第4部 第3話「音楽堂の夜」
========================================
建国プロジェクト:状況報告
第4部・共存編 第3話開始時点
現在地:クロノスリュカ・シルトの街
========================================
国民 :8000名以上
状況 :音楽堂の建設完了間近
========================================
シルトの街に木造りの建物が完成した。
音楽堂が完成したのだ。
半円形の舞台。
客席が舞台を囲む形になっていた。
熊人ジグニと白熊人ビョルンが建設を担当した。
浣熊人アッチが音の反響を計算して壁の角度を決めた。
ジグニ:「音のための建物は
初めて作った」
アッチ:「壁の角度が命だ。
全部計算通りだ」
ビョルン:「……頑丈には作った」
アッチ:「頑丈さは求めていないが
まあいい」
狸人ラックが完成した音楽堂を見渡した。
ラック:「最高の舞台ができましたね。
ここで音楽祭なんてワクワクしてきます」
マリアナたちの練習・歌の精霊
完成した夜、三人が舞台に立った。
人魚海人マリアナが歌い始めた。
猫人セラが重なった。
燕人ウィンが高音を添えた。
三つの声が音楽堂に広がった。
石の壁が響いた。
空気が変わった。
光の粒が集まってきた。
歌の精霊だった。
前回より形がはっきりしていた。
舞台の上で止まった。
動かなかった。
マリアナ:「また来てくれた」
セラ:「今度は留まっている」
ウィン:「うれしい」
歌の精霊が少しずつ大きくなっていた。
成長しているようだった。
名前はまだなかった。
歌、楽器、ダンスの才能開花
練習の音を聞きつけた獣人たちが音楽堂に集まってきた。
歌いたいという者が数名いた。
ラックが全員に歌わせた。
簡単なオーディションが始まった。
狐人の青年・リルクが歌った。
低音が異常に豊かだった。
マリアナの高音と組み合わさると空間が震えた。
羊人の少女・ヴィオが歌った。
音域が広く感情を声に乗せる才能があった。
クラグルの弟子だったがラックがその場でスカウトした。
ラック:「この子たちは本物だ」
マリアナ:「一緒に歌いたい」
歌う者が増えた頃、楽器を持った獣人が現れた。
鹿人の青年・コルドだった。
木で作った弦楽器を自分で作ったと言った。
演奏し始めた。
歌声と絡み合った。
楽器の音に反応する精霊が現れた。
弦を弾く手の周りに光が宿った。
楽器の精霊だった。
まだ小さかった。
名前はなかった。
しかし確かにそこにいた。
音楽が流れると体が動く獣人が現れた。
ライオンの獣人の女性・ロアだった。
元闘技場の剣闘士だった。
最初は恥ずかしそうだった。
しかし音楽に引き込まれた。
気づいたら舞台の上で踊っていた。
戦闘の動きが美しさに変わっていた。
子猫人の少女・ニャラが続いた。
ニャルの妹だった。
音楽に全身で反応した。
踊りの精霊がロアの足元に現れた。
踊るたびに光が広がった。
まだ小さかった。
名前はなかった。
音石の発明
アッチが音楽堂の練習を見ていた。
ある日、フォーヌに相談した。
アッチ:「音を石に込められないか」
フォーヌ:「石にルーン文字を刻めば何かを込められる。
ただし石は砕ける」
アッチ:「何回まで使えるかな」
フォーヌ:「3回か4回が限界だな」
アッチ:「十分だ」
二人が共同で音石を開発した。
演奏中に石に触れると音が込められた。
石を持った者が触れるとその音が再生された。
アッチ:「お土産になる。
音楽堂の記念品だ」
アルラッテ:「これは売れる! 間違いなし!」
ラック:「じゃあ獣楽祭で販売しましょう」
獣楽祭
1回目の音楽祭は国民向けだった。
だが2回目はガルディウス経由で人間の客人を数名招待した。
最初は緊張した顔をしていた。
しかし音楽が始まると表情が変わった。
終わった時、最初に拍手したのは人間の客人の一人だった。
それから全員が拍手した。
ガルディウスから書簡が届いた。
「客人たちから報告を受けた。
全員が言葉を失ったと言っていた。
また呼んでほしいと言っていた。
音楽に国境はないとは本当だな。
ガルディウス」
ラックが信に見せた。
ラック:「次は本番よ」
信:「本番?」
ラック:「各国の代表を呼ぶ。
3回目の獣楽祭で」
国賓招待
各国代表の到着
シルトの街に、見慣れない顔ぶれが集まってきた。
聖王教国カルシアから、ガルディウス将軍と副将ゼルヴァンと外交大臣が来た。
ドワーフ国からオラーリグ親方・サークスム親方・クラーピス親方の三家が来た。
魔法国ソルマーレからエルネスト皇子と外交大臣が来た。
商業国家マルカンドからマンサ・バティートが来た。
他に周辺国の外交担当者が数名来た。
護衛問題
ラックが信に言った。
ラック:「護衛はカティチームに頼みましょう。
国賓を守るのだから当然」
信:「カルシアの代表は獣人の護衛を嫌がるかもしれない」
案の定だった。
カルシアの外交大臣が難色を示した。
外交大臣:「獣人に護衛されるとはいささか複雑な心境だが」
ガルディウスが呆れるように呟く
ガルディウス:「救国の恩人たちにまだそのような事を」
リュカが前に出た。
リュカ:「そうすぐには思いは変えられないものですよね」
ガルディウス:「これはリュカ殿下。
我が国の者が申し訳ない」
リュカ:「いいえ。大丈夫です。
この国で最も信頼できる護衛です。
皆さんを大切にしたいからこそお願いしています」
外交大臣:「王直々のお願いとあれば」
猫人カティが無言で各国代表の周囲に配置についた。
気配を消した。
どこにいるかわからなかった。
ガルディウス:「あの猫人は本物だな」
信:「この国で一番怖い存在です」
ガルディウス:「なるほど」
各国代表とリュカ・信の会話
宴の前、リュカと信が各国代表と話した。
ガルディウスが信の隣に来た。
信:「その後、国はどうですか?」
ガルディウス:「奴隷の獣人がいなくなったことで経済的にもかなり厳しい。
ただなんとかやっていくよ。
人間も案外逞しいものだからな」
信:「困ったことがあれば言ってください。
できることはします」
ガルディウス:「その言葉が本当だとわかっているから余計に複雑だ」
信:「それでいいんじゃないですか」
オラーリグ親方が信の前で腕を組んだ。
オラーリグ:「日本酒という酒は本当に旨い。
ただ切れ味が良すぎて
俺たちドワーフでも飲みすぎて参っちまう時があるぞ。
ガッハッハッ」
サークスム:「俺は先月三日寝込んだ」
クラーピス:「俺は四日だ」
オラーリグ:「ガッハッハッ」
信:「それは申し訳ない」
フォーヌ:「度数を下げた版も作れる」
オラーリグ:「いらん。
これがいいんだ」
エルネスト皇子がリュカに近づいた。
エルネスト:「本当に素敵な国だね。
来るたびに変わっている。
魔術交流として王に許しを得てしばらく滞在しようかな」
リュカ:「いつでも歓迎します。
ミネルヴェが喜ぶと思います」
エルネスト:「あの梟人の先生か。
少し怖いな」
リュカ:「大丈夫です。
怒らせなければね」
商業国家マルカンドのマンサ・バティートが信に近づいた。
小柄だったが目が鋭かった。
マンサ:「全く、取引の度に新しく珍しいものを作りおって。
商人として腕がなるではないか」
信:「それは光栄です」
マンサ:「光栄などと言っている場合ではない。
あの音石とやら、我が国で独占販売の権利を売ってはくれないか」
信:「アルラッテと話してください」
マンサ:「あの鼠人の娘か。
あれで中々手強い」
信:「それは素晴らしい褒め言葉だ」
オープニングの劇
宴の前に劇が始まった。
原始の出来事を描いた演目だった。
役者たちが舞台に立った。
しかし今回は違った。
コダが地面に獣文字を刻んだ。
アルラッテが機械仕掛けの演出装置を起動した。
ミネルヴェが黒魔術で光の演出を施した。
精霊魔法と魔術の特殊効果が舞台を覆った。
クロノスとケイオスの戦いが目の前で展開された。
精霊たちの誕生。
大地が形になる瞬間。
炎が空を覆う場面でルドルフのサラマンダーの加護が発動した。
本物の青い炎が舞台を彩った。
アエトスのシルフィードの加護が風を起こした。
舞台に嵐が生まれた。
各国の代表が動きを止めた。
ドワーフ親方衆が杯を置いた。
ガルディウスが腕を組んで前のめりになった。
エルネストが口を開けていた。
マンサが手帳を取り出しかけてそのまま止まった。
30分の演目が終わった。
静寂があった。
それからガルディウスが立ち上がった。
拍手した。
全員が続いた。
音楽、食事、酒の宴
劇が終わり、宴が始まった。
ダレトが陸の料理を並べた。
イナバが海の料理を並べた。
ショコラが菓子を並べた。
日本酒が運ばれた。
ドワーフ親方衆が即座に杯を手にした。
マリアナが歌い始めた。
セラとウィンが続いた。
リルクとヴィオが加わった。
コルドの弦楽器が響いた。
ロアが舞台で踊り始めた。
歌の精霊が現れた。
楽器の精霊が現れた。
踊りの精霊が現れた。
精霊たちが宴の中を舞った。
各国の代表がそれを見ていた。
エルネスト:「精霊が……本当にいる」
ガルディウス:「……ああ」
音石が各テーブルに置かれた。
マンサが音石を手に取った。
触れた。
音楽が再生された。
マンサ:「これは売れる。
確実に売れるな」
宴が深夜まで続いた。
翌朝、各国代表の出発
翌朝、各国代表が出発する前にリュカに挨拶をした。
ガルディウスが最後に言った。
ガルディウス:「音楽は力がある。
昨夜はじめてそれを体で理解した」
リュカ:「また来てください」
ガルディウス:「……来る。
約束する」
エルネストが振り返った。
エルネスト:「滞在の件、本国に連絡してみる。
楽しみにしていてくれ」
リュカ:「待っています」
マンサが最後に信に言った。
マンサ:「次の取引の時に音石の件を詰めよう。
あの鼠人の娘を交渉の席に出してくれ」
信:「アルラッテも楽しみにしていると思います」
マンサ:「手強い相手ほど商売が楽しいものだ」
全員が帰っていった。
シルトの街が静かになった。
ラックが信の隣に立った。
ラック:「どうだった」
信:「完璧」
ラック:「そうでしょ」
信:「次はもっと大きくしてみようか」
ラック:「もう計画してある」
リュカが音石を一つ手に取った。
触れた。
マリアナの歌声が流れた。
リュカ:「いつか人と獣人が隔たりなく楽しめる祭りになったらいいな」
信:「そうだね。そうしよう」
リュカは何かを言いかけて止めた。
時計塔の鐘が朝を告げた。
========================================
建国プロジェクト:状況報告
第4部・共存編 第3話終了時点
========================================
文化の発展
音楽堂:シルトの街に完成
3回の獣楽祭を開催
新たな才能
歌:狐人リルク・羊人ヴィオ
楽器:鹿人コルド
ダンス:ライオン人ロア・子猫人ニャラ
下位精霊の成長
歌の精霊・楽器の精霊・踊りの精霊
→名前はまだない
→成長が続いている
音石(魔法石)の誕生
音を込められる石・3〜4回で砕ける
各国代表が購入
マルカンドとの独占販売交渉へ
外交の進展
カルシア:ガルディウスが「また来る」と約束
ソルマーレ:エルネストが滞在を検討
マルカンド:音石の取引を前向きに検討
ドワーフ:日本酒を絶賛・関係が深まった
次のマイルストーン
→食文化が一段階上がる
========================================
第4部 第3話 終了
次話:「ショコラとカカオ」




