Departune
「ということで! 100年後、アル・ソトファ塔は遠い遠いソラ、宇宙へと飛ぶことに決定しました~!」
「は??????」
「えーーーーっ!??!?!? う、宇宙にですかぁ!? ……宇宙ってどこ???」
反応できているのは美菜くらいだ。
宇宙とは、旧い文献にある、空の向こうの遠い場所……それくらいしか知らない。そもそも、空を飛ぶにはあまりにもデカすぎる!
「飛ぶのか……この、……!?」
「そうですっ! 創世神と地上神、そして私シエラの力があればオールオッケー!」
まじか。
ウジャムンガの巫女あらため、シエラはとんでもなく明るく、そしてなんでもないこととして言っている。
……あまりに、スケールが違いすぎた。
なんとか気を取り直して。……取り直して!?
「100年……俺と美菜の、次の世代だな」
「生贄。1000年生きてみるか」
「享年は90歳くらいでいい」
一般的な享年だ。寿命はそのくらいでいい。
ふつうと同じ、それがいい。
欲を張っても、きっとあの時と同じような後悔をするだろう。必要とされていたことを知らず、犠牲となってしまったあの時のように。
事件を通じて、後悔は解消されたが……それでも、やり直せないものがある。両親、友人。彼らに、せめて胸を張れるように生きていくべきだ。
「欲がないわ! 1000年健康で健全な精神を、あとビールが飲める肝臓を、って祈らないの?」
「お前は欲がありすぎだ」
ともあれ。
「我ら、アーシュス・アル・ソトファがメインシステムとして宇宙に行く。シエラは地上に残る」
「えっ!?」
「お前が宇宙に行くのか!?」
アーシュスの発言に、もう一度驚く。これまでずっと地上に……敏明の側になんやかんやでいたから、ずっといると思っていた。
「塔のシステムだ。行くに決まっている。貴様は何か勘違いをしているな、そもそも……」
「この地は私が守ることになったからねっ。アーシュスくんは宇宙へと飛んで、遠い星へ向かう。途中でヘンな宇宙船とであっても、それはそれでロマンがあるわ」
「塔が飛んだ後の地上は……大丈夫そうだな」
神達が変化した今、どこかで水が噴き上がっている。神殿の者達がどうするかはまだ分からないが……全てを支配してしまうような、とんでもない指導者が出てくるかもしれない。
全てが、未知数なのだ。
「これから、四季というものも戻るのかな。青空が一番透き通った、夏っていう季節も来るぞー! 暑いぞー! 覚悟しろ敏明くん!」
「いつか、あのロボットみたいなのも出来上がるのかな……今度は派手なカラーリングがいいわ! 赤と橙とかどうかしら?」
「派手すぎる」
むしろ熱苦しい。……シエラの言うことが本当なら、いつか「ナツ」というあつい季節も来るのだろうか。
敏明達の子孫は、どんなことになっているのだろうか。
せめて面倒ごとには巻き込まれないで、でも楽しみな気持ちもある。
希望に浸っていると、アーシュスが笑い声を上げた。
「生贄、お前の精神は輪廻転生し続けるのだ。それが贄の末だからな。ふはは! 永遠に使い回され、磨り減ることなく微妙な変化しか許されぬのだ! どうだ恐怖であろう! 恐怖と言え!」
「……恐怖ってなぁ……」
それは、ごく普通のことではないのか。この神といいミハエルといい、やたらめったら持って回った言い方をしてくるが、輪廻というものがあるとしたら、普通のことだ。
でも。出会うのがミハエルのような誰かであれ、美菜のような誰かであれ。
今度はもう少し、素直に仲良くできたら。
◆
100年後くらいに、シエラは気付く。
「あ、神の棺仕舞い忘れてた。でも、誰かがなんとかするでしょう!」
祟り神達が入っていた棺。空想を機神という形で現実と為す、神の遺物。
何百年か、何千年か。塔の跡地は遺跡となって掘り起こされるだろう。
それもまた、人の営み。
本編はここまで! 次回から「EX」が始まります!




