第十章:解剖学的逆転
#犬神医師の解剖学的愛着律 #サイコパス外科医 #禁断の愛 #メディカルホラー#医療グロ
闇はキャンバスであり、突如として点灯した無影灯の光は筆であった。
私は、あまりにも熟知した感覚と共に目を覚ました。だが、視点が決定的に間違っている。私は仰向けに横たわっていた。背中には、氷のように冷たいステンレスの感触。頭上では、巨大な無影灯が審判を下す白い太陽のように私を見下ろしている。
指を動かそうとした。――失敗。叫ぼうと口を開こうとした。――失敗。
麻痺。
「目覚めたのかい、江戸兄様?」
頭上から朱里の声が聞こえた。
彼女が視界の中に現れた。私の、彼女の体には少し大きすぎる白衣を纏っている。髪はオペキャップの中に整然とまとめられていた。その手には、空のシリンジ。――私が食卓でショックのあまり気を失っている間に、彼女が静脈ラインから注入したクラーレの残骸だ。
「無駄な抵抗はやめて。この神経毒の効果はあと二時間は続くわ」
新しいラテックス手袋で私の頬を撫でながら、彼女は言った。
「私の感触は分かるでしょう? まだ……愛を感じることはできるかしら?」
私は彼女を見つめることしかできなかった。麻痺に屈し始めた瞼の筋肉のせいで、瞳は乾き始めている。涙が自律的に溢れ出すが、朱里はそれを滅菌ガーゼですぐに拭い取った。
「最高傑作が完成の段階にある時に、医者が泣いてはいけないわ」
彼女は囁いた。
彼女は私の――最も鋭利な十一番のメスを手に取った。それを私の目の前で弄び、冷たい金属に光を反射させる。
「刑事として、あなたの重大な欠陥を見つけたわ、江戸。あなたの手には、あまりにも多くのエゴが宿りすぎている。他人を壊すために使い続けた、その手に」
朱里が私の右の手のひらを切り裂き始めた。
――スゥッ。
痛みが爆発した。鋭く、灼けるような、純粋な痛み。麻酔なしで、手にあるすべての知覚神経が、硬直した肉体に閉じ込められた私の脳へ危険信号を送り続ける。叫びたい、乞いたい。だが、漏れ出すのは音にもならない、かすかな吐息だけだ。
「神経置換術(神経トランスポジション)を行うわ」
朱里は、まるで私そのもののような臨床的な口調で言った。
「あなたの手の運動神経を切り離し、最も敏感な知覚神経へと繋ぎ変える。そうすれば、あなたが何かに触れようとするたび、耐え難い激痛だけが走るようになる。二度とメスを握ることはできないわ」
続く一時間、私は自分自身の崩壊の目撃者となった。朱里は、かつての私が成し得たあらゆる処置を凌駕する速度と冷静さで作業を進めた。彼女は私の手首を解剖し、白い腱を引き出し、それを歪んだパターンで縫い合わせた。――私の手を、永遠の「掌握」の形に固定する結節。
続いて、彼女は私の顔へと手を伸ばした。
「そしてその目……。あなたは汚いものを見すぎたわ」
彼女は湾曲針と黒いナイロン糸を取り出した。非常に優雅な所作で、彼女は私の瞼を開いたままの状態で縫い合わせ始めた。
刺す。引く。結ぶ。
もはや、目を閉じることさえ叶わない。私はこの無影灯を、永遠に見つめ続けることを強要された。この家で彼女が作り出す狂気の毎秒を、目撃し続けることを。
処置が終わると、朱里は私の血に染まった手袋を脱ぎ、医療廃棄物容器へと捨てた。ポチャン、という決定的な音が響く。彼女はオペ台の傍らに立ち、私を上から見下ろした。まるで私自身が、ガラス瓶の中の標本であるかのように。
「オペ終了よ、お兄ちゃん。これであなたは完璧だわ」
新調された鏡の前で白衣の襟を整えながら、彼女は言った。
彼女は屈み込み、最後の一言を私の耳孔に直接囁いた。その声は、私の荒い呼吸の音と混じり合う。
「あなたは目撃者であり、あなたは証拠。そして今この瞬間から……あなたはあなた自身の監獄よ。奥多摩の永遠を楽しんでね、犬神江戸医師」
朱里が無影灯を消した。完全な闇の中、私は目を大きく見開いたまま残された。冷たい虚無を見つめ、遠ざかっていく彼女の足音は、私の破滅へと刻まれる時計の秒針のように響いていた。




