第6部 第1話「獣王国新聞・創刊一周年号」
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建国プロジェクト:状況報告
第6部・発展編 第1話開始時点
現在地:クロノスリュカ・編集室
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住民 :3万2千人以上
種族 :27種
友好国:42カ国
状況 :新聞創刊一周年記念号・取材日
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編集室に朝日が差し込んだ。
鼠人アルラッテが取材メモを確認していた。
アルラッテ:「今日中に一面を完成させますよ!」
チームに撃を飛ばす。
外に出た瞬間、馬型ロボットの焔が挽くバスが通り過ぎた。
人間と獣人が並んで乗っていた。
ドワーフが窓から顔を出して欠伸をしていた。
エルフが本を読んでいた。
アルラッテが素早くメモを取った。
焔のバスの車体に、小さな炎の精霊が宿っている。バスが走るたびに光る。精霊は毎朝、乗客の顔を見ている。笑顔を見るたびに少し大きくなる。名前はまだない。しかし満足そうだ。
「バーナデット国立銀行」
クロノスリュカの銀貨が大陸の基軸通貨となったため、国立の銀行が設立された。
銀行設立のために奮闘した栗鼠人バーナデットの名前が付けられた。
アルラッテが銀行に入った。
栗鼠人バーナデットが帳簿を持って出迎えた。
バーナデット:「一年で口座数が5万を超えました。
獣人だけでなく人間・エルフ・ドワーフも口座を持っています。
お金に種族はない、ということが証明されました」
アルラッテが窓口の職員に声をかけインタビューをする。
中年の人間の男性だった。
人間の銀行員:「そりゃー、最初は怖かったですよ。
獣人の上司がいるなんて思ってもみなかったんですから。
だけど、今は一番信頼している人です」
アルラッテがメモを取った。
銀行の金庫室の隅に、小さな精霊が座っている。お金の精霊ではない。信頼の精霊だ。人が人を信じるたびに少し大きくなる。この銀行はひときわ大きい。まだ名前はない。しかし確かにそこにいる。
テーマーパーク「フォーヌ・アッチ・ランド」
ロボットの乗り物で楽しむアトラクションがある施設。
初めは実験用だったが、好評だったため、テーマパーク化された。
名前は二大工房の主の名前から取られた。
朝から子どもたちが並んでいた。
獣人の子と人間の子が混じっていた。
浣熊人アッチが入場口の脇に立っていた。
アッチ:「入場者がもう百万人を突破したんだって。
弟子たちが作った施設がこうなるとはな」
アルラッテが子どもたちに声をかけた。
獣人の子:「ロボットに乗れるだよ」
人間の子:「友達が増えた。
ここでしか会えない友達」
ドワーフの子:「タルパの地下が怖くて好き」
土竜人タルパが後ろから現れた。
タルパ:「怖くて好き、モグか。嬉しいモグ」
観覧車の頂点に、笑いの精霊ゲロスがいる。下から笑い声が届くたびに反応する。笑いが笑いを呼ぶ。この場所はゲロスのお気に入りだ。形はない。しかし笑い声だけが聞こえる。今日もよく笑っている。
「ラギラブ農村」
秋の収穫期だった。
農村全体が賑わっていた。
兎人ラギラブが土を触りながら話した。
ラギラブ:「食料の自給率が200%を超えました。
余った分は友好国に送っています。
土が答えてくれた。
それだけです」
農村で働く老いた獣人の女性が アルラッテに話しかけた。
老いた獣人:「ここに来る前は首輪をしていた。
今は毎朝、空を見上げられる。
空がこんなに広いとは知らなかったよ」
アルラッテが手を止めた。
メモを書かなかった。
ただ聞いていた。
農村の畑に無数の小さな精霊がいる。農具の精霊だ。土に触れるたびに光る。豊穣の精霊も来ている。作物が育つたびに喜ぶ。ラギラブの「土が答えてくれた」という言葉に、精霊たちが一斉に光る。人が精霊に感謝するから、精霊は力を貸す。その循環がこの農村を豊かにしている。
「ミネルヴェ魔導大学」
魔法と魔術を総合的に研究することは「魔導」と名付けられた。
そして、その研究大学機関がスルトの街の外れに新設された。
魔導に一番通じている者である梟人ミネルヴェの名前が冠された。
ちなみにミネルヴェと名の付く施設は「ミネルヴェ図書館」についで二つ目となる。
午後、鹿人コダが授業の合間にアルラッテを迎えた。
コダ:「留学生の出身国が30カ国を超えました。
エルフの留学生が先週から来ています。
百年前では考えられなかったことです」
廊下でエルフの留学生に声をかけた。
エルフの留学生:「里を出るのは初めてでした。
ここの図書館は里より本が多い。
正直、帰りたくないです」
人間の留学生も続いた。
人間の留学生:「最初は獣人が怖かったんです。
今は友達が50人います。
全員、獣人です」
大学の図書館に本の精霊がいる。読まれた本に宿る精霊だ。今日も誰かがページをめくった。そのたびに精霊が少し大きくなる。ペンの精霊も一緒にいる。誰かが何かを書くたびに踊る。ヘロンも来ている。新しいひらめきを嗅ぎつけてうろうろしている。この図書館は精霊たちで溢れている。
「ウィン音楽堂」
元々音楽堂はあったが、名称を付けることとなり、歌の力で国を助けた燕人ウィンの名前が付けらた。
名前を付けるにあたり、拡張工事も行われた。
夕方、狸人ラックが次の公演の準備をしていた。
ラック:「公演の予約が6ヶ月先まで埋まっています。
人間のお客様も増えました。
最初に来た時は緊張した顔をしていましたが帰る時は笑っています。
音楽に種族は関係ない。
最初からそう言っていました」
音楽堂の前でマルカンドの商人が言った。
マルカンドの商人:「全く、取引の度に新しいものを作りおって。
商人として腕がなる。ここは飽きない国だ」
音楽堂の天井に歌の精霊がいる。名前を得てからずっとここにいる。今日も誰かが歌い始めた。精霊が目を覚ます。楽器の精霊が踊り始める。踊りの精霊も現れた。生命の精霊が遠くから音楽堂を見ている。命が喜んでいる場所には精霊が集まる。それがこの国の原理だ。
信へのインタビュー
夕暮れ、アルラッテが渓谷を歩く信を見つけた。
アルラッテ:「一面に載せたいので
インタビューさせてください」
信:「俺に何を聞きたいのさ」
アルラッテ:「色々と」
アルラッテが聞いた。
アルラッテ:「では、この国の一番いいところは何だと考えますか?」
信が少し考えた。
信:「住んでいる全員が主役だということかな。
適材適所。
誰も捨てない。
最初からそう言ってきたんだけど、今も変わっていない」
アルラッテ:「帰りたいと思ったことはありますか」
信が笑った。
信:「いきなり聞いてくるなぁ。
あるか無いかだと、そりゃあるよ。
でも、今はここにいたい。
その気持ちの方がずっと強いんだ」
信の隣に小さな精霊がいる。他の色と違う色をしている。別の世界の精霊の欠片だ。信と一緒にここにいる。信が笑うたびに光る。信がここにいたいと思うたびに少し大きくなる。まだ名前はない。しかし確かにここにいる。信の世界とこの世界の橋渡しになろうとしている。
リュカへのインタビュー
夜、アルラッテが時計塔の見晴台に立つリュカを見つけた。
アルラッテ:「国王として 一番嬉しいことは何ですか?」
リュカが即座に答えた。
リュカ:「みんなが笑ってること。
それだけだよ」
アルラッテ:「次にやりたいことは?」
リュカ:「もっとワクワクする楽しい国にすること。
まだまだ終わらないよ」
時計塔の鐘が鳴った。
光の精霊が塔を照らした。
リュカが空を見上げた。
時計塔に光の精霊がいる。夕暮れと夜明けに光る精霊だ。今日も鐘が鳴った。精霊が光る。塔の下に小さな王がいる。精霊が王を見ている。クロノスの気配が遠くにある。「……良い国になった」。その言葉が精霊たちに届く。全ての精霊が少し輝いた。
新聞の一面
深夜、編集室だった。
アルラッテが一面を書き上げた。
クロノスリュカ新聞 創刊一周年記念号
住民数3万2千人。
種族27種。
友好国42カ国。
しかし数字より大事なことがある。
この国の人々は、笑っている。
アルラッテが一面を見た。
珍しく満足そうにした。
アルラッテ:「我ながら、素晴らしい記事」
翌朝、新聞が国中に届いた。
旋が各拠点に運んだ。
住民が新聞を広げた。
読んだ。
笑った。
夜明け。渓谷全体に精霊の光が満ちた。炎の精霊・農具の精霊・歌の精霊。笑いの精霊・光の精霊・本の精霊。信頼の精霊・生命の精霊。全ての精霊が今日も目を覚ます。この国に喜びがある限り、精霊は消えない。誰も気づいていないが、精霊たちはいつもここにいる。それがこの国の、本当の豊かさだ。
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建国プロジェクト:状況報告
第6部・発展編 第1話終了時点
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国の現状
住民:3万2千人
種族:27種
友好国:42カ国
登場した精霊
炎の精霊(焔のバス)
信頼の精霊(銀行)
笑いの精霊ゲロス(遊園地)
農具の精霊・豊穣の精霊(農村)
本の精霊・ペンの精霊・ヘロン(大学)
歌の精霊・踊りの精霊・生命の精霊(音楽堂)
信の世界の精霊の欠片(信の隣)
光の精霊(時計塔)
住民の声
「空がこんなに広いとは知らなかった」
「友達が50人いる。全員獣人だ」
「帰りたくない」
「飽きない国だ」
信の言葉
「住んでいる全員が主役」
「ここにいたい気持ちの方がずっと強い」
リュカの言葉
「みんなが笑ってること」
「もっとワクワクする楽しい国にする」
次のマイルストーン
→第2話:バーナデット国立銀行
→経済の仕組みが整う
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第6部 第1話 終了
次話:「お金は信頼だ」」




