第7部 第15話「均衡の世界」
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建国プロジェクト:状況報告
第7部・死滅編 第15話開始時点
現在地:クロノスリュカ・建国地
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状況 :タナトスが均衡に戻った
世界に静けさが戻りつつある
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タナトスがゲヘナの深部に戻る直前だった。
信に向かって言った。
タナトス:「一つだけ伝えておく」
信:「何ですか」
タナトス:「お前たちが見たゲヘナはまだ入り口でしかない。
底にはまだまだ無限とも言える世界が広がっている。
覚えておけ」
信:「覚えておきます」
タナトスが消えた。
信が少し考えた。
手帳に書き留めた。
「ゲヘナの底は無限に広い。今回は入り口しか見ていない」
ゲヘナに光が差し込む
均衡が戻ったゲヘナは変わっていた。
灰色だった空が少し明るくなっていた。
タナトスの城が威圧感を失っていた。
離反派の死霊たちが穏やかになっていた。
幽霊たちが静かに漂っていた。
苦しんでいなかった。
城の前に漂っていた太古の英雄たちの魂が光り始めた。
カイ・ラガンが見ていた。
古竜の魂:「均衡が戻った。
ありがとう。
長い間
待っていた。
やっと
安らかになれる」
カイ・ラガン:「待たせた」
古竜の魂:「お前も
休め。
一人で
抱えすぎた」
カイ・ラガン:「もう、一人ではないんだ」
魂たちが光になった。
次元の向こうへ消えた。
カイ・ラガンが見送った。
泣かなかった。
笑っていた。
滅んだ国々の復活
その夜だった。
次元の境界が揺れた。
カイ・ラガンが空を見た。
カイ・ラガン:「来る」
ジーク:「来るか」
次元の狭間から光が溢れた。
古竜の国が現れた。
精神生命体の国が現れた。
他にもいくつかの国が現れた。
タナトスの均衡回復によって死に縛られていた国々が解放された。
全員が空を見上げた。
誰も言葉を発しなかった。
カイ・ラガンが長い沈黙の後に言った。
カイ・ラガン:「みんなが戻ってきた」
初めて声が震えた。
ジークが隣にいた。
何も言わなかった。
ただ隣にいた。
エドガルとガルディウス
カルシアだった。
エドガルが人間の姿で立っていた。
体は弱っていた。
しかし生きていた。
ガルディウスが前に立った。
ガルディウス:「生きているか」
エドガル:「生きています。将軍」
二人が何も言えなくなった。
ガルディウスが初めて部下の前で感情を見せた。
目が赤かった。
声が出なかった。
エドガルが先に言った。
エドガル:「将軍が待っていてくれた。信じていました」
ガルディウス:「当然だ。俺が必ず助けると言ったんだ」
カルシアの兵士たちが見ていた。
誰も何も言わなかった。
しかし全員が笑っていた。
数日後、クラグルがカルシアを訪れた。
まだ体が弱っていた。
パナシアが付き添っていた。
エドガルが会いに来た。
エドガル:「あなたが助けてくれたんですね」
クラグル:「ガルディウスが祈ってくれたからですよ。
私はそれを手伝っただけです」
エドガル:「ありがとうございます。
生きています。
ちゃんと生きています」
クラグル:「医者に私には、それが何よりです」
クラグルとガルディウスが並んでいた。
獣人の医師と人間の将軍が並んでいた。
それだけでこの世界の答えになっていた。
それぞれの日常
ローフェンとロガ
翌朝、訓練場に二人がいた。
いつも通りだった。
木刀が打ち合った。
ロガ:「今日はどっちが強いかな」
ローフェン:「まだオヤジだろうさ」
ロガ:「そうでもないぞ」
それだけだった。
しかし最高の朝だった。
ウィンとリーラ
声が戻るまで一週間かかった。
声が戻った朝、二人が音楽院で歌い始めた。
アポロンが来た。
生命の精霊がいつもより大きかった。
リーラ:「先生、声が戻りました」
ウィン:「私も。歌えたよ」
リーラ:「また歌いましょう」
ウィン:「ずっと歌おう」
クラグルとパナシア
クラグルがようやく起き上がれた。
クラグル:「歩けますから」
パナシア:「座ってください」
クラグル:「私のことですから、私が一番分かっています」
パナシア:「全く、人には回復が第一だと言うのに」
クラグル:「……」
パナシア:「先生」
クラグル:「何です」
パナシア:「ありがとうございます。
先生のそばで働けてよかった」
クラグル:「私もです。
あなたがいるから続けられる」
クラグルが素直に座った。
カイ・ラガンとジーク
竜門学府で久しぶりに二人だけで話した。
何を話したかは誰も知らなかった。
しかし朝まで続いた。
翌朝、竜騎士団の再編が始まった。
ジーク:「竜騎士団を再編しよう。
ゲヘナの均衡を今度は俺たちが一緒に維持するんだ」
カイ・ラガン:「ああ。今度こそな」
リリィ
研究室で魔法の練習をしていた。
エルネストが「少し休め」と言った。
リリィ:「今ビンビンなんですよ私」
エルネスト:「お前が倒れたら研究が止まるだろう」
リリィ:「もったいないの〜」
渋々休んだ。
しかし五分で戻ってきた。
エルネストが笑った。
リリィ:「なぜ笑うんですか」
エルネスト:「お前らしいと思ってな」
リリィ:「それはそうですよ。私なんですから」
鈴が鳴った。
照れているように聞こえた。
ワイトの言葉
ワイトが黄泉に戻る前に信に一言言った。
ワイト:「面白い者たちだ。
生者も
死者も
同じ方向を向いた。
長い時を生きてきたが
初めて見た」
信:「また来てもいいですか」
ワイト:「いつでも
来い。
ゲヘナは
変わった。
訪れる者を
歓迎できるように
なったかもしれない」
信:「楽しみにしています」
ワイトが黄泉に戻った。
定期的に連絡が来るようになった。
離反派との共存
幽霊たちが各地に漂っていた。
農村の霧の中にいた幽霊が信に言った。
幽霊:「ここにいていいですか」
信:「ええ。
ただし住民を怖がらせないでくださいね」
幽霊:「善処する」
農村の霧の中に溶けていった。
ラギラブが畑を見ながら言った。
ラギラブ:「幽霊が畑を見ていた。
作物を見守ってくれているようだった」
信:「デメテルと一緒に見守ってもらえれば最高だな」
ラギラブ:「そう思います」
大宴会
国中に灯りが点いた。
復活した国々の使者が来た。
古竜の使者が来た。
精神生命体の使者が来た。
これまで誰も見たことのない存在たちが来た。
大宴会が開かれた。
獣楽祭よりさらに大きな宴だった。
ダレトが料理を作り続けた。
幽霊が傍に漂っていた。
幽霊:「美味しい気がする」
ダレト:「気がするか。
それでも嬉しい。
食べられなくても来てくれるなら毎回作るよ」
チンチラの獣人マスデが舞台で踊った。
全身で喜びを表現した。
見ていた幽霊たちが揺れた。
楽しんでいた。
マスデ:「幽霊さんたちも踊りたそうだ」
幽霊たちが揺れ方を変えた。
踊りに合わせていた。
会場が笑った。
ウィンとリーラが歌った。
声が戻ったばかりだった。
しかし止まらなかった。
アポロンが音楽堂の上で輝いた。
生命の精霊が宴全体を包んだ。
信の精霊の気配
宴の途中だった。
リュカが信の隣を見た。
リュカ:「信の隣に何かいるね。
いつもより大きくなっている」
信:「ずっといる。ここに来た時から。おかしなことに最近気づいたんだ」
リュカ:「名前は?」
信:「まだわからない。
でも少し大きくなった気がする」
コダが通りかかって感じた。
コダ:「この精霊は信さんの精霊ですね。
別の世界の欠片から育った。
もうすぐ形になりそうです」
信:「そうなのか」
リュカ:「早く形になってほしいな」
信:「俺もだよ」
精霊がかすかに光った。
応えるように光った。
信とリュカ・時計塔
宴が続く中、信とリュカが時計塔に上がった。
渓谷全体が見えた。
灯りが溢れていた。
笑い声が聞こえた。
歌声が聞こえた。
生きている音だった。
復活した国々の光が遠くに見えた。
アポロンが世界中に広がっていた。
ゲヘナの方向に静かなタナトスの影が見えた。
均衡していた。
リュカ:「こんな世界を作りたかったんだ」
信:「作れたね」
リュカ:「まだまだ続くよ」
信:「ああ、続けよう」
しばらく二人が並んで渓谷を見ていた。
時計塔の鐘が鳴った。
光の精霊が塔を照らした。
リュカ:「ね、信。次は何をする?」
信:「リュカが決めるんだ。国王なんだ」
リュカ:「じゃあ皆で決める仕組みを作ろう。
もっとワクワクする楽しい国を。
世界も一緒に」
信:「いいね」
リュカ:「約束ね」
信:「約束だ」
信が手帳を閉じる
信が手帳の最後のページを書いた。
タナトスが言った。 ゲヘナの底には まだ無限の世界が広がっている。 今回は入り口しか見ていない。 覚えておく。 しかし今日は それだけを考えない。 均衡が戻った。 滅んだ国々が戻ってきた。 カイ・ラガンが一人じゃなくなった。 クラグルがエドガルを助けた。 ウィンとリーラが歌い続けた。 全員、生きている。 それだけで十分だ。 明日から、また始める。
信が手帳を閉じた。
新しい手帳を開いた。
第一ページに書いた。
まだまだ続く。
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建国プロジェクト:状況報告
第7部・死滅編 第15話終了時点
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ゲヘナの変化
灰色の空が少し明るくなった
離反派に安息が戻った
滅んだ国々の復活
古竜の国が戻ってきた
精神生命体の国が戻ってきた
カイ・ラガンが泣かずに笑った
エドガルとガルディウスの再会
「生きています、将軍」
クラグルもカルシアを訪れた
それぞれの日常
ローフェンとロガ:また稽古
ウィンとリーラ:また歌い始めた
クラグルとパナシア:素直に座った
カイ・ラガンとジーク:竜騎士団再編
リリィ:五分で戻ってきた
ワイトの言葉
「生者も死者も同じ方向を向いた」
「初めて見た」
離反派との共存
幽霊が農村を見守り始めた
大宴会
復活した国々の使者が来た
マスデと幽霊が一緒に踊った
信の精霊
「もうすぐ形になりそう」
かすかに光った
タナトスの忠告(伏線)
「ゲヘナの底には
まだ無限の世界が広がっている」
「今回は入り口しか見ていない」
締めの言葉
「まだまだ続く」
信が新しい手帳を開いた
第7部「死滅編」完結
第8部「東の大陸編」へ続く
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第7部 第15話 終了
第7部「死滅編」完結
「ゲヘナの底には、まだ無限の世界が広がっている」 ― タナトス、均衡に戻る直前に
第8部「東の大陸編」へ続く




