第5部 第6話「記憶と忘却」
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建国プロジェクト:状況報告
第5部・世界編 第6話開始時点
現在地:クロノスリュカ・図書館
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状況 :イオフィーエルから持ち帰った
蔵書の解読中
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数日間、ミネルヴェが図書館に籠もっていた。
鹿人コダと鹿人ソラが補助で読み込んだ。
4日目の朝、ミネルヴェが信を呼んだ。
蔵書を並べながら説明した。
竜族とエルフはかつて精霊の管理を共同で行っていた。
竜族は全ての出来事を記録したがる存在だった。
記憶の精霊ムネモシュネと繋がる存在だった。
エルフは特定の記憶を忘却することを望む存在だった。
忘却の精霊レーテーと繋がる存在だった。
この根本的な価値観の違いが千年前の決別を生んだ。
記録に残すべきか、忘れるべきかという争いだった。
決別の詳細はまだわからなかった。
記録が消されていた。
ミネルヴェ:「竜族は記録を残したがる。
エルフは記録を消したがる。
私は鳥人だ。
竜の血が流れている。
記録を残したいと思うのは当然だったのかもしれない」
カイ・ラガン:「そういうことだったか。
千年前に何があったか我の記憶にも欠けた部分がある。
意図的に消されたのかもしれない」
イオフィーエルの存在の意味
ミネルヴェが続けた。
ミネルヴェ:「エルフが忘却を望むなら図書館を持つイオフィーエルは
エルフ社会では異質な存在だ。
なぜあの国だけが記録を残そうとしているのか」
カイ・ラガン:「おそらくイオフィーエルは竜族の価値観に近い部分を持っている。
だからこそ他のエルフ国から距離を置かれている」
信:「なるほど、オファニーエルがイオフィーエルを紹介した理由がわかった気がする」
闇夜の使者
深夜だった。
狼人ローフェンの部屋に気配がした。
音がなかった。
しかしローフェンの精霊の欠片が反応した。
身を躱した瞬間、刃が壁に刺さった。
ローフェンの危険を感じた狼人ロガが隣の部屋から飛び出た。
真獣化し侵入者を捉える。
ロガはマスクを剥ぎその顔を確認する。
白い肌、綺麗な金髪、何よりも特徴的な長い耳。その暗殺者はエルフだった。
次の瞬間、暗殺者が自害した。
姿は泡状となり消え、遺留品は何もなかった。
騒ぎ聞き数人が集まる。
ロガ:「エルフの暗殺者だった」
信:「間違いないか」
ロガ:「ああ」
ローフェン:「俺が狙われたみたいだった」
信:「エルフがローフェンを?」
オファニーエル、イオフィーエル両国への確認
メールバードを両国に飛ばした。
両国とも即座に否定した。
アグラリエルから返答が来た。
「我々の関与ではない。
しかし心当たりがある。
ケルビーエルの可能性が高い。
あの国はエルフ至上主義を掲げている。
主精霊ガイアの依代を獣人が担ったという事実を知ればそれを認められはしないだろう。
アグラリエル」
サエルミアからも返答が来た。
「我々は関与していない。
おそらく、我々の国から漏れたのであろう。
あの国は我が国の動向を常に監視しているからな。
我々ではケルビーエルは止められない。
申し訳ない。
サエルミア」
対策会議の召集
コアメンバーが集まった。
ミネルヴェが状況を整理した。
ミネルヴェ:「ケルビーエルはエルフ最大国。
全面戦争になれば正直、厳しいだろう」
ロガ:「戦える」
ミネルヴェ:「戦えることと勝てることは違うだろう。
息子の件とはいえ、少し冷静になれ」
ロガ:「すまん」
信が黙って全員を見た。
信:「会話を持てる状況を作らなければならない。
しかし今はその糸口が見えない。
そもそもケルビーエルが首謀国である裏が取れてない」
沈黙があった。
答えが出なかった。
その日の会議はそこで終わった。
新精霊の顕現
深夜、図書館でミネルヴェが一人で蔵書を読み続けていた。
答えを探していた。
ページをめくる音だけが響いていた。
その時、空気が変わった。
図書館全体が柔らかく光った。
本の背表紙が一斉に輝いた。
ミネルヴェが顔を上げた。
光の中に存在があった。
形があるようでなかった。
しかし確かにそこにいた。
本と記憶と時間が混ざり合ったような存在だった。
ミネルヴェが動かなかった。
72年間、知識を求め続けてきた。
初めて、知識そのものが向こうから来た気がした。
ミネルヴェは本能的に理解した。
それは記憶の精霊ムネモシュネだった。
言葉ではなかった。
映像だった。
記憶だった。
長い長い時間の記憶が、一瞬でミネルヴェに流れ込んだ。
ミネルヴェが椅子に深く座り直した。
目を閉じた。
流れ込んだ記憶を整理した。
一つの事実があった。
エルフと竜族は元々一つの種族だった。
それは長い時間を生きる「長命種」。
知識を求め続けたものが竜族となった。
忘却を望み、自然との共生を進めたものがエルフとなった。
同じ根から二つに分かれた。
記録したいという意志と、忘れたいという意志が、一つの種族を二つに割った。
そして。
獣人はエルフの自然共存を望む存在と、人間との混血だった。
ミネルヴェ:「……なるほど。
それで獣人は魔法と魔術を両方扱えるのか。
長命種・エルフの血で魔法を。
人間の血で魔術を。
当然だ。
最初からそういう存在だったのだから」
光が静かに消えた。
図書館が元の暗さに戻った。
ミネルヴェが長い間、動かなかった。
翌朝の共有
朝、ミネルヴェが全員を集めた。
静かな顔をしていた。
しかし目が普段より深かった。
前置きなく話し始めた。
昨夜のことを全部話した。
全員が黙って聞いた。
エルフと竜族が元々一つの種族だったこと。
獣人がエルフと人間の混血であること。
話が終わった。
しばらく誰も言葉を発しなかった。
リュカ:「……わたしたちはエルフと繋がっていたの?」
ミネルヴェ:「血の意味ではそういうことになる」
コダ:「エルフが獣人を嫌うのは……」
ミネルヴェ:「自分たちの一部を嫌っているのかもしれない。
忘れたい記憶を目の前に突きつけられているような感覚なのだろう」
カイ・ラガン:「……竜族とエルフが
一つの種族だったとは。
我も知らなかった。
消された記憶の中にあったのか」
ローフェンが静かに言った。
ローフェン:「俺を消そうとしたのは自分たちのことを思い出させたくないからか」
ミネルヴェ:「……そうかもしれない」
ロガがローフェンの隣に来た。
何も言わなかった。
ただそこにいた。
そこに緊急の連絡を持ってドミナスが入ってきた。
アグラリエル女王から緊急のメールバードが来ていたのだ。
その内容は、今回の暗殺の首謀国はやはりケルビーエルであった事。
そして、更なる部隊の派遣を準備している事だった。
信が全員を見た。
信:「先生が知ったこの事実をケルビーエルに伝える必要がある。
これが会話の糸口になる」
ミネルヴェ:「ケルビーエルはエルフ至上主義だ。
自分たちが獣人と同じ根を持つと認めたくないかもしれない」
信:「それでも伝えなければならない。
知らないまま憎み続けるより
知って向き合う方がいい」
リュカ:「行こう。
ケルビーエルへ」
全員が頷いた。
ミネルヴェが蔵書を閉じた。
72年間、知識を求め続けてきた。
しかし昨夜初めて、知識の方が自分を選んだ気がした。
ミネルヴェ:「ムネモシュネよ。
なぜ私を選んだのだ。
……鳥の血が流れているからか。
竜族と同じ根を持つ者に伝えたかったのか」
答えは来なかった。
しかし来ないことが、答えかもしれなかった。
信が手帳に書いた。
記録と忘却の戦いが千年前にあった。 今もある。 俺がいた世界でも同じことがあったかもしれない。 忘れたいことと、残したいこと。 両方が人間にはある。 大事なのはどちらかを消すことではなく、向き合うことだ。 ケルビーエルに会いに行く。 怖い場所かもしれない。 でも、行かなければ何も始まらない。
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建国プロジェクト:状況報告
第5部・世界編 第6話終了時点
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新たな判明事項
ムネモシュネ(記憶)↔︎レーテー(忘却)
竜族とエルフは元々一つの種族
獣人はエルフと人間の混血
だから魔法と魔術の両方が使える
ローフェンへの暗殺未遂
エルフの暗殺者が送り込まれた
ロガが真獣化で撃退
暗殺者は自害
ケルビーエルの関与が濃厚
ムネモシュネの顕現
記憶の精霊がミネルヴェの元に現れた
映像として事実を共有した
次の目標
ケルビーエルへの訪問
事実を伝えることが糸口になる
ローフェンとロガ
ロガが黙ってローフェンの隣にいた
次のマイルストーン
→ケルビーエルへの突入
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第5部 第6話 終了
次話:「ケルビーエルへ」




