インタールード:ミハエルの場合
上層中央。神殿内に存在するどこかの研究室。
自然の象徴である創世神にとって、科学とはほど遠いもの。この存在は一般の巫女や神官にも知らされていない。
巨大な試験管やら檻やらビーカーやら上下に電極の刺さった管、あらゆる科学っぽいものが所狭しと置かれていた。
試験管の中では、黒い線が無数に蠢いている。まるで影のような塊を、女性が見つめていた。
長い金髪の女性である。隣には、四角い仮面を被った男性。影を見上げながら、女は男に語る。
「怪物が人を喰うことは、まさしく脅威。それ自体が恐怖であるけれど、そのことは真の恐怖ではありません。真の恐怖は、お互いに疑い合うこと。疑念こそが、本当の悪なのです」
「……ミハエル。いろいろ言ってるところ悪いが」
「なんですか、ダンテ上官」
男は静かに呟く。
「こいつら、なんだっけ」
「おボケですか、ダンテ上官。死ですよ。病魔。デス。触れたら即死の魔のモノです。唯一祓えるのが王と巫女。だから巫女に創世教の神を取り憑かせて、体よく始末しようと思ったのに」
「王なんていたの」
「いますよ、古くから。現在、王の消息は知りませんが、まぁ、死滅でもしたのでしょう。神のお気に入りでしたからね」
「こいつら、何のために生み出したんだっけ」
「おボケですね。戦争に勝つためですよ」
「戦争、終わってなかったっけ」
「お薬を出しておきます。終わってませんよ、まだ、ぜんぜん、全く、ちっとも。そのために神歌の儀を行ったのではないですか」
「……私、神官だったっけ」
「今、お注射しますね。あなたは最高司令官にして、最上神官ではないですか」
「……それだけは違う」
「あら」
「それだけは違う。私は……私は新刊では、本などではざふぉ」
ざっくりと、男の腕に注射器が刺さった。ゆっくりと、その場に崩れ落ちる。寝息。
「……まだ、薬が足りないようですね」
思わせ振りなミハエルは、試験管の中で眠る神を見、そっと踵を返した。
倒れた男……ダンテを残して。




