第4部 第15話「共存の誓い」
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建国プロジェクト:状況報告
第4部・共存編 第15話開始時点
現在地:光る谷・竜の国の扉の前
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状況 :竜の国の扉が開いた
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扉の向こうに、見たことのない世界が広がっていた。
光と闇が点在していた。
上も下もなく、空間が定まっていなかった。
時間の流れが一定ではなく、全てが揺らいでいた。
一歩踏み込んだ瞬間、全員の存在が揺れた。
輪郭が曖昧になった。
手が透けかけた。
信:「体が」
鹿人コダ:「記録しようとしたら手帳がぼやけました」
竜人カイ・ラガンが全員に伝えた。
声ではなかった。
思考が直接届いた。
この世界では声が音として伝わらなかった。
思考が言葉の代わりだった。
カイ・ラガン:「自分を定義しろ。
お前はお前だという一点に全てを集めろ。
それがここでの存在の保ち方だ」
全員が目を閉じ、自分を定義しようとした。
少しずつ輪郭が戻ってきた。
しかしまだおぼつかなかった。
信が自分の手を見た。
まだ少し透けていた。
信:「なるほど。
竜人やそれに近いものが
あちらの世界で姿を変えられるのはこれが理由か。
存在を定義する力を持っているから」
その思考が全員に伝わった。
カイ・ラガンが頷いた。
存在を定めるもの
信の存在が他より強く揺れていた。
カイ・ラガンが気づいた。
カイ・ラガン:「別の次元から来た者はさらに定まりにくい。
お前の存在の根がここにないからな」
信が揺れ続けた。
犬人女王リュカが信の手を握った。
リュカ:「これで定まる?」
信:「ああ、ありがとう」
リュカが手を握ったまま歩いた。
信の輪郭が安定した。
竜の国の景色
空間が揺らぐ中を進んだ。
無数の精霊が飛んでいた。
見たことのない種類ばかりだった。
コダが記録しようするが、手帳がぼやけた。
コダ:「記録できない」
カイ・ラガン:「帰ってから記憶で書組んだ。
この世界では物質が定まらない」
狼人ローフェンが精霊に引き寄せられた。
精霊たちがローフェンの周りに集まってきた。
精霊の欠片を持つ者に反応していた。
竜たちの影が遠くに見えた。
巨大だった。
声は聞こえなかった。
しかし存在感が伝わってきた。
温かかった。
感情が色になって見える
この世界では感情が色になって見えた。
全員が気づいた。
ロガの色が見えた。
深く重い色だった。
ローフェンがその色を見て驚いた。
怒りだと思っていた色が、実は違う色をしていた。
深い後悔と、それ以上の深さの愛情が混じった色だった。
ローフェン:「知らなかった」
信の色が見えた。
複雑だった。
誰も読めなかった。
リュカの色が最も美しいと全員が思った。
言葉にはしなかったがその思考は全員に伝わった。
リュカが少し赤くなった。
長との対話
気づいたら誰かが傍にいた。
いつからいたかわからなかった。
長だった。
複数いた。
誰が長かわからなかった。
この世界では存在の境界が曖昧だった。
長:「クロノスの使徒が来た。
長い間待っていた」
長:「別の世界の者か。
それと、全く別の世界からきた者もいる様だな」
長:「ガイアの気配がする。
珍しいことだ」
カイ・ラガンに長たちが語りかけた。
帰還を喜ぶ気配があった。
しかしすぐに深刻な話になった。
竜の国の現状
長たちが語った。
竜の国でも混沌の王ケイオスと虚無の王タルタロスからの攻撃をそれぞれ受けていた。
タルタロスへの対抗はこの世界の存在たちには可能だった。
この不確かな世界ではタルタロスの次元蟲が定まれないためだった。
しかしケイオスへの対応が難しかった。
混乱は不確かな世界でも力を持ってしまう。
リュカ:「クロノスリュカはケイオスへの対抗に協力します。
約束します」
長たちが静かに受け取った。
アダマスの短刀の覚醒
長の一人がリュカの腰にあるアダマスの短刀を見た。
長:「クロノスの武器は眠っている様だ。
起こしてやろう」
短刀が光り始めた。
竜の国の光が短刀に流れ込んだ。
光が短刀全体を包み消えた。
すぐに短刀が元の姿に戻ったが何かが違った。
リュカが短刀を握った。
力が流れ込んだ。それは定義する力だった。
曖昧なものを定める力だった。
不確かなものを確かにする力。
長:「その力はケイオスへと大きく威力を発揮する。
混乱を定義すれば混乱は混乱でなくなる」
そして長が続けた。
長:「その力はまた別の世界への扉を開く力でもある」
全員が信を見た。
信への問い
長が信に語りかけた。
長:「その力があればお前の元いた世界への扉が開く。
帰るかね?」
信が長い間黙った。
この世界では感情が色になって見えた。
信の色が揺れた。
複雑な色だった。
リュカが信の手を握ったまま待った。
信:「残りますよ。
まだ何も成し遂げていない」
リュカの色が変わった。
言葉にならない色だった。
信が続けた。
信:「リュカの100%を見たくて始めた旅だった。
まだ見ていない」
信はリュカの方をむく。
信:「だから残るよ」
リュカが手を強く握った。
何も言わなかった。
全員が黙っていた。
ロガが前を向いたまま言った。
ロガ:「当然だ。これはお前が始めた旅でもあるんだからな」
竜石の授与
長たちが信に竜石を渡した。
透明な石だった。
内側に光が宿っていた。
長:「その力は後でわかる。
必要な時に使え」
リュカが受け取った。
ローフェンの精霊の完成
帰る直前、ローフェンの体が光った。
精霊の欠片たちが竜の国の中で完全に形をなしていた。
小さな精霊たちがローフェンの周りに集まった。
長が言った。
長:「お前の中で精霊が育っている。
ガイアの依代となった者に精霊が宿るのは自然なことだな」
ローフェンが手を差し出した。
精霊たちが手に止まった。
温かかった。
その時、ロガの思考が漏れた。
思考は伝わってしまう。
それはロガがローフェンへの思い。
「誇らしき、我が息子」
ローフェンが止まった。
ロガが気づき、慌てて取り消そうとした。
しかし竜の国では思考は取り消せなかった。
ローフェンが前を向いたまま歩き続けた。
しかし目が赤かった。
ロガが後ろから見ていた。
カイ・ラガンへの問い
帰る直前、長たちがカイ・ラガンに問いかけた。
長:「お前さんは残るんだろう?」
カイ・ラガンが少し間を置いた。
カイ・ラガン:「リュカたちと帰る。
食事や人の営みなど楽しいことが溢れているからな。
それにいつでも帰れる。
今はあちらにいたい」
長たちが受け入れた。
カイ・ラガンが扉の方を向いた。
信が隣に並んだ。
信:「帰りましょう」
カイ・ラガン:「そうだな」
帰還
扉を出た。
光る谷の空気が戻ってきた。
体が定まった。
声が戻った。
全員が深呼吸した。
ルドルフ:「体が重い」
コダ:「戻ってきた感じがします」
アエトス:「向こうでは
全部が聞こえすぎた」
リュカが転移ゲートを作った。
竜の国とクロノスリュカが直接繋がった。
これでいつでも来られるようになった。
全員で渓谷に帰った。
帰国・獣楽祭
渓谷に戻ると国民が待っていた。
ラックが獣楽祭の準備を整えていた。
猫人カティ:「遅いぞ」
鼠人アルラッテ:「経済報告があります。
今すぐ」
信:「後でいいか」
アルラッテ:「ダメです」
獣楽祭が始まった。
マリアナが歌い、セラとウィンが続いた。
ダレトとイナバとショコラが料理を並べた。
国民が笑った。
食べた。
飲んだ。
踊った。
夜、信とリュカが時計塔の頂上に立った。
渓谷の灯りを見た。
そこに珍しくミネルヴェが飛んで来た。
シルトの街の灯り。
ラギラブ農村の灯り。
工場の灯り。
ルトラ港の灯り。
全部が光っていた。
ミネルヴェは梟から人の姿へと変身する。
ミネルヴェ:「お前たち二人の旅もここまで来たな」
信:「何言ってるんですか、俺たち全員の旅ですよ」
リュカ:「そう、ミネルヴェの旅でもあるんだから」
ミネルヴェ:「ふ、そうだな。
私たちの旅も遠くへ来たもんだ。
国を作り、上位精霊と事を構えるまでになったからな」
信:「本当に、何が起こるかわからないですよね」
そうして三人で笑った。
リュカが信の服の端を掴んだ。
竜の国で信が「残ります」と言った時の色を思い出した。
複雑な色だった。
しかし揺れていなかった。
定まっていた。
リュカ:「しん」
信:「なんだ」
リュカ:「ありがとう」
信:「何が」
リュカ:「全部」
信が何も言わなかった。
時計塔の鐘が鳴った。
渓谷に響いた。
光の精霊が塔の周りを舞った。
信が手帳に書いた。
竜の国に行った。 扉が開いた。 俺の世界への扉も開けるとわかった。 でも残ると言った。 後悔はない。 リュカの100%をまだ見ていない。 それが全てだ。 第4部が終わる。 第5部が始まる。 文化が成熟して、世界が広がっていく。 楽しみだ。
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建国プロジェクト:第4部完了
時の王国クロノスリュカ・建国3年目
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竜の国への訪問
扉が開いた
長たちと対話した
竜の国の現状を知った
アダマスの短刀の覚醒
定義する力を得た
ケイオスへの対抗手段になる
信の世界への扉を開く力でもある
信の決断
「まだ何も成し遂げていない。残ります」
リュカの100%を見るまで
竜石の授与
力は後でわかる
ローフェンの変化
精霊の欠片が完全に形をなした
ロガの思考が漏れた
「……誇らしい、息子」
カイ・ラガンの決断
クロノスリュカに戻ることを選んだ
「楽しいことが溢れているからな」
第4部:共存編 完
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第4部 第15話 終了
第4部「共存編」完結
「ただいま」 ― 信とリュカ、竜の国から帰った夜に
第5部「文化の成熟と世界の広がり」へ続く




