第2部 第7話「黄金の羊毛を求めて」
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建国プロジェクト:状況報告
第2部・建国編 第7話開始時点
現在地:クロノスリュカ・建国地
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国民 :130名
資金 :銀貨55枚
各プロジェクト進捗
住居 :22棟完成
水路 :完全稼働
防衛壁:西側城門70%完成
時計塔:塔身建設中・40%完成
結界 :50%回復
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建国から3ヶ月が経っていた。
国が形になるにつれ、次の課題が見えてきた。
交易相手が必要だった。
マンサ・バティートとの初交渉
信、狐人ドミナス、鴉人シルト、そして犬人女王リュカが商業国家マルカンドへ向かった。
ドミナスの巧みな外交技術で商人国家の代表とも言えるマンサ・バティートとの謁見がかなった。
マンサ・バティートは港を見渡せる豪華な商館にいた。
白髪・褐色の肌・金の装飾品。笑顔が絶えないが目が笑っていない男だった。
その佇まいから、信は一目で相手がやり手のビジネスマンだと感じた。
マンサ:「クロノスリュカの事は聞き及んでいる
それで、お前が国王か?」
信:「いいえ、国王は彼女です」
リュカ:「リュカと申します」
マンサはリュカを見つめる。値踏みをしているかの様だった。
マンサ:「交易を認めてもいい」
信:「条件は?」
マンサ:「取引先として有益だと認めさせてくれればな」
信:「具体的には?」
マンサ:「そうだな。
黄金色に輝く羊の毛。
これを持って来れば交易を認めよう」
信:「わかりました」
マンサが初めて目で笑った。
船の確保に難航
港で船を探した。だがことごとく断られ続けた。
なんでも商人ギルドで幾度と黄金の羊毛を巡り南に傭兵団を乗せた船団を出したが、その都度、海の魔物に阻まれたとのことだ。
途方に暮れていた時、港の隅で網を繕っていた漁師が声をかけてきた。
漁師:「近くに海人たちが集落を作っているらしい。
お前達同じ獣人だし、そちらに頼めばいいだろう」
信が「早速、話に行こう」と言い出した。
ドミナス:「海人と陸の獣人は
文化も価値観も全く違います。
陸の事には関わらない。
それが彼らの掟です。
断られるだけですよ」
シルト:「そうそう、無駄足ですって」
信:「何事も、行ってみなければわからないですよ」
結局、全員がついていくことになった。
海洋獣人の移動村
港の外れに船団が停泊していた。
付近に集落が形成されていた。だが家々は簡易的なテントの様なもので、すぐに移動が可能な形だった。
そこに人間の姿はなく、魚人・海豚人・鯨人・烏賊人。陸上では見たことのない獣人たちだった。
長老という者のところに案内され、信は経緯を話すが、無下に断られた。
海人の長老:「陸の事には関わらない。
それが我々の掟だ」
どう頼んでも同じ答えだった。
諦め帰ろうとした時、船の陰から声がした。
「お前たちが、クロノスリュカの連中か」
黒白の羽毛を持つペンギン海人の少年が立っていた。
その後ろに大柄な鯨海人の少年・フェル。人魚海人の少女・マリアナ。ゴマフアザラシ・シャチ、タコ、ラッコの海人たちが20名ほど並んでいた。
全員が10代中盤の様だった。
ペンギン少年:「俺たちシーベルト船団が連れて行ってやる」
長老:「ベルト、やめんか」
ベルト:「人間が海に出てくるのは時間の問題だ。
そうなれば俺たちも陸上獣人と同じ道を辿る。
今動かないでいつ動くだよ」
長老:「子どもが口を出すことではない」
ベルト:「大人が動かないからだろう!」
犬人女王リュカとベルトの目が合った。
同じ年頃。同じ目をしていた。
盟約の締結
夜、信とベルトが話し合った。
ベルト:「俺たちシーベルト船団は対等な関係でないと組まない」
信:「当然です。
クロノスリュカは陸上の拠点、食糧、医療、陸上情報など有益なすべての情報を提供するよ。
将来、君たちが作ると言っている海洋獣人の国を作る時も協力する」
ベルト:「……本気で言ってるか」
信:「本気ですよ」
ベルトが手を差し出した。信が握った。
フェル:「盟約、成立だね」
マリアナ:「やったー」
乗船メンバー
数日後、ベルトたちの船3隻の前に乗船メンバーが集まった。
クロノスリュカの東を走る大河にベルトたちの船が登ってきたのだった。
船旅は困難が予想されるため、戦闘力を考えての選考となった。信はリュカに国王だから国に止まるように説得したが、本人が強く望んだため、同行となった。
【乗船メンバー】
信、犬人女王リュカ
狼人ロガ、熊人ジグニ
梟人ミネルヴェ、狐人ドミナス、鴉人シルト
猪人フォーヌ、浣熊人アッチ
蝙蝠人アラファ
羊人クラグル
馬人ペイスは海は苦手のため、猫人カティは国の守護のため、栗鼠人バーナデッドは物資管理が忙しく、兎人ラギラブも農業管理のため残留となった。
水系ということで期待した川獺人ルトラは海水が嫌いという理由で断られた。川の防衛も大事と言う理由もあったが。
旅に出るリュカにカティが声をかける。
カティ:「無事に帰ってこいよ」
リュカ:「うん」
カティ:「それまでは、私たちで国を守っておく」
リュカ:「信じてる」
全員が乗船する。
信:「ベルトOKだ」
ベルト:「よーし! 野郎ども! 出航だー!」
ベルトの号令で船が進み始める。
嵐の中の航海
外海に出た途端に嵐になった。
海洋獣人たちの航海技術が光った。フェルが音波で安全ルートを確認。アッチの帆の自動制御装置と組み合わせて嵐を乗り越えた。ジグニが破損箇所をその都度素手で補修する。
ベルト:「陸の獣人を舐めていた」
ジグニ:「そうか」
ベルト:「褒めてる」
ジグニ:「……ならいい」
海の怪獣・クラーケン
嵐が過ぎた頃、海面が渦を巻いた。
魔獣クラーケンだった。
全長20メートルの巨大烏賊型魔獣。触手が10本。船を丸ごと引き込む力を持っていた。
本格的な海戦がが始まり、海洋獣人グループが本領を発揮する。
ベルトが水中に飛び込んで触手の付け根を小刀で切り刻んだ。フェルの精霊魔法(水)が渦を逆流させてクラーケンの動きを封じた。シャチ海人が体当たりで触手を破壊した。タコ海人が触手に絡みついて動きを止めた。
陸上チームは船上から支援した。
ミネルヴェの黒魔術が視界を奪い。フォーヌのルーン武器を投げてベルトに渡した。アラファが上空から弱点の位置を伝え続けた。
それでも触手が船に迫った。
その時、犬人女王リュカが目を閉じた。
時空魔法陣がリュカをつつむ。
ベルト:「なんだ、あの光は……」
リュカ:「右の触手が3秒後に船底を狙う。
ジグニ、右舷に」
ジグニ:「わかった」
リュカ:「フェル、4秒後に左後方から海流が来る。
そこを使って」
フェル:「どうして見える」
リュカ:「見えるから」
フェルがその海流にのり、クラーケンが体勢を崩した。
ロガがクラーケンの頭部に飛びついた。
ベルトが急所を突いた。
クラーケンが沈んだ。
ベルト:「お前、本当に何者だ」
リュカ:「? クロノスリュカの女王ってこと?」
ベルト:「それは知ってる、じゃなくて。
……いや、もういい」
霧の海域
島に近づくにつれ、濃霧が立ち込めた。
フェルの音波探知も限界だった。
犬人女王リュカが再び目を閉じた。
時空魔法で空間全体を把握した。
岩礁の位置。水深。島の輪郭。全部が見えた。
リュカ:「右に大きな岩。
左に浅瀬。
まっすぐ進んで
50歩先で左に曲がる」
霧の中を船が進んだ。
岩礁を避けた。
島が見えた。
島の竜との戦闘
島に上陸した。
山羊の足跡があった。しかし山羊の姿がなかった。
代わりに、巨大な影が山の頂上にいた。
ドラゴンだった。
翼を広げると船の帆ほどの大きさがあった。爪に山羊が数頭掴まれていた。巣には光る宝物が積み上がっていた。
アッチ:「……あの光る宝物。
何かに似ている」
ミネルヴェ:「クロノスの紋様だ。
なぜドラゴンが」
ドラゴンが気づいた。
炎を吐いた。
海洋獣人グループは海に退避した。
ベルト:「やべえ! あれは無理だ!」
リュカ:「大丈夫。任せておいて」
リュカたち陸上チームが前に出た。
ジグニが岩を盾にした。ロガが正面から走り込んだ。フォーヌのルーン武器がドラゴンの鱗を削った。ミネルヴェの黒魔術が視界を奪った。アラファが上空から急所の位置を報告した。
それでもドラゴンは強かった。
炎が陣形を崩した。ロガが吹き飛ばされた。
クラグル:「ロガ、動かないで」
ロガ:「大丈夫だ」
クラグル:「大丈夫かどうかは私が決めます」
ドラゴンが再び炎を構えた。
その時、犬人女王リュカが前に出た。
クロノスの紋様が輝いた。
ドラゴンの動きが止まった。
紋様を見ていた。
その目が、敵意ではなかった。
ミネルヴェ:「……竜人の紋様と
同じ光だ」
リュカとドラゴンが見つめ合った。
数秒の沈黙の後、ドラゴンが山羊を放した。
宝物の中から一つを、リュカの前に置いた。
それから飛び去った。
信:「……追わなくていいのか」
ミネルヴェ:「追えない。
それより、今のを見たか」
信:「見た。
ドラゴンがリュカを
恐れたんじゃない。
認識した」
ミネルヴェ:「……深い話だ。
今は置いておこう」
リュカがドラゴンの置いていった宝物を手に取った。
クロノスの紋様が刻まれた金属の板だった。
ゴルダの救出
黄金に輝く山羊たちが巣に残されていた。
その中に、一際輝く毛並みの山羊人が囚われていた。
山羊人ゴルダ:「狼人に、熊人、狐人、梟人……。
なんなのこの集団」
信:「助けに来ました」
ゴルダ:「人間か。
お前がこの獣人たちを支配している者か」
リュカ:「大丈夫、しんは良い人間だよ。
わたしが保証する」
ゴルダ:「お前は、犬人か」
リュカ:「うん。私はリュカ。獣人の国クロノスリュカの女王をしているの」
ゴルダ:「女王だと、では、この人間は?」
リュカ:「しんは仲間。私たちの」
ゴルダ:「人間を信じるのか?」
リュカ:「人間の中にも信じることのできる人はいるの」
ゴルダはその事にしばらく目を閉じる。
すると目を開け口を開く。
ゴルダ:「条件がある。
ここの山羊20頭も連れて行く」
信:「もちろん全員助けます」
ゴルダ:「まだ全面的に信用した訳ではないぞ、人間」
黄金山羊20頭をベルトたちの船に乗せた。
マンサとの交易成立
クロノスリュカに戻った後、ゴルダの指示に従い、山羊達の毛を剃り、洗浄、解毛を行い山羊毛の布をおった。
その極上の肌触りに皆が唸った。
早速信達はそれを持ってマンサの元に戻った。
マンサ:「それで?」
信:「黄金の羊毛はありませんでした」
マンサ:「では、おめおめと手ぶらで戻ったか?」
信:「羊毛はありませんでしたが、黄金の“山羊毛“はありました」
マンサは信が差し出した山羊毛を手に取る。
マンサ:「なるほど、これは本物だ。間違いなく最高級品だな」
信:「それでは、交易を認めてもらえますか」
マンサ:「ああ、認めよう。
お前、なかなか面白い人間の様だな」
獣人国クロノスリュカが初めて人間の国との交易を持った瞬間だった。
帰り際、鴉人シルトが獣人サーカス団のキャラバンの情報を掴んだ。
だが今回は動かなかった。
ベルトたちの決断
クロノスリュカへの帰りの船の上。
ベルトがフェルとマリアナを集めた。
ベルト:「あのさ、この後どうする」
フェル:「もう決まってるじゃないか」
マリアナ:「ふふ」
ベルト:「そうだよな」
ベルトが信とリュカの前に立った。
ベルト:「これから
俺たちシーベルト船団はクロノスリュカと運命を共にする。
盟約じゃなくて、仲間としてだ」
リュカ:「ありがとう」
ベルト:「礼はいい。
お前たちとなら世界を変えられる気がする」
信:「何が決め手だったんだ」
ベルト:「リュカだ。
あの光を見た時、
俺たちが進むべき道がわかった」
フェル:「クラーケン戦の時から
決めていた」
マリアナ:「わたしはもっと前から」
ベルト:「言えよ」
マリアナ:「言ったら止まると思って」
帰還・音楽文化の始まり
ベルトたちがクロノスリュカに一時滞在した。
初日の夜、マリアナが歌い始めた。
波の音に似た歌声だった。精霊魔法が声に宿っていた。
猫人セラが引き寄せられた。燕人ウィンが空から降りてきた。
3人が渓谷で歌った。
渓谷中の国民が外に出てきた。
誰も何も言わなかった。ただ、聞いていた。
信:「音楽は言葉の壁を越えるよな」
ミネルヴェ:「外交の道具にもなるかもな」
鼠人アルラッテ:「これも産業になりまチュウ」
猫人カティ:「今は黙って聞け」
アルラッテ:「は、はい」
翌朝、犬人女王リュカとベルトが渓谷を並んで歩いた。
ベルト:「いい国だな」
リュカ:「まだ途中だけど」
ベルト:「俺たちもいつか、海に国を作る。
その時は協力してくれ」
リュカ:「うん」
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建国プロジェクト:状況報告
第2部・建国編 第7話終了時点
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国民 :158名
山羊人ゴルダ加入
海洋獣人グループ20名が一時加入
資金 :銀貨75枚
産業 :黄金羊毛産業の開始
各プロジェクト進捗
住居 :25棟完成
防衛壁:西側城門80%完成
時計塔:塔身建設中・50%完成
結界 :60%回復
新たな関係
マンサ・バティート了承の上で商業国家との正式交易成立
海洋獣人グループとの盟約締結
→ 盟約から「仲間」へ格上げ
文化の変化
マリアナ×セラ×ウィンの歌で
音楽文化がクロノスリュカに根付き始めた
リュカの変化
新たな力の片鱗が現れた
ドラゴンとクロノス紋様の共鳴
ベルトとの友情が始まった
謎の宝物
ドラゴンが残したクロノス紋様の金属板
ミネルヴェが調査中
メモ
サーカスのキャラバンの情報
ドラゴンと竜人の繋がり
将来の海洋獣人国家への礎
次のマイルストーン
→ 黄金羊毛の生産体制構築
→ ゴルダのファッション展開
→ 獣文字の公式化
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第2部 第7話 終了
次話:「文字を返せ」




