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ワクワク獣人ランド 〜異世界PM:適材適所で虐げられている獣人たちと最強の国を作ります〜  作者: 星麒麟


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第2部 第14話「敵将との対話」

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建国プロジェクト:状況報告

第2部・建国編 第14話開始時点

現在地:クロノスリュカ・建国地

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国民 :210名

資金 :銀貨80枚

リュカ:療養中

戦後復旧:進行中

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戦闘から1日が経っていた。


住民総出で渓谷の復旧作業が続いていた。

耐火・耐爆性を高めていたとはいえ、流石にダメージを受けている。

熊人ジグニと岩山羊人ガルバが損壊した建物を直していた。

兎人ラギラブとダレトが炊き出しを続けていた。

羊人クラグルが負傷者を一人ずつ診て回っていた。

犬人女王リュカが神殿で療養していた。

その朝、使者が来た。


使者の来訪

相手国カルシアの使者だった。

若い人間の兵士。緊張した顔をしていた。

使者:「ガルディウス討伐隊長が直接話し合いを求めています。

    武器は持ち込まない。

    双方4名まで。

    場所はクロノスリュカ領内にて」


信が全員に諮った。

狼人ロガ:「罠かもしれない」

猫人カティ:「罠でなくても危険だ」

梟人ミネルヴェ:「話し合いを拒む理由がない。

         行くべきだ」

信:「ええ、行きます。

   リュカも同席だ」


神殿からリュカが出てきた。

まだ顔が青白かった。

しかし目は真っ直ぐだった。

リュカ:「うん、わかった。行く」

信:「無理をさせてすまない。

ただ、国王としてここは参加しないといけない」

リュカ:「大丈夫だよ」



対談の場


神殿の前の建物の一室、信が依頼して作っておいてもらった応接室。

信:「まさか、敵国の将軍が最初に使うとはね」

向かい合って座った。

獣王国クロノスリュカ側:信、犬人女王リュカ、ロガ、ミネルヴェ。

聖王教国カルシア側:敵将ガルディウスと副将ゼーヴァン、護衛2名。

ガルディウスが広場に入った時、リュカのクロノスの紋様が僅かに光った。

ガルディウスが一瞬、立ち止まった。

それから座った。


しばらく、誰も話さなかった。

風が渓谷を抜けた。

信:「なぜ、この国をそこまで攻めるのですか?」

ガルディウス:「お前たち獣人が国を作った。

        それだけで理由は十分だ」

信:「そこまで獣人を敵視する訳は?」

ガルディウス:「獣人が危険だからだ」

信:「それだけでは理由にならない」


ガルディウス:「分かった教えてやろう。

15年前。

        私の妻と娘が獣人に殺された」


場が静まり返った。

ガルディウス:「確かに獣人が憎い。

        お前たちは理由もなく他者の命を奪う。

私の様な思いを、もう他の者にさせてならない」      


リュカ:「それは違います」



15年前の真実


リュカが目を閉じる。その目からは涙が流れていた。

リュカ:「15年前に何があったか。それを今から見てもらいます」

ガルディウス:「見る、……だと?」

リュカは時空魔法を発動した。

空間の記憶を映し出す。

15年前の夜が、部屋の壁に現れた。


ガルディウスの妻と娘がいた。

ガルディウス:「なんだ、これは? あれはエレノア! マーガレット!」

そこに獣人がいた。

目が血走っていた。正気を失っていた。

しかしその前の場面が映し出された。

カルシアの国軍が獣人の家族を連行していた。

獣人が必死に追いかけた。

追い詰められた。

逃げた。

逃げた先に、ガルディウスの妻と娘がいた。

誰も悪意を持っていなかった。

誰もが追い詰められていた。

誰もが被害者だった。

誰もが加害者だった。


映像が消えた。

ゼーヴァンが顔を背けた。

ガルディウスは動かなかった。

ガルディウス:「なんだ今のは……」

リュカ:「辛い思い出をまた見せてごめんなさい。

     ただ、あの時何が起こっていたのかを知って欲しかったの」

ガルディウス:「なぜあれが本物だと言える」

リュカ:「あなたが15年前の事を話した時、私にもその時の光景が見えたの。

     それをクロノス様の力を借りて再現したの」

長い沈黙があった。

信:「あなたの痛みは、

   妻と娘を失った悲しみは、俺にはとても想像できない」

ガルディウス:「…………」

信:「でも、その痛みを作ったのは獣人ではなく、この世界の構造だと思うんです。

   獣人を追い詰めた制度が、結果としてあなたの家族を奪った」

ガルディウス:「…………」

信:「憎しみだけでは何も変わらない。

   あなたが俺たちを潰しても、また別の誰か潰される。

   憎しみの連鎖を断ち切らなければならない」



リュカの言葉


犬人女王リュカが前に出た。

リュカ:「わたしの村も焼かれた。

     人間に焼かれました」

ロガは静かに目を瞑る。

リュカ:「その時に信と出会ったんです。

信は私を助けてくれた。

     だから信じた」

リュカはまっすぐ、ガルディウスを見る。

    「クロノスリュカは人間を敵だと思っていません。

     私たちから、人間に敵対するつもりはありません」

ガルディウス:「……なぜそれを信じられる」

ミネルヴェが一歩前に歩む。

ミネルヴェ:「信じられないならば、契約で縛るのはどうだ」



契約の提示


ミネルヴェ:「古い魔術の一つでな、血契約というものがある。

       商人たちに試してみたが、効果は間違いない」

リュカが望んだ事をミネルヴェが契約として内容をまとめた。


第一項:

獣王国クロノスリュカは聖王教国カルシアに対して先制攻撃を行わない


第二項:

聖王教国カルシアは獣王国クロノスリュカの存在を認め攻撃を行わない


第三項:

人間を襲う獣人の野盗・山賊はクロノスリュカが取り締まる


第四項:

定期的な情報交換を行う



ガルディウスが黙って読んだ。

それから言った。

ガルディウス:「一つ、忠告する。

        俺一人を縛ったところで国全体には効果はないぞ。

        獣人討伐の隊長が変われば、この契約はなんら意味をなさない」


信とリュカが顔を見合わせた。

リュカ:「では、カルシアの全員と契約を結んでいきます」

ガルディウス:「……なんだと?」

信:「我々は何に変えてもこの国を守ります」


あまりにまっすぐな考え方を前にガルディウスが思わず笑ってしまった。

渇いた笑いではなく、声を出して大声で笑った。

本当に、おかしかったのだ。

ゼーヴァン:「た、隊長?」

ガルディウス:「ふ、こんなに笑ったのは何年振りだろうか」


カルディウスはリュカをまっすぐと見る。

ガルディウス:「……そうか。

        憎しみのみで戦っていた俺では勝てなかった訳だ」


何かから解放されたような顔だった。


しばらくして、ガルディウスが静かに問うた。

ガルディウス:「本当に、憎しみの連鎖は断ち切れるのだろうか」

信:「できるかはわかりません。

   ただ、それに向けて歩むことはできる。

   そのためにも互いを理解し合いましょう」

ガルディウス:「…………」



獣人の解放


信:「それとあと二つ、願いがあります。

   『獣人の解放』と『自然環境の破壊の停止』

どうにかできませんか?」

ガルディウス:「それは国家レベルの問題だ。

        俺一人ではどうにもならんな」

信:「わかっています。

   でも、あなたが変わったなら、次の誰かも変わるかもしれない」

ガルディウス:「……かもしれない、か」



契約の魔術


梟人ミネルヴェが契約の魔術を準備した。

双方の血を使って結ぶ古い術式。

ミネルヴェ:「この契約は双方が破れば双方に返ってくる。

       軽々しく結ぶものではないぞ」

カルディウス:「私も魔術師だ。血による契約のことは分かっている」


ガルディウスが右手を差し出した。

血が滲んだ。

犬人女王リュカが前に出た。

右手を差し出した。

9歳の小さな手だった。

しかし迷いがなかった。

血が混じった。

光が溢れた。

契約が成立した。

ガルディウスがリュカの手を見た。

何か言いたそうだった。

しかし何も言わなかった。



魔獣の王の情報共有


契約が成立した後、ガルディウスが話を続けた。

ガルディウス:「では、早速だが情報の共有だ。

        『魔獣の王』が各地で相次いで誕生している。

        それに伴い瘴気の森が広がっている。

        それが、この国を攻めた理由の一つでもある」

信:「『魔獣の王』?」

ミネルヴェ:「詳しくは後で話すが、魔獣たちを統べる者のことだ」

ガルディウス:「そうだ。

        その魔獣の王が、獣人を配下に攻めてくることを警戒した。

        しかしあの戦いを見てそれは無いと理解した」

ミネルヴェ:「確かに瘴気の森が広がっていて精霊の力が弱まっている。

       これは獣人にとっても人間にとっても共通の脅威だ」

ガルディウス:「奴らは話し合いなど持てん存在だからな」


互いの情報が共有された。

共通の敵の存在が、初めて両者を同じ方向に向かせた。



別れ際


ガルディウスが帰り際に振り返った。

ガルディウス:「少しの間だが、再び妻と娘の姿を見る事ができた。ありがとう」

リュカ:「もう、あんな不幸は起きないように助け合いましょう」

ガルディウスとリュカは再び握手をする。

これは契約ではなく、お互いを信頼しての握手だった。


ガルディウス:「最後に、貴殿。

        なぜお主は獣人の味方をする」    

信:「獣人のというより、最初に出会ったのがリュカだったからです」

ガルディウス:「では、最初に出会ったのが人間だったら人間の味方をしていたか」

信:「そうなっていたかもしれませんね。

   出会いって、運命的な物だと思うんですよ」

ガルディウス:「お前は変わった人間だ」

信:「よく言われます」

ガルディウス:「悪い意味ではない」


ガルディウス:「戻り次第、この獣王国クロノスリュカは、

        我が国への脅威ではないと国王に伝えよう」


ガルディウスが去った。

ゼーヴァンが最後に振り返った。

何も言わなかった。

しかし目が、最初と違っていた。



対談後


ロガが信に言う。

ロガ:「信用できるか」

信:「今は、する必要がある。

   こちらが信用しないと、相手は信用してくれないですよ」

ロガ:「……わかった」


犬人女王リュカが空を見上げた。

リュカ:「魔獣の王が増えている。

     そのために精霊たちが弱っている。

     次はそっちだね」

信:「そうだな。

   でも今日は休め。

   リュカ。お前はまだ療養中なんだから」

リュカ:「うん、分かってる。

     休むのも仕事なんだよね」

信は優しくリュカの頭をなでた。


渓谷に夕暮れが来た。

時計塔の鐘が鳴った。

一日の終わりを、全員に告げた。


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建国プロジェクト:状況報告

第2部・建国編 第14話終了時点

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国民 :210名

資金 :銀貨80枚


外交の成果

 カルシアとの相互不可侵条約締結(対敵将)

 国王リュカが代表として契約を結んだ


契約の内容

 第一項:先制攻撃の禁止

 第二項:クロノスリュカの存在を認める

 第三項:獣人野盗・山賊の取り締まり

 第四項:定期的な情報交換(魔獣情報含む)


判明した脅威

 魔獣の王が各地で相次いで誕生

 瘴気の森が広がっている

 カルシアも脅威を認識している


ガルディウスの変化

 憎しみから対話へ

 何かから解放された顔


ゼーヴァンの変化

 最後に目が変わっていた


次のマイルストーン

 → 戦後処理

 → 魔獣の王の調査

 → 最大の懸念材料が消え、国の発展・安定への準備

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第2部 第14話 終了

次話:「次の地平へ」



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