第2部 第4話「水が来る日」
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建国プロジェクト:状況報告
第2部・建国編 第4話開始時点
現在地:クロノスリュカ・建国地
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国民 :100名
資金 :銀貨30枚
食糧 :安定確保・農業大詰め
建物 :住居15棟・水路工事中
安全度:通常
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建国から20日が経っていた。
渓谷に活気が出てきていた。
住居が15棟並び、市場には毎日人が集まった。水路工事が大詰めを迎えていた。
兎人ラギラブが今朝も畑予定地を見に行った。
土を触った。匂いを嗅いだ。
ラギラブ:「あと少しだ」
独り言だった。
でも、その顔は14年間で一番穏やかだった。
大洪水
昼過ぎ、国の東を走る大河であるアルカ川が轟いた。
鴉人シルトが上空から叫んだ。
シルト:「上流が決壊しました。
大量の水が来ます」
仮設水門が持たなかった。
濁流が渓谷の低地に流れ込んだ。
住居2棟が浸水した。食糧の一部が水に浸かった。
ラギラブが畑予定地を見た。
水没していた。
言葉が出なかった。
緊急救命
信が即座に動いた。
信:「ジグニ、ガルバ、土嚢を積んでくれ。
ナインホース、物資を高台に。
クラグル、負傷者の確認。
バーナデッド、被害状況の集計。
アラファ、上空から水の流れを教えてくれ」
全員が動いた。
その時、濁流の中に何かが見えた。
小さな影だった。
流れに飲まれながら、それでも抵抗していた。
ロガ:「生き物だ」
信:「助けます」
ロガが川に飛び込んだ。
引き上げたのは、茶色の毛並みの小柄なカワウソ(川獺)の獣人だった。
意識があった。小刀を2本、離さずに握っていた。
羊人クラグル:「運んで。
すぐ診る」
ルトラの治療
神殿の医務室に運んだ。
クラグルが手当てをした。
光が溢れた。
しばらくして、川獺人が目を開けた。
川獺人:「……川が、荒れた」
クラグル:「動かないでください。
まだ治療中です」
川獺人:「大丈夫。
それより、あいつが来る」
信:「あいつ?」
川獺人:「私を流したやつ。
リバーレイス。
川竜だ。
洪水を引き起こした元凶の魔獣。
大量のウォーターインプを
従えている」
信の視界に文字が浮かんだ。
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適性鑑定:川獺人・ルトラ(推定20代・女)
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水中戦闘 ★★★★★
小刀二刀流 ★★★★★
精霊魔法(水) ★★★★☆
水流の読み取り ★★★★★
川の知識 ★★★★★
現在の状態: 単独行動の限界を感じている
水の精霊との微かな共鳴
現在の能力発揮値:35%
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ルトラ:「こちらに向かっているから迎え撃たないと」
クラグル:「まだ安静が」
ルトラ:「大丈夫。
水に入れば治る」
クラグル:「……それは医療的に
認められない発言です」
ルトラ:「でも本当のこと」
魔物の来襲
川から轟音が響いた。
川獺人ルトラの言った通りリバーレイスが姿を現した。
全長8メートルの川竜。鱗が黒く、水流を纏っていた。その周囲をウォーターインプの群れが取り巻いていた。
小型のウォーターインプが先行して渓谷に流れ込んできた。
蝙蝠人アラファ:(全員に)
「ウォーターインプが
30体以上。
川竜は川の中央に構えています」
信が状況を把握した。
信:「ロガ、ウォーターインプの正面を頼む。
ミネルヴェさん、一掃できますか」
梟人ミネルヴェ:「任せろ」
信:「ジグニとガルバは
住居への侵入を防いでくれ。
リバーレイスはルトラと一緒に対処する」
ミネルヴェが上空から黒魔術を放った。
光に弱いウォーターインプが次々と動きを止めた。
熊人ジグニと岩山羊人ガルバが 住居の前に立ちはだかった。
流れ込んできたウォーターインプを 二人がかりで押し返した。
ガルバ:「石より軽い」
ジグニ:「だが、動くぶん、石より面倒だ」
狼人ロガが正面の群れに突っ込んだ。
フォーヌのルーン武器が ウォーターインプの魔石を砕いた。
リバーレイスとの決戦
川の中央でリバーレイスが咆哮した。
水流が渦を巻いた。
ルトラが川に飛び込んだ。
小刀を両手に持ったまま、水中を矢のように進んだ。
ミネルヴェ:「水中での動きが
人の3倍以上だ」
信:「ロガ、正面から引きつけてくれ」
ロガ:「わかった」
ロガが川岸からリバーレイスに向かって跳んだ。
巨大な川竜の注意が正面に向き気がそれる。
その瞬間、水中からルトラが動いた。
水の精霊魔法を発動。
水が集まり、渦になる。リバーレイスの水流を逆用した。
川竜が体勢を崩した。
ルトラの小刀二刀流が 川竜の腹の鱗の薄い部分を 連続で突いた。
水中に血が広がった。
リバーレイスが沈んだ。
ルトラ:(水面から顔を出して)
「倒した」
信:「怪我は」
ルトラ:「ない。
水の中は私の庭だ」
川の浄化
リバーレイスが倒れると ウォーターインプが散り始めた。
ルトラが水中を動き回って 残ったウォーターインプを一掃した。
精霊魔法(水)が 川全体に広がった。
淀んでいた水が、澄んでいった。
ミネルヴェ:「水の精霊魔法か。
珍しい」
ルトラ:「使えるだけ。
理屈はわからない」
ミネルヴェ:「そういう者が
一番強い」
翌朝、川の水が澄んでいた。
魚が戻り始めた。
ベロスとダムの登場
水が引いた頃、川沿いに見慣れない獣人が2名いた。蛙とビーバー(海狸)の獣人だ。
蛙人ベロスが川の流れを計算していた。
海狸人ダムが倒れた仮設水門を調べていた。
昨夜ルトラが知り合いで凄腕の水系獣人を呼んでいたのだ。
ベロス:「この水門の設計では
増水に耐えられない。
作り直す」
ダム:「材料はあるか」
ジグニ:「ある」
ダム:「では始めよう」
信の適性鑑定が発動した。
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適性鑑定:蛙人・ベロス(推定40代・男)
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水路設計 ★★★★★
水流計算 ★★★★★
農業用水 ★★★★★
精霊魔法(水) ★★★☆☆
現在の能力発揮値:40%
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適性鑑定:海狸人・ダム(推定35歳・男)
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ダム建設 ★★★★★
水中工作 ★★★★★
木材加工 ★★★★★
精霊魔法(水・地) ★★★★☆
現在の能力発揮値:35%
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ベロス・ダム・ジグニ・ルトラの4人が川沿いに並んだ。
水の専門家が揃った瞬間だった。
信:「ボトルネックが全部埋まった」
水路の再設計
4人が水路の根本的な再設計を始めた。
アッチがルーン文字で水圧対策を加えた。
フォーヌが加工した。
並行してダレトが魔物の解体・調理に挑んだ。
兎人ダレト:「マッドクロウラーの肉は
鶏肉に近いな。
アクアサーペントの尾は
淡白で旨そうだ」
羊人クラグル:「ウォーターインプの魔石は
薬の材料となるでしょう」
猪人フォーヌ:「マッドクロウラーの甲羅は
ルーン刻印に最適だな」
討伐・解体・活用が一気に回り始めた。
ラギラブの念願
水が完全に引いた後。
兎人ラギラブが畑予定地に立った。
しゃがんで土を触る。
ラギラブ:「この土、悪くない。
洪水で養分が増えた」
兎人ダレトが隣に立った。
ラギラブが懐から種を取り出した。
農奴として生きてきた14年間、ずっと持ち続けた種だった。
黙って、土に蒔いた。
何も言わなかった。
それだけで十分だった。
信が少し離れた場所から、その背中を見ていた。
新たな仲間
新しい水路と水門が完成した。
ベロスとダムが国に残ることを決めた。
ベロス:「まだ作るものがある」
ダム:「ここの川は面白い」
ルトラも残ることにした。
ルトラ:「川の警備と漁は
私がやる。
水の中は任せて」
信:「助かります」
ルトラ:「助けてもらったから
助ける。それだけ」
夕暮れ、畑に水が届いた。
ラギラブが空を見上げた。
信は何も言わなかった。
その顔を見れば、十分だった。
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建国プロジェクト:状況報告
第2部・建国編 第4話終了時点
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国民 :112名
川獺人ルトラ・蛙人ベロス
海狸人ダム加入
資金 :銀貨38枚
魔物素材売却で増加
食糧 :農業本格始動
魔物肉が新たな食料源に
水路 :再設計・完成
川 :リバーレイス討伐・浄化完了
新素材・新食材
アクアサーペント:鱗・毒牙・尾肉
マッドクロウラー:甲羅・大量の肉
ウォーターインプ:高品質の魔石
リバーレイス:黒鱗・魔石(最高品質)
第3部への伏線
ルトラの精霊魔法(水)が発動
ウンディーネとの共鳴の可能性
次のマイルストーン
→ 初収穫まで2ヶ月
→ カティの治安部門強化
→ マルカンドとの交渉継続
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第2部 第4話 了
次話:「カティの仕事」




