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EX.1 現在の神々と、元生贄の日常

 上層では、教皇から民衆に伝えられた。


 100年後、塔は宇宙へ向かうということを。


「教皇ちゃんに神の啓示と称してチョチョっとね」


「えぇ……」


 そもそも神殿のトップをちゃん付けとは。神だから何もおかしくはないが、20代程度のシエラが砕けた口調をしていると、どうしても違和感が拭えない。


「でも教皇ちゃん。ミハエルが消えたからかな。素直に聞いてくれて。意外と上層の民も変わらない対応みたい。100年も後なんて、実感湧かないみたいだね」


「それでいいのか」


 後で焦らないだろうな。といっても、敏明も実感がない。


 ともあれ、欠伸を噛み殺す。


 美菜は上層へと帰還した。敏明も拠点である水道事務所に帰ってきた……ものの、どうにも寝不足である。


「人みたいな存在がいると落ち着かない? 私ら神だから、今までと変わんないでしょ?」


「そりゃそうだけど……」


 シエラが敏明の思考を読む。


 いざ人型になると、意識してしまうものだ。別に長話をしているわけでもないのだが、今までが静かすぎた分、やはり意識してしまうのだろう。


 というか。



 敏明は、扉を開けた。


 自らの部屋の奥。閉ざされていた神の間。


 今までは恐ろしくて堪らない存在だったが、今や長話神と陽気神コンビである。


 生贄から解放されたといえど、いくら彼らの業で縛られていたといえど。敏明の部屋の奥の場所で、存在として実体化しているのだ、全くの素知らぬ態度ではいけない。


 一日に一回くらい、顔を合わせ。「元気か」「元気だ」「そうか、だったら良かった。おやすみ」とか言い合う程度で。


 と言ったことを話すと、神は哄笑した。


「ふはは! その心がけは大変良い! そこに座れ、生贄。星の歴史を聞かせてやろう!」


「いや別に良いんだが」


 元気ならそれで良い。大変良い。だから一言くらいで帰らせてくれ。と思ったが。


 立ち長話を聞き流していると、神の背丈が低いことに気付く。透き通るような青く長い髪。白い衣。自分の身長は知らないものの、敏明よりかなり低い。美菜と少ししか変わらない。恐らく160cm程度だろうか。


「外観を気にしているのか。現在の一般男性よりは低いと思っている。だが、コミュニケーション用のインターフェースに背丈は必要ないものだ」


 威厳がな……と思った途端。


 アーシュスの背が190cmくらいに伸びた。シュンッと伸びた。


 驚きに言葉もない敏明を見下ろし、再び大笑する。


「ふはは! これが「ノッポ」という背丈か! 生贄を見下ろすのも良いな! 気が良いものだ、なぜなら(以下略)」


 ……可変系か!


 盛大に物理的な上から目線で、もはや恒例となった長話を聞き流しながら思う。


 思えばコミュ用といえど、神なのだ。身長という骨と肉でできた枷など、容易く突破してみせるのだ。かといって、このインターフェースとやらの外見が何で出来ているかは全く知らないが。神という訳のわからん存在が関わっているから、考えても不明だろう。


 更に言うと、こいつも敏明の思考を読んでいる。


 また、敏明は「神達が長い間閉じ込められてきたから、こいつは饒舌なんだ」と推測しているが、実際はこの存在、解放されて数百年経ってもおしゃべりなままである。知る由もないことだが。


 単におしゃべりが好きなのだ!


 ……といった長話に付き合わされ。ちなみに背丈はさんざん歴史とやらを語った後、「気は済んだ。やはりいつものものが愛着があるか」といってシュンっと縮んだ。


 かと思えば。


 次の日訪れると、アーシュスは塔の根元に当たる部分で目を閉じていた。敏明の視線に気付いたシエラが言う。


「あ、彼、スリープモードに入ってるんだ。基幹システムだから、塔とはあんまり離れられないし、動力を無為に使うのも良くないって話で。マジメだよね。でも、彼にやってもらうこと、今はあんまり無いからなぁ」


 そして。こちらを神妙に見た。言葉を溜める。何かあったのだろうか。


「アーシュスくんの寝てる姿。すっっっっっごく!!!!! カワイイでしょ!?」


「かわっ……!?」


 そんな単語、こいつに似合うのか!? この顔が怖い奴に!?


 しかして、初対面で男か女か分からなかった。そも、声で男性神格だと思っているだけで、実際は神に性差などないのだろう、と思ったがそれにしてもカワイイとは!?


 彼女は目を輝かせている。本気でカワイイと思っている姿だ。


「私? 寝る必要ないよー。空の化身だから、地球と違って眠る必要は無いの。それに現世、めっっっちゃ楽しいし!!! 巫女ちゃん達カワイイし、たくさんお喋りできるわけで!」


 そんな笑顔を見ると「やっぱり気になるから別の場所に移って欲しい」なんて、言えなくなるわけで。


「もし迷惑じゃなかったら、敏明くんのこともたくさん聞かせて! 生贄生活で華がないって思ってるだろうけど、人間の生態って、神にはどんなものも大好物エピだから!」


 と言われると……!


 さらに。


「敏明様、ちょっと部屋の中通りますね」


「私もー」


「某もー」


「……」


 ウジャムンガ教の巫女も、しょっちゅう出入りする。そりゃそうだ、敏明の部屋の奥が、神の間なのだから。

 敏明は! 眠れないのだ!


 こんな中で眠れる奴はあの酒飲み巫女しかいない!



(……そーんなことで寝不足になっちゃ、美菜っちと暮らし始めたらどうなるか……って、そこのお説教はダメだよねっ。美菜ちゃんのプロポーズは、2人だけのひみつなのでした~!)


「そんな敏明くんに、とっておきのニュースがあるよ!」


「ニュース?」


 言うなり、シエラは端末を見せた。


『お兄さん見えてる? やっほー、優祈美菜でーす!』


 美菜からの通信だった。


『お兄さんに小旅行! エナさんと一緒の旅行だよー!』


「……旅行?」


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