第2部 第10話「精霊の声」
========================================
建国プロジェクト:状況報告
第2部・建国編 第10話開始時点
現在地:クロノスリュカ・建国地
========================================
国民 :185名
資金 :銀貨105枚
各プロジェクト進捗
住居 :30棟完成
図書館:建設中・50%完成
時計塔:80%完成・完成まで2週間
結界 :72%回復
対空防衛装置:開発中
獣王国クロノスリュカの地形
東:大河アルカ川→東の海
ルトラたちが警備
南:古精霊の森→平野→マルカンド
スタアーグ隊(森)
ナインホース(平野・物流兼任)
北:険しい山脈
エウクレイア
西:少しの森→平野→カルシア
ロガ隊(最重要防衛ライン)
========================================
建国から5ヶ月。
渓谷の防衛体制が形になってきた。
しかし信には気になることがあった。
各隊の「足りない力」は何か。 ロボットにどんな機能を持たせるべきか。 現場を見なければわからない。いくら若干趣味の部分はあるにしても、役に立つものにしておきたいという気持ちだった。
朝、犬人女王リュカが神殿の前に立っていた。
リュカ:「私も一緒に回る」
信:「どこに行くつもりか分かってるの?」
リュカ:「防衛隊の様子を観に行くんでしょ」
誰にも伝えていない今日の予定をリュカが言い当てて、信は少し驚く。
信:「なんで分かったんだい?」
リュカ:「なんとなく、そう感じたの」
最近リュカがとても勘が良くなっていると信は感じていた。
信:「危ない場面もあるかもしれない」
リュカ:「王が国の防衛を知らないのはもっと危ないじゃない」
信:「確かに、そうだな」
結局、いい含められて二人で各隊を回ることになった。
西の防衛ライン:ロガ隊
西側の平野はカルシアへの最重要防衛ラインだった。
ロガ隊が哨戒していた。
以前より顔ぶれが増えていた。
三人が近づくと、見慣れない二人が前に出てきた。
コヨーテとジャッカルの獣人だった。
コヨーテ人コヨル:「はじめまして。
コヨルです。
ロガさんの噂を聞いて来ました。
一番強い人の下で戦いたかった」
ジャッカル人ジャック:「ジャックだ。
いつかロガを超えて
俺がこの隊の隊長になる。
覚えておけ」
ロガ:「いつでも挑戦を受けてやる」
ジャック:「必ず超えてやる」
コヨル:「ジャック。もっと気楽に行こうぜ。
俺はロガさんの隣で戦えればそれでいいんだから」
リュカ:「面白い二人組が加わりましたね」
信:(小声で)「組織を強くしてくれる2種類の性格だね」
その時、西の森からワーグの群れが現れた。
大型の狼の魔獣。知能が高く、群れで連携して動く。全身が黒い毛に覆われ、目が赤く光っていた。
先頭のワーグが遠吠えした。
群れが散開した。
包囲戦術を展開した。
ロガ:「舐めるなよ。全員展開!」
ロガ隊も動く。
ワーグが散開するより速く、3方向に分断した。ワーグの連携が崩れた。
各個撃破が始まった。
コヨルが軽快な動きで2体を誘き出した。
ジャックが正面から1体を仕留めた。
ロガが残りを一掃した。その様子をジャックは横目で追っていた。
ワーグの群れが崩れた。
ジャック:「くそ、強い。底が見えん」
コヨル:「ロガさんですよね。当然ですよ」
ジャック:「うるさい」
犬人女王リュカが信に小声で言った。
リュカ:「ジャックって、素直じゃないけど正直だね」
信:「そういう人間が組織を強くすることがある。
向上心があるが、自分の力も理解している。あのタイプはすぐに成長する」
南の平野:ナインホース
南の森を抜けた平野は貿易相手の人間の国マルカンドへの物流ルートでもあった。
馬人隊ナインホースが哨戒と物資輸送を兼任していた。
信とリュカは馬人の瀬に乗せてもらっていた。
二人が隊長ペイスから直近の報告を聞いていたその時、
平野の奥からワーベアが現れこちらに向かい突進してきた。
巨大な熊型の魔物で突進力は異常なほどだ。
ペイスが咆哮した。同時に信とリュカは下馬する。
ナインホースがケンタウロス形態に変わった。
すぐさま敵の正面と左右に別れ展開した。
正面の隊は弓矢を、左右二人の馬人がそれぞれ槍を構えた。
側面から槍隊が急所を突く。
だが、ワーベアはその槍を払い突進を続ける。
弓組が上空から矢を撃ち込むがその勢いは止まらない。
その時、後方から声がした。
ルドルフ:「皆さん、前を開けて!」
正面の隊が左右に割れたその時
炎の矢がワーベアを捉えそのまま火柱が上がった。
そしてワーベアは塵と化した。
全員が静止した。
ペイスがルドルフに近づく。
ペイス:「ルドルフ。いつの間に魔法を」
ルドルフ:「その、学校で魔法や魔術の事を学ぶうちに火の魔法が使える様になって」
ペイス:「それにしてもすごい威力だ」
ルドルフ:「いつもはもっと弱いんです、足止めになればと放ったら」
ペイス:「実戦の緊張感がお前の力を底上げしたのかもな」
そこにリュカが近づく。
リュカ:「ルドルフすごかったね」
ルドルフ:「みんなを助けたいって思ったら、なんかすごいの出た」
リュカ:「わかる。魔法って思いの強さが発揮されるよね」
信はそれを見て将来の国の担い手を感じ少し嬉しくなった。
国内警備:カティ隊
市場に戻ると、騒ぎが起きていた。
見慣れない獣人の一団が渓谷の入口に集まっていた。
ライオンと虎の獣人の一団。体格が大きく、武装していた。どうやらこの近郊の野党の様だった。
ライオン人のリーダー:「ここが獣人の国か。
悪くない場所だ。
俺たちが仕切ってやる」
猫人カティが現場に到着する。
カティ:「まったく、早く結界が戻ってこういった輩は勘弁して欲しいもんだ」
ライオンのリーダーが咆哮。
リーダー:「我が名はドン・コルレーネ!
貴様らの新たなる王だ!」
猫人カティが前に出る。
カティ:「警告だ。すぐに出て行くなら許してやる」
コルレーネ:「なんだ小猫。我々の一員に加わりたいのか。
なんなら、夜用のペットくらいにはしてやるぞ」
チッという舌打ちと同時にカティの姿が消える。
次の瞬間カティはライオン獣人の背後に移動、
「黙れ」と言い放ち、そのまま後頭部をつかみ地面に叩きつけた。
グハァっ! ライオンがうめき声を上ると同時にカティは膝で再にライオン獣人の顔面を地面にめり込めせ「寝てろ」と吐き捨てた。
静まり返る。
一瞬後に子分たちが一斉に武器をてにとり怒号をあげる。
カティ:「やれやれ」
子分たちを相手にカティや警備団が応戦する。
カティは圧倒的に強く、警備団も幾多の戦いを潜り抜けてきた戦士たち、決して弱い訳ではないが、このコルレオーネの一団も中々の強さだった。
決定打が足りずカティが焦れていると上の方から声がした。
「助けが必要な様ですね!」
皆がその声の方を向く。
建物の屋根の上、胸を張り、両手を腰に当てたヒーローポーズ。
それは鼠人アルラッテだった。
カティ:「アル! 子供の遊びじゃないんだ! 引っ込んでな!」
アルラッテ:「ふっふっふ、これを見てもそう言ってられますかな」
そう言うと自慢げに右腕を前に出す。
そこには試作品の機械腕があった。
カティ:「あいつ、あんなおもちゃで」
アルラッテ:「おもちゃじゃないですよ!」
言い様に機械腕から何かを連射。
数人の子分がトリモチに捉えられ地面に倒れる。
アルラッテが弾を打つたびに、地面に倒れ込む子分が増えていく。
子分の一人が屋根に駆け上がりアルラッテを切り付ける。
キンッ! という音が響く。
子分の剣をアルラッテが機械腕から出た盾で防いでいた。
直様アルラッテは機械腕を子分に当てると強力な電気が流れた。
そして子分は屋根から落ちた。
アルラッテの加勢で戦いは決した。
コルレオーネがゆっくりと起き上がる。
コルレオーネ:「クソ……」
辺りを見渡すと子分たちが全滅している。
コルレオーネ:「なんだこれは!」
カティは親指でアルラッテを指し
「こいつがやったことだ」と発した。
コルレオーネは敗北を見てめる。野党だけあり、逃げ期は心得ている様だった。
コルレオーネ:「この国には2度と手を出さない。見逃してくれ」
それを聞いていた信が前に出た。
信:「そんなに力が有り余ってるなら
この国のために使ってみるのはどうですか」
カティ:「しん、何を言っている!」
信:「カティも人手が欲しいと言っていたじゃないですか」
コルレオーネ:「正気か、あんた。俺たちはこの国を奪いにきたんだぞ」
信:「奪うより、作り守る方が誇らしいと、そう思いませんか?」
コルレオーネ:「世の中は強い奴が全てを持っていくもんだ」
信:「なら、俺たちの国は世界で最も強くなる。そして何者からも奪わない。
どうです、一緒に作りませんか。そんな世界を」
コルレーネは少し考える。
コルレオーネ:「一つ聞きたい。猫の姉さん、あんたはこの国の最強かい?」
カティ:「私より強いやつなんて何人もいるさ」
コルレオーネ:「はっはっは! ただの夢想家と言う訳ではないわけか。
我々コルレオーネ団は今日からあんたたちのお世話になる!」
ライオン人と虎人の一団が加わることになった。
信:「じゃあ、彼らはカティさんのチームに」
カティ:「やれやれ」
カティは振り向きアルラッテの方に近いた。
アルラッテは得意げな表情。
カティはその頭を叩く
アルラッテ:「痛ったー!」
そしてカティはアルラッテの頭を撫でる。
カティ:「よくやった」
アルラッテ:「なんなの、素直に褒めなよ!」
カティ:「褒めただろう」
アルラッテ:「その前に頭叩いた!」
北の山脈:エウクレイア
山の上空でエウクレイアが訓練していた。時刻はもう夕刻。
信とリュカは訓練の様子を見ている。
隼人イェラキが仲間に指示を出していた。
風の精霊魔法で気流を制御しながら 急降下・方向転換・編隊飛行を繰り返していた。
鷲人アエトスの動きが際立っていた。
飲み込みが異常に速かった。
イェラキ:「アエトス、もう一度だ」
アエトス:「はい」
アエトスが急降下した。
その一瞬、アエトスの体が淡く光った。
イェラキが目を細めた。
イェラキ:「あいつに何かが宿りかけている。
風の力に近い何かが」
信:「……そうですか」
訓練の後半、蝙蝠人アラファと連携訓練を行った。
アラファが地上から音波で飛行体の位置を伝え、エウクレイアが誘導して迎撃する。
最初はうまくいかなかった。
しかし数回で形になり始めた。
イェラキ:「使える」
アラファ:「精度を上げれば完璧になる」
東の大河:ルトラ
アルカ川ではカワウソの獣人ルトラが単独で哨戒していた。
川の中に潜り、魔物を仕留めて戻ってきた。
リバーリザードだった。
信:「一人でこれをやっているのか」
ルトラ:「川の中は一人でいい。
邪魔されると動けない」
信:「何か必要なものはあるか」
ルトラ:「水中で使える武器があれば」
信:「フォーヌに頼んでみる」
夜:全体の整理
夜、信とリュカが神殿に戻った。
リュカ:「疲れたねー」
信:「ああ、だが収穫は多かったかな。
この目で見ることで各隊の強みを改めて分かった。
あとどこを強化すべきか」
信は水を飲むと立ち上がった。
信:「じゃあ、俺はアッチのところに行くよ」
リュカ:「例の、ロボット?」
信:「ああ、俺も戦いの時に少しは役に立ちたいしね。
じゃあ、今日はお疲れ。お休み」
リュカ:「うん、お休み」
信はアッチの工房へ訪れた。
信:「アッチ、見たよアルラッテの機械腕。すごいかったよ」
アッチ:「あれは、あの子が独自で作ったもんだ。
俺はちょっと手助けしただけだよ」
信:「そうなのか、そのアルラッテは?」
アッチ:「なんでもカティと祝杯をあげるそうだ。子供が生意気言っちゃって」
信:「そうか。カティとアルラッテか。いいコンビだね」
アッチ:「猫と鼠なのにな」
言って二人で笑った。
アッチ:「で、ロボットの件だろう」
信:「ああ、エウクレイアが加入してくれて空で戦える力は得たが、
数で来られたら厳しいだろうな。
だから、欲しい機能は対空支援。後は長距離砲」
アッチ:「味方が空中にもいることを考えると、誤射は避けねばならんな」
信:「それで、考えてたんだけど、『追尾弾』って作れないかな」
アッチ:「敵だけを追っかける弾ってことか」
信:「そう、魔法と魔術を掛け合わせたら行けると思うんだ」
アッチ:「面白い仕様だ。そうなると協力者がいる」
信:「先生、ですよね」
精霊の声
深夜。
リュカが何かを感じ目を覚ます。
渓谷が静まり返った頃、4か所で同時に小さな予兆が訪れた。
川辺でルトラが水面を見つめていた。
ルトラ:「水の中から声がする」
山の上でアエトスが翼を広げていた。
アエトス:「いつもとは違う風」
コダが外へでて地面を触っていた。
コダ:「地面の下から波動?」
厩舎でルドルフが足踏みをしていた。
ルドルフ:「熱い。身体が、燃える」
翌朝、ルトラはミネルヴェ、コダはスタアーグ、ルドルフはペイス、アエトスはイェラキにそれぞれその予兆を伝える。
その話はリュカと信に共有された。
何が起こっているかは誰もわからなかった。
だが、リュカは精霊の呼び掛けだと感じていた。
夜、信は手帳に書いた。
守るべきものが増えた。 各隊はそれぞれの強さを持っている。 足りないものは装置で補う。 そしてこの夜、4人が何かを聞いた。 何かが、始まろうとしている。
========================================
建国プロジェクト:状況報告
第2部・建国編 第10話終了時点
========================================
国民 :200名
ライオン人・虎人の一団が加入
資金 :銀貨120枚
各隊の戦力確認完了
ロガ隊:連携完成域・ジャッカル・コヨーテ加入
ナインホース:槍手加入・側面戦術確立、
ルドルフの魔法攻撃
カティ隊:治安維持が機能
ライオン・虎の一団が加入
エウクレイア:アラファとの連携訓練開始
ルトラ:川の警備を単独担当
機械腕の初実戦
アルラッテの機械腕試作品が機能した
カティ:「使える」
ロボット設計の方向性確定
正面突破・制圧・対空支援の3機能
不可思議な予兆
水辺の声:ルトラ
山の風:アエトス
地面からの波動:コダ
身体の熱:ルドルフ
次のマイルストーン
→ 時計塔の完成
→ 対空防衛装置の完成
→ ガルディウスへの備え強化
========================================
第2部 第10話 了
次話:「空から来るもの」




