第2部 第15話「次の地平へ」
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建国プロジェクト:状況報告
第2部・建国編 第15話開始時点
現在地:クロノスリュカ・建国地
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国民 :280名
資金 :金貨15枚・銀貨120枚
建国から:1年
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時計塔の鐘が鳴った。
朝の光が渓谷に差し込んだ。
建国から、1年が経っていた。
渓谷の朝
信が渓谷を歩いた。
1年前、65名が神殿に雑魚寝していた場所に、今は50棟以上の住居。
それぞれの住民の特性に合わせた、自然共存型の住居が並ぶ。
畑では3回目の収穫が始まっていた。
兎人ラギラブが土を触りながら笑っていた。
工房では猪人フォーヌと浣熊人アッチが新しい設計図を広げていた。弟子たちが黙々と作業していた。
学校では梟人ミネルヴェが鹿人コダとソラに獣文字を教えていた。子どもたちの声が渓谷に響いていた。
図書館の前で守護者ストーンゴーレムが静かに立っていた。
そして、国の象徴とも言うべき時計塔が渓谷を見下ろしていた。
信:「ここまで来たんだな」
農地の拡大と新型ロボット
外敵の脅威が減ったことで、渓谷の外への農地拡大が検討されていた。
信がラギラブとジグニを呼んだ。
信:「渓谷の外に農地を広げたいんだ。
南の平野が候補だ」
兎人ラギラブ:「土地は見ている。
悪くないと思う。
ただし開墾に時間がかかるぞ」
信:「そのためのロボットを作ってもらうんだ」
アッチが設計図を広げた。
水牛型のロボットだった。
アッチ:「農地の開墾、耕作、水路の整備を担う。
こいつには何か特別な戦闘機能は持たせない」
信:「豊穣、と言う名前で考えてる」
ラギラブ:「どういう意味で?」
信:「穀物が多く、豊かに実るって意味なんだ」
ラギラブ:「そういつはいい」
信:「本来、ロボットは戦いではなくこういったことだけに使いたかったんだ。
金剛・紅蓮・烈風・激流は防衛上必要だから作けど。
豊穣が、本来俺が作りたかったものなんだ」
ラギラブ:「農業のためのロボットか」
信:「農業は国の根幹だ。
一番大切な仕事に一番いいものを使う」
ラギラブ:「ありがとう」
内政の確立
信:「外敵の心配が減った今、内政に力を注がないといけない。
行政をしっかり確立する」
信が各部門のリーダーを集めた。
【確立すべき内政】
貨幣制度の正式稼働
クロノス金貨・リュカ銀貨・渓谷銅貨
鼠人のアルラッテが管理体制を整える
給与制度の確立
役割と貢献度に応じた月給制
最低保障制度を全国民に
商業の発展
市場の正式な管理制度
商業国家マルカンドとの定期交易ルートの確立
ドミナスが商業ギルドの設立を提案
文化の発展
ゴルダ×パヴォの衣料の快適化とファッションという概念を確立
マリアナ×セラ×ウィンの音楽文化
ミネルヴェの図書館・辞書編纂の継続
娯楽
信:「娯楽も欲しいな。
働くだけでは人は疲れてしまうものだ」
ラックと言う狸人が芸能・娯楽を担当
まずは定期的な祭りの開催を提案
信:「国は戦うためだけにあるんじゃない。
ここで生きる全員が笑える場所を作る。
それがこの国の目的だ」
犬人女王リュカ:「うん」
国際的な認知
聖王教国カルシアとの協定の話は、すぐに大陸中に広がった様で、連日各地から使者が訪れる様になった。
まずは、マルカンドからの使者「クロノスリュカとの正式な国交樹立を求める」
続いてドワーフ職人連盟からも使者「取引の開始を求める」
エルフの使者「精霊の加護を得た国があると聞いた。まずは会談を望む」
カルシアからはガルディウスの署名入りの情報書簡が届いた。
書簡には「東の鉱山付近で魔獣の王の目撃情報あり」と記されていた。
狐人のドミナスが即座に整理した。
ドミナス:「外交の優先順位を決める必要があります。
マルカンドが最優先。
ドワーフは鉄鉱石の問題と直結。
エルフは慎重に、です」
信:「ドミナス一人では大変だな。
外交部門を強化する必要があるね」
ドミナス:「ご安心を。既に準備しています」
信:「さすが、仕事が早いね」
新型懐中時計の完成
アッチとフォーヌが神殿前に全員を集めた。
そこには新型の懐中時計が並んでいた。
旧型より一回り大きかった。
文字盤にクロノスの紋章が刻まれていた。
そして金色の光を放っていた。
アッチ:「頼まれていた新型だ。
クロノスの加護を強めた。
これを使うと、遠く離れた仲間と顔を見ながら会話ができる」
信:「ビデオ通話だね」
アッチ:「ビデオ通話?」
信:「俺がいた世界の道具に似ている。
スマホって言うんだ」
ミネルヴェ:「スマホとは何だ」
信:「遠くの人と話せる魔法の板みたいなものかな」
アッチ:「魔法の板か。
悪くない表現だ」
フォーヌ:「ベルトとルトラの分は防水加工をした。
海と川でも使える」
アッチ:「ちなみに、皆の場所も分かる機能も付けといた」
信:「本当に、スマホだな」
建国英雄への授与
クロノスの神殿にある玉座の前に犬人女王リュカが立った。
リュカ:「この懐中時計を受け取ってほしい人たちがいます。
獣王国クロノスリュカの建国に大いに貢献した仲間たちです」
一人ずつ名前を呼んだ。
狼人ロガ
リュカ:「ロガさん。本当にありがとう」
リュカに頭を下げ、無言で受け取った。
しばらく見つめた。
梟人ミネルヴェ
リュカ:「これはミネルヴェさんの分」
ミネルヴェ:「ああ、これからの時はコレと過そう」
鴉人シルト
シルト:「これを持つと秘密の行動が難しいですね」
リュカ:「何? 秘密の行動って?」
シルト:「秘密は、秘密だよ」
狐人ドミナス
リュカ:「いつも外交管理ありがとう」
ドミナス:「いえ、仕事ですから」
リュカ:「ドミナスさんがいなかったら、私じゃ無理だったよ」
ドミナス:「ふふ、これからは国の代表として、動いてもらいますからね」
猫人カティ
カティ:「私にもか」
リュカ:「ここは、元々カティが護っていた場所でしょ」
カティ:「ありがとう」
受け取るその目は少し赤らんでいた。
馬人ペイス
ペイス:「ありがたく」
カティ:「ペイスさん、移動の時はいつもありがとう」
ペイス:「いえ、我らは誰かを背に乗せるのは喜びでもあるんです」
蝙蝠人アラファ
アラファ:「夜間の連絡が楽になりますね」
リュカ:「寝てたらごめんね」
アラファ:「寝るのも健康管理上大事な事です。
今まで通り、緊急時以外は代わり者に言伝ますから」
鹿人スタアーグ
スタアーグ:「クロノス様を常に感じられるとは」
リュカ:「クロノス様はスタアーグたちが森を護ってくれていた事に感謝していたよ」
スタアーグ:「なんとありがたきことか」
隼人イェラキ
イェラキ:「これは空の上でも使えるか」
リュカ:「テストしてもらってる。
大丈夫、どこでも使えるよ」
イェラキ:「悪くない」
ペンギンの海人ベルト
ベルト:「機械って水に濡れると壊れないのか?」
リュカ:「ベルトとルトラの分は防水だよ」
ベルト:「防水?」
リュカ:「水の中も平気ってこと」
ベルト:「そりゃ助かる」
川獺人ルトラ
ルトラ:「防水か」
リュカ:「当然、川の中でも使えるよ」
ルトラ:「無くさないように頑張る」
熊人ジグニ
ジグニ:「壊さないようにする」
フォーヌ:「ジグニのは特に頑丈にしました」
ジグニ:「それでも気をつけるよ」
羊人クラグル
クラグル:「医療の緊急連絡に使わせてもらいます。
治ることは義務ですから」
リュカ:「これでもっと沢山の人が助かるといいね」
猪人フォーヌ
フォーヌ:「俺の名前が刻まれている」
リュカ:「これからも大事なものを作ってね」
フォーヌ:「任せておけ」
浣熊人アッチ
アルラッテ:「師匠、どんな気持ちで?」
アッチ:「当然、嬉しいよ」
栗鼠人バーナデッド
バーナデッド:「管理台帳に記録します」
シルト:「自分のことも管理するんですね」
バーナデッド:「当然です」
最後の2つが残った。
リュカが信の前に立った。
リュカ:「しん、来て」
信:「俺の分もあるのか」
リュカ:「当然だよ。
しんがいなければこの国はなかったもん」
信:「ありがとう」
リュカ:「これからも、ずっと一緒にいてくれる?」
信が少し間を置いた。
信:「うん、一緒にいるよ」
リュカ:「約束だよ」
リュカが懐中時計を信の手に置いた。
光が溢れた。
最後の一つ、リュカ自身の懐中時計が輝いた。
渓谷が光に包まれた。
授与式を見にきていた国民たちが拍手を始める。
誰が始めたのかわからなかった。
気づいたら、全員が手を叩いていた。
国民の中から「建国英雄18傑」と呼ぶ声が上がる。
次第に、皆が声を揃えてそう叫び出した。
リュカ:「建国英雄18傑だって、しん」
信は壇上の人数を数える。
信:「18人ってことは、俺も入ってるのか」
リュカ:「何言ってるの、当たり前じゃない」
アッチとリュカの会話
授与式の後、ミネルヴェがリュカに近づいた。
ミネルヴェ:「リュカ、一つ聞いていいか」
リュカ:「なに」
ミネルヴェ:「お前の力は『次元』まで届く可能性がある。
信が元いた場所に戻れるかもしれない」
リュカ:「……気づいてる」
ミネルヴェ:「やはり、知っていたか」
リュカ:「うん」
リュカが空を見上げた。
リュカ:「でも今は考えない。
やるべきことがいっぱいあるし」
ミネルヴェ:「信には話さないのかい」
リュカ:「時が来たらちゃんと話す」
その夜、リュカが信の服の端をいつもより強く掴んでいた。
信は気づいていた。
でも何も言わなかった。
精霊の声が強くなる
夜、4人が同時に信たちのところに来た。
川獺人ルトラ・鷲人アエトス・鹿人コダ・馬人ルドルフ。
ルトラ:「また川から声がした。
今度は、はっきりと。
南の海の方向から。
助けを求めているみたい」
アエトス:「風も、おかしいッス。
西から何かの呼び声が」
コダ:「地面の下がうなっている。
東の方向から」
ルドルフ:「胸が熱いッス。
北の方向から炎が呼んでいる気がする」
ミネルヴェが静かに言った。
ミネルヴェ:「四元精霊だな。
全員が助けを求めている。
東西南北・全方位から」
信:「同時には対応できないな」
ミネルヴェ:「ああ、優先順位をつける必要がある。
最も危険な場所から。
リュカ、どうだ」
リュカ:「一番声が弱いのは南の声。
力が弱っているのを感じる」
信:「南か、ルトラが聞いた声だな」
ミネルヴェ:「海を渡る必要がありそうだ」
信:「じゃあすぐにもでベルトに伝えよう」
ベルトの出航
翌朝、シーベルト船団が出航の準備をしていた。
ベルトが信とリュカの前に立った。
ベルト:「俺たちは一度外海に出て調査を進める。
あと海洋獣人の仲間を集めてくる。
目的地が判明したら、その旅には全力で協力する」
リュカ:「どれくらいかかりそう?」
ベルト:「わからない。でもなるべく急ぐよ。
俺たちはクロノスリュカと運命を共にすると決めたんだ」
人魚海人マリアナが歌い始めた。
出航の歌だった。
渓谷中に響いた。
猫人セラと燕人ウィンが声を合わせた。
3人の歌が、朝の空に広がった。
船が川を下っていった。
ベルトが手を振った。
リュカが手を振り返した。
新型の懐中時計が光った。通話機能を使っている。
ベルト:「また会おう」
リュカ:「ええ、また会いましょう」
信の手帳
夜、信が手帳に書いた。
建国から1年。 国民300名。水路、城壁、鍛冶工房、発明工房、学校、図書館、そして時計塔。 マルカンドとの交易。 カルシアとの条約。 ロボット4機。 全部、ゼロから作った。
でも、まだ終わっていない。
四元精霊が助けを求めている。 魔獣の王と言うのも増えている。 世界の構造をより理解する必要がある。
やるべきことは、終わらない。 だから、俺はここにいる。 今は、それだけでいい。
新たなる旅の幕開け
夜明け前、信とリュカが時計塔の頂上に立っていた。
東の空が赤くなり始めていた。
渓谷が、朝の光に包まれていた。
リュカ:「私、この景色が好き」
信:「俺もだよ」
リュカ:「しん、南の海への旅、危険かな」
信:「だろうね。
でも、やるしかない」
リュカ:「正直、怖い。
でも、しんがいれば大丈夫だよね」
信:「そんなことはないよ」
リュカ:「しんがいたから
ここまで来られたんだよ」
時計塔の鐘が鳴った。
夜明けの鐘だった。
渓谷が光に包まれた。
国民が起き始めた。
今日も、この国が動き始めた。
信:「行こう」
リュカ:「うん」
二人が時計塔を降りた。
新しい旅が、始まろうとしていた。
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建国プロジェクト:第2部完了
時の王国クロノスリュカ・建国1周年
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国民 :300名以上
資金 :金貨20枚・銀貨150枚
国の設備
住居 :50棟以上
時計塔:完成・稼働中
図書館:完成・蔵書増加中
学校 :開校・生徒20名以上
工房 :両工房フル稼働
水路 :完全稼働
防衛壁:四方完成
農地 :渓谷外への拡大開始
新型ロボット
豊穣:水牛型・農業専用
「本来、ロボットは
こういったことだけに使いたかった」
内政の確立
貨幣制度:正式稼働
給与制度:月給制・最低保障あり
商業ギルド:設立準備中
娯楽・文化:祭りの開催を計画
新型懐中時計
クロノスの紋章刻印
ビデオ通話機能搭載
建国英雄18傑に授与
建国英雄18傑
信・リュカ・ロガ・ミネルヴェ
シルト・ドミナス・カティ・ペイス
アラファ・スタアーグ・イェラキ・ベルト
ルトラ・ジグニ・クラグル・フォーヌ
アッチ・バーナデッド
外交
マルカンドと正式国交樹立
カルシアと相互不可侵条約締結
ドワーフ職人連盟と取引開始
エルフの使者が接触
精霊の声
四元精霊が全方位から助けを求めている
南から着手
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第2部 第15話 終了
第2部「建国編」完結
「行こう」「うん」 ― 信とリュカ、建国1周年の夜明けに
第3部「解放編」へ続く




