第8部 第10話「内側から」
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建国プロジェクト:状況報告
第8部・東の大陸編 第10話開始時点
現在地:帝国の陣・クロノスリュカ
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状況 :アリカが帝国に戻った翌日
帝国内部で変化が動き始めた
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帝国に戻ったアリカがレイムンドの部屋を訪ねた。
夜、全てを話した。
信の世界との繋がり。先祖の誤解。精霊の科学的な再定義。リベリオンの欠片のこと。
レイムンドが黙って聞いた。
全部聞き終えた。
レイムンド:「信の世界から俺たちの先祖が来た。それが事実なら」
アリカ:「事実だと思う。古代語が証拠だ。
エスパノ語・アングル語。
信が自分の世界の言語だと言った。
俺には確認できない。
しかし嘘をつく理由がない」
レイムンド:「精霊はエネルギー体か」
アリカ:「俺はそう理解した。
知性を持つエネルギー体。
俺たちの技術がそれを生み出せる。
つまり精霊は俺たちと無縁ではない」
レイムンド:「帝国の民に伝えられるか」
アリカ:「全員には無理だ。
しかし最初の一人を動かせれば次が動く。
最初の一人はお前だ、レイムンド」
レイムンド:「俺か」
アリカ:「俺が技術で変える。お前が軍で変える。二人で変えれば動く」
レイムンドが窓の外を見た。
帝国の整然とした街が見えた。
レイムンド:「ゼイヴァン陛下に申し入れる。信に会いに行くように」
アリカ:「陛下が動くか」
レイムンド:「動くかもしれない。
先日陛下が迷われた。
初めて見た。その迷いを大切にすれば動ける」
レイムンドがゼイヴァンに申し入れる
翌朝だった。
レイムンドがゼイヴァンの前に立った。
レイムンド:「陛下、クロノスリュカの信という者と直接話していただきたい。
計画の変更を検討を希望いたします」
ゼイヴァン:「俺が直接か。
それは帝国の計画にない行動だな」
レイムンド:「わかっています。
しかし計画にない行動が必要な時があります。
陛下が先日迷われた。その迷いは正しいと思います」
ゼイヴァン:「お前は俺が迷ったことを知っていたか」
レイムンド:「顔に出ていました。
陛下が迷われるのは初めて見ました。
その迷いを大切にしていただきたい」
ゼイヴァンが長い間考えた。
ゼイヴァン:「……行こう。
しかし帝国を代表してではなく、あくまでも俺個人として話を聞きに行く」
レイムンド:「それで十分です」
信とゼイヴァンの初対話
中立地帯。護衛なし。武器なし。二人が向き合った。
信がゼイヴァンを見た。
100年以上生きた者の重さがあった。
疲れているように見えた。
ゼイヴァン:「お前が牧野信か。
思っていたより若いな」
信:「あなたは」
ゼイヴァン:「老いているか。
言っていい。100年以上生きた。老いて当然だ」
信:「そうは言いませんが」
ゼイヴァン:「では何を言おうとした」
信:「あなたが思っていたより疲れているように見えます」
ゼイヴァンが止まった。
ゼイヴァン:「100年間管理してきた。疲れていない方がおかしいだろうな」
信:「誰かに任せなかったんですか」
ゼイヴァン:「任せたら間違える。俺が管理しなければ帝国が乱れる」
信:「全部一人でやってきたんですね。それは、大変でしたね」
ゼイヴァンが止まった。
100年間、誰にも言われなかった言葉だった。
ゼイヴァン:「大変だったかどうかはわからない。それしか知らないからな」
信:「他のやり方を見てみたいですか」
ゼイヴァン:「ああ。それがここに来た理由だ」
ゼイヴァンがクロノスリュカを見る
信がゼイヴァンを案内した。
護衛なしで歩いた。
市場
人間と獣人が笑いながら交渉していた。
値段が決まっていなかった。
毎回違った。
ゼイヴァン:「値段が決まっていないのか。国が管理せんと非効率だろう」
信:「しかし楽しそうでしょう」
ゼイヴァン:「…楽しい。
しかし統一されていないとは」
信:「統一しなくていいんです。
それぞれがそれぞれの判断で動いている。
全員が違うから面白い」
ラック国立演芸場
チンチラの獣人マスデが踊っていた。
農村で会った幽霊が揺れていた。
エルフの代表が笑っていた。
ゼイヴァン:「話には聞いていたが、死者が生者と同じ場所にいる。
帝国では考えられない」
信:「最初は俺も驚きました。
しかし今は当たり前になっています」
ゼイヴァン:「当たり前になるのか」
信:「慣れるのではなく、理解するのだと思います。
違う者が一緒にいる理由がわかった時当たり前になる」
農村
食の精霊デメテルが畑の上を漂っていた。
光の粒が作物を照らしていた。
ゼイヴァンが足を止めた。
ゼイヴァン:「これが精霊か。初めて見た」
しばらく見ていた。
ゼイヴァン:「怖くはないな。
暖かい。
それだけだ」
信:「精霊は基本的に攻撃しません。怖がっていない限り」
ゼイヴァン:「俺たちの先祖は怖がっていたから攻撃されたと思っていた。
しかし逆だったんだな。
精霊が怖がっていたとは」
信:「アリカさんが持ってきた記録がそう言っていましたね。
精霊は苦しんで暴れただけだった。攻撃したかったわけではなかった」
ゼイヴァンがデメテルを見続けた。
デメテルがゼイヴァンの近くに来た。
怖がっていなかった。
ただ、漂っていた。
ゼイヴァン:「数千年前の誤解か。
……長すぎる」
リュカとゼイヴァンの対話
農村からの帰り道だった。
リュカが待っていた。
信が少し離れて見ていた。
リュカ:「あなたがゼイヴァン皇帝ですか」
ゼイヴァン:「そうだ。
お前がこの国の王か。
若いな」
リュカ:「みんなそう言います。
でも国王になったのはもっと幼い頃です。これでも成長したんですよ」
ゼイヴァン:「なぜ幼き者が国王」
リュカ:「皆に望んでもらい、私が決めたから。誰かに決められたんじゃないです」
ゼイヴァン:「自分で決めたのか」
リュカ:「ええ。
信がサポートしてくれる。
だからできたんです」
ゼイヴァン:「サポートか。
俺はサポートを求めたことがない。
全部俺が決めてきた」
リュカ:「疲れませんか」
ゼイヴァンが少し笑った。
初めて笑った。
ゼイヴァン:「今日二人に同じことを聞かれるとは。
疲れているか、と」
リュカ:「さっきはどう返したんですが?」
ゼイヴァン:「わからないと、な。
それしか知らないから。
しかし今日この国を見て少しわかった気がする。
俺は疲れていたかもしれない」
リュカ:「休んでいいんですよ。
任せればいい。信じれば任せられます」
ゼイヴァン:「信じることか。
管理することと違うのか」
リュカ:「全然違います。
管理は全部見ていないとできない。
信頼は見ていなくてもできる。
それが楽なんです」
ゼイヴァンが少し間を置いた。
ゼイヴァン:「お前はいくつだ」
リュカ:「もうすぐ大人になります」
ゼイヴァン:「俺が100年かかっても気づかなかったことを
大人になる前のお前はもうわかっているのか」
リュカ:「信に教わったんです」
ゼイヴァンが信を見た。
信が少し離れていた。
二人の対話を見ていた。
邪魔しなかった。
ゼイヴァン:「あの者は何者だ。国王でもない。将軍でもない。
しかし全員があの者の事を言う」
リュカ:「私の一番大切な仲間です。支えてくれる人です」
ゼイヴァン:「そういう者がいたなら俺の100年は違ったかもしれない」
帰り際のゼイヴァン
ゼイヴァンが帰る前に信に言った。
ゼイヴァン:「今日来てよかった。
しかし帝国の方針はまだ変えられない。時間が必要だ」
信:「わかっています。急ぎません」
ゼイヴァン:「なぜ急がない」
信:「自分で決めた時だけ変わります。
急かしても変わらない。
あなたが自分で決めた時それが本当の変化だ」
ゼイヴァン:「管理者として100年生きてきてお前のような者に会ったことがなかった。
急かさない。命令しない。
しかし動かす」
信:「動かしているつもりはないんですが」
ゼイヴァン:「……それが
一番怖いのだよ、私には」
ゼイヴァンが去った。
レイムンドが傍にいた。
ゼイヴァンが去り際に言った。
ゼイヴァン:「レイムンド。
よく申し入れてくれた。
お前が計画を外れて提案してくれなければ来なかった」
レイムンド:「陛下が来てくれました。
それで十分です」
夜・信とリュカ
二人が時計塔の上にいた。
リュカ:「会う前はゼイヴァンって怖い人だと思ってた」
信:「実際は?」
リュカ:「怖くなかったよ。でも疲れてる人だった。
ずっと一人で全部やってきた人だった」
信:「そうだな」
リュカ:「私もずっと一人でやってたらああなってたかな」
信:「なってたかもしれない」
リュカ:「ならなくてよかった」
信:「周りに意見を言ってくれる仲間がいたからだよ」
リュカが少し笑った。
リュカ:「管理と信頼は全然違うって言ったらゼイヴァンが黙ったの」
信:「自分に無い考えだからだろうね」
リュカ:「私が信に教わったことだよ。
信が俺を信頼してくれたからわかった」
渓谷の灯りが見えた。
国民がいつも通り生きていた。
信が手帳に書いた。
ゼイヴァンが来た。 100年間管理してきた者が 初めてここに来た。 「疲れていたかもしれない」と言った。 デメテルを見て 「怖くない。暖かい」と言った。 リュカが「信じれば任せられる」と言った。 ゼイヴァンが「100年かかっても気づかなかった」と言った。 帰り際に 「急かさない。命令しない。しかし動かす」と言われた。 動かしているつもりはないんだが。 変わるのは外からじゃない。 内側からだ。 ゼイヴァンの内側で 何かが変わり始めた。 それだけで十分だ。
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建国プロジェクト:状況報告
第8部・東の大陸編 第10話終了時点
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アリカとレイムンドの連携
「俺が技術で変える。お前が軍で変える」
レイムンドがゼイヴァンに申し入れた
ゼイヴァンの訪問
初めて計画を外れた行動
「俺個人として話を聞きに行く」
信とゼイヴァンの初対話
「疲れているように見えます」
「それしか知らないから」
ゼイヴァンが初めて限界を感じた
クロノスリュカを見たゼイヴァン
市場:「非効率だ。しかし楽しい」
演芸場:死者と生者が一緒にいる
農村:デメテルを初めて見た
「怖くない。暖かい」
「精霊が怖がっていたのか」
リュカとゼイヴァンの対話
「管理と信頼は全然違います」
「俺は疲れていたかもしれない」
ゼイヴァンの言葉
「急かさない。命令しない。しかし動かす」
「100年かかっても気づかなかった」
次のマイルストーン
→第11話:帝国内部の本格的な変化
→ドミニオンとリベリオンが動く
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第8部 第10話 終了
次話:「二つの精霊」




