第2部 第1話「国の第1日目」
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建国プロジェクト:状況報告
第2部・建国編 第1話開始時点
現在地:クロノスリュカ・建国地
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国民 :65名
資金 :銀貨15枚
食糧 :3日分
建物 :神殿のみ
城壁 :なし
安全度:要整備
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建国宣言の翌朝。
信は神殿の隅で手帳を広げていた。
衣食住。インフラ・治水。経済・産業。仕事と賃金。防衛。法律。
全部、今日から始めなければならない。
顔がにやけていた。
梟人ミネルヴェ:「……何がそんなに楽しいんだ」
信:「楽しいというか」
ミネルヴェ:「顔がにやけている」
信:「大変なプロジェクトほど
やる気が出るんですよね。
これは職業病なのか
単なる性格なのか」
ミネルヴェ:「どちらも、だろう」
信:「……否定できない」
犬人女王リュカが神殿の扉を開けた。
朝日が渓谷に差し込んだ。
美しかった。
しかし神殿の中では65名が雑魚寝していた。
リュカ:「しん、起きて」
信:「起きてる」
リュカ:「起きてない。目が閉じてる」
信:「考えながら寝てた」
リュカ:「それ、寝てるって言うんだよ」
問題の洗い出し
全員を神殿の前に集めた。
信が問題を順番に挙げた。
信:「今日から国を作る。
まず現状を全員で確認する。
問題は山積みだ。
でも順番をつければ必ず解決できる」
問題1:衣食住
信:「住居が最優先だ。
65名が神殿に雑魚寝。
雨が降ったら終わりだ」
熊人ジグニ:「建てる。材料は何がある」
栗鼠人バーナデッド:「木材は森から。
石は渓谷の岩場から。
在庫を今日中に確認します」
信:「衣類は当面、各自のものでいい。
これは後々考えよう。
あとは、食糧は3日分。
ラギラブ、どのくらいで畑が動くだろうか」
兎人ラギラブ:「種は持っている。
最初の収穫まで2ヶ月。
それまでは森の食材と
魔獣討伐で凌ぐ」
信:「魔獣討伐はロガ隊に頼みたい」
狼人ロガ:「わかった」
信:「森で食べられる木の実や茸なども確保したい」
ラギラブ:「任せておけ、ダレトたちで十分できる」
問題2:インフラ・治水
信:「水路が必要だ。
渓谷の清流だけでは65名に足りない」
ジグニ:「住居と並行でやれるか?」
信:「やれるならやってほしい」
ジグニ:「人手次第だ」
狼人ロガ:「隊から出す」
問題3:経済・産業
信:「当面の収入源は魔獣討伐の素材売却。
ロガに討伐を、ドミナスに売却ルートを頼む」
狐人ドミナス:「マルカンドへのルートを探りますね」
信:「農業はラギラブ、製造はフォーヌとアッチ。
この3本柱で産業の基礎を作る」
問題4:仕事と賃金
信:「全員に役割があり、
役割には対価が発生する。
この国の貨幣の設計は
バーナデッドとドミナスに任せたい」
狐人ドミナス:「設計はできます。
ただ、鋳造の設備が必要となります」
猪人フォーヌ:「工房が整えば作れる」
信:「工房の建設をジグニに優先してもらう。
住居・工房・水路の順だ」
問題5:防衛
信:「防衛上問題なことに、城壁がない。
ガルディウスの次の襲撃がいつ来るかわからない。
他にも、結界が無くなってどこがここを狙うかわからない」
ジグニ、住居と並行で
西側に木柵だけでも頼む」
ジグニ:「わかった。
ただし一人では無理だ」
ロガ:「隊を出す」
猫人カティ:「神殿の守護は私が担当する。
市中の治安はロガと分担でいい」
問題6:法律
信:「最後に、最も重要なこと。
国になった以上、この国ルール、法律が必要だ。
リュカ、これは君が決めることだ」
リュカ:「わたし、法律とかわからないよ」
信:「リュカが思う国の形を言葉にすればいい。
こうなってほしいという思いが法律なんだ」
ミネルヴェ:「大丈夫。私が手助けをする」
リュカ:「わかった。やってみる」
役割の整理
信:「各部門の担当を正式に確認する」
【軍事部門】
軍の長 :狼人ロガ
治安・神殿守護:猫人カティ
空中戦力 :蝙蝠人アラファ
騎馬隊長 :馬人ペイス
【建設・インフラ部門】
建設長 :熊人ジグニ
森の管理 :鹿人スタアーグ
【農業・食糧部門】
農業長 :兎人ラギラブ
料理長 :兎人ダレト
【医療部門】
医療長 :羊人クラグル
【製造・発明部門】
鍛冶長 :猪人フォーヌ
発明担当 :浣熊人アッチ
【外交・情報部門】
外部交渉 :狐人ドミナス
情報長 :鴉人シルト
夜間偵察 :蝙蝠人アラファ
【財務・物資部門】
財務管理 :栗鼠人バーナデッド
【知・教育・法部門】
知の番人 :梟人ミネルヴェ
【摂政】
PM牧野 信
【国王】
犬人女王リュカ
最初の来訪者たち
役割の確認が終わった直後だった。
渓谷の入口に、人影が集まり始めた。
建国宣言の噂が、すでに広まっていた。
第1グループ:はぐれ者たち(5名)
行き場のない獣人たちだった。
農場から逃げた者。
家族を失った者。
首輪を自分で壊した者。
目が怯えていた。
信:「どこから来ましたか」
はぐれ者A:「北の農村から。
魔獣が出て、みんな逃げた。
行く場所がなくて」
信:「ルールを守れるなら歓迎します」
5名全員が残った。
第2グループ:ゴロツキたち(4名)
目つきが違った。
怯えではなく、品定めをしていた。
ゴロツキA:「ここが噂の獣人の国か。
なかなかいい場所じゃないか」
(渓谷を見回しながら)
「食い扶持にはなりそうだ」
信:「話を聞かせてください。
どこから来ましたか」
ゴロツキA:「そんなこと関係ないだろ。
獣人の国なら
獣人を受け入れるんじゃないのか」
カティが前に出た。
カティ:「素性を明かせ。
それがここのルールだ」
ゴロツキA:「ルール?
できたばかりの国が
偉そうに」
4名は渋々素性を話した。
どこかの街で小悪事を重ねてきた者たちだった。
信はひとまず受け入れた。
カティが信に小声で言った。
カティ:「あいつら、目が気に入らない」
信:「わかってる。
見ておいてほしい」
カティ:「最初からそのつもりだ」
第3グループ:山賊の一団(8名)
最後に来たのが最も厄介だった。
体格のいい獣人たちが8名。
武器を持っていた。
山賊A:「ここが新しい縄張りか。
悪くない。
俺たちがここを仕切ってやる」
ロガが無言で前に出た。
山賊たちが、初めて怯んだ。
山賊A:「なんだお前は」
ロガ:「軍の長だ」
山賊A:「ふん。獣人の国なら
力のある者が上に立つのが
当然だろう」
ロガ:「この国に、すでに王がいる」
山賊A:「子どもが王だと?
笑わせるな」
リュカが前に出た。
山賊たちが、また怯んだ。
今度は別の理由だった。
リュカのファミリーネームの紋様が、僅かに光っていた。
山賊A:「……なんだ、それは」
ミネルヴェ:「クロノスの加護だ。
この子はその加護を受けた王だ。
力で覆せるものではない」
山賊たちが顔を見合わせた。
信:「本来、この渓谷には結界があった。
防衛戦の際に一時的に解かれた。
まだ完全には回復していない。
だから今日、ここに来れた。
しかし結界が戻れば、
力で押し入ることはできなくなる」
山賊A:「……脅しか」
信:「事実です。
ルールを守って国民になるか、
去るかどうかは自分で決めてください」
8名のうち3名が去った。
5名が渋々残った。
問題が早速起きた
その日の夜。
ゴロツキの1名が はぐれ者の食糧を盗んだ。
山賊の残党2名が 渓谷の良い場所を力で占領しようとした。
カティが即座に動いた。
カティ:「離れろ。
ここは全員の場所だ」
山賊残党:「うるさい。
力のある者が良い場所を
取るのは当然だろう」
カティ:「この国ではそうじゃない」
山賊残党:「なぜだ。
法律でもあるのか」
カティ:「うるせぇ! 私が法律だ!」
叫ぶなりカティは一瞬で山賊を武力制圧していた。
山賊残党:「ふざけやがって……、結局力勝負じゃ……ねーか」
カティはこの件を女王リュカと信に報告した。
最初の法律が生まれた夜
リュカ・信・ミネルヴェの3人が 神殿の一角に集まった。
信:「リュカ、どんな国にしたい?
思ったことを言ってみて」
リュカ:「誰も盗まない国。
力が強い人が
弱い人をいじめない国。
子どもが勉強できる国。
みんなが自分の言葉を
使っていい国」
ミネルヴェ:「それで十分だ。
私が言葉にする」
ミネルヴェが羊皮紙に書いた。
第一条:全ての国民は平等である
第二条:他者の物を盗むことを禁ずる
第三条:力による支配・暴力を禁ずる
第四条:子どもは労働より教育を優先とする
ただし本人の希望による軽労働は妨げない
第五条:獣語・獣文字の使用を全国民の権利とする
獣人文化の保護と尊重をこの国の最重要事項とする
リュカが羊皮紙を見た。
リュカ:「これ、わたしが言ったこと?」
ミネルヴェ:「お前が言ったことだ。
私はただ言葉にしただけだ」
リュカ:「……わたしでも、法律が作れた」
信:「リュカが作ったんだ。
これがこの国の憲法だ」
翌朝、神殿の扉にその羊皮紙が貼られた。
ゴロツキと山賊の残党が、それを読んだ。
字が読めない者には、ミネルヴェが読み上げた。
問題を起こした者たちは、この国のルールに従うか去るかを選んだ。
2名が去った。
残った者たちは、黙って従った。
夜、信は手帳に書いた。
問題リスト:衣食住・インフラ・経済・防衛・法律。 全部、同時に解決しなくていい。 今日は法律ができた。 それで十分だ。
大変なプロジェクトほど、やる気が出る。 やっぱりこれは職業病だな。
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建国プロジェクト:状況報告
第2部・建国編 第1話終了時点
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国民 :76名(11名増)
はぐれ者5名・ゴロツキ2名・山賊残党4名
(問題起こした者が4名去った)
資金 :銀貨15枚
食糧 :3日分
建物 :神殿のみ・住居建設開始予定
本日の成果
クロノスリュカ基本法・第一条〜第五条制定
全部門の役割確定
荒くれ者問題への対応方針確立
課題
ゴロツキ・山賊の残党が国民に混在
カティの人手不足が深刻
結界の回復が急務
次のマイルストーン
→ 住居・工房・水路の建設開始
→ 貨幣の設計
→ 結界の回復(クロノスに相談)
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第2部 第1話 終了
次話:「壁を作る前に」
やっと描きたかった建国編がスタート。素敵な国になるといいな。




