第11話「コウモリは見えている」
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建国プロジェクト:状況報告
第11話開始時点
現在地:山岳地帯・野営中
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人員 :コア12名/総勢40名
ロガ隊:狼人6名・犬人4名に増加
資金 :銀貨8枚
食糧 :安定確保
移動力:昼間のみ・夜間移動が課題
安全度:警戒レベル最高
夜間の魔獣被害が続いている
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その夜も、来た。
見張りのラギラブが異変に気づいた時には、すでに遅かった。
暗闇の中から魔獣が3体、野営地に飛び込んできた。
ラギラブ:「魔獣だ!」
ロガ隊が即座に動いた。
しかし暗闇の中では動きが鈍かった。魔獣のほうが夜に慣れていた。
ロガが一体を素手で制圧した。狼人2名が別の一体を囲んだ。
残りの一体が、非戦闘員の方に向かった。
ジグニ:「こっちへ来るな」
ジグニが前に出た。怪力で魔獣を押さえ込んだ。
しかし暗闇の中で見えない角が、ジグニの腕を掠めた。
戦闘が終わった。
クラグルがジグニの腕に手を当てた。光が溢れた。
クラグル:「深くはない。でも」
ジグニ:「大丈夫だ」
クラグル:「大丈夫かどうかは私が決めます。
治ることは義務です」
ジグニ:「……わかった」
信が野営地を見渡した。
子どもの兎人が泣いていた。老人の獣人が震えていた。
信:「何度目だ」
ロガ:「今週で3度目だ」
信:「見張りは立てているのに」
ロガ:「夜は難しい。
暗闘の中では匂いより
目のほうが先に察知できる。
うちには夜目が利く者がいない」
ミネルヴェ:「私は夜目が利くが
上空からの全体把握で手が塞がる。
地上の細かい動きまでは無理だ」
信は地面に座った。
3度目。そのたびに誰かが傷ついている。これは構造的な問題だ。夜目が利く者が地上にいない。それだけで、これだけの被害が出る。
信:「夜間察知に特化した仲間が必要だね」
シルト:「心当たりがあります。
この先の廃墟に
蝙蝠人が潜んでいるという情報が」
ミネルヴェ:「蝙蝠人か。
音波で暗闇の障害物を感知する。
視界ゼロでも動ける。
夜間察知なら最適だ」
信:「明日、会いに行こう」
ロガ:「今夜はどうする」
信:「ロガ隊で交代で見張りを続けてくれ。
クラグル、怪我人の確認をもう一度頼む」
クラグル:「わかりました」
夜が、長かった。
廃墟
翌夜、信・リュカ・シルトの3人で廃墟に向かった。
岩山の中腹に、古い廃墟があった。石造りの壁が半分崩れていた。窓はなかった。中は暗かった。
松明を持って入った。しかし奥には光が届かなかった。
シルト:「気配はあります。でも見えない」
リュカ:「いる。すごく近い」
信:「どんな感じ?」
リュカ:「ずっとひとりだった。
すごく長い間。
怖くはない。
ただ、疲れてる」
信は松明を地面に置いた。
暗闇に向かって、静かに話しかけた。
信:「見えていますか。
俺には見えないけど」
(間)
「あなたが見えている場所から
俺たちはどう見えますか」
沈黙。
信:「危害を加えるつもりはない。
ただ話したい。
俺たちには夜が見える仲間が必要で
あなたにはいる場所が必要かもしれない。
違ったら、そう言ってくれればいい」
また沈黙。
天井から、何かが降りてきた。
翼膜を畳んだ小柄な影だった。大きな耳。鋭い目。首輪が翼膜の陰に隠れていた。
暗闇の中で、その目だけが光っていた。
アラファ:「脅威ではないと判断した」
信:「ありがとうございます」
アラファ:「なぜ礼を言う」
信:「出てきてくれたから」
アラファ:「…………」
信の視界に文字が浮かんだ。
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適性鑑定:蝙蝠人・アラファ(推定25歳・女)
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夜間察知 ★★★★★
音波探知 ★★★★★
飛行能力 ★★★★★
隠密 ★★★★★
人形態への変化 ★★★★☆
└── 人間社会への潜入が可能
精霊魔法(風) ★★★☆☆
現在の状態: 長期の孤立
仲間を失った深い傷
疲弊しきった警戒心
現在の能力発揮値:20%
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人形態への変化。昼と夜の両方をカバーできる。
アラファの過去
アラファ:「何が聞きたい」
信:「何も無理に聞かなくていい。
あなたが話したいことだけ」
アラファ:「……珍しい人間だ」
(少し間を置いて)
「仲間がいた。
この廃墟で10人で暮らしていた。
人間の探索隊が来た。
みんな捕まった。
私だけ逃げた」
信:「…………」
アラファ:「暗闇の中は私の場所だ。
誰も来ない。
来ても見えない。
だから生き延びた」
リュカ:「ひとりで、怖くなかった?」
アラファ:「怖かった。
でも怖い場所に
ひとりでいるほうが
捕まるより良かった」
シルトが静かに言った。
シルト:「……俺と同じだ」
アラファ:「あなたも?」
シルト:「群れを失った。
3年間、一人で生きてきた」
アラファ:「…………」
(初めて、目が柔らかくなった)
信の言葉
信:「一つだけ聞かせてください。
人の姿にもなれますか?」
アラファ:「なれる。
でも、なる理由がなかった」
信:「理由を作りたい。
夜を守れる場所を作っています。
あなたの目と耳が必要だ。
それだけじゃない。
人の姿で人間の街に入れるなら
昼と夜の両方をカバーできる」
アラファ:「スパイか」
信:「情報収集です。
戦わなくていい場面を増やすために」
(間)
「昨夜も魔獣に襲われた。
夜目が利く者がいれば
防げた被害だった。
子どもが怖がっていた。
老人が震えていた。
あなたの目があれば、守れる」
アラファ:「…………」
信:「暗闇の中で一人で見続けてきた目を
仲間のために使ってほしい。
見えない場所を見ることが
あなたの力だ」
アラファはしばらく天井を見ていた。
アラファ:「条件がある」
信:「聞きます」
アラファ:「1つ。昼間の行動は最小限にしてほしい。
昼は苦手だ」
信:「わかりました」
アラファ:「2つ。人形態でいる時は
蝙蝠人だとバラさないでほしい」
信:「情報管理は徹底します」
アラファ:「3つ。シルトと組ませてほしい」
シルト:「俺ですか」
アラファ:「同じ痛みを知っているやつと
組みたい」
シルト:「……喜んで」
初夜間移動
その夜、アラファが先頭に立った。
蝙蝠形態だった。翼を広げて低空を飛んだ。
音波を発した。暗闇が、アラファには地図になった。
アラファ:(風の精霊で全員に)
「前方10メートルに岩。
右に迂回。
左の崖下に魔獣が2体。
近づかないで」
全員が暗闇を進んだ。
一度も躓かなかった。
魔獣に気づかれなかった。
夜明け前に山岳地帯を抜けた。
シルト:「完璧だ」
アラファ:「暗闇は私の庭だ」
ロガ:「頼もしい」
アラファ:(少し驚いた顔をする)
「狼人に褒められるとは思わなかった」
ロガ:「実力を認めるだけだ」
夜明けの光が差し込んだ時、アラファが人形態に変わった。
黒い髪。整った顔立ち。少し大きな耳だけが、蝙蝠人の名残だった。
ラギラブ:「全然わからない」
アラファ:「それが目的だ」
ダレト:「きれいな人だ」
アラファ:「……ありがとう」
(照れた顔をした)
ガルディウスの斥候は、夜の間に完全に遅れをとっていた。
追跡を一時的に振り切った。
夜営の焚き火で、シルトとアラファが並んで座っていた。
シルト:「これから情報部門を一緒に動かしましょう。
俺が昼、あなたが夜」
アラファ:「ドミナスは?」
シルト:「外部交渉担当です。
3人で分担すれば
昼も夜もカバーできる」
アラファ:「…………」
(小さく頷いた)
「……悪くない」
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建国プロジェクト:状況報告
第11話終了時点
現在地:山岳地帯を抜けた・移動中
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人員 :コア13名/総勢41名
ロガ隊:狼人6名・犬人4名
資金 :銀貨10枚
食糧 :安定確保
移動力:夜間移動が可能になった
安全度:警戒レベル高
ガルディウスの追跡を一時振り切った
夜間被害の解消
アラファの音波探知により
夜間の魔獣察知が可能になった
情報部門の確立
シルト(昼・情報収集)
ドミナス(外部交渉・変装)
アラファ(夜・潜入・偵察)
3者で昼夜をカバー
仲間の能力発揮値
アラファ:20%(新規加入)
リュカの能力
信のメモ:「夜間移動中も
リュカの察知が鋭くなっている」
次のマイルストーン
→ 時間認知の方法確保
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第11話 終了
次話:「アライグマは諦めない」




