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ワクワク獣人ランド 〜異世界PM:適材適所で虐げられている獣人たちと最強の国を作ります〜  作者: 星麒麟


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7/38

第7話「リスは忘れない」そして「クマは泣いていい」

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建国プロジェクト:状況報告

第7話開始時点

北の森・仮拠点→二手に分かれて行動

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人員 :コア7名/総勢18名

資金 :銀貨2枚

食糧 :安定確保

拠点 :仮拠点あり(傾いている)

安全度:警戒レベル中


次のマイルストーン

 → 熊人のスカウト(建設)

 → 栗鼠人のスカウト(物資管理)

========================================


出発の朝、信が二手の編成を告げた。


信:「山岳チームはロガ、シルト、リュカ。

   鉱山の熊人を頼む。

   屋敷チームは俺、ドミナス、ミネルヴェ。

   貴族の屋敷に向かう」

ロガ:「……リュカを連れて行くのか」

信:「嗅覚が必要だ。

   鉱山の構造を把握するのに

   リュカの察知能力が欲しい」

ロガ:「…………了解だ」

リュカ:「大丈夫。ちゃんとやる」


ドミナスが鏡の前に立った。

髪の色が変わった。目元に細工をした。声のトーンを変えた。

5分後、そこには信が一度も会ったことのない女性が立っていた。

信:「……完璧だ」

ドミナス:「当然です。5年間の成果ですから」

ミネルヴェ:「顔が変わっても

       梟の目は誤魔化せないぞ」

ドミナス:「あなたは馬車の中で待機です」

ミネルヴェ:「……わかっている」


二手に分かれた。


屋敷チーム

貴族の屋敷は、街道から外れた丘の上にあった。

石造りの高い塀。整えられた庭。門には武装した門番が二人。

馬車が門前に止まった。ドミナスが降りた。信が従者として続いた。

……でかい屋敷だ。

門をくぐった瞬間、信は息を呑んだ。

庭の手入れをしているのは獣人だった。荷物を運んでいるのも獣人だった。厨房から漂う料理の匂いの先にも、獣人の姿が見えた。給仕をする人間はほとんどいない。

この豊かさは、誰かの痛みの上にある。

従者A:「お待ちしておりました。

     どうぞこちらへ」


応接間に通された。

豪華な調度品。厚い絨毯。壁には高価そうな絵画。テーブルには菓子と茶が並んでいた。

しばらくして、貴族が現れた。

年齢的には50代ほどか、恰幅のいい男だった。満足そうな顔をしていた。この屋敷と同じように、豊かさが染みついた顔だった。

貴族:「よくいらっしゃいました。

    ドミナス商会のご当主とか」

ドミナス:「ええ。本日はお時間をいただきまして」

貴族:「いえいえ。商売のお話なら

    いつでも大歓迎ですよ」


歓談が始まった。

信は従者として壁際に控えた。何も言わない。ただ、見ていた。

幾つかの商談を終えると、貴族が最近の話題を語り始めた。

貴族:「そういえば先日、北の農村で

    少し面倒なことがありましてね」

ドミナス:「何かあったんですか」

貴族:「魔獣が出たとかで

    その騒ぎのどさくさで農奴の兎人どもが

    逃げてしまいましてね。

    まあ、小規模だし

    農奴はいくらでもいますから

    大した問題でもないんですが」

ドミナス:「それは災難でしたね」

貴族:「まったく、運が悪かった。

    まあ、そのうち

    また補充すればいいだけですが」


ラギラブたちのことだ。

あの必死の脱出が、この男には「魔獣騒ぎで逃げた」程度にしか映っていない。

信の拳が、従者の袖の中で静かに握られた。


バーナデッドとの出会い

歓談の途中、ドミナスが部屋の隅に目をやった。

そこに、小さな籠があった。

中に、栗鼠人がいた。

白と茶色の混じった毛並み。大きな目。丸まって座っていた。餌皿は空だった。いつから空なのか、わからなかった。

ドミナス:「あら、可愛らしい。

      あれは?」

貴族:「ああ、栗鼠ですよ。

    子どもが欲しがって買ったんですが

    すぐ飽きてしまって。

    今は給仕に世話させています。

    まあ、その給仕も

    たまに忘れるんですがね」

ドミナス:「何かできるんですか」

貴族:「まあ、少し芸を仕込みましたよ。

    見せましょうか」


貴族が指を鳴らした。

貴族:「ほら、やってみせろ」


栗鼠人が籠から出された。

テーブルの上に散らばった書類に近づいた。

小さな手が動いた。

瞬時に書類が種類別に分かれた。大きさ順に重なった。日付順に並んだ。

引き出しが開いた。乱雑な中身が秒単位で整理された。使いかけの蝋燭が残量順に並んだ。

……これは。

信は目を細めた。

「芸」じゃない。本能だ。物資管理の天才が、芸として消費されている。

貴族:「まあ、こんな感じです。

    整理が好きみたいで。

    最初は面白かったんですが

    正直もう飽きましてね。

    処分しようかとも思っているんですよ」

ドミナス:「しかし、あの整理の芸は便利なのでは?」

貴族:「そんなことは人間の給仕がすればいいんですよ。

    獣風情に大事な書類を汚されては、たまりませんかな。はっはっは」

ドミナス:「そうですね」


ドミナスは感情を殺し微笑む。


ドミナス:「しかし、処分、ですか。

      それはもったいない。

      実は私どもでは、“芸“のできる動物を集めておりまして」

貴族:「ほう。サーカスでも開くので?」

ドミナス:「いえいえ。身内用のささやかな物です。

      どうでしょう。その栗鼠、こちら引き取りましょうか。

      うちの旦那様が楽しめそうなもので」

貴族:「構いませんが、それで、いくら出しますかな」

ドミナス:「処分予定とのことでしたから

      その駕籠代として、銅貨3枚ほどでいかがですか」

貴族:「……ふむ。まあ、処分の手間が省けるなら」


落ちたな。ドミナスは微笑んだ。


籠の中で、栗鼠人が震え始めた。

小さな体が、ぶるぶると震えていた。

また売られる。また知らない場所へ連れて行かれる。

ここでは、少なくとも生きてはいけたが、次の場所はどうなるか。

信は自然にしゃがんだ。従者として、何かを拾うふりをした。

栗鼠人の目線に降りた。

貴族には聞こえない声で、言った。

信:「嫌なら言ってくれ。無理強いしない」


栗鼠人が固まった。

大きな目が、信を見た。

栗鼠人:「……わたしを、

     物として扱わないんですね」

信:「当たり前ですよ」


栗鼠人は少し考えた。

それから、小さく頷いた。

すると信の視界に文字が浮かぶ。

===============================

適性鑑定:栗鼠人・バーナデッド(推定22歳・女)

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物資管理 ★★★★★

整理整頓 ★★★★★

備蓄・在庫管理 ★★★★★

記憶力 ★★★★★

観察眼 ★★★★☆

魔法適性 なし

現在の状態: ペット生活からの解放

意思を持つことへの戸惑い

整理への強い衝動

現在の能力発揮値:20%

===============================



山岳チーム


山岳地帯の鉱山は、街道から外れた岩肌の奥にあった。

上空からシルトが偵察した。

シルト:「監視員が14人。

     交代は2時間ごと。

     熊人は……6数頭います。

     その中に二重首輪をした個体が一頭」

ロガ:「それか」

シルト:「交代の隙間は15分。

     今夜、その時間に動きましょう」


夜を待った。

暗くなった頃、ロガが動いた。

陽動として鉱山の東側に回り、岩を崩した。監視の注意が東に向いた。

シルトとリュカが西側から鉱山に入った。

坑道の奥、二重首輪の熊人がいた。

大きかった。身長は二メートルを超えていた。しかし今は小さく丸まっていた。疲れ果てた体が、岩壁にもたれていた。その身体は鞭による傷が生々しかった。

リュカが近づいた。

リュカ:「ここから出ましょう」

熊人:「…………」

   (顔を上げない)

リュカ:「聞こえてる?」

熊人:「……罠か」

シルト:「違います。本当に逃がしに来ました」

熊人:「……なぜ」

シルト:「あなたの力が必要なんです」


その時だった。

坑道の入口から、足音が聞こえた。

複数の、重い足音。

シルトが上空に向かって風の精霊を飛ばした。ロガへの連絡だった。

しかし足音は止まらなかった。予想より早かった。交代時間が繰り上がっていた。

まずい。

シルトが翼を広げた。しかし坑道は狭かった。飛べなかった。

シルト:「……囲まれます。ロガさんが間に合わない」


リュカの耳が、がばりと立った。

何かが、来た。

言葉にならない感覚だった。でも確かだった。

リュカ:「右から来る。今すぐ下がって」

シルト:「え?」

リュカ:「今すぐ!」


シルトが反射的に下がった。

一秒後、坑道の右の壁が崩れた。

隠し通路だった。監視員が三人、そこから現れた。

シルトがいた場所に、槍が突き出された。

シルト:「……っ」

    (青ざめた顔で、リュカを見る)

    「今、何が起きた」

リュカ:「わからない。

     でも、わかったの」


シルトが地面から石を拾い監視員に投げる。

一瞬できた、その隙にロガが坑道に飛び込んできた。

三人を一瞬で制圧した。

ロガ:「すまん、遅れた」

シルト:「いえ。リュカが救ってくれました」

ロガ:(リュカを見る)

   「…………」

リュカ:「大したことは」

ロガ:「よくやった」



熊人の首輪を一つ外す。

光が溢れた。

しかし熊人は変化しなかった。二重首輪だった。一つ外しただけでは足りなかった。

もう一つの首輪は、複雑な構造だった。

信との合流まで待てなかった。

ロガが素手でこじ開けた。

シルト:「素手で」

ロガ:「時間がない」

シルト:「ほんと、化け物っすね」

ロガ:「当然、褒め言葉だよな」


首輪が外れた瞬間、熊人が膝をついた。

リュカ:「まずは、安全な森へ。急いで!」

そう言い、リュカは熊人の手を引いた。

そのまま一行は森へと急いだ。


坑道のあった山が小さく見える距離の森へと辿り着く。

その山並みを遠くに眺め、熊人は両手を顔に当てその場に崩れた。

大きな体が震えた。

声が出た。

嗚咽だった。解放された安堵からの。

大きな体が、子どものように泣いた。

リュカ:「大丈夫、ゆっくり泣いていいよ」


リュカが隣に座った。

シルトが無言で背中に手を置いた。

ロガは少し離れたところで、空を見ていた。

しばらく、誰も何も言わなかった。


合流


信たちとリュカたちが合流をはたす。

共に作戦は成功していことを互いに喜び合う。

信:「君がジグニか。俺はシン、よろしく頼む」


人間を見てジグニが身構える。


それをみてリュカは「大丈夫だよ」と言ってジグニの腕に手を添えた。

シルトは笑顔を向け、ロガも無言で頷いた。

リュカ:「私たちを助けてくれたのが、このシンなの」

安心したジグニが信のもとへ近づく。そして深々と頭を下げた。

ジグニ:「ジグニという。こちらこそよろしく頼む」

信の視界に文字が浮かんだ。

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適性鑑定:熊人・ジグニ(推定35歳・男)

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怪力 ★★★★★

建設・土木 ★★★★★

地形把握 ★★★★★

精霊魔法(地) ★★★★☆

耐久力 ★★★★★

現在の状態: 長期酷使からの解放

感情の解凍

涙腺崩壊中

現在の能力発揮値: 25%

===============================


ジグニはリュカの方を向く。


ジグニ:「君の名前は?」

リュカ:「リュカ」

ジグニ:「リュカ。ありがとう」

リュカ:「どういたしまして」

シルト:「ジグニさん。あんたの力が必要なんですよ」

ジグニ:「何をすればいい」

信:「とりあえず、家を建てて欲しいんだ。俺たちのさ」

ジグニ:「……家」

    (また目が潤んだ)

    「……家か」



帰還

仮拠点に、両チームが戻った。

ジグニとバーナデッドが改めて顔を合わせた。

2メートルを超える熊人と、30センチほどの栗鼠人が向き合った。

バーナデッド:「大きい、ですね」

ジグニ:「そっちは、小さいな」

バーナデッド:「バーナデッドといいます。

        物の管理が得意です」

ジグニ:「ジグニ。俺は建設が好きだ」

バーナデッド:「よろしくお願いします」

ジグニ:「……ああ」


バーナデッドが仮拠点を見回した。

バーナデッド:「……問題が九つあります」

信:「九つも?」

バーナデッド:「物資の分類ができていない。

        食糧と道具が混在している。

        使用頻度による配置がされていない。

        雨水の侵入経路が三箇所。

        屋根の傾斜角度が不適切。

        基礎が……」

信:「わかった! わかった! 全部お願いできるかな」

バーナデッド:「もちろんです。

        任せてください!」


ジグニが傾いた小屋に近づいた。

両手で掴んだ。

持ち上げた。

ラギラブ:「……すごい」

ジグニ:「基礎から作り直す。

     一度壊していいか」

信:「思うままに、やっちゃってください!」


その夜、仮拠点が生まれ変わった。

バーナデッドが物資を全て並べ直し、分類し、管理台帳を作った。

ジグニが小屋を解体して基礎から建て直した。

翌朝、全員が目を覚ますと、昨日とは別の場所にいるような気がした。

リュカ:「きれいになった〜!」

バーナデッド:「ふふん、当然です」

ジグニ:「まだまだ、改善できる」

バーナデッド:「同感です」

信:「はは、まさに餅は餅屋だね」

ミネルヴェ:「……一晩でここまでやるとは」

ラギラブ:「料理する場所も

      整理してもらえますか」

バーナデッド:「もちろん。

        優先度三番目に入れます」

ラギラブ:「三番目……」

バーナデッド:「一番は食糧の保存。

        二番は医療物資の確保。

        料理場所は三番です」

ラギラブ:「……合理的だ」



夜、焚き火を囲んでシルトが言った。

シルト:「一つ、気になる情報があります」

信:「聞かせてくれ」

シルト:「聖王教国カルシアが

     この辺りの不審な動きを

     調査し始めたようです。

     特別な部隊が

     編成されるという噂が」

信:「特別部隊か」

ミネルヴェ:「来たか」

ロガ:「どれくらいの規模なんだろう」

シルト:「まだ噂の段階です。

     ただ、噂が立った時点で

     動くのがカルシアです」


信は焚き火を見ていた。

ここまでは想定内だ。人数が増えれば目立つ。目立てば動かれる。

問題は速度だ。

信:「そうだリュカ、スルトから聞いたんだけど、坑道で何があったんだ」

リュカ:「……何って?」

信:「坑道で、敵の攻撃を正確に読んでいたって話さ」

リュカ:「ああ、あれは、なんとなく、わかった。

     説明はできないの」

信:「その時、どんな感じだった」

リュカ:「……空気が、変わった。

     右から、攻撃の意思が来るって」


信は適性鑑定を見た。

リュカの項目の「?????」が、かすかに揺れていた気がした。

信:(心の中で)

  「動き始めた。

   焦らず、でも見逃さず」


ミネルヴェが静かに言った。

ミネルヴェ:「ふふ、始まったかな」


夜風が吹いた。

仮拠点の新しい小屋が、しっかりと、揺れなかった。


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建国プロジェクト:状況報告

第7話終了時点

北の森・仮拠点(大幅改善済み)

========================================

人員 :コア9名/総勢20名

資金 :銀貨3枚

食糧 :安定確保

拠点 :仮拠点・大幅改善済み

安全度:警戒レベル上昇

    カルシアが動き始めた


仲間の能力発揮値

 リュカ  :8% → 12%

 ミネルヴェ:30%(変化なし)

 ロガ   :55%(変化なし)

 シルト  :45%(変化なし)

 ラギラブ :35%(変化なし)

 ドミナス :30% → 40%

 ジグニ  :25%(新規加入)

 バーナデッド:20%(新規加入)


リュカの能力:兆候あり

 信のメモ:「気配の先読み?

       ?????が動き始めた。

       ミネルヴェと要相談」


次のマイルストーン

 → 医療担当のスカウト

 → カルシアの動向監視確認

 → リュカの能力の精査

========================================



第7話 終了

次話:「ヒツジは弱くない」



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