第5部 第15話「獣楽祭」
========================================
建国プロジェクト:状況報告
第5部・世界編 第15話開始時点
現在地:クロノスリュカ・シルトの街
========================================
状況 :大決戦から一週間後
第五回獣楽祭・開幕
========================================
シルトの街が人で溢れていた。
獣人だけではなく、人間も来ていた。
カルシアから、ソルマーレから、マルカンドから、ドワーフ国から、シーベルトから。
各地の友好国から人々が集まっていた。
獣人と人間が並んで屋台を覗いていた。
肩が触れても誰も気にしなかった。
笑い声が街に満ちていた。
ガルディウス:「こんな光景を見る日が来るとは思わなかった」
信:「俺もです」
ガルディウス:「悪くないものだな」
オープニングの演劇
舞台が設営されていた。
観客が集まった。
獣人と人間が混じって座っていた。
幕が上がった。
カイ・ラガンが語る原始の物語だった。
クロノスとケイオスの戦い。
ガイアとタルタロスの対立。
精霊たちの誕生。
そして今回、新しい場面が加わった。
生命の精霊の誕生だった。
暗い舞台に光の粒が集まった。
形になった。
命の形だった。
その瞬間、ウィンが歌い始めた。
声が戻っていた。
決戦から一週間、ずっと休んでいた。
歌声が会場に満ち、精霊たちが舞台の上を飛び回った。
生命の精霊が観客の上を舞った。
人間も獣人も空を見上げ、誰も言葉を発しなかった。
幕が下りた。
拍手が鳴り止まなかった。
食祭
屋台が並んだ。
兎人のダレトの陸の料理。
白い兎人イナバの海の料理。
熊人ショコラの菓子。
各国の料理人が腕を振るった。
エルフが千年前のレシピを持参した。
サエルミアが「記録にあった料理を再現した」と言った。
誰も食べたことのない味だった。
ミネルヴェ:「これは本当に千年前の料理か」
サエルミア:「文献通りに作った」
ミネルヴェ:「記録とはかくも素晴らしいものだ」
ドワーフ三親方が酒を樽ごと持ち込んだ。
オラーリグ:「今日は遠慮しないぞ。
ガッハッハッ」
サークスム:「俺は今日こそ限界を超えてみせる」
クラーピス:「またか」
ガルディウスがドワーフの隣に座った。
人間の将軍とドワーフの親方が並んで酒を飲んだ。
ガルディウス:「この酒はいつ飲んでも旨い」
オラーリグ:「だろう。
ガッハッハッ」
その隣に獣人たちが座った。
人間もドワーフも獣人も、同じ食卓を囲んでいた。
ショコラが新作を発表した。
「生命の精霊チョコレート」だった。
食べると体が温かくなった。
生命の精霊の力がわずかに宿っていた。
ショコラ:「生命の精霊が少しだけ力を貸してくれました」
即完売した。
アルラッテ:「値段を上げておくべきでした」
ショコラ:「次はそうします」
ウィンの生命の歌と大縁談
夕方、音楽堂に人が集まった。
マリアナが歌い始め、猫人セラが続き、ウィンが加わった。
三人の声が重なった。
生命の精霊が音楽堂の上を舞い始めた。
会場が光に包まれた。
その時だった。
不思議なことが起きた。
会場の中で、互いに知らなかった者同士が目が合い始めた。
獣人の青年と人間の娘。
エルフの若者と獣人の女性。
ドワーフの職人と獣人の職人。
生命の精霊が縁を結んでいた。
ラック:「あれ、全部縁談になるわよ」
信:「本当か」
ラック:「生命の精霊は縁を結ぶ力もあるみたい。
ウィンの歌と合わさると止まらないわね」
信:「キューピットってやつか」
後日、その夜に縁が生まれた者たちが クロノスリュカを訪れ続けた。
人間と獣人の間に子どもが生まれる日が 少しずつ近づいていた。
アルラッテの発表
ラックが舞台に立った。
ラック:「ここで特別発表があります。
アルラッテ、どうぞ」
鼠人アルラッテが舞台に上がった。
珍しかった。
普段は裏方に徹していた。
アルラッテ:「本日をもって
クロノス銀貨がアルカナ大陸の基軸通貨として正式に認定されました!」
会場が静り。
すぐに大歓声が上がった。
マンサ:「商人としてこれほど嬉しいことはない。
おめでとう、アルラッテ」
アルラッテ:「ありがとうございます。
次は世界標準を目指します」
マンサ:「本当に末恐ろしい子だ」
アルラッテが珍しく満面の笑みを見せた。
魔法花火師の登場
夜が来た。
ラックがアナウンスした。
ラック:「今夜、初めての試みです。
魔法花火師ピュロスによる夜空の演奏をお楽しみください」
人間の青年が現れた。
両手に特殊なルーン杖を持っていた。
黒魔術と精霊魔法を組み合わせた使い手だった。
名前はピュロスといった。
ソルマーレからエルネストが連れてきた若い魔法師だった。
エルネスト:「彼は特別な才能がある。
見ていてください」
ピュロスが杖を振り上げた。
夜空に光が走った。
金色の光が広がった。
次に赤が咲いた。
青が続いた。
緑が広がった。
光が花のように開いた。
閉じた。
また開いた。
精霊たちが光の中を飛び回った。
夜空が色に満ちた。
リュカ:「きれい」
ルドルフ:「すごいッス」
タルパ:「モグ」
ウィンは言葉を発せずただ空を見ていた。
人間も獣人もエルフもドワーフも。
全員が空を見上げていた。
ガルディウスが空を見ながら杯を傾けた。
酒が顔にかかっていたが気づかなかった。
新しい懐中時計
花火が終わった後、アッチが舞台に現れた。
アッチ:「渡したいものがある。
弟子たちが作った」
弟子たちが箱を持って出てきた。
新しい懐中時計だった。
初代の懐中時計より少し大きかった。
砕けた初代の欠片が中に封じ込められていた。
これまでの縁を忘れないためだった。
生命の精霊の紋章が刻まれていた。
アッチ:「次も壊したらまた作る」
最初に初代英雄19名が呼ばれた。
信、犬人女王リュカ、梟人ミネルヴェ
狼人ロガ、鴉人シルト、兎人ラギラブ、狐人ドミナス
鼠人バーナデッド、熊人ジグニ、羊人クラグル、
猪人フォーヌ、馬人ペイス、蝙蝠人アラファ、浣熊人アッチ
鹿人スタアーグ、猫人カティ、
川獺人ルトラ、ペンギンの海人ベルト、隼人イェラキ
19名が新しい懐中時計を受け取った。
次に名前が呼ばれた。
アッチ:「新しい世代にも渡す。
鹿人コダ。
馬人ルドルフ。
燕人ウィン」
コダ、ルドルフ、ウィンが受け取った。
手が震えていた。
コダ:「いいんですか」
アッチ:「前に渡すって言ってただろう。
お前たちが次の時代を作るんだから当然さ」
ウィンが懐中時計を握った。
小さな手だった。
しかししっかり握っていた。
さらに名前が続いた。
土竜人タルパ。
鼠人アルラッテ。
鹿人ソラ。
狼人ローフェン。
ラスカルズの主要メンバー。
全員が舞台に上がった。
会場が拍手した。
ロガ:「似合っているぞ」
ローフェン:「ありがとう」
信とリュカ
夜が深まっていた。
祭りがまだ続いていた。
笑い声が絶えなかった。
信とリュカが街の端に立っていた。
賑やかな会場が見えた。
人間と獣人が笑い合っていた。
精霊たちが灯りの周りを飛んでいた。
生命の精霊が遠くで光っていた。
リュカ:「ね、シン」
信:「何?」
リュカ:「もっとワクワクする楽しい国を作っていこうね」
信がリュカを見た。
リュカが笑っていた。
12歳になっていた。
最初に会った時は9歳だった。
小さかったリュカが、少しずつ大きくなっていた。
しかし笑い方は変わっていなかった。
まっすぐだった。
全部だした笑い方だった。
信:「ああ。
もっと、もっとワクワクする楽しい国を」
リュカ:「約束だよ」
信:「約束だ」
リュカが信の手を取った。
会場の方へ歩き始めた。
リュカ:「戻ろう。
まだ祭りは終わってない」
信:「そうだな」
二人が賑やかな場所へ戻っていった。
信が手帳を書いた。
後でいい、と思った。
今は祭りを楽しむ時だった。
手帳をしまった。
歩いた。
これが、俺たちの国だ。 笑うために作った国だ。 まだまだ続く。
こんなにワクワクすることが他にあるだろうか。
========================================
建国プロジェクト:状況報告
第5部・世界編 第15話終了時点
========================================
獣楽祭の内容
オープニング演劇
カイ・ラガンの原始の物語
ウィンが生命の精霊の誕生を歌った
食祭
各国の料理が一堂に会した
人間と獣人が同じ食卓を囲んだ
ウィンの生命の歌
大縁談が起きた
人間と獣人の縁が結ばれ始めた
アルラッテの発表
クロノス銀貨が基軸通貨に認定
魔法花火師ピュロス
初の魔法花火が夜空を彩った
新しい懐中時計
初代18名+新世代メンバーに配布
第5部の締め
「もっとワクワクする
楽しい国を作っていこう」
信とリュカの約束
第5部:世界編 完
第6部:発展編へ続く
========================================
第5部 第15話 終了
第5部「世界編」完結
「もっとワクワクする楽しい国を」 ― リュカ、獣楽祭の夜に
第6部「発展編」へ続く




