第8部 第6話「粒子と精霊」
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建国プロジェクト:状況報告
第8部・東の大陸編 第6話開始時点
現在地:クロノスリュカ・研究施設
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状況 :第二戦後
アルカナム・キャノンの調査が続いている
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第二戦の翌日だった。
鹿人コダと浣熊人アッチが研究施設に籠もっていた。
ミレアから回収したアルカナム・キャノンの残骸が届いていた。
アッチが機械的な構造を分解した。
発明の精霊ヘロンが周囲を飛び回っていた。
しかしいつもと違う飛び方だった。
近づいては離れた。
また近づいては離れた。
アッチ:「ヘロン、どうした。近づけないのか」
ヘロンが残骸から距離を置いた。
居心地が悪そうだった。
アッチが構造を確認し続けた。
アッチ:「エネルギー源がわからない。
この出力を生み出すには膨大なエネルギーが必要なはずだ。
しかしどこにも燃料が見当たらない。
俺の発明とは全く違う次元だ」
コダが精霊の感知を集中させた。
残骸に意識を向けた。
精霊ではなかった。
しかし精霊に似た何かが感じられた。
コダ:「アッチさん。
これを撃った時
何かが飛んでいます。
精霊じゃない。
しかし精霊に似た何かが高速で飛んでいる」
アッチ:「何が飛んでいる?」
コダ:「粒子です。
光でも魔法でもない。その周囲の精霊が動けなくなっている。
精霊の活動を阻害する場が生まれているんだ」
アッチ:「粒子が精霊を阻害する?」
コダ:「意図してではないと思います。
副作用です。
帝国は精霊を阻害しようとして作ったんじゃない。
しかし結果としてそうなっている」
アッチが少し考えた。
アッチ:「精霊なしで作られた技術が精霊を動けなくする。
皮肉だな」
コダ:「皮肉ですね」
ヘロンの反応
ヘロンがまた残骸に近づいた。
今度は止まった。
じっと見ていた。
アッチ:「ヘロン、何か見えるか」
ヘロンが光った。
珍しそうだった。
しかし怖がっていなかった。
好奇心があった。
コダ:「ヘロンには何か見えているんだと思います。
発明の精霊だからこの技術に反応している。
俺とは別の見え方をしているかもしれない」
アッチ:「ヘロン、教えてくれ。何が見える」
ヘロンが残骸の周りを一周した。
光の粒を残しながら飛んだ。
粒が残骸の形に沿って並んだ。
コダ:「粒子の動きを示しているのかもしれない。
ヘロンには粒子の軌道が見えているんだ」
アッチ:「ヘロンが解析してくれているか。
助かる」
アリカが現れた
昼過ぎだった。
帝国の側から一人の人物が近づいてきた。
武器を持っていなかった。
シルトが信に報告した。
信が確認した。
帝国の技術者服を着ていた。
信:「止めなくていい。話を聞きます」
人物が近づいた。
アリカ:「コダという者に会いたい。
精霊と話せる者だと聞いている」
信:「理由を聞かせてください」
アリカ:「私は帝国の技術者だ。
アルカナム・キャノンと呼ばれる兵器を設計した一人だ。
確認したいことがある」
信がコダを呼んだ。
コダとアリカの対話
コダがアリカの前に立った。
アリカ:「兵士の中にアルカナム・キャノンの近くで何かが聞こえると言った者がいた。
声だと。
叫び声だと。
しかし俺には聞こえない。
精霊と話せる者には聞こえるかもしれない。
お前たちには聞こえるか」
コダ:「叫び声は聞こえません」
アリカ:「そうか。
ではやはり気のせいだったか」
コダ:「しかし別のものが見えます」
アリカ:「何が」
コダ:「粒子です。
あなたたちの機械が高速の粒子を放っている。
その粒子が精霊の活動を阻害している。
そしてもう一つ。
あなたたちの技術が意図せず新しい何かを作り出しているかもしれない」
アリカ:「何を」
コダ:「まだ名前がない。
粒子の精霊と呼ぶべきか。
あなたたちの技術がこの世界の法則と交差した時に生まれるものだ。
小さい。
弱い。
しかし確かにいる」
アリカ:「精霊?
俺たちの機械が精霊を作り出しているというのか?」
コダ:「意図してではない。
副作用です。
しかしこの世界では強いエネルギーが動く場所に精霊が現れる。
あなたたちの技術はこれまでにない強いエネルギーを使っている。
だから現れた」
アリカ:「見えないが」
コダ:「俺には見えます。
ヘロンも見えているようです」
アリカがヘロンを見た。
ヘロンがアリカを見た。
アリカ:「これが精霊か」
コダ:「発明の精霊です。
あなたたちの技術に興味を持っています。
怖がっていない。好奇心があります」
アリカ:「精霊が俺の機械に興味を持っているだと」
アリカが少し動けなくなった。
長い間、ヘロンを見ていた。
信が気づく
その後だった。
アリカが帰り際に独り言を言った。
「エス・コンフソ。ノー・エンティエンド」
信が止まった。
「エス・コンフソ。確かスペイン語で『混乱している』だ。
ノー・エンティエンド。『わからない』だ。
エクトルの時と同じだ。偶然じゃない」
信がアリカに声をかけた。
信:「今、何と言いましたか」
アリカ:「え?
私語です。気にしないでください」
信:「その言葉はどこから来た言葉ですか」
アリカ:「古代語です。
帝国では独り言や親しい者への言葉として古代語を使う習慣が残っています。
正式な言語ではない。
しかし日常的に使う」
信:「その古代語はどこから来ましたか」
アリカ:「帝国の記録では古代文明の言語を受け継いだものだと。
ソル語とエスパノ語とアングル語が混ざっていると習った」
信が止まった。
「ソル語。エスパノ語。アングル語。これはスペイン語・英語の変化形だ。
間違いない。
帝国の先祖は俺の世界から来た。
遥か未来の子孫だ」
カイロスがこれまでで最大まで輝いた。
信が手を押さえた。
表情を変えないようにした。
信:「ありがとうございます。教えてくれて」
アリカ:「なぜそんなことを聞くんですか」
信:「いつか話せる日が来たら話します。
今日は来てくれてありがとう」
アリカが去った。
信一人の時間
夜だった。
信が執務室に一人でいた。
精霊が傍にいた。
信:「やはりそうか。帝国の先祖は俺の世界から来た。
遥か未来の子孫だ。
ソル語、エスパノ語、アングル語。
スペイン語と英語の変化形。
北中南米の文明の末裔だ。
彼らがこの異世界に転移した。
そして数千年かけて帝国になった」
精霊が静かに光った。
信:「誰にも言えない。
もう少し確認が必要だ。
しかしこれは大きい。
帝国との戦い方が変わるかもしれない。
俺だけが知っていること。
俺だけが気づけること。
それが武器になるはずだ」
コダの発見をまとめる
翌朝、コダが信に報告した。
コダ:「まとめます。
アルカナム・キャノンは荷電粒子砲です。
精霊を使っていない。純粋な物理的な力だ。
その電磁場が副作用として精霊の活動を阻害している。
帝国の意図ではない」
信:「つまり精霊を排除するための武器ではない」
コダ:「そうです。
しかし結果として精霊が動けなくなる。
そしてもう一つわかったことがあります」
信:「何だい」
コダ:「粒子の精霊が生まれています。
帝国の技術とこの世界の法則が交差した場所に。
まだ小さい。
弱い。
しかし
確かにいる。
名前がない精霊だ」
信:「名前がない精霊」
コダ:「俺にはまだ意味がわからない。
しかし大事な発見だと思います」
信が頷いた。
信:「記録しておいてください。
いつか意味がわかります。
それがこの国だ」
信が手帳に書いた。
アルカナム・キャノンは 荷電粒子砲だ。 精霊を使っていない。 しかし 精霊を阻害する。 副作用として。 そして 帝国の技術が この世界で 新しい精霊を 生み出している。 名前がない精霊。 科学と精霊が 出会っている。 帝国の先祖は 俺の世界から来た。 ソル語・エスパノ語・アングル語。 間違いない。 まだ誰にも言えない。 しかし これが 全ての鍵になるかもしれない。
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建国プロジェクト:状況報告
第8部・東の大陸編 第6話終了時点
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アルカナム・キャノンの真実
荷電粒子砲の変化形
精霊を使っていない純粋な超科学技術
電磁場が副作用として精霊を阻害する
帝国の意図ではない
粒子の精霊の発見
帝国の技術とこの世界の法則が交差した場所
名前がない新しい精霊
まだ小さく弱い
ヘロンの反応
アリカの技術に好奇心を示した
「怖がっていない」
アリカとコダの対話
「精霊が俺の機械に興味を持っている」
アリカが初めて精霊の存在を頭で考えた
信が帝国の正体に気づいた
「ソル語・エスパノ語・アングル語」
「帝国の先祖は俺の世界から来た」
傍の精霊が最大まで輝いた
まだ誰にも言えない
次のマイルストーン
→第7話:アリカの葛藤
→帝国内部で変化が起き始める
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第8部 第6話 終了
次話:「帝国の内側」




