第5部 第7話「ケルビーエルへ」
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建国プロジェクト:状況報告
第5部・世界編 第7話開始時点
現在地:ケルビーエル・国境付近
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目的:エルフ女王ケレプレスへの直談判
状況:正規の訪問は拒否されている
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鳳凰がケルビーエルの森の外に降りた。
国境付近で止まる。
蝙蝠人アラファが信の前に来た。
アラファ:「入る方法はいくつかありますがここからは?」
信:「双方被害を出さずに女王の寝室まで行けるかな」
アラファ:「可能です。
ただし少人数ならば」
信:「わかった。
頼むよ」
日が暮れた。
アラファが暗部チームを動かした。
音がなく、気配がなかった。
エルフの衛兵が複数いたが気づかれなかった。
アラファの音波探知が全ての動きを把握していた。
信が心の中で思った。
この能力、実はかなりヤバい気がする。 まあ、今は考えないようにしよう。
女王の寝室へ
月明かりの夜だった。
高い塔の一室だった。
アラファと暗部のチームが先行。
信、犬人女王リュカ、梟人ミネルヴェ、竜人カイ・ラガン、鹿人コダ、鷲人アエトス、狼人ローフェン、狼人ロガが続いた。
扉が静かに開いた。
室内に入った。
エルフの女王ケレプレスが目を覚ました。
寝台の上で上体を起こした。
目が鋭かった。
年齢が読めなかった。
しかし只者ではない気配があった。
ケレプレス:「誰だ」
声が低かった。
動揺はなかった。
しかし警戒していた。
ミネルヴェが前に出た。
ミネルヴェ:「獣王国クロノスリュカの者です。
ただ話を聞いてほしく、失礼した」
ケレプレス:「国王の寝所に不法侵入とは。
命が惜しくないと見える」
ミネルヴェ:「衛兵を呼ぶ前に、一つだけ見ていただきたいものがあります」
ムネモシュネの顕現
ミネルヴェが蔵書を取り出し、開く。
その瞬間、空気が変わった。
図書館での夜と同じ光だった。
記憶の精霊ムネモシュネが顕現した。
ミネルヴェの体を依代とした。
光がケレプレスに向かった。
映像だった。
エルフと竜族が一つの種族だった時代の記憶。
知識を求めて竜族となったものたちの記憶。
忘却を望んでエルフとなったものたちの記憶。
獣人が生まれた瞬間の記憶。
ケレプレスが見ていた。
ケレプレス:「……やめろ」
声が震えた。
ケレプレス:「やめろと言っている!
このような記憶は偽物だ。
獣人と我々が同じ根を持つなどあり得ない!
あり得るはずがない!」
強烈な拒絶だった。
ケレプレスが何かを叫んだ。
エルフ語だった。
カイ・ラガンが表情を変えた。
カイ・ラガン:「……レーテーを呼んだ」
レーテーの顕現
空気が重くなった。
光が消えた。
靄のような存在が現れた。
形がなかった。
しかし確かにそこにいた。
忘却の精霊レーテーだった。
記憶の精霊ムネモシュネとは対局する存在。
レーテーがケレプレスに向かった。
ミネルヴェ(ムネモシュネ):「……記憶の削除だ。
見せた記憶を消そうとしている」
信:「止められるか」
ミネルヴェ(ムネモシュネ):「外からは無理だ。
中に入らなければならない」
精神世界へ
ムネモシュネが全員に語りかけた。
精神世界に引き込まれた。
一瞬だった。
気づいた時、全員が別の場所にいた。
白い空間だった。
上も下もなかった。
しかし足元に何かがある感覚があった。
ケレプレスの精神世界だった。
記憶が形になって漂っていた。
光の粒だった。
その粒を追いかける影があった。
レーテーの使徒だった。
無数にいた。
影が光の粒に触れるたびに記憶が消えた。
ロガ:「体がない」
ローフェン:「ここは精神の世界だ。
体じゃなく意志で動く。
強く動こうと思えば動ける」
ロガ:「意志か」
ローフェン:「ガイアの依代の時と似ている。
感覚を掴むしかない」
ロガが拳を握った。
感覚が戻ってきた。
精神世界の戦い
レーテーの使徒が向かってきた。
影の群れだった。
形がなかった。
しかし触れると記憶が薄れる感覚があった。
ロガが使徒を殴った。
意志の拳が影を散らした。
ロガ:「当たる」
ローフェン:「当たる。
意志が強いほど力になる」
コダが錬成魔法を展開した。
精神世界でも魔法は使えた。
地の力が使徒を押さえ込んだ。
アエトスが風の力で使徒を散らした。
シルフィードの加護が精神世界でも輝いた。
しかし精神世界での戦いに不慣れなため劣勢になっていく。
その時、リュカが時空魔法を展開した。
記憶の粒の動きを遅らせた。
使徒が粒に追いつけなくなった。
リュカ:「記憶を守れる。
でも数が多い」
ローフェンが精霊の欠片を解放した。
精神世界で光が広がった。
使徒が光に怯んだ。
ローフェンが放つ力はレーテーの使徒に確実に利いている。
それを機と捉え、ロガが使徒の中心に突進した。
意志の塊が影を貫いた。
使徒が散った。
また集まってきた。
ローフェン:「中心を断つ必要がある。
使徒に命令を出している核がある」
ミネルヴェ(ムネモシュネ):「この世界の深くにある。
ケレプレスが自ら植え付けた忘却への意志だ」
全員が深部に向かった。
使徒の群れを突破しながら進んだ。
ロガが道を切り開いた。
ローフェンが光で使徒を散らした。
コダとアエトスが後方を守った。
リュカが記憶の粒を守り続けた。
奥に核があった。
暗い塊だった。
ケレプレス自身の忘却への意志だった。
何百年もかけて積み重なった拒絶だった。
ミネルヴェ(ムネモシュネ):「これは壊せない。
ケレプレス自身のものだ。
しかし見せることはできる。
本人に向き合わせる」
ムネモシュネが核に光を当てた。
核の中に映像が浮かんだ。
ケレプレスが幼い頃の記憶だった。
まだエルフと竜族の関係が残っていた時代だった。
獣人と遊んだ記憶があった。
しかしその後、何かに傷ついた記憶があった。
傷ついたから忘れようとした。
忘れるために憎もうとした。
憎しみが積み重なって確信になった。
核が揺れた。
使徒が弱まった。
意識が戻る
一瞬だった。
全員が体に意識を戻した。
女王の寝室だった。
全員が床に倒れていた。
疲労が全身を押しつぶした。
精神世界での戦いが体に響いていた。
ロガ:「身体が重い」
ローフェン:「体で戦ったより
きついね」
コダ:「全部使い切った感じがします」
全員がなんとか起き上がった。
ケレプレスが寝台の上で座っていた。
目が変わっていた。
怒りではなかった。
何かを見てしまった目だった。
ケレプレスとの対話
長い沈黙があった。
最初にケレプレスが口を開いた。
ケレプレス:「……証明はできないのだろう。
あの記憶が本物かどうか」
ミネルヴェ:「証明はできない。
しかし否定もできない。
それだけの記録がある」
ケレプレス:「……」
また沈黙があった。
ケレプレス:「認めたくはない。
今も認めたくない。
しかし……
否定する根拠も今は持っていない」
リュカ:「それで十分です。
今日、全部を認めてほしいとは思っていません。
ただ、ローフェンへの暗殺命令を撤回してほしい。
それだけです」
ケレプレスがローフェンを見た。
ローフェンが真っ直ぐ見返した。
長い間があった。
ケレプレス:「……相互不可侵か。
ケルビーエルはクロノスリュカに
手を出さない。
クロノスリュカもケルビーエルに手を出すな。
暗殺命令は撤回する」
信:「約束します」
カイ・ラガンが前に出た。
カイ・ラガン:「一つだけ聞かせてほしい。
竜族とエルフが再び交流を持つことはできないか」
ケレプレス:「……今はその時ではない。
千年前のことは千年前のことだ。
今は、まだ」
カイ・ラガン:「……わかった」
カイ・ラガンが引いた。
今は、まだ。
その言葉に少しだけ可能性があった。
帰路
全員が塔を出た。
アラファが来た道を戻した。
誰も話さなかった。
疲弊していた。
しかし全員が歩いていた。
鳳凰に乗り込んだ。
飛び立った。
ケルビーエルが小さくなっていった。
ロガがローフェンの隣に来た。
ロガ:「よくやった」
ローフェン:「オヤジが道を開いてくれたからだよ」
ロガ:「お前が教えてくれたから」
どちらも前を向いていた。
しかし互いの言葉をちゃんと聞いていた。
リュカが信の隣に来た。
リュカ:「終わったね」
信:「終わった。
とりあえず」
リュカ:「とりあえず?」
信:「ケレプレスが全部を認めたわけじゃない。
でも今日は十分だ」
リュカ:「うん。
十分だね」
リュカが信の服の端を掴んだ。
精神世界で全員が倒れた時、信の隣で起き上がったのはリュカが最初だった。
信はそれを覚えていた。
何も言わなかった。
ミネルヴェが窓の外を見ていた。
ムネモシュネはもう去っていた。
しかしミネルヴェの中に何かが残った感覚があった。
ミネルヴェ:「……記憶と忘却はどちらが正しいわけでもない。
しかし向き合わなければならない。
向き合うことを諦めた時に憎しみが生まれる」
信が手帳に書いた。
ケレプレスは認めたくなかった。 それでも向き合った。 それで十分だ。 変化は一日では起きない。 しかし今日、種を蒔いた。 ケルビーエルにも、いつか春が来る。
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建国プロジェクト:状況報告
第5部・世界編 第7話終了時点
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ケルビーエルとの結果
相互不可侵の約束
ローフェンへの暗殺命令撤回
竜族とエルフの交流は「今はまだ」
精神世界の戦い
ムネモシュネ×レーテーの使徒
ロガが精神世界で戦い方を掴んだ
全員が疲弊して倒れた
しかし全員が起き上がった
ケレプレスの変化
認めたくないが否定できなくなった
幼い頃の記憶が揺れた
長期的な変化の布石
ロガとローフェン
互いを認めた言葉
カイ・ラガンの課題
竜族とエルフの交流は「今はまだ」
しかし可能性は残った
次のマイルストーン
→ケイオスが本格的に動き始める
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第5部 第7話 終了
次話:「迫る影」




