第2部 第3話「時計が動く国」
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建国プロジェクト:状況報告
第2部・建国編 第3話開始時点
現在地:クロノスリュカ・建国地
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国民 :80名
資金 :銀貨22枚
食糧 :1週間分
建物 :住居10棟建設中・学校完成
水路 :工事中
市場 :自然発生・人間商人数名が来訪中
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建国から10日が経っていた。
渓谷の景色が変わり始めていた。
神殿の隣に小さな学校が建っていた。ジグニと岩山羊人ガルバが3日で建てた。住居が10棟、渓谷の斜面に並び始めていた。渓谷の入口近くには露店が数軒、自然に集まっていた。
人間の商人が数名、様子を見に訪れていた。
これには狐人ドミナスが対応していた。
信:(渓谷を見渡しながら)
「10日でここまで来たのか」
梟人ミネルヴェ:「感慨に浸るのは後にしろ。
学校が始まるぞ」
信:「はいはい」
ミネルヴェ:「返事は一回だ」
開校
学校の前に人が集まっていた。
子どもたちだけではなかった。
大人が5名混じっていた。
兎人ラギラブ、岩山羊人ガルバ、ナインホースの馬人が一名、はぐれ者から来た兎人の母親、元山賊の若い狐人。
講師はコアメンバーたちがそれぞれの得意分野を教えてこととなっている。
教えるは苦手だと渋るメンバーには信が教育が以下に重要かといて回り参加を了承してくれた。
信:「大人も学手も来てくれていますね」
ラギラブ:「農業に算術が使えると聞いた。
学びに来た」
ガルバ:「……文字を、読めるようになりたい」
ミネルヴェが全員を見渡した。
ミネルヴェ:「子どもも大人も関係ない。
学ぶのに遅い年齢はない。
全員、座れ」
18名が並んだ。
最初の授業
ミネルヴェが獣文字の授業を始めた。
羊皮紙に文字を書いて見せた。
ミネルヴェ:「これがお前たちの文字だ。
以後誰にも禁じさせない。これは、大事なものだ。
まず自分の名前を書いてみろ」
子どもたちが爪や棒で木版に刻み始めた。
鼠人アルラッテが一番速かった。
犬人女王リュカが真剣な顔で刻んでいた。
馬人ルドルフが途中で馬形態になりかけた。狼人ロガが遠くから一睨みした。ルドルフが戻った。
鹿人コダがミネルヴェの歴史の話を聞いて手を挙げた。
コダ:「それ、うちの集落の口伝と
同じ話です」
ミネルヴェ:「どこで聞いた」
コダ:「スタアーグさんから。
ずっと前から伝わっているって」
ミネルヴェ:「……200年間、
口伝で生き続けた歴史か」
教室が静まり返った。
書かれた歴史と口伝が一致した瞬間だった。
大人の列では、岩山羊人ガルバが 一文字ずつ、ゆっくりと刻んでいた。
自分の名前だった。
刻み終わった時、ガルバは何も言わなかった。
ただ、目が赤かった。
ミネルヴェが黙って次の文字を示した。
それだけだった。
懐中時計と問答
信が教室に入った。
懐中時計を取り出して見せた。
信:「時間は平等だ。
王でも農民でも
一日は同じ長さしかない」
その瞬間、アルラッテが手を挙げた。
アルラッテ:「それ、売れる。
大陸中で需要がある」
全員が振り返った。
ミネルヴェが「後で話せ」という顔をした。
アルラッテが黙った。
別の子どもが手を挙げた。
はぐれ者から来た若い猫人だった。
猫人の子ども:「時間に支配されるのか。
嫌だニャア」
教室が少し笑った。
信は笑わなかった。
信:「いい意見だよ。それは。
時間は道具だ。
鍬と同じ。
鍬は使うものだが
大切にするものでもある。
雑に使えばすぐ壊れる。
時間も同じで
無駄にすれば
自分が損をする」
猫人の子ども:「じゃあ大切にすればいいのか」
信:「そうだ。
ただし、道具に使われてはいけない。
鍬が主人になったら
おかしいだろう」
猫人の子ども:「……なるほど」
ラギラブ:(大人の列から)
「俺も、なるほどと思った」
市場の不正
昼過ぎ、鼠人アルラッテが市場を一人で歩き回っていた。
ドミナスが呼び込んだ人間の商人の露店が3軒出ていた。
アルラッテが3番の露店で足を止めた。
計量器を見ていた。
数字が合わなかった。
猫人カティ:「子どもが一人でうろつくな」
アルラッテ:「仕事中です。
3番の露店が
計量をごまかしている。
これを見て」
アルラッテが計算を見せた。
カティが数字を確認した。
カティ:「……証拠になるか」
アルラッテ:「なります」
カティ:「行くぞ」
アルラッテ:「猫が鼠を連れて行くの?」
カティ:「うるさい」
二人で露店に向かった。
摘発成功だった。
ゴロツキの残党が人間の商人に紛れていた。
ドミナスが外交的に処理した。
ドミナス:「取引の信頼は
双方にとって大切なものです。
この件はなかったことにしましょう。
ただし次はない」
人間の商人:「……わかった」
人間の商人が頭を下げた。
ドミナスが小さく笑った。
マルカンドとの関係の布石が、静かに置かれた。
アッチとアルラッテ
夕方、鼠人アルラッテが工房に来た。
浣熊人アッチが部品を磨いていた。
アルラッテ:「時計を量産したい。
製造コストを教えてください」
アッチ:「……量産?」
アルラッテ:「1個あたりのコストと
販売価格のバランスを
計算したい」
アッチ:「……面白い子だ。
まず工房を見てみなさい」
アルラッテが工房に入った。
目が輝いた。
アッチが笑った。
二人の連携が、この日から始まった。
夜、信は手帳に書いた。
ガルバが初めて自分の名前を書いた。 コダの口伝がミネルヴェの記録と一致した。 アルラッテが市場の不正を数字で見つけた。 ルドルフが授業中に馬になりかけた。
今日は、いい日だった。
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建国プロジェクト:状況報告
第2部・建国編 第3話終了時点
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国民 :80名
資金 :銀貨22枚
食糧 :1週間分・安定化
建物 :住居10棟・学校開校
水路 :工事中
本日の成果
学校開校・子ども13名・大人5名
時間の概念が国民に広がり始めた
カティ×アルラッテのバディ結成
ゴロツキの不正摘発
人間商人との最初の接触・ドミナスが対応
次のマイルストーン
→ 水路工事完成
→ 時計の量産化検討(アッチ×アルラッテ)
→ ドミナスの商人国家マルカンド本格交渉
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第2部 第3話 終了
次話:「水が来る日」




