第14話「ネコは気まぐれに正しい」
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建国プロジェクト:状況報告
第14話開始時点
現在地:クロノス神殿前
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人員 :コア15名/総勢65名
資金 :銀貨10枚
食糧 :安定確保
安全度:警戒レベル最高
史上最大規模の攻撃が迫っている
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神殿の扉の前に、黒猫の獣人が立っていた。
緑の目が、信たちを一人ひとり見た。
値踏みではなかった。
拒絶だった。
カティ:「止まれ。
人間と、
人間に引き入られた獣人を
ここには入れない」
信:「協力したい。
敵の大規模な攻撃が迫っています」
カティ:「知っている。
だから余計なものは要らない」
ロガが一歩前に出た。
ロガ:「俺たちは同じ獣人だ」
カティ:「同じ?」
(鋭い目でロガを見た)
「人間の指図で動く連中が
同じだと言うのか。
狼たちとは上手くやれない。
ましてや人間に引き入られた
連中の手など借りない」
ロガの拳が握られた。
シルト:(小声でロガに)
「落ち着いてください」
ロガ:「……わかっている」
カティが続けた。
カティ:「私たちの親は人間に殺された。
家族は人間に奪われた。
その人間と手を組む者を
信用できるわけがない。
綺麗事を並べて近づいてくる人間が
一番始末に負えない」
場の空気が固まった。
誰も言葉を返せなかった。
カティの言葉は、正しかった。
その怒りは、正当だった。
リュカの言葉
沈黙が続いた時、リュカが前に出た。
迷いがなかった。
リュカ:「……わたしの村も、焼かれた」
カティ:「…………」
リュカ:「人間が焼いた。
理由もなく。
みんないなくなった。
わたし一人だけ残った」
カティ:「……それがなんだ」
リュカ:「しんは、その後で会った人間。
わたしを助けた人間。
最初は信用しなかった。
怖かった。
でも、信用することにした。
間違いじゃなかった」
カティ:「……子どもが何を知っている」
リュカ:「子どもだから言える。
全部の人間が悪いわけじゃない。
でも、全部の人間が良いわけでもない。
しんは良い人間。
だからここにいる」
カティは黙った。
目が、わずかに揺れた。
カティ:「お前の村はどこだ」
リュカ:「灰の原の西。
もう跡しか残ってない」
カティ:「生き残りはお前だけか」
リュカ:「うん」
カティ:「何歳だ」
リュカ:「9歳」
また沈黙があった。
カティが目を逸らした。
完全には信じていない。でも、扉を完全に閉じてはいなかった。
スタアーグの忠告
その時、スタアーグが静かに言った。
スタアーグ:「カティ、聞け。
森の外に大規模な部隊が集結している。
今までで最大の規模だ。
黒い油と火の魔術を
準備しているという情報がある」
カティ:「森を、燃やすつもりか」
スタアーグ:「そうだ。
結界を力で解こうとしている。
このままでは森が破られる。
神殿に大群が流れ込んでくる」
カティ:「……防ぐ」
スタアーグ:「20名で数千の兵を防ぐか」
カティ:「やるしかない」
スタアーグ:「一人で抱えることが
守ることじゃない」
カティ:「…………」
カティが信を見た。
カティ:「……お前は何者だ」
信:「ただのしがないPMです」
カティ:「PMとは何だ」
信:「人を適切な場所に配置して
目標を達成させる者です」
カティ:「人間のくせに
獣人の動かし方を知っているのか」
信:「動かし方じゃない。
活かし方です」
カティ:「…………」
(少し間があった)
「……証明してみろ。
口だけなら誰でも言える」
信:「わかりました。
まず防衛線を作ります。
見ていてください」
防衛線の構築
信が動き出した。
信:「ジグニ、東の岩場に土塁を作ってくれ。
人間の突撃を止める壁が必要だ」
ジグニ:「どのくらいの高さにする」
信:「騎馬が越えられない高さ。
2メートル以上」
ジグニ:「わかった」
信:「フォーヌ、アッチ、
西側に罠を仕掛けてくれ。
敵を足止めできるものを。
材料は工房馬車から使っていい」
アッチ:「何種類か仕掛けられる。
任せなさい」
フォーヌ:「俺も手を貸す」
信:「バーナデッド、物資の配置を。
クラグルが動きやすい場所に
医療物資をまとめてくれ」
バーナデッド:「了解です。
5分で配置します」
信:「シルト、アラファ、
敵の動きを常に把握してくれ。
情報は風の精霊で全員に」
シルト:「了解です」
アラファ:「夜間は私が担当する」
信:「ロガ、隊を3方向に分けて配置してくれ。
南・東・西の3点を守る」
ロガ:「わかった」
信:「ペイス、ナインホースは
南の平地を担当してくれ。
突撃と撤退を繰り返して
敵の足を止める」
ペイス:「任せろ」
信:「ミネルヴェさんは上空から全体を。
ドミナスは敵陣の混乱を担当してくれ。
クラグル、後方で待機。
負傷者を即座に対応してほしい」
クラグル:「わかりました。
治ることは義務ですから」
信:「ラギラブ、ダレト、
食糧と水の確保を頼む。
長期戦になる可能性がある」
ラギラブ:「わかった」
ダレト:「任せてください」
信:「リュカは全体把握を
できるかい」
リュカ:「任せて」
信:「さあ、始めよう!」
全員が即座に動いた。
カティの猫人たちが、それを見ていた。
1時間後。
東に土塁が立った。
西に罠が仕掛けられた。
物資が整然と配置された。
南に陣が引かれた。
カティ:(信に近づいた)
「……手際がいい」
信:「まだ足りない部分があります。
カティさんの猫人隊に
お願いしたいことがある」
カティ:「……何だ」
信:「一撃必殺に特化している猫人隊は
精霊狩り特殊部隊への対処に
最も向いています。
正面の大軍ではなく
精鋭の特殊部隊を担当してほしい」
カティ:「……なぜそれを知っている」
信:「猫人の戦い方を聞きました。
スタアーグから」
カティ:(スタアーグを見た)
スタアーグ:(無言で頷いた)
カティ:「…………」
(長い沈黙)
「……神殿の東と西に
隠し通路がある。
奇襲に使える。
教えてやる」
カティが部下に命じた。
カティ:(部下に)
「この者たちに隠し通路を案内しろ」
部下:「隊長、よろしいんですか」
カティ:「……使えると判断した。
それだけだ」
ロガがカティの隣に来た。
ロガ:「……さっきは、失礼した」
カティ:「謝るな。
猫種と犬種は相性が悪い」
ロガ:「それでも、同じ側だ」
カティ:「……まだ、そうとは言っていない」
ロガ:「言わなくていい。
行動が全てだ」
カティ:「…………」
夜になった。
アラファが神殿の周囲を音波で把握した。
アラファ:(風の精霊で全員に)
「森の外に大規模な部隊が集結しています。
数は……3000以上。
黒い油の匂いがします。
明朝、動くと思われます」
信が全員を集めた。
信:「明日、おそらくこれまでで最大の戦いになります。
全員、今夜は休んでください。
体が全てにおいて優先される」
クラグル:「負傷者の確認をします。
全員、診せてください」
ラギラブ:「食事を用意します。
ダレト、頼む」
ダレト:「はい」
焚き火を囲んで、全員が食事をした。
猫人たちも、少し離れた場所で火を囲んだ。
完全に打ち解けてはいなかった。
でも、同じ火の光の中にいた。
リュカ:(カティの隣に座った)
カティ:「何だ」
リュカ:「隣に座っていい?」
カティ:「勝手にしろ」
リュカ:「カティさんの親は、どんな人だったの」
カティ:「なぜそれを聞く」
リュカ:「わたしのおかあさんのこと、
話したくなった。
でも一人じゃ話せない」
カティ:「……父は、この神殿の門番だった。
笑い方が不器用な男だった」
リュカ:「……わたしのおかあさんは、
獣文字を教えてくれた。
これがお前の名前だって」
二人が、静かに話した。
火が、揺れた。
信はそれを、少し離れた場所から見ていた。
この国は、こういう夜の積み重ねで作られる。
明朝、森の外から黒い煙が上がった。
アラファ:「動きました。
黒い油に火をつけています。
森が燃え始める」
スタアーグ:「……来た」
カティ:「……全員、持ち場につけ」
カティが信を見た。
カティ:「……PMとやら。
信用したわけじゃない。
ただ、今日だけは一緒に戦う」
信:「それで十分です」
カティ:「……生き残れよ。
あの子が悲しむ」
カティが神殿の屋根に飛び上がった。
緑の目が、燃え始めた森を見ていた。
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建国プロジェクト:状況報告
第14話終了時点
現在地:クロノス神殿・防衛準備完了
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人員 :コア16名/総勢65名
カティ防衛隊20名が協力体制に
安全度:警戒レベル最高
3000名の旅団が森を焼き始めた
防衛線の状況
東 :土塁(ジグニ施工・高さ2メートル以上)
西 :罠地帯(アッチ×フォーヌ設置)
南 :ロガ隊・ナインホース配置
神殿:カティの猫人隊・精霊狩り特殊部隊担当
上空:シルト・アラファ・ミネルヴェ
新たな関係
カティが「今日だけ」の協力を承諾
リュカとカティが焚き火を囲んで話した
次のマイルストーン
→ 森の殲滅戦・クロノス攻防戦
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第14話 終了
次話:「時の神殿を守れ」




