間は精霊を恐れる。

       無から生み出せる力には

       魔術では対抗しにくい」

クラグル:「これが精霊狩りが行われる理由です。

      精霊は魔法の力の源なので。

      精霊を狩る特殊部隊があると聞いたことがあります」

信:「そうか」


精霊狩り。獣人狩りと同じ発想だ。脅威を排除するために、力を持つものを消す。


改めてメンバーにクラグルが紹介された。


ロガ:「歓迎する」

シルト:「ロガさんが歓迎という言葉を使った。

     記念すべき瞬間ですよ」

ロガ:「我々戦士にとって、医師は最も敬意を払うべき存在だ」

シルト:「なるほどです」


クラグルがリュカを見た。

クラグル:「あなた、身体にどこか異常はないかしら」

リュカ:「異常ですか? 特には」

クラグル:「体の中に、変わったものがある。

      病気ではないんですが、何か、特別な」

ミネルヴェ:「やはりそう見えるか」

クラグル:「診たことのない感覚です」

信:「それは、これから分かることだと思います」



ダレトとの夜


体調が落ち着いた夜、ラギラブがダレトと数人の幼い兎人を呼んだ。

ラギラブ:「ダレト、お前たちに頼みたいことがある」

ダレト:「なんですか」

ラギラブ:「料理を、お前たちを中心として任せていきたい」

ダレト:「え」

ラギラブ:「俺が倒れたら食事が止まった。

      一人でやるのは危ない。

      ダルト、お前は料理の覚えが早い。

      今日だって、ちゃんと作れていた」

ダレト:「でも俺まだ11歳で」

ラギラブ:「俺は14歳で農業を任された。

      年齢は関係ない」

ダレト:「……わかりました。絶対うまくなります」

ラギラブ:「俺はこれから食糧確保や農業に集中する。

      食卓はお前に任せた」

ダレト:「やるからには、ラギ兄を越える料理人になるよ!」

ラギラブ:「ふ、10年早いんだよ」


少し離れた場所で、信がそれを聞いていた。

適材適所は自分だけが決めるものじゃない。仲間が仲間を見つけていく。これが本物のチームだ。


クラグル:「ダレトさん、ですか」

ダレト:「はい」

クラグル:「良い意味を持っている名前ですね」

ダレト:「由来とか、知ってるんですか」

クラグル:「古い言葉で、

      たしか、扉・新しい何かを開く存在、という意味だったはずです」

ダレト:「……扉か」

    (少し背筋が伸びた)


夜、信は一人で空を見上げた。

コアメンバーは10人になった。

ただ、国を作りにはもっと必要だな。

それに、カルシアか……。そろそろ俺たちの存在もバレていると考えた方がいいだろな。


その夜から、ダレトが食卓を守る。


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建国プロジェクト:状況報告

第8話終了時点

現在地:移動中

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人員 :コア10名/総勢21名

    (ダレトが料理部門を担当)

資金 :銀貨3枚

食糧 :安定確保・ダレトが料理担当に

拠点 :移動中・拠点なし

安全度:警戒レベル高

    カルシアの追跡が近い


仲間の能力発揮値

 リュカ  :12%(変化なし)

 ミネルヴェ:30%(変化なし)

 ロガ   :55%(変化なし)

 シルト  :45%(変化なし)

 ラギラブ :35%(変化なし)

 ドミナス :40%(変化なし)

 ジグニ  :25%(変化なし)

 バーナデッド:20%(変化なし)

 クラグル :20%(新規加入)


組織の課題

 一人への依存体制の脆弱性を確認

 ダレトの抜擢で料理部門を分離・改善


リュカの能力:兆候継続

 信のメモ:「クラグルが体の中に

       大きな力が眠っていると言った。

       外からも見えるのか」


次のマイルストーン

 → 鍛冶・土木のスタッフスカウト

 → カルシアの追跡を振り切る

 → リュカの能力の精査継続

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第8話 終了

次話:「イノシシは曲がらない」

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